第五章 そうちゃんって、聞き上手だよね。
新学期に入り、大輝の受験はいよいよ大詰め。
それでも、大輝は私の部活が終わるのを自習しながら待ってくれたり、塾の後にアパートに寄ってくれたりしていた。
「東堂先輩。めっちゃ優しいよね。」
カコが頬杖をついて言った。
「そう…かな??」
私もカコの真似をして頬杖をついた。
「付き合って1年以上経つのにね。」
「そうだね。」
「でも、先輩卒業してからの事、なんか話してるの?」
「話すって、何を?」
「どうやって関係続けていくかよ。」
私がキョトンとしていると、カコがやれやれとしてみせた。
「東堂先輩が、イケメンって分かってる?」
「んー。でも、大輝が行くのは男子校だし。」
「でも、先輩の学校の最寄駅で女子校も降りるの知ってる?」
…それは、知らなかったな。
「新しい出会いが、あるかもしれないじゃない?!」
返す言葉がない。
「あんまり先輩の優しさに甘えてたら、誰かに持っていかれるかもよ〜」
考えたことがなかった。
自分で言うのもなんだが、私たちはどちらかと言えば、大輝の方が私を好きだ。
ヤキモチ焼きなのも大輝だし、ずっと一緒に居たいよーって感じなのも大輝の方だ。
常に愛情をくれる大輝に、私は完全に油断していた。
大輝も環境が変われば、心も変わってしまうのかな。
「なんかあった?」
そうちゃんが、横に座った。
「なんで?」
「すーが1人で、俺んち来るの珍しいよ。」
「そーだっけ。」
「りくはよく来るけどな。」
「知ってる。」と小さく笑って見せた。
そうちゃんちの縁側はすごく落ち着く。
なんでも話していいよ。って言ってくれてるような感じ。
「今日、カコから言われたの。
大輝が卒業したら、新しい出会いがあるかもしれない。って。」
「それで落ち込んでるの?」
「んー。落ち込んでると言うよりは…それって私に何ができるのかなって。」
そうちゃんの視線を感じながら、
「だって、新しい出会いなんてこれから沢山あるでしょ?それでも変わらない関係って…何をどうしたら出来るものなのかな。」
「んー…。難しい問題だな。」
そうちゃんは、優しく笑いながら言った。
「その気持ちを、大輝に話さないのはなんで?」
「……なんとなく。とりあえず、来週、受験本番だし。余計な事考えて欲しくないかなって。」
「すーは、優しいな。
でも、長く続くカップルって、どれだけ色んな事を話してるか。なのかなって、俺は思ってるよ。
お互いがお互いの事を知ってる。それが相手を信じれる…力?になるのかな。って。」
そうちゃんの言いたい事は、なんとなく分かった。
それと同時に、もしかしたら、ママとそうちゃんは、私達の知らないところで、色んな話をしてるのかもしれない。とも思った。




