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やってしまった…。ごめんなさい。
70話を投稿せずに69話の次に71話を投稿していました。
70話を投稿しました。本当にごめんなさい。
石田達も傷病者の治療に当たることになった。石田達は治療施設の天幕を出る。
「じゃあ、イシダ殿。これから会議があるので私はこれで失礼するよ」
「あ、はい。ありがとうございました」
案内を終えたジボンが立ち去った。
石田は今一度周囲を見渡す。天幕の出入り口を中心に多くの傷病者が横たわっている。
(さて…。どうしよう。前回、ルブア軍の治療時はこんなに傷病者の数は多くなかった。だが、今回のこの戦場では傷病者の数があまりにも多い。この人数ではさばけるのか…?)
石田が他のユニットたちを見ると、彼女らは指示を待っていた。
「ナイチンゲール。君ならこの状況どうする?」
指揮官に求められるのは、適切な判断を下すこと。石田が考えた計画…というのは門外漢がいい加減な対応をするに等しい。この状況であれば石田より適切な判断を下せるのはナイチンゲールだ。
「トリアージを行い、カテゴリーⅢとカテゴリーⅡの人達は移動させます。カテゴリーⅠとカテゴリー0の方々をここに残して集中的な治療を行います」
トリアージにおけるカテゴリーは次のような内容に分かれる。
・カテゴリーⅢ……今すぐの処置・搬送の必要のない者。
・カテゴリーⅡ……今すぐ命に関わる重篤な状態ではないが、早期に処置をすべき者。
・カテゴリーⅠ……生命にかかわる重篤な状態で、一刻も早い処置をすべき者。
・カテゴリー 0……死亡または、救命が不可能な者。
「トリアージを行う人員、カテゴリーⅡの人たちを運ぶ人員、負傷者らの誘導など…。医療に知識がなくてもいいので人員が必要です」
カテゴリーⅡの分類に当たるのは自力歩行が不可能であることも1つの条件だ。つまり、カテゴリーⅡの人たちは歩けない。治療場所まで誰かが運ぶ必要がある。
「クルスーム派遣隊に増援を依頼しよう。カテゴリーⅡとⅢの人たちはどうする?」
「はい。治療バックを設置してその側で回復してもらおうと考えています」
治療バック。FPSモードでHP回復に使用した道具だ。回復速度が遅いかわりバックの側にいると回復してくれ、複数人を一度に治療できる。どうしてそんな働きをしてくれるのか…ゲーム時代は説明できなかったが、今ならわかる。どうやら治療バックを起点に妖精が仕事をしてくれているらしかった。…なぜ妖精がそういう治療を行えているのかは依然不明だが…。とりあえず、治療バックを中心にそのそばにいると体力が回復する。
「分かった。それでいこう」
「はい!」
「増援を依頼する。増援の到着までは自分たちでトリアージと治療だ。湯川、間宮、瑞山の3名はトリアージを、京藤、ナイチンゲールは治療に取り掛かってくれ。俺は天幕の設置後、増援を依頼して全体を把握するように努める。何か意見ある者は?」
石田はユニット全員を見渡す。京藤が手を挙げた。
「司令。ユニットの増員もお願いしたい。確かスカウト姉妹は情報収集の手伝いで、こちらに回せるはず。あと、数字に強いという意味で司令の周りで状況把握の補助に、浦風、材津の2人を呼び寄せれないかな?」
「なるほど。了解。浦風と材津は可能だが、スカウト姉妹は伊集院に確認してみないと分からない。問い合わせて可能ならこちらに回してもらう、それでいいか?」
「はい」
「他には?」
湯川が手を上げる。
「はい!今からの活動ですと、夕食の時間をまたぐことが予想されます。軽食を準備してもらえませんか?」
「…ん?そうか。そういう時間だな。了解、手配しとく。他にもあるか?」
今度は無いようだった。
「良し。では状況開始!」
ユニットたちが素早く散ってゆく。
この日石田達の活躍により、王軍の戦死者は激減した。
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(とある兵士)
戦闘終了の知らせを受けたとき、俺は最前線にいた。俺の所属する部隊は、この日最後の無謀な突撃を行い、そして半壊していた。戦闘が終了したことでこれ以上攻撃が加えられなくなる。安全になった戦場で、動ける者たちで戦場に転がる重症者たちを集めてから宿営地へと帰還することになった。俺は飛んできた小石によって腕を負傷していた。そのおかげで一足先に宿営地へと戻れることになった。
宿営地へ戻ると負傷している俺たちは治療院へ行くことに。あ、『治療院』なんてたいそうな名前がついているんだが、治療班が運営する天幕の事だ。治療班はありがたい存在さ。所属は国王直轄軍だが、今回の戦争に参加するすべての領軍を支援してくれる。…そして逆に領軍には治療班のような組織は無かった。
俺の所属する領軍では基本的に治療は自己負担。『各自でHP回復ポーションを持っておくか、怪我したら買いに行け。あ、それ自己負担な!』ってことだ。経済的に豊かな領軍なんかじゃ、ポーションの購入に助成があったりするらしいんだがな。世の中世知辛い。
ま、そんな理由で治療院へ向かうと、その治療院の周りにけが人があふれてた。あー…こりゃ、時間かかりそうだな…。時間かかるなら、行商の連中のところへ行って、自腹でポーション買うかなぁ…。でも、金使いたくないしなぁ…。少し悩んでから、まぁ、どれくらい待たされるかを聞いてから考えることになった。
で、周りを見渡してると、けが人を抱えて移動させたり、一人ずつ状態を聞いて回っている人達がいることに気づいた。そいつらは揃いの格好をしていて、クルスーム領の兵士達だと分かった。なんで彼らがこんな小間使いみたいなことしてるのか不思議だったが、まぁ、彼らなら治療の進捗とか詳しいだろうと思って声かけてみようと思った。
さて、誰に話しかけようか…。周りを見渡してみると、ちょうどいい感じに近くに男がいた。その男はかなりガタイが良く、めっちゃ筋肉質だ。こちらに背を向けて、横たわる負傷者を診ているようだった。話しかけたり、怪我した部分を観察したりして、紙に何か記入してた。その男が記入を終えて負傷者に渡したところで声をかける。
その男はこちらに向き直ると、俺たちをざっと眺めた後ある天幕を指さして教えてくれた。どうやら動ける人間はその天幕で診察してもらうことになっているとのこと。そっちでどれだけ待つことになるかは分からないとのことだった。
俺たちはお礼を言ってからその天幕に向かった。その天幕は緑色一色で染められていて、あまり見たことのない天幕だった。それに四方に布は張られていなくて、屋根と骨組みだけで…正直寝泊まりする目的では使えないだろう代物だった。
その天幕につくと、クルスームの兵士らに名前、年齢、性別、所属などを聞かれてそのまま紙を渡された。そして案内されて、とある長椅子のあるところまで移動した。長椅子が4つ、赤色の十字架が描かれたバッグを囲むように設置されていた。案内してくれた兵士の指示に従って長椅子に腰かけると、驚いたことに傷口が少し暖かくなり…時間にして10秒ほどで傷が無くなった。
椅子に座ったまま消えた傷口を触って確かめていると、案内してきた兵士に椅子から退くように指示された。見てみると、同じように俺たちと同じようにケガした兵士が列成してこっちに来ていた。どうやら俺たちと同じく戦場から帰ってきた兵士らがたどり着いたようだった。
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(ある魔法使い)
……無力感に打ちのめされていた。
我々は長距離攻撃魔法部隊。この部隊は各領軍の長距離攻撃魔法部隊を集め編成されており、急造された部隊だった。しかし、長距離攻撃魔法には高度な魔法技術と、チームワークが重要となってくる。隊員1人1人はそれぞれ魔法に関する高い適性を持ち、そういった魔法関連のスキルを持つ者も多かった。そんな恵まれた我々はエリートであるという自負がある。しかしそれと同時に、一人ではできない魔術を使うため、協力することの大切さも知っていた。おかげで他の領の部隊と一緒に活動することになっても、お互い尊敬しあい、何の問題もなく連携できていた。
そう、我々の仕事は完ぺきだった。……だが、全くの無力だった。
我々の放つ攻撃はすべて無力化される。しかし相手の放つ攻撃は前線の友軍を蹂躙した。我々は相手の防御魔法の耐久を減らすべく最善を尽くしたが、結局この日、有効な打撃を与えることはできなかった。
戦闘の終了を知らせる笛を聞いて、我々は話し合い、そして急ぎ前線に駆け付けた。戦闘において何もできなかったゆえに、たくさんの重傷者を出してしまった。せめて負傷者の収容作業を手伝いたかった。
我々は魔法を得意とする部隊ではあるが軍人である以上、宿営地の設営などの作業も手伝う。だから我々は重たい荷物を運ぶ魔法も心得ている。魔力によって浮遊する板を作り出す魔法『フロートボード』、そこに乗せれる限りの負傷者を乗せて俺たちは宿営地へと急いだ。
さて、唐突だが私は魔力感知のスキルを持っている。これは魔力をプレッシャーとして感じ取るスキルで、視界の外から魔法が飛んできてもプレッシャーとして感知し避けることが可能だ。
その能力が告げている。この治療院では何かとんでもないことが起きている…。通常の魔力は、なんというか…危機感をあおる…威圧感の様なものなんだ。だがここで感じられるのは優しく包み込んでくれるような…穏やかな感触だった。そして、それは治療院の方から感じられ、近づくにつれより強まった。この違和感に気づいたのだろう。治療院の近くには大勢の人が集まっていた。
急患だ!と声を上げて道を開けてもらいながら人込みを進む。人込みを抜けるとそこは広い空き地で、ちょうどフロートボードに乗せてきた負傷者を下ろすのに都合のいい場所が広がっていた。
仲間の一人が驚きの声を上げた。その仲間は魔力視のスキルを持つ。魔力視はその名の通り魔力を可視化してくれる能力だ。魔法発動や、相手の持つ魔力量などを見抜けるそうだ。
驚きの声を上げた仲間は妖精がいると話した。そして指さした先には長椅子が四つ、赤い十字架の描かれたバックを囲むように配置されていた。確かに私の不思議な感覚の一部はそこからしていた。だがその不思議な感覚を放つ存在はまだまだ他にもあった。そして、その一つが我々の元へと駆けてきた。
衝撃を受けた。その女性は異国の見た目をしているがとても美しい。安心する波動を感じるのに、なぜか胸は鼓動が高まる。
私たちはその女性に指示された場所に負傷者を下ろし、まだ戦場に残っているだろう負傷者らを回収するため再び戦場へ向かった。
駆け足で移動していると、唐突に先ほどの仲間が話した。あの女性は女神様かもしれない、と。なんでも妖精が女性の周りを舞っていたらしい。
さすがにそれは無いと否定しかけて、ふと思い出す。あの場所は人込みができているのに騒がしくなかった。普通あれだけ人が集まれば話し声が重なり合って大きな騒音となるのだが…そんなことはなかった。しかも人込みの中には祈りをささげているものもいた。さらに、普通の魔法を感知するときとは異なる魔力感知の反応…。
…あれ?待てよ……。戦闘が終わってからあまり時間は経ってないはず。前線では負傷者を集める作業が続けられている…。なのにあの治療院には負傷者がほとんど横たわってなかった。…まさか、すでに負傷者のほとんどが治療された…のか…?この短時間で?
本当にそうなのかもしれない。そう思いながら私たちは負傷者の移送を急いだ。




