第四章 そうちゃんって、弱虫だよね。
当たりが強いのは、
その先輩だけではなく、全員だった。
カコや、他の友達が心配そうに
私を見ている。
標的にならないように
上手くやっていたつもりなのに、なぜ??
部活の時間そればかり考えていた。
先輩達の当たりの強さは、顧問がいない時だけだ。
顧問が来ると、今まで通り。
それが逆に怖い。
先輩達からの嫌がらせは、次の日も、また次の日も続いた。
部活が億劫だった。
でも、カコが変わらず仲良くしてくれた。
それが、救いだった。
ある日、苦痛の部活を終え、体育館から出ると、
「橘高すみれさん。」
振り返ると、ニコッと笑った東堂先輩が立っていた。
隣にいたカコにも、先輩は笑いかけた。
「あ、先輩…こんにちは。」
「こんにちは。ちょっと話がしたくてさ、
一緒に帰っていいかな?」
東堂先輩は私とカコを見ながら言った。
「どーぞどーぞ!!」
カコは私の肩を押した。
「ありがとう」
東堂先輩はカコに笑いかけた。
すると、
「大輝!!!」
声のする方を見ると、先輩達が居た。
「なに?」
東堂先輩が返事をする。
「今から、私らファミレス行くよ!
大輝もいこーよ!!」
「あー…」
私をチラッと見て、
「いや、俺はいい。」
「なんでよー!いこーよ!」
そう言いながら、近寄って来たのは
萌香先輩。
萌香先輩は、
色が白くて、顔が小さく、
猫っ毛の髪と、クリッと丸い目、
まつ毛は爪楊枝が乗りそうなくらい長い。
初めて会ったとき、芸能人以外で
こんなに可愛い人が存在するのかと思った。
「大輝は強制だよ!!来ないとダメ!」
そう言って、萌香先輩は
東堂先輩の腕に自分の腕を絡めた。
それを見た瞬間、
胸がギュッとなる感じがした。
そして、咄嗟に
「いいですよ、私は。気にしないでください。」
「え、でも…」
何かを言いかけた東堂先輩を置いて、私は背を向けて歩き出した。
カコが追って来て、
「すー、大丈夫??」
「なにが?」
「いや、東堂先輩。良かったの?」
「萌香先輩と遊ぶ感じだったじゃん。」
「でも、東堂先輩はすーにはなし…」
「いいの!!…いいの。」
カコは少し黙って。
「………そっか…」
「うん…ごめん。大きい声出ちゃった。
ちょっと1人で帰るね。ごめんね。」
そう言って、私はカコを置いて帰った。
家に帰ると、りっくんとそうちゃんの靴が並んでた。
玄関に居ても聞こえる。
「うぃーーー!!!」
とか
「いぇーーーい!!」
とか。
能天気さん達にげんなりした。
はぁとため息が出た。
リビングの扉を開けると、
能天気さん2人が、振り返って、
ポテチをボリボリ言わせながら
「おかえり。」と。
「食べ終わってから喋って。」
机にカバンを置いて、宿題を出した。
ポテチを飲み込んだそうちゃんが
「今日、ママ残業になったって。夕飯、ファミレスでもいく?」
ファミレス…
この町でファミレスは一つ。
東堂先輩と萌香先輩。
「いやだ。行かない。」
筆箱からシャープペンを出した。
「えー?グラタン食べたいのに。」
りっくんが言う。
「すーの大好きなたらこパスタ食べようよ。」
と、そうちゃん。
「気分じゃない。」
プリントに名前を殴り書く。
「えー…なんか機嫌わっる。
八つ当たりやめてほしい〜」
ゲームをしながら、りっくんが言った。
カチンと来た。
「なに?なんか言った?」
「だーかーらー、
八つ当たりやめてくださーい。」
「八つ当たってないし!」
「それが、八つ当たりですよね〜」
「うざいんだけど!」
「そっちのその態度がうざい。」
「はいはいはいはい、ストーップ。
じゃあ、今日は寿司でも行くか?」
バンッ
「出かけたくないんだってば!!!」
シャープペンが床に転がった。
そうちゃん苦笑い。
りっくんが小さい声で、
「だっる。」と言った。
「そーかー…すー疲れてるんだな。
じゃあ、なんか惣菜買ってくるわ。
りく行くぞ?」
「へーいへーい」
テレビを消して、2人が出ていった。
私は机に肘をついて、頭を抱えた。




