表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
後方兵科が異世界転移!?  作者: お芋さん
87/94

87

前回の投稿で、ナンバリングを間違えており訂正しました。

申し訳ありません。

(京藤視点)


 やぁ。どうも。ボクは今、領の飛行場の管制塔から空を眺めている。空では1基のレシプロ機が様々な空中機動を終えて、今まさに着陸しようとアプローチをかけている所だった。


―ブロロロ…キュッ…


 飛行場に着陸する。赤と白に塗装されたそのレシプロ機は縦列複座型のコクピットで、T-3と呼ばれる練習機だ。今操縦席にはファティが座り、その後席には(古井)マホロが座っている。無線の内容からは古井が操縦桿を奪ったという話もなかったから、ファティが操縦して着陸させた。着陸速度、角度共に正常、機体のセンターは滑走路の中央線から少しずれているが、許容できる範囲に収まっている。

 滑走路で徐々に速度を落とした飛行機はそのまま誘導路へと移動、キャノピーが開きパイロット2人が見えた。後席に座る古井が両腕を大きくあげて、頭上で大きな丸を作る。


 良かった。ファティは初等練習を修了したようだ。


~~~


「えっ?…ファティは大型機への適正が高いって?」


 初等訓練を終えた後、ボクはファティとマホロを連れて司令官の元を訪れていた。彼は執務室で書類仕事をしていた。

 ファティをパイロットとして育成するにあたり司令官がボク達に依頼したのは小型機、それも戦闘機のパイロットに育成してほしいという話だった。でも…


「そう。むしろ正しくは…ファティの適正は小型機に向いていないみたいなんだ」

「へ…?どういう事?」

「訓練を始めた当初、ファティは体にかかるGに戸惑い、乗り物酔いをしていたんだ。トラックで地上を走る分には問題のなかった彼女だけど、航空機の3次元的な機動には驚いてしまったみたい。でも訓練を重ねるにつれて、乗り物酔いはしなくなっていったよ」

「そっか。それはファティ、頑張ったね」

「ふっふっふ。吾輩にかかれば造作もない!」


 ファティは簡単だと誇って見せた。でもそんなはずはなかった。だって、何度も吐いて苦しい思いをしていた。それでも諦めず、逃げ出さず、何度も挑戦し続けた。彼女のそのひたむきな姿勢は何があってもパイロットになって見せるという強い決意を感じさせた。


 そしてパイロットを目指す者の夢、それはやっぱり戦闘機だと思う。空を飛び、空を制する…。それはパイロットの頂点と言って差し支えないことだと思う。だから、正直その適正が低いということは…当人を前にちょっと伝えずらい。


「飛行は問題なく行えるようになったんだけど…えっと…」


 ボクが言い淀んでいるとマホロが言葉をつづけた。


「彼女は機体に急な機動をかけることが苦手なようです。小型、高速な機体で空中戦闘機動をせねばならない機体へは…適正が低いと判断しました」

「………そっか。それで大型機?」

「もちろん適正が低いという理由だけではありません。ファティさんは水平感覚をつかむことが上手ですし、安定して飛行させる能力に優れています」

「うむ。地中に潜った時の感覚が役に立ったのじゃ。地中では目を開けられず、周囲がわからぬ中で重力の感覚と潜った時の方向感覚を頼りに進まねばならんのでのぅ。その時の感覚が意外と役に立ったんじゃ。じゃが…恥ずかしい話じゃが、天地がひっくり返ったりすると…どうにも難しいものがあったのじゃ」


 そう、彼女がアースドラゴンで地中を移動することができる。そのときにまさか上下さかさまで移動することはないだろうし…ましてロール運動をするとも思えなかった。だから、そういった機動に慣れないのだと思う。


「あ…あー。なるほど。そっか…」


 司令も今の説明を聞いて納得した様子だった。司令官は少し考えた後ファティに尋ねた。


「ファティは…その…大型機でもいいか?」


 司令もやはり、パイロットと言えば戦闘機をイメージしていたみたいだった。だから、その戦闘機を諦めさせるという事には引け目があるようだった。


「かまわないのじゃ」


 …あれ?ファティは特に何も気にした様子がなかった。


「大型機。教本でも呼んだが、大きな機体なのじゃろう?」

「あ、あぁ。そうだ」


 司令官も予想した反応との違いに戸惑っているようだった。戸惑っているボク達とは違い、ファティはむしろ若干うれしそうな顔になっていった。


「うむ。機体が大きいということは…つまりそれに応じて翼も大きく立派なのじゃろう?」

「…そうだね。機体が大きくなる分、翼も大きくなるね。…立派かどうかは個人の感想に依るけど」


 あ、わかった。司令官はまだ戸惑っているけど…これはドラゴン特有の価値観に依るモノみたいだ。この前ファティが言っていた、『ドラゴンの間では翼の大きさや美しさが異性にアピールできるポイント』という話があった。

 なるほど…ということはどちらかというと…翼は大きな方が彼女的には魅力的な機体に見えているのだろう。確かに格好いい機体を操縦したいというのはパイロットにおける普遍的な欲求かもしれないし、そう考えると納得できた。


「うむ。であれば吾輩はむしろ歓迎なのじゃ!」


 ファティは目を輝かせていた。司令はその様子を見て決めた様だった。


「分かった。じゃあ、京藤さん。計画を変更してもらって、ファティは大型機のパイロットとして育成する方向でお願いします」

「はい」

「やった!」


 ファティがガッツポーズをとって喜んだ。ボク達の考えているパイロット像と、彼女の思い描くそれは大きく違うみたいだ。その様子を見ながらふと、彼女の理想の飛行機ってなんだろう?と思った。


「ねえ、ファティ。君の理想の飛ぶ姿って?」

「うん?…そうじゃのぉ…小鳥の様にちょろちょろと飛び回るより、大鷲の様に優雅にゆっくり飛び回る方が理想じゃ」

「なるほどね」


 やっぱり。むしろ大型機でゆったりと飛ぶのが理想みたいだ。


「あと、飛ぶ姿を見てバカにされるのは嫌じゃ。むしろ地上のモノたちが震え上がるようであればなおの事いいのぅ…」


 黒い顔で笑うファティ。…もしかしてファティ、空を飛ぼうとしてた頃、バカにさたことを根に持っているのかな。或いは空を飛ぶ存在に怖い思いさせられた経験が?…彼女の闇を覗いた気がした。


 まぁ、それはともあれ…ゆっくりと飛び、地上の標的に恐怖される飛行機か…。



 …爆撃機かな?


~~~~~~~~~~


(リコネンス視点)


 森の中で最も怖いことはなんでしょうか?熊に出会うこと?土砂崩れに遭遇すること?…あ、あれ?…それも怖いですね。えっと、そういうことが言いたいのではなくてですね…ええと、そういった…めったに起こらない事ではなく、もっとよく起こりえる恐ろしい状況があるんです。


 それは現在地を見失うことです。見知らぬ土地で右も左もわからない…それはとても怖いことなのです。


 つい数日前に領ではミスリルの研究がスタートしたのですが…個人的にはGPSを利用できるようにしてほしいなぁ~…と思ってしまうのは仕方ないことなのでしょう。

 司令は王都で傭兵団の治療をしたり、ルブアで演習の準備をしたりと忙しそうにされてますので、多分この件については考えが至っていないのだと思います。今度折を見て陳情してみようと思います。


 さて今、ユニットの皆はそれぞれ仕事をこなしています。京藤教官は古井さんと共にファティさんの飛行訓練。湯川ちゃんと瑞山さんはルブア軍の演習について詳細を詰めてます。間宮さんと伊良湖さんは物資の補給、伊集院さんと八木さんは領の通信設備の更新…本当にみんないろいろと動き回っています。

 では私たちはどうなのか…。はい。現在王都で冒険者の依頼を受け、森にやってきています。本日のターゲットは『カフラバーイ』と呼ばれるモンスターです。鹿型の魔獣で、雷魔法を扱うという話です。基本的におとなしく怖がりなため、森の奥に生息し人を見つけると逃げ出すそうです。ただ、オスの成体には角があり、時折襲ってくることもあるので油断は禁物な相手だそうです。


「リコ。場所わかった?」

「ちょ、ちょっと待って…」


 魔獣などが闊歩する森の中。妹のレイダと2人。迷子になっています。周囲には獣道などもなく、遠くからは知らない鳥の鳴き声が不気味に響いてきています。泣きたいです。

 私は手元の地図に目を落としながら必死に考えます。えっとここから森に入って、方位磁針を見ながら北西に30分歩き、その後南西に15分歩いたから…。ええと、あれ?おかしい5分前には小川が見えているはずなのに…そんなもの見当たらなかった…。


「ごめん。やっぱりわからない…」


 えぇ。GPSが使えない今、私たちは自力で現在地と地図を照らし合わせながら目的地に向かって歩かなくてはなりません。偵察機が空を飛んでいてくれれば、彼らの情報から自分たちの位置もわかるのですが…本日は飛んでおりません。土地勘がなく、木々によって視界が遮られる当地は練度の低い私に厳しい現実を突きつけます。

 地図を片手に焦る私に対して、妹は落ち着いたものです。というのも『場所を見失った』。これに対する絶対的な解決策が私たちにはあるからです。


「…ん。C4自爆する?」

「いや、しない。しないからっ!」


 C4自爆はいわゆるあれです。私たちに張られたフィールドを破壊して、リスポーンすることで石田領に帰ろうという計画です。問題の解決には役立ちますが…『自爆』はとても怖いです。それにC4もタダでは無いのです。装備を失う上に、『任務』もこなせず…。頑張っている他のユニットの皆に申し訳ないです。

 私たちの『任務』は、「情報の収集」と「現地通貨の確保」です。これを両方こなせるということで「冒険者の仕事」をしています。ちなみにそれについて司令官は「ハンターの真似事をさせてしまい申し訳ない」とおっしゃっていましたが、私たちはむしろいい訓練だと考えています。モンスターハントは実地の狙撃訓練だと言えますし、山歩きは潜入訓練だと言えます。ただ…その…GPSなしでの山歩きが私たちには少し難易度が高かったというお話だったりします…。


「せめて周囲の地形さえわかれば…」

「リコ。だったら山を登ろう」

「へ?」

「登って視界の開けた場所があれば周囲の地形を確認できる」

「あっ…確かに。そうね」


 私たちの手元には、古井さんが作った正確な地図があります。高いところから見渡せばおおよその位置位つかめるはずです。


 レイダの提案に従って私たちは山を登りました。かなり高く登ってもうっそうと茂る木々はあまり変わらず。開けた場所を探しながら山を延々と登る事になりました。そして、ようやく目的の視界の開けた場所を見つけます。


「あれ?誰かいる。…レイダ、あの人って…」

「うん。…確か王都で最初の依頼の時に、いろいろとモンスターについて教えてくれた人…」


 そう。確か名前は…ソラヤといったかな?王都の学園で教鞭をふるいながら研究をしている学者さんだとか。あの日彼女にいろいろと教わったおかげで領のモンスターデータベースがかなり更新されました。彼女が何を研究しているかは知らないけど…モンスターの生態調査なんかをよく行っているって話でした。とすると、今日も何かのモンスターを追いかけているのかな?


 ふと、隣を向くと、レイダがハンドサインをしていた。『静かに』『接近』『私』『先』『貴方』『ついてくる』。なるほど。彼女には悪いけど、気配を消して接近する練習をさせてもらうってわけね…。


 レイダの指示に従って気配を消しつつ背後から接近します。


―ふぅ…。


 深呼吸して心を戦闘モードへ切り替える。


 近づいていくにつれて、なぜこの場所の視界が開けているのか分かった。どうやら崖になっているようで、それで遠くの視界が開けている。ソラヤは崖のギリギリの場所に立っている。


 あれ?この辺かなり木々が生い茂っているし…遠くを眺めても葉っぱに遮られて地上を行動する生物は確認できないはず?…鳥型のモンスターでも探しているのかな?


 余計なことを考えながらも、音を立てないよう細心の注意を払いながらゆっくりと近づく。


 んん?なんか彼女の装備は…場違いだ。モンスターが居る森に入るなら、最低限自衛用の装備を整えて入るべきだ。でも彼女は着の身着のままというか…武装どころかカバンなども持っていない。それに山登りには適さないローブを着ている。彼女のローブはひらひらとはためき山登りに適さない。

 ちょっと話はズレるけど、私たちが着るギリースーツは布を破り繊維をバラバラにしたりしてふわっとした輪郭を作る。動物の毛のようなふわふわとした輪郭は周囲との境界をあいまいにする効果があるから。でもこれだけじゃ足りない。だからそうして作ったふわふわした生地に現地で本物の植物を括り付けて周囲の環境に溶け込めるようにする。

 さて彼女のローブの裾は所々ほつれているし、木の枝や葉っぱがついている。部分的にギリースーツ。でも…自信をもって言えるけど、あれ絶対に彼女はギリースーツを作ろうとはしてないはず。


 嫌な予想が頭をよぎる。前を歩くレイダも同じことに思い至ったようで、学者さんに気づかれないギリギリの範囲で接近するペースを上げる。遅れずに私も続く。


 近づくにつれて気づいた、彼女は震えていた。彼女は意を決したように頷くと、少し前かがみになり崖の高さを確かめる。そして素早く元の態勢に戻り全身を大きく震わせる。


 マズイまずいマズイ…!急げ急げ急げ!


 震える彼女が何回も大きく深呼吸して、5回ほど頷いた頃…


―ガシっ!(×2)

「きゃっ?!」

「「早まっちゃダメ!!」」


 レイダと2人で彼女をつかみ、崖とは逆に思いっきり引っ張った。


~~~


 しばらくの間泣きじゃくる彼女をなだめるのに時間がかかりました。私たちの読んだ通り、彼女は崖から飛ぶ予定だったそうです。もちろん飛行魔法の練習とかそういう話ではなく、重力に身を任せるつもりだったみたい。


 詳しく話を聞くと、この度、王は研究開発の方針を転換。それに伴い王国が出資する研究室の整理が始まった。そしてソラヤは研究資金を打ち切られ研究室は解散、学園教師の仕事も解雇となったみたい。「明日にも荷物をまとめて学園を去れ」と取り付く島もなかった。職と同時に生きがいを失ったソラヤさんは、失意のままふらふらと歩き続けて、気が付くとこちらにたどり着いていたそうです。


 本当に可哀そうなお話です。…ですが、内心でガッツポーズをとる私が居ました。『任務』の「情報収集」ですが、内容は本当に多岐にわたります。その中には「魔法技術」という項目もあります。えぇ。彼女は王国の学園で研究していた本物の研究者さんです。王国が次の職もあてがわずに、放り出してしまったのなら…私たちが拾ってしまっても問題ないですね。


 彼女が落ち着くのを待って、私たちは切り出しました。魔法研究者を探している人が居るからあってみないか?と。ふふっ。彼女の表情は面白いほどに変化しました。悲しそうな表情をされていたのが、ポカーンと呆けた顔に、そして一気にうれしそうな顔になりました。どうやらソラヤさんの方はOKなようです。


 無線機を使って領に連絡を取り、面会のアポを取りました。翌日にでもと思ったのですが、魔法技術に精通するソラヤさんはVIPとして認定されたようです。おかげで色々と手厚い対応をしていただけることになりました。古井さんによる、航空偵察により私たちの場所を探し、付近のLZ(ランディング・ゾーン:ヘリの着地点)を選定、そして間宮さんがヘリで迎えに来てくれることになりました。正直かなり山を登ったので帰りが楽になるということでとてもうれしいです。


 あとは、冒険者の依頼のカフラバーイの討伐もこなせれば文句ないんですけどね。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ