表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
後方兵科が異世界転移!?  作者: お芋さん
92/94

92

 王都に到着した翌日。石田が空を飛んでいる頃、ナスルは王都冒険者組合にいた。組合員は組合の混雑時間を知っている。だから、組合員同士での面談は混雑時間をさけて行うのが慣例で、朝の混雑を避け昼が近い時間帯だった。

 王都冒険者組合は建物が非常に大きく、中に素材・消耗品の販売所や食堂兼酒場スペースがある程だ。だから混雑時間ではないけど、少なくない人たちがいる。しかしその人々の用事は組合のカウンターではなく食堂だった。ナスルは暇をしている受付に向かい職員証を提示しながら話しかけた。


「失礼。マディーナ副組合長との面会をお願いしたルブア冒険者組合のナスルという者です」

「はい。ナスル様ですね。少々お待ちください」


 カウンターで待つこと数分。建物の奥の部屋へ通された。その部屋は中央に大きな机がありそれを挟むように左右にソファが置かれている。目的の人物は右側のソファに腰かけ机に広げられた資料に目を通しているところだった。


「失礼します。お久しぶりです、マディーナさん」

「やぁ、ナスルさん!お久しぶりです。お元気でしたかな?」

「えぇ、おかげさまで」


 ナスルもマディーナもどちらも同じ副組合長という役職にいる。組織内で同格の2人であるが、マディーナの方が立場が上となっている。これは王都冒険者組合は国内の全ての冒険者組合を統括する立場にあるためだった。


「それはよかった。…と、さっそくで申し訳ないですが仕事のお話に移りましょう」

「はい。あ、その前に、武闘大会開催告知の件がどうなりました?」

「その件ですか。えぇ、ではそちらから話を進めましょう。結論から申しますと、許可が出ました。組合の掲示板の方で告知させていただきます」

「ありがとうございます」

「で、この件なんですが…うちの組合長が大変興味を示しまして『もっと大規模に開いたらどうか?』『傭兵などの業種にも声をかけて冒険者の部/傭兵の部とかで実施できないか』と直接会って話したいと…」

「…え?…そ、そうですか」

「戸惑われるのも無理ありません。いえ、私も『この告知を読む限り開催までの時間もないし、今から規模を拡大とか無理だ』と説得したんですけどね…。なかなか話を聞いてもらえず『会わせろ!』の一点張りで…。申し訳ありませんが後程、本日の16時ごろから1時間ほどお時間をいただけますか」


 意外と大事になりそうな予感にたじろぐ。王都冒険者組合長が関わると事が大きくなりすぎるというのはよく知られたことだった。アイディアマンで本当にいろいろな企画を思いつく。しかし、それらを実行に移そうとすると…国内最大規模の王都冒険者組合ですら人手が足りない事になる。いわんや、ルブアをや…。


「は…はい」

「ありがとうございます。安心してください。その時には私も立ち会いますので、無理は言わせないつもりです」


 そしてその組合長をいさめる立場にあるのが目の前のマディーナだった。


「では、今のところこの件は以上です。続いて今回持ち込んでいただいた報告書の方に移りましょう」


~~~


ービョォォォォー…


 石田は円形の落下傘にぶら下がりながら遠くを眺めていた。左を眺めると大きな山が。ここは王都の次の目的地バダナの街近く。ただし、今眺めている山を挟んでいて石田の降下を見て警戒されることの無いように配慮している。

 後ろを振り返ると遠ざかっていくC-130の姿があった。操縦士はもちろんファティ。C-130は輸送機で攻撃手段はない。……いや、唯一MOAB(超巨大爆弾)だけは投下できるか…。今回はちょうどC-130の訓練に便乗させてもらい、その途中で投下してもらった次第だった。


 落下傘降下。地上から眺めていると、ゆっくりと降下しているように感じられる。しかし、降りてみるとそんなことは無い。空挺降下する兵士らの降下時間は最も無防備になる時間でもある。その時間はできるだけ短くしたい。だから、この落下傘にはところどころ穴があけてあり、降下速度が人間の耐えられるギリギリの速度になるよう調整されている。


 当然のことながら降下中に武器を取り出し操作する余裕はない。イシダがプレイしていたゲームでは落下中に武器を取り出し空中から攻撃することができた。が、そもそも空中での落下姿勢を維持するだけで精いっぱいだ。仮に銃でも発砲しようものならその反動で姿勢を崩し、体を釣る糸を絡ませ錐もみしながら落下してしまう。


(ま、見渡す限り山と草原なこの状況じゃ…。落下しながら攻撃する必要なんてないんだけどね)


 非常にありがたい事に落下傘の操作はなぜか体が行ってくれている。行きたい方向に顔を向け移動したいと思えば自然と体が動いた。(と言ってもこの円形の落下傘は安定性が高い代わりに操作性が低くそんなに移動できないが)

 落下中はあまりすることはなく、周囲の景色を楽しんだ。


(あぁ…良い景色だ…)


 そして5点着地。足を地面につくと体を右にひねり膝側面、腰側面、右肩そしてさらに体をひねり後転の要領で体を回して衝撃を逃がす。くるりと一回転し、片膝立ちの姿勢で止まる。驚いたことにパラシュートは跡形もなく消えていた。5点着地の際に転送の能力が発動する感触があったので、おそらく領の方へ転送されたのだろう。


『司令。これから着陸訓練の方へと移行します。再離陸までおよそ2時間を予定』


 昨日協力を申し出てくれたファティと京藤は、訓練飛行のコースを変更。石田を目的の場所に降下させる飛行コースを飛んでくれた。一応名目上は敵のレーダーをかいくぐりながら敵支配地域へと侵入する訓練なのだそう。低高度で地形に隠れながら人の少ない場所を、騒音を出さないよう推力を絞りながら飛行する訓練らしい。さらに訓練としては非常識なのだけれど、本日中にあと2回ほど投下してくれるそうだ。


「了解。輸送感謝する」

『お安い御用じゃ!また次の輸送も任せるのじゃ!オーバー』


 見渡す限り周辺は草原。古井からの連絡もないので周辺に危険な生物などは確認できないのだろう。ここは投下を見られないようにするため、街道からも遠い。まずは街道を目指し、それから街を目指すことにする。

 タブレットを操作し偵察用オートバイを召喚した。OD色に塗装されたKLX250(オフロードバイク)だ。

 ヘルメットを被り、バイクにまたがる。セルを回し発動機を動かし、ヘルメットについているインコム(通信機)を操作した。


「古井へ、進路誘導を頼む」

『コピー』


 これで街道まで古井が案内してくれる。あとは地面を見ながら安全に運転するだけだ。


「よし。じゃ、行きますか」


 スタンドを畳み、クラッチを握る。ギアをローに入れてアクセルを開きながらクラッチをつなぐ。


―パパパパパパパ…


 単気筒エンジンの軽快な音を響かせて走り出した。


~~~


「司令、移動を開始。周囲に危険なし」

「偵察機との通信状況良好。通信環境に問題なし」


 ルブアの銭湯裏手、開けた土地に天幕が設置され、その隣に6輪装甲車が駐車していた。車両の右側に2本の長いアンテナが装備されたそれは82式指揮通信車(CCV:Command and Communication Vehicle)と呼ばれる車両だった。全面を装甲で覆い大型の6輪のタイヤが装備され、さらに車両上部にM2を装備している。さながらLAVのような見た目のため戦闘用途の車両の様に思えるが、この車両は戦闘に不向きだった。車両には大型のアンテナを取り付ける場所が複数あり、通信機材&情報機材が詰め込まれている。つまりこの車両は連絡を取り、情報をやり取りする車両だった。

 そしてその車両の後部ハッチが開き中からケーブルが伸び、天幕入り口へと伸びている。そのケーブルは天幕内のPCへと接続され、八木と伊集院がそれぞれPCを操作しているところだった。


『こちら古井。周囲に危険な対象は存在せず。引き続き監視を継続します』

「了解」


 この世界にはかつての世界のような通信インフラは整っていない。当然電話や光ケーブルは設置されていないから有線通信は無理だ。さらにこの世界には衛星が飛んでいないため衛星通信も無理。そして携帯会社が整備したような、通信中継施設もない。となると…どのようにして遠く離れた場所に通信しようか…。


 無線通信には電磁波を利用する。電磁波の性質はほぼ光の性質と同じ。光は直進し物体に遮られる。つまり遮蔽物や地平線の向こうとは通信できない。この問題を通信会社は高い場所に中継施設を建てることで解決した。東京タワーやスカイツリーなどもそれにあたる。そして最も高い場所に設置された通信設備(?)が通信衛星だ。

 太陽が水平線ギリギリにある場合、山やビルに阻まれて影になる場所が多い。しかし天頂に近い場所から照らしてくれている時は陰になる場所は少ない。要するに明るい場所=通信可能な場所で暗い場所=通信不可能な場所という風に考えればいい。


 さて通信会社は設備を使うことでこの問題を解決したが、それがない石田達はどうするべきか…。


 実は自然界に中継設備…のようなものが存在する。それは大気圏の上層部に存在する『電離層』と呼ばれるものだ。電離層は電磁波の中の特定の周波数帯を反射する性質があり、地上で空に向かって打ち出した電磁波を電離層で反射、そして再び地上に降らせてくれる。さらに面白いことにその周波数帯の電磁波は地表でも反射される。そう地上→電離層→地上→電離層…という具合に反射させることでかなり遠くまで連絡を取ることができるようになる。それが可能な短波を利用することにしたのだった。


 しかしこの短波はラジオやアマチュア無線などで利用される電磁波帯で、石田達の技術ではそこの周波数を使ってデータの送受信するようなことはなかった。そのため、急遽そのためのシステムを構築し対応していた。大出力の送受信装置として指揮通信車の機材を使い、その受信データをPCで分析しているところだった。


「古井へ。こちら伊集院。その周辺ではありませんが…飛行した経路周辺に豚型の獣人?や緑色の小人の作ったと思しき村落が5カ所ほど発見されました」


 豚型の獣人と緑の小人。ファンタジーに詳しい人なら想像できると思う。オークとゴブリンと呼ばれるモンスターだった。しかし伊集院たちは戦略ゲーム系のNPCで当然その設定にファンタジー関係の知識を組み込むような記述はなかった。故に全くの無知だった。

 そんな知識がない彼女らがモンスターではないと思い込んだのには理由があった。それはPC画面に表示される写真には木で作られた非常に質素な建物が並び、複数の個体が行きかっている。それらを詳しく眺めてみると料理をする個体、武器を持ち村の周囲を警戒する個体などがいて知性と社会性が感じられたためだった。


「以前この地図を作成した時にはなかったものです。空を指さしている者もいますので、これは確実に発見されてしまってます。司令が街に入ったのちは、次の飛行経路を一度調査した方が良いかもしれません」

『古井、了解。その獣人や小人の村の写真をこちらに表示できますか?確かこの周辺の調査って確か9か月ぐらい前だったと思うんですけど…。短期間に建築した…ということですよね』

「多機能表示板にデータを送ります」

『…確認しました。凄く原始的な建物ですね』


 彼らの住居はおそらく…最も近いのが竪穴式住居と呼ばれるものだろう。単純な構造のそれらは建築にかかる時間を短縮でき、短期間に集落が出来上がるという出来事に真実味を与えるものだった。


「えぇ。原始的ですが群れを成し建築物を作るということは少なくとも文化的です。近隣の人種の村落と交流があるかもしれません」

『…そこから冒険者組合や行政に情報が周り、警戒情報が出たりすると…近隣の住人の方々に申し訳ないですね…』

『古井、伊集院。話は聞かせてもらった』


 石田が割り込む。この通信は全員に開かれているチャンネルで行われている。当然、内容は石田にも伝わっていた。


『伊集院の懸念はもっともだと思う。古井は都市に入ったのち次の飛行経路沿いに調査を』

『コピー』

『また何かあれば連絡を頼む』

「了解しました」

『了解』

『オーバー』

「やったね。司令が意見を認めてくれたね」

「やっと情報分析担当としてお役に立てた気がします」


 ユニットたちにとって活躍の機会が与えられる事は喜びであった。しかしゲーム時代、石田が戦略ゲームモードをプレイすることはなかったため彼女らは一切活躍の場が与えられていなかった。これまでの活動と言えば、唯一この前の内戦時に多少働いただけ。正直全くの消化不良だった。

 だからこの2人は活躍の場を渇望していた。武官系ユニットの中でも戦闘系ユニットには多くの仕事がある。自身の力で自衛することが出来るため石田領の外でもある程度独立して動くことができるからだった。しかし、八木と伊集院は非戦闘系で戦闘能力は皆無だった。このため活躍の場は少なく、戦闘系ユニットと練度の差が開くばかりだった。


「ふふ。おめでとう」

「ありがとう。…これで少しでも司令が私たちを頼ってくださるようになるといいのだけど…」

「…うん。そうだね。お役に立ててないからか…あまり頼ってもらえないしね」

「せっかくのチャンス。頑張ろう」


~~~~


 石田領の演習場。長距離射撃用のレーンに3人の女性がいた。スカウト姉妹と最近石田領に移ってきたソラヤだった。狙撃担当のレイダが地面に伏せライフルを構えている。その隣で姉のリコネンスが同じように地面に伏せて単眼鏡を覗き込んでいる。そしてソラヤはその2人の後ろで杖を持っている。ソラヤはレイダに筋力増強の魔法をかけている所だった。


 この3人は火力向上のための実験を行っているところだった。方法はいたって簡単。より大口径な銃を使えるようになること。

 レイダ姉妹は体格に恵まれておらず、比較的小柄。そして力が弱かった。火力の高い銃は重たいし、射撃時の反動が大きい。つまり運用するには体力が必要となるし、射撃時の反動を抑えられないと長距離の狙撃ができなくなる。この問題を解決できない2人は必然的に火力の低い銃を扱わざるを得なかった。

 しかし、魔法という力とソラヤの魔道具制作技術がこれを解決する可能性を秘めていた。筋力増大の魔法だ。この魔法が使えればそれら問題を一挙に解決できるのではないかと考え、まずは魔法を使った状態で実験しているところだった。


 今レイダが構えているライフルはバレットM95ライフル。同バレット社が製造するセミオート式のM82を元に、ボルトアクション式に変更し、弾倉をストックに取り付けるブルパップ方式へと変化させた。精度や威力を損なわず小型軽量化したものだった。


―ズドンッ


 M95が火を噴き、重たい銃声が響く。レイダの上体がはねる。銃の先端にはマズルブレーキが付き、バイポットを使用したにもかかわらず…レイダの上体がはねた。


「お、的には当たったよ。2時方向、的の端」

「ッ~~~……イタイ…」

「あ~…やっぱり辛い?」


 レイダは寝たままぐるりと回転し銃から離れる。右肩を押さえていたそうな顔をしている。ソラヤは心配そうにレイダに駆け寄った。


「…大丈夫?」

「…はぁ…。『筋力増強』で持つのも狙いをつけるのも楽になった。でもこの反動は厳しい…」

「反動?普通『筋力増強』の魔法があれば大抵の武器は使えるようになるはずだけど…」


 魔法を使い実験を手伝ってくれているソラヤは困った顔をしている。そもそも剣や弓を扱う世界では筋力さえあれば武器はある程度扱える様になる。だから強力な武器を使いたいと頑張るスカウト姉妹に魔法の使用を提案し、今回実験する事になったのだった。


「あ~…盲点だったね。そっか…筋力は上がっても、反動が小さくなるわけじゃないもんね」

「???反動ってなんです?」

「ん?…えっと…なんて説明したら…」


 ソラヤの学んだ環境では簡単な数学や魔術等は発展していても、科学は大きく発展していない。物理の法則などを知らない彼女にどう説明しようかとリコネンスが考え込む。


 ソラヤは知らなかったが、実は弓にも反動がある。弓道では『残身』と言って射撃後の姿勢を美しいものにするよう心掛ける。実はこの残身には反動で腕を暴れさせないという目的もある。アーチェリーでも同様で、こちらの場合『フォロースルー』と呼ばれる。どちらの競技でも反動を抑えることは命中精度を高めるために大事なことだった。

 ソラヤは弓を扱ったことがないので射撃後の反動について知らないだけだった。


 考え込んだリコネンスに代わり、肩をおさえて蹲っていたレイダが的外れな回答をした。


「素手で壁を殴れば痛い。それは筋力増大の魔法を使っていても変わらない。いやむしろさらに痛くなる。…そういうこと」

「んん?…えっと…?」


 分かるような分からないような…。ソラヤはさらに困惑した。


「レイダ…それは、ライフルの反動が痛い理由にしかなってないよ…。う~ん。これは体験してもらった方が早いか」


 リコネンスは立ち上がりホルスターから拳銃を取り出しソラヤに渡した。そのままソラヤの後ろに回りながら持ち方構え方などを簡単にレクチャー。練習場の最も距離の短い的に対して発砲させた。


「ね。これが反動。そしてこれは小さいからこれ位で済んでるけど…あっちはあんなにも大きいからね。もう痛いぐらいなの」

「なるほど…。これが反動…。短い時間にぐっとかかってくる感じ…。!なるほどパンチに例えたのはこういうこと?」

「え…いや、そういう意図があったとは思えないんだけど…」


 リコネンスがレイダの方を見るとドヤ顔していた。リコネンスは少しイラっとする。しかし、レイダの指摘はソラヤに面白いひらめきを与えた。


「殴られたような衝撃を受け止めなくてはいけない…ということでしたら、防御力向上の魔法も追加で追加してみましょう」

「へ?」


 ソラヤが提案した筋力増強と防御力向上の魔法を重ねてかけてから実験した。


―ドン…


「痛くはない」

「でも…はずれ。的にすら当たってないわ」

「…これでもダメ?」


 リコネンスはこの射撃は的を見ずに、レイダを見ていた。そしてあることに気づいた。レイダの上体がはねたのだった。そしてその出来事について不思議に思った。

 レイダは銃のストックは右肩に当てている。筋力が不十分ならば、反動で後退する銃に押されて右肩が押し込まれ、上体はねじれるはずだ。しかしレイダの上体は左右にねじれることもなくまっすぐと跳ねた。ならば筋力は十分?…じゃあ、これが意味するところは…


「体重が足りないのね」

「「?」」


 弓道でもアーチェリーでも残身をきれいにするには筋力を付けることが一番の解決策だ。でも、邪道な方法もある。それが体重を付けること。体を重たくすれば反動による揺れも小さくなるからだった。

 体重ということで考えるとスカウト姉妹は軽かった。スカウト姉妹に限らずNPCキャラは基本的に美女・美少女だ。そしてその中でもスカウト姉妹は高校生ぐらいに見えて小柄だ。必然体重は軽い。反動を抑えるには不向きな体格だった。


 仮想的に体重を増やすために、リコネンスは砂袋を詰め込んだ訓練用リュックサックをレイダに渡す。


「これを背負ってからもう一度撃って」


 レイダは背嚢を背負い再び発射する。今度は体の跳ねが小さくなった。


「当たった…!」

「…なるほど…確かに体の跳ね上りが小さくなった」


 今回は銃の反動がレイダの上半身を持ち上げるほどの力だった。たとえどんな力持ちでも自分を持ち上げる力に対抗する事はできない。純粋に持ち上げる力に対抗するには体重を増やすことしかない。


「…でも私太りたくない…」

「だよね。訓練あるのみ…っていっても、筋力上げてこれじゃあ…意味なさそうよね」

「お役に立てず申し訳ないです」


 ソラヤは申し訳なさそうな顔をした。

 彼女が石田領に所属して初めての仕事だった。このスカウト姉妹には


「いや気にしないで。ソラヤ先生が提案してくれたおかげで私たちはこれ(M95)を使えるかもってなったわけだから」

「そう。道具を使えないのは私たちの落ち度」


 ゲーム時代、スカウト姉妹は練度を上げると索敵能力や隠密技能は大きく向上した。しかし火力はあまり上がらなかった。これはもちろん装備できる武器が低火力、短射程な物に限定されていたからだった。大火力な物が装備できない原因は、もちろん2人の体格によるものだった。しかし今回ソラヤとの出会いによって、火力向上の可能性が見えてきたのだった。


「ですが…」

「ちょっと待って。まだ私たちは諦めてないから」

「リコと私じゃ良い解決策が出なかった。でも他の人なら違うかも」

「そう。レイダの言う通り。例えば科学に明るい材津さんや浦風さんに聞けば何かアイディア貰えるかもしれない」

「あるいは他の魔法を知る人物。…ファティちゃん?」

「ファティさん?…彼女は高名な魔術師だったりするのですか?」


 ソラヤが領に移ってきたその日に歓迎会が開かれた。その時に全員と顔合わせが行われた。その時ファティは翼や尻尾を出したドラゴニュートの姿ではなく、人間の姿をしていた。これは航空機の操縦席が人間の姿でないと座れないようになっているため、最近は完全な人型の姿でいる様に努力しているからだった。

 そういう理由があってソラヤはファティの事を普通の人間だと思い込んでいた。


「ファティちゃんは魔術師じゃない。ドラゴン」

「…へ?えっと、確か先ほど飛び立っていった大きなヒコーキ?のパイロットよね?…それに前に紹介してもらったときは…人間だったけど?」

「彼女の変身は見事だから一見そうとはわからないけど、ファティちゃんは本当にドラゴンだよ。…っと話がそれてる。ファティちゃんに話を聞くのは…今は領外飛行訓練中だし無理そうよね。だから、まずはラボの方へ行って研究員の2人に聞いてみましょう」

「…分かった」

「分かりました」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ