第四章 そうちゃんって、弱虫だよね。
赤く染まった道を走った。
走って走って、
たどり着いたのは、そうちゃんち。
ジロちゃんに餌をあげていた。
夕日に照らされたそうちゃんの背中に向かって、
私は叫んだ。
「そうちゃん!」
そうちゃんは、振り向いて目を丸くした。
「あれ?すー、どうした?」
私の後ろを確認して、「1人で来たの?」と。
そう言って、私の方に歩いてくる。
あんなに酷い事言ったのに。
そうちゃんはいつもの笑顔だった。
「そうちゃん、あのね。
私、先輩と付き合う事になったよ!」
「え!本当に!!良かったじゃん!!」
そう言って、クシャッと笑ってくれた。
「あのね、私……わたし……」
目が熱くなってくる。
「ん?」
と、そうちゃんは優しく笑って、首を傾げた。
「…ごめんね!そうちゃん!」
そうちゃんは、私を見つめた。
「あんなの、本心じゃないよ?
ただ、イライラして、なんか最近多いんだよね。
自分でどうにも出来ない、気持ち?感情?
抑えられなくて。
でも、そうちゃんの事、傷つけてやろうとか、いじわるしてやろうとか、そんな…」
「分かってるよ。」
そうちゃんは、優しく笑った。
私の前に立ち、目線を私に合わせてくれた。
私の目からは、一つ、また一つ。涙が落ちた。
その雫を、自分の首にかけていたタオルでグシャグシャと拭いてくれた。
「すーは今、そう言う時期だ。それでいいんだよ。
むしろ、こうやってちゃんと謝りに来るなんて。
俺が、すーの歳の時には、出来なかっただろうな。
えらいよ。」
心がスッとした。
「ありがとう。そうちゃん。」
「"弱虫"、割と間違いじゃないしなぁ。」
そうちゃんは、笑いながら言った。
「そうなの?」
私も笑った。
そうちゃんは、人差し指を口の前に持ってきて、「内緒な。」と言った。
目に溜まっていた涙を、そうちゃんのタオルでゴシゴシと拭いて、そうちゃんに返した。
「てか、そのタオル綺麗なの?」
「今日の朝出したやつだよ?」
「え?!もう夕方なんだけど!!汚いじゃん!」
「確かに、一日俺が汗拭いたわ。」
「最悪!」
私とそうちゃんは大笑いした。
「そうちゃん、うちにシュークリームあるよ!
食べにおいでよ。」
「お、マジで?じゃあ、行こうかなぁ〜。」
「私ももう一個食べよ〜。」
「もう食べたのかよ。」
「そう、食べて、ここ来たから。」
「シュークリーム食べる元気はあったのかい!」
ジロちゃんが尻尾を振りながら、私たちをみていた。
「てかさ……」
そうちゃんは、手招きをした。
私はそうちゃんに顔を近づけた。
「なんで、すーは俺が振られた事知ってんの?」
沈黙。
「さぁ。なんでだろうね。」
ニヤッと笑って見せた。
「え?!ちょ、なんで?!」
「さぁーねぇ〜、ジロちゃ〜ん!お散歩いこ〜!」
「おい!すー!」
この時、歯医者から帰ってきていたりっくんがシュークリームを2つ食べていたせいで、そうちゃんの分がなくなっている事を、私たちはまだ知らない。
これで第四章完結です。
この章は、中学生ならではの人間関係やすっちゃんの恋を通して、大人になりつつある、けど、まだまだ子ども。そういう部分を意識して書きました。
ちなみに萌香先輩は、私が中学生の頃に実際に居た先輩をモデルに書きました。笑
次から第五章に入ります。




