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後方兵科が異世界転移!?  作者: お芋さん
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ごめんなさい。間違えて79話を先に投稿してしまってました(汗)。

感想にてご指摘いただいて気づきました。

 戦場から遠く離れた宿営地でさえ揺らす程の轟音。爆発によって巻き上げられた砂煙が晴れると、そこには大きくえぐれた地面だけが広がっていた。

 驚異的な破壊をもたらした光源は、空を飛ぶ2体のドラゴンだった。


 石田達はその様子を司令天幕の電子スクリーンで眺めていた。


「はぁ。奴ら相変わらずじゃのぉ…」(ファティ)

「司令。やっぱり危険だ。司令だけでも領の方へ退避してもらえないかい?」(京藤)

「いや、それは督戦隊に見張られているから無理だ」(石田)


 石田達はドラゴンの接近を約30分前には察知していた。そのため高価な機材等、引き上げられるものはすべて石田の領の方へ移しておいたのだった。ちなみにグローバルホークは飛行速度が遅くドラゴンの攻撃を受けると撃墜される恐れがあり、退避してある。現在の偵察映像は古井の操縦するパントムからの偵察映像だった。


 ブレスを放った例の2体のドラゴンが、双方の陣営から見える低空へと降りてくる。トカゲの様に細身の体、背中には3対6枚の翼が生えている。2体は色違いで、それぞれ白色と赤色の鱗だ。体長はおそらく7~8m程度であまり(ファティと比べると)大きくない。

 2体は低空でホバリングし、それぞれが両陣営に向く。3対ある羽の一番上、その1対を威嚇するかのように大きく開く。そして体を斜めにし胸を張る。…なんというか、空中で歌舞伎の『見得を切った』ようなポーズだ。

 そして2体は人間の言葉で語りかけた。


『もうやめろーッ!』

『こんなことをしていったい何になるんだ!』

『争いは何も生み出さない!話し合えばわかり合えるんだ!』

『双方の代表者は歩みでるんだ!でなければ両陣営ともに俺たちが焼き殺す!』


 問答無用で多数の兵士を殺害し、話し合いを呼び掛けながら、受け入れられなければ殺害すると脅しかける。


「…暴力主義なのか、それとも非暴力主義なのか…よくわからん…」(石田)

「…少なくとも穏健派ではないのは確かだろうね…」(京藤)

「まぁ、正義を傘に暴れたり、暴力で人を従わせることに快感を見出す連中じゃろう。深く考えておらんだろうよ」(ファティ)


 困惑した顔の石田と京藤とは違い、ファティは呆れた顔で話す。


 石田は先ほどこの2匹のドラゴンの接近が報告された時のことを思い出した。


~~~


 石田は司令天幕で作業をしていた。戦況の監視、負傷者の治療状況の把握などだ。それらは基本的に担当する者の上げてくるデータに目を通すだけで、特に忙しく仕事しているわけではなかった。

 ちなみに治療活動には田淵・ナイチンゲール・湯川・間宮・瑞山が、UAV関連の作業に古井・ファティ・八木・伊集院が、そして魔力検出作業に材津と浦風が当たっている。


(本当になんというか…みんないい仕事するから、特にこれといった仕事がないわー…)


 ちなみに京藤・伊良湖・スカウト姉妹が司令天幕で待機している。


 タブレットへ流れてくる情報を流し見していると、ファティが小走りでやってきた。イシダの前に来ると敬礼する。


「イシダ司令。報告があるのじゃ」


 ファティを仲間として受け入れてから、いろいろと訓練を積んできた。彼女の希望しているパイロット訓練こそ実施していないが、集団行動や石田達が使う兵器の基礎知識などを学習して来た。おかげでファティは現代兵器についてもある程度理解がある状態になっている。


(ん?書面での報告ではなく、直接報告する程の事がおこったのか?)


「…分かった。聞こう」


 作業を止めファティに向き直る。事の大きさを察知して、待機しているほかのユニットたちも真剣な顔でこちらに顔を向けた。


「電子スクリーンを使用してもよいかのぅ?」

「どうぞ」


 ファティの教育には京藤が当たった。どうやらその教育にはこういった情報機器の使用方法も含まれていたようだ。

 ファティがタブレットを操作して、画像を表示させた。偵察機からの映像を切り取った物なのだろう。上空から眺めるような見下ろすような構図だ。


「つい先ほど、偵察中に遠方から接近する2匹のドラゴンを確認したのじゃ」

「…ドラゴン?」


 表示されが画面内のあるところを指さす。そこには赤と白の小さな何かが写っていた。ファティは画面を操作して、その小さな2つの物体を拡大する。画素が見えてカクカクした表示になるほどに拡大されると、確かに2匹のドラゴンのような姿が見えた。片方は白、もう片方は赤の色をしたドラゴンで、なぜか翼のようなものが6枚付いているように見える。


「飛行しているということは…ファティとは異なる種類のドラゴン?」

「そうじゃ。画像は荒いんじゃが、6枚の翼をもつ形状から『アルティメットドラゴン』と呼ばれる種族じゃと思われる」

「「「アルティメットドラゴン?!」」」


 思わず、全員の声が揃う。『アルティメットドラゴン:究極竜』である。聞くからにやばいモンスターだ。全員に緊張が走る。


「うむ。こ奴らは名前から勘違いされがちじゃが…ドラゴンの中で最強という訳ではない」

「あっ。そうか、それは…良かった、のか?」


 少し緊張が緩む。


「アルティメットドラゴン。こ奴らは、高い飛行能力を持ち、長距離からの攻撃を得意としておる。距離を保ちながら一方的な攻撃が奴らの戦法じゃな。防御力が若干低めじゃが、それでもドラゴンなりの防御力を有しておる。故に奇襲であれ、そこいらの魔物や人間の攻撃などでは致命打を与えられんのじゃ。戦闘になれば一方的に叩かれ、奇襲も無理。おかげでアルティメット(究極)の名を冠しておるらしい」

「……それでも、正直かなり厄介そうだな。何か弱点は?」

「そうじゃのぅ…まず奴らは視力がとても良く、遠くから小さな対象にも正確な攻撃ができる。が、夜目はそこまで良くない事。後は…そうじゃな、魔力の最大量が少ないことぐらかのぅ…」

「魔力最大量が少ない?」

「うむ。魔力の保有量は基本的に体の大きさに依るんじゃ。同じ種族でも体が大きい方が魔力の保有量は多い傾向にある。アルティメットドラゴンはドラゴン種の中では小柄かつ細身じゃ。最大魔力保有量が少ないと聞く」

「…う~ん…最大魔力保有量が少ないかぁ…」


(魔力の保有量が少ないということから考えられる作戦となると…)


「魔力を消費させて、魔力の枯渇を狙うってこと?」

「そうじゃな。そうなるかのぅ。…あ、ただ、注意すべき事があるのじゃ」


 ファティは周囲のモノにぶつけないようゆっくりと自分の翼を見せつけるように開く。


「ドラゴンの間では翼の大きさや美しさが異性にアピールできるポイントなのじゃが…実はこれ、魔力の回復量が翼で決まるからなのじゃ」


 ファティは人型になっていて翼もそれに応じて小さくなっている。しかし本来の姿は全長20mにもなる大型のドラゴンで、さらに翼も4枚ある。体長相応に翼の1枚当たりの面積も大きく、そしてごつごつとした重厚感ある見た目がかっこいい。

 どこかファティは誇らしげな顔だ。


 ファティはシレっと解説に混ぜて『ドラゴンの翼は異性へのアピールポイント』だと伝えた。そして自分のそれを見せつけているわけである。

 この意図を京藤達は読み取ったが…当のアピールを受けた石田の頭は接近中の脅威への対応でいっぱいだった。


「じゃあ、こいつら体は小さいけど、翼が6枚あるってことは…魔力が枯渇した状態から素早く回復してしまうってことか!?」


 とても真剣な顔で返した石田を見てファティは伝わらなかった事を知った。ファティの表情が少し沈む。ちなみにその様を見ていたスカウト姉妹はくつくつと笑いを押し殺し、伊良湖は呆れている。


「う…うむ。魔力回復能力は抜群じゃ」

「???」


 ファティが残念そうな顔をして翼を元に戻す。周囲の反応が思ったものと違ったため石田は少し困惑する。

 石田の様子を見てため息を吐いてから、京藤が発言した。


「つまり魔力枯渇は起こるから、その間アルティメットドラゴンは火力が低下する。しかし魔力の回復速度も高いためそ火力が低下している時間は短い。魔力を枯渇させた後は時間的余裕を与えず攻撃する必要があるって話だね」

「うむ。そうじゃのぅ。そういう対応が望ましいのぅ…」


 この話を聞いて石田はあるゲームを思い出していた。


(『装甲化中心』に登場するロボットでそんな機体構成もあったなぁ。小型軽量な機体にエネルギー(EN)回復力重視の発動機。実弾系の武器と相性がいい構成だけど、長射程高火力EN武器を持たせて一撃離脱戦法ってのが流行った事もあったなぁ…。軽量な機体構成だから攻撃を受けた時の姿勢制御に難があって、衝撃で足を止めつつ弱点を叩くんだったなぁ)


(ん?いや待てよ?ドラゴンの翼が魔力回復能力に関わるなら、そこが損傷を受けるとどうなる?)


「ファティ。ひょっとして翼が傷ついたり、欠損したドラゴンは魔力の回復が遅い?」

「うむ。そうじゃな。そしてドラゴンの中で最も傷つけ易い部分が翼でもある。ただし奴らもバカではない。そこへの攻撃は常に警戒しておるので最も狙いにくい場所じゃな。じゃがドラゴンの中にも吾輩達のような例外もいるがのぅ」


 ファティはアースドラゴンという種族だ。重厚な翼で飛行能力を持たない代わり、攻撃や防御に使用できるほど頑強だ。


「…ファティって何気に最強なドラゴンじゃない?」

「そんなことはないのぅ。防御能力に関しては自信はあるんじゃが、いかんせん目が良くない。離れられると攻撃を当てられんようになるからの」

「あぁ。そっか。…ん?そうなん?眼鏡かけた方が良いんじゃない?」

「ん?メガネとな?なんじゃそれは?」

「…あー、知らないのか」


(いや、今までは視力検査ができなかったから無理だったのか。というかこんな話している状況じゃないな)


「その件はまた後程。それよりも例の2匹のアルティメットドラゴンだ」

「そうじゃな。…で、そう、奴らというか…この2匹じゃが、実は心当たりがあってのぅ…」

「え?…もしかして知り合い?」

「うむ………」


~~~~~


 石田達が話をしている間に動きがあった。双方の陣地から使者が戦場へと向かった。


「お、話し合いに応じるんだ。よかった、これならドラゴンを刺激することもないだろう」(石田)

「ふむ。まぁ、賢明な判断じゃな」

「ファティ。その、アルティメットドラゴンってみんなあんな感じなのかい?」(京藤)

「いいや。種族全体としては、温厚で賢い種族じゃと聞く。吾輩が実際に話をしたことがあるのはあの2匹故、それが本当かはわからんがのぅ」

「ふ~ん?そういえば、ファティは彼らに挨拶にはいかないの?」(京藤)

「いや、遠慮しておくのじゃ。吾輩正直苦手でのぅ」

「あ、それなんかわかる」(京藤)

「ん?…なんで?」(石田)

「『争いごとを無くす』とは立派な志だとは思うのじゃ。しかしドラゴンだって食事のために他の生物と争うし、縄張りを荒らす他のドラゴン種がおればドラゴン同士でも争う。それは自然なことであり…当事者らの当然の権利じゃろうと思う」


 自然の…というより野生の摂理に従って生きてきたファティらしい意見だった。


「なるほどね。…とすると彼らは権利を奪っている?」

「うむ。そしてそんなことすれば当事者らにわだかまりが残る。戦闘を終了させることは出来ても、火種は燻ったままじゃ。いずれ次の争いが始まるじゃろう。…とまぁ、もっともらしい理由を述べたが、実はそれは建前じゃ。彼らはなぜか『人間』の争い事にしか介入せんのじゃ。何故そういうことをしておるのかは不明じゃが…自分より弱い相手に単に力を見せびらかしたいだけに感じられるというのが大きいのぅ」

「……なるほどな」


 石田達は電子スクリーンで事の成り行きを見守った。


~~~~~~~~~


 この後双方の軍が撤収する取り決めがなされ、内戦が終了した。取り決めの内容は以下の通り。


・マハール領は、王とアルジャジードに割譲される。戦場となった丘を境にアルジャジード領側がアルジャジード領へ、王都側が王へと所有権が移る。

・双方は賠償金の請求権を放棄すること。

・戦場となった丘を境にその前後3kmは非武装地帯にすること。


 たったこれだけだった。しかもこの取り決めは例のドラゴン2匹が押し付けたものだった。

 王にしてみれば今回得たマハール領の領地は貴族に分け与えるには狭く、とても納得できるものではなかった。アルジャジード側にも不満があるようだった。

 しかしそんなことはお構いなしに、例の2匹のドラゴンは取り決めがなされると早々に立ち去った。ファティが指摘した通り、今後について大きな火種が残った。


 そして石田達も大量に消費した医薬品が経費を膨らませ、収入は赤字になったのだった。

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