表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
34/39

第六章 そうちゃんって、頼りになるよね。

「あー!!!畳の匂い〜最高!!」

 りっくんが荷物を放り投げ、畳の上に大の字になった。ほぼ大人サイズのりっくんが、寝っ転がると、急に部屋が狭く見えた。

 りっくんの成長は中学に入ってから著しかった。私も163cmと女性の中では割と高い方で、ママも私とあまり変わらない。

 しかし、りっくんは、男というのとあり、大きさが規格外になってきている。

「いや、デッカ。今何センチよ。」

「んー、こないだ保健室で測った時は175cmだったかなぁ。」

「え?!やっば!男じゃん!」

 私はりっくんの荷物を軽く足で払い、端に寄せた。

「いや、男だし、俺の荷物蹴るなし。」


 見られていた。


「荷物軽くまとめたら、お風呂行こうかぁ〜」

 ママが戸棚の浴衣を出しながら言った。


 私達は、何年振りか分からない家族旅行に来ていた。ママが、職場の忘年会のビンゴゲームで当てた温泉旅行の期限が切れそうなのに気づき、慌てて予約を入れた。

 夏の温泉は乗り気じゃなかったけれど、綺麗な館内に、木陰が涼しい山の中、穏やかに流れる川の音は心地いい。澄んだ空気は、私の日頃の気疲れもそっと癒してくれそ……

「すみれが気疲れって、どんな学校だよ。」

 りっくんが鼻で笑いながら言った。

 私は、目を細めてりっくんを見た。りっくんは、いつからか急に私のことを“すみれ"って呼ぶ様になった。ずっと"すっちゃん"だったのに。

「みんな頭いい上に、とにかく可愛いの。わかんないよ。男のりっくんには。」

 私は、今でも"りっくん"なのに。りっくんもとうとう思春期だな。


 無事R大付属に合格した私は、華のJKライフを送っていた。

 周りの子に置いていかれない様に、必死で…勉強していた。

 勉強と言うのも、ファッションやメイクの勉強だ。授業自体はそんなに困っていることはない。この間の期末テストも110何人(正確な人数を把握していない)中、17位だった。

 そうちゃんの言っていた通り、勉強の飲み込みの良さは、ママ譲りなのかもしれない。自分で言うのもなんですけどね。

 入学して、近くの席だった咲良さくらと百合が、私も含め、同じ花の名前という共通点で仲良くなった。2人とも明るくて面白くて、大好きなのだが、とにかく可愛い、美人な2人と居て浮かない様に必死だった。

 小柄で色白、まんまるな目。顔も小さく華奢。守りたくなる系の咲良。

 私より少し身長が高く、切長の目とサラサラの黒髪ロング。まさに大和撫子とは百合の事を言うのだろう。

 そして、私。2人と並んだ姿を見るたびに、コンプレックスの塊になってしまいそうだった。

 メイク道具を買いあさり、練習をしたり、髪を巻いてみたり、ダイエットも始めた。

 そんな私を見てそうちゃんは、「ザ・女子高生だなぁ」と笑っていた。

「ザ・女子高生」とか言っちゃうそうちゃんは、おじさんになったんだなと心の中で思った。



 温泉の入り口の前でりっくんと別れ、ママと2人で女湯に向かった。

 ママと一緒にお風呂に入るのなんて、いつぶりだろうか。

「あ〜。きもちぃ〜。」

 自然と声が出た。お風呂の目の前の大きな窓からは、青々とした木々が見え、葉の隙間から溢れる陽の光が、風呂の湯に落ちてキラキラと光って見えた。

 隣でママも気持ちよさそうにしている。

「そうちゃんも来れば良かったのにねぇ〜。」

 私はママに言った。

「んー、そうねぇ〜。」

 ママは目を瞑ったまま、軽く頷いた。

 

 温泉の予約をするときに、私もりっくんも、てっきりそうちゃんも一緒だと思っていたので、驚いた。

「そうちゃん、来ないの?なんで?」

 りっくんが、聞いた。

 すると、ママは少し考えて、「家族旅行だから…かな?」と、困った顔をした。

 その顔を見たら、私達はそれ以上は何も言えなくなった。

 そうちゃんも、「楽しんでこい!!」って最初から行くつもりないみたいに言って。なんだかなぁ。なんて思ったりした。


 お風呂から上がると、食事の準備がされていた。お刺身に、なんとか牛とか言う高級なお肉のすき焼き。

 前菜は綺麗に盛られていたけれど、ちょっとよく分からない味をしていた。


 食事を終え、りっくんとゲームをした。ママはゆっくりとお酒を飲みながら、本を読んでいた。

 すると、

 〜♪

 ママの携帯が鳴った。

「もしもし?どうしたの?」

 ママが電話に出た。

 私もりっくんも気にも止めず、ゲームを続けていると、

「うん。そう。分かった。また、着く時間分かったら連絡するから。」

 私とりっくんは、顔を上げ、ママの方を見た。

 ママが本に栞を挟みながら、言った。

「おじいちゃん。危篤らしいから帰るよ。」

「「え?」」

 私もりっくんもキョトンとする。


 きとく?きとくって。危篤?


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ