第六章 そうちゃんって、頼りになるよね。
火葬場からの車の中。私達は何も話さなかった。どう話していいのか分からないと言うのもあった。
けれど、それ以上に今のママに必要なのは、きっと…
私はスマホを開いた。
アパートに着くと、いつもの場所に黒い車が止まっていた。私達に気づき、降りて来たのは、そうちゃん。
「あれ?どうしたの?」
車を降り、ママがそうちゃんに言った。
「いや、ちょっと様子見に来た。」
そうちゃんは、私達に「よっ」と手を挙げた。
私達も手を挙げた。
「じゃあ、私達、先に部屋入っとくから。」
私はりっくんを肘で突き、アパートに入った。
「そうちゃん、ナイスタイミングだね。」
階段を登りながら、りっくんが言った。声が響く。いつのまにか、りっくんの声は低く太くなっていた。
「私が連絡したから。」
「あ、そうなの?ナイスじゃん。」
私達は外廊下から、駐車場を見下ろした。
遠くからでも、ママが泣いているのが分かった。泣いているママをそうちゃんは、抱きしめていた。
私達はしばらくママとそうちゃんの様子を見ていた。
「私が子どものままで居られるのは、そうちゃんが居てくれるからだね。」
ママとそうちゃんを見てると、なんとなくそう思った。
「そうだね。」とりっくんは言った。
「いや、子どもはあんなこと言わない。」
私は笑いながら、りっくんを見上げた。
「あんなこと?」キョトンとするりっくんの顔に、私は人差し指を指した。
「"祖父が僕たちにあんな風に笑った事はない。"」
「あぁ〜!」りっくんが笑った。
「びっくりしちゃった〜。」私も笑った。
「俺は、一時期学校行けなかった時、おじいちゃん家で留守番させられてたじゃん。なんかさぁ〜…あの人の存在?圧?が凄くて…。学校行った方がマシなんじゃないかって思ってた。」
「そうだったんだ。」
「実は、母さんとおじいちゃんの血の繋がりがないこと、少し前に俺は知っててさ。」
「うん。」
「そうちゃん家で留守番してる時に、おじいちゃんの話をそうちゃんにしたんだよね。そしたら、そうちゃんが教えてくれて。
昔からおじいちゃんとなんかあると、そうちゃん家に逃げて来てたって。」
「だから、あの時もそうちゃん家だったのか。」
「そうそう。その話をした時に、そうちゃんが言ってたんだよね。"おじいちゃんは、ママのお父さんになる努力をしてくれる人じゃなかったんだよな"って。」
りっくんはふふふと笑った。
「それをそのまま、真似して…いや、ちょっと嫌味を乗せて言った!」
私もフッと笑った。
私はおじいちゃんと2人で過ごしたことがなかった。いつもママが居て、りっくんが居て、その中でしか関わったことがなかった。だから、おじいちゃんとママは仲が悪い。くらいでしか考えたことがなかったけど。
りっくんは、ママとおじいちゃんの事を私とは違う風に見ていたんだな。
「いやー、でも、すごい。りっくんはきっと……。
人間初めてじゃないね。」
「何それ。」りっくんが吹き出した。
「いや、中学生でそんな風に考えられるのは、人間初めてじゃないよ。実は年上なんじゃない?」
「すみれが、初めてすぎるだけじゃない?
前世は…モルモットとかだったんじゃん?
ほら、ここら辺とかネズミっぽいよ。」
りっくんはニヤニヤしやがら、私の口元に指を差した。
「もっといいやつにしてよ!鷹とかさ!」
「ないないない!鷹はない!」
「なんでよ!!!」
私達は玄関を開け、家に入った。
クーラーが効いてきた頃、ママとそうちゃんが帰って来た。
「暑すぎるから、今日の夕飯はそうめんにしてみた〜」りっくんと私が準備した素麺と、前の日の残りを唐揚げとお味噌汁を机に並べた。
ママは腫れた目でニッコリ笑って、「ありがとう」と言った。
第六章 完結です。
おじいちゃんとママは、私の実体験を元に書きました。ステップファミリーが悪いとは思わない。
けれど、ステップファミリーを正解とするには、やはり大人側の多大な努力あってこそと言いますか…一緒に過ごすだけで家族になれるわけではない。と、私は思っています。
次から第七章に進みます。
そうちゃんの気持ちや、大輝とすみれの関係にも、焦点を当てていきたいと思います。
引き続き読んで頂けたら、嬉しいです。




