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第四章 そうちゃんって、弱虫だよね。

相変わらず、先輩達からの嫌がらせは続いていた。


凹む日もあるけど、

幸い、カコも同じ1年の友達も普通に接してくれていた。



ある日の部活終わり。

どうせスルーされるけど、先輩達に「お疲れ様でした。」と声をかけ、部室を出ようとすると、

「すみれ。ちょっと残って。」


場の空気が凍りついた。


呼吸が浅くなる。

ゆっくり振り返り、消えそうな声で「はい。」と返事をした。


「あとは帰っていいから。」

一瞬躊躇ったが、カコ達は部室から出ていった。





すると、萌香先輩が話し始めた。


「すみれさ?大輝の事どう思ってる?」


「どう……?」


「好き?」


これはどう返事すればいいのか。

答えられない。


好きじゃない。これは嘘だと自覚があった。

でも、好きと答えたら。

それも良くない事がわかった。



萌香先輩が続けた。

「私は、大輝が好きなんだよね。」

甘ったるく、諭すように。

柔らかい口調の中に、圧を感じる。

「はい。」


誰も何も言わない


周りの先輩が続けた

「わかるよね?すみれが最近大輝にちょっかい出してるの。萌香を嫌な気持ちにしてるの。」


ちょっかい出してる?

どちらかといえば、出されてるんだけど。


なんて事は言えない。


「はい。」

「ちょっと、考えようね。」

「…はい。」

萌香先輩がまた柔らかく、「ごめんね、すみれ。」と。


なんのごめんなのか。


「いえ。大丈夫です。」

「分かったなら、行っていいよ。」

そう周りの先輩から言われ、部室を出た。



他の部も下校し、体育館の外は静かだった。


校門を出て、近くの公園のベンチに座った。


膝が少し揺れる。



生徒手帳からメモ紙を出した。


大きく、決して上手とは言えない字。

東堂先輩のケー番。




電話、する事なかったな。



ポタッポタッ


メモ紙がジワッと濡れた。



私はしばらく、

ベンチから立ち上がる事ができなかった。





濡れていた頬も乾き、周りが薄暗くなり始めた。

こんな時でも、お腹はすく。


「私って、タフだな。」


ベンチから立ち上がり、アパートへ歩き出した。


公園から出て少し歩くと、


プップー


車のクラクション。

黒い車が私の横に止まった。


車の窓が開き、

「すー、お疲れ!遅かったんだな。」

そうちゃんだった。

「乗って!」

私は頷いて、助手席に乗った。


「こんな時間まで、部活あってるの

大変だな〜」

車を走らせながらそうちゃんは言った。

「うん」

外を眺めながら、適当に返事をした。


「…この間の、先輩は…彼氏なの?」

思わず、そうちゃんの方を見た。

「あ、ごめん。聞いちゃダメだった?」


そうちゃん越しの窓ガラスに映っていた

私の顔は怒っていた。


「そんなんじゃない。」

「そっか。」

「………好きだけど、無理なの。」

言葉にしたら、また涙が出て来た。


そうちゃんは、少し黙って。


「向こうも、すーのこと気になってるんじゃないの?

だから、こないだ来てたんだろ?」

「でも、無理なの。」

口調が強くなる。

「伝えてみないと分からないよ。意外と、大丈夫かもよ?」

「そんな簡単じゃないの!」

怒りと悲しみが溢れて止まらない。

「でも…泣くほど…好きなんだろ?」

優しくそうちゃんが言った。

「そうちゃんみたいな弱虫にはわかんないよ。」

八つ当たりの自覚はあった。

でも、止まらなかった。

「弱虫って。」

「弱虫でしょ?!ママに1回振られてから、当たり障りない感じでいてさ。

自分だって伝えるのはやめてるじゃん!」

そうちゃんは、真っ直ぐ前を見たまま黙った。


私はそうちゃんに背を向けた。


アパートに着くと、

「今日は帰るな。これ、ママに渡しといて。お疲れ様。」

そう言って、お米を渡してそうちゃんは帰って行った。


玄関を開けると、ママが出て来た。

「おかえり〜、あれ?総一会わなかった?

お米持って来てくれるって…」

「もらった。」

お米をママに押し付けた。

「え、総一、帰っちゃったの?」

私の顔を覗き込み。

「総一と、喧嘩した?」

「してない。」

「じゃあ、なんで総一かえっちゃ…」

「しらない!!」

私は自分の部屋に逃げた。



最悪だ。



私は布団に包まり、自己嫌悪の渦の中にいた。


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