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後方兵科が異世界転移!?  作者: お芋さん
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『こちら古井。標的を発見』


 石田は天幕の中、電子スクリーンを眺める。パントムを示すアイコンの近くに赤い敵を示す点が表示される。パントムのアイコンをタップしてカメラ映像を呼び出す。

 新たに開かれたウィンドウの中央付近にいつか見たトカゲがいた。そのトカゲはギガントロックリザード。


「了解。位置を確認。攻撃班が接近するまでの間、情報の収集活動をお願いします」

『コピー』

「伊集院さん、情報収集の状況は?」


 天幕入り口の隣にあるPCを伊集院がそうさしている。


「はい。通信状況は良好。情報収集に問題ありません」

「じゃあ、引き続き情報収集を頼む」

「了解。マホロ。AI学習用に異なる角度から撮影した静止画が必要です。距離や画面内での位置を変えながら撮影してください」

『コピー』


 伊集院の使うPCの隣には無線機が置かれている。その無線機を八木が操作している。


「イク。目標が発見された。地図情報が更新されたから確認を」

『了解。……確認した。これより移動する』

「現在、パントムはAI学習用の情報収集を行っています。ギガントロックリザード以外の情報が更新されない環境です。周辺への警戒を怠らないようにお願いします」

『了解。監視を厳にしつつ接近する』


 石田が指示を出すまでもなく、八木が各員への情報伝達を行ってくれている。おかげで石田は状況を把握する事に注力できる。電子スクリーンへ視線を映した。


~~~~~~~~~~


 銭湯の運営費を補填し、かつ宿泊施設を建設するため冒険者の仕事を受けることになった。…などと簡単に言うが、これを実現するには相当稼ぎのいい仕事を受けなくては難しい。まぁ、そんな仕事ないだろうなぁ…と思いながら組合に行くと…有った。


 で、都合のいいその依頼、その内容は『ギガントロックリザードの討伐』だった。

 なんでも『ギガントロックリザードが討伐された』という情報を聞き、その素材を求めて遠くから訪れる商人がいるのだそうだ。ただ、すでに討伐されたギガントロックリザードはバーンハードが購入済みで、ルブアの組合には何もない。大抵の商人は売れたという説明で引き下がって帰っていく。ただ…とある貴族の御用商人を名乗るやつが来て、『剥製を作るから1頭よこせ』とのたまったのだとか。説明をして諦めてもらおうとしたが、全く聞く耳持たなかったとのこと。そのため新しく討伐の依頼を張り出してしばらく様子見をするということで納得してもらったようだ。


 御用商人というのは本当らしく、その依頼の成功報酬はかなり高かった。


 石田はその依頼を受けることにした。


~~~~~~~~


 地図上を3台の車両が移動している。先頭から高機動車、トラック、自走砲の順だ。高機は周辺警戒用に、トラックは討伐後の輸送用、そして自走砲は対象への攻撃用だ。


 『トカゲ1匹に自走砲を持ち出すなんて……過剰戦力もいいところだ』という声が聞こえてきそうだ。いや、まぁ、説明させてほしい。


 石田はこの3か月間、冒険者の依頼をこなしながらこの世界の常識をいろいろと学んだ。その常識から言うと、『ギガントロックリザードは人が戦える相手じゃない』ってことだった。

 ギガントロックリザードの討伐記録は無いわけじゃない。アノーア達に教わりながら依頼をこなしている時に聞いた話では…巨大な穴を掘り剣山を置き、比較的弱い腹部を攻撃したり…谷間に誘い込み大岩を落とすなどで対処したようだった。

 なんだ意外と簡単…と思うなかれ。ギガントロックリザードはその巨体に反して素早く、さらに持久力も持ち合わせるている。おかげで囮のチームが罠の場所までひきつけていく際に戦闘は避けられない。戦闘しながら罠の場所まで引っ張っていくため、多数の死者を覚悟しないといけない相手なだった。


 現代兵器を使用できる石田にとっても、侮れない相手だった。前回戦闘した際は、M2重機関銃の攻撃を阻まれてしまった。外皮で弾が弾かれてしまい、全く効果を与えられなかった。その時はM2の攻撃を肩甲骨に集中させて、外皮は貫けずとも骨を砕くことに成功した。そして行動力を奪ったのちに個人携行のミサイルランチャー『MBT-LAW』を撃ち込んで撃破した。

 正直に言うと、その時は運が良かった。高い機動力と防御性…まるで歩兵戦闘車(IFV)を相手にしているかのような気持ちにさせられた。


 そんなこともあって、今回はギガントロックリザードの脅威は、戦車やIFV並みのものだと考えて対応することになった。

 そして、その攻撃のための装備がアーチャー自走砲だ。

 本来IFVに対して自走砲というのはおそらく悪手だと言える。というのも攻撃をするときに反撃を想定しないのは愚かなことだから。アーチャー自走砲はトレーラーの荷台に艦船の砲塔を乗せたような形をしている。普通車と比べれば頑丈な装甲をしているが、戦車や装甲車ほど頑丈ではない。IFVに装備された武装で攻撃されればひとたまりもない。ではなぜ自走砲を使用することになったのか。その理由は2つ。


1.ギガントロックリザードの攻撃は遠距離ではほぼ当たらないことが予想される。


 これはそのまま。前回の戦闘で、ギガントロックリザードはヘリを落とすために火球の魔法で攻撃してきた。魔法で飛んできた火球は、おそらくサッカーのシュートや…キャッチボール(全力でない)の球のような速度で飛んできた。前回はギガントロックリザードの注意を引くためにかなり接近しなくてはならなかったため、一発受けることになった。しかし、今回は自走砲が攻撃するような距離が開いている。おそらくそもそも攻撃が届く範囲ではないし、仮に届くとしてもあの速度なら発砲(魔法の行使?)を確認してからでも十分によけられる。


2.コスト的な問題。


 装甲兵器相手に戦闘する場合、有効な打撃を与えられるものは限られる。石田達の装備でIFV並みの装甲に打撃を与えられるのは…

 ①個人携行対戦車兵器(RPGやMBT-LAWなど)

 ②航空機からの対地攻撃

 ③戦車やIFVでの攻撃

 ④自走砲による攻撃


 ①はロケットランチャー(RPG-7やSMAW)なら安いが、直進しかし無いという性質上直撃させるには相当近づく必要がある。そんな危険は冒せない。ミサイルランチャー(MBT-LAWやジャベリン)なら遠くからでも当てられるが…非常に高価だった。MBT-LAWが300万、ジャベリンが500万。

 ②は対地攻撃可能な機体がF-117しかない。F-117が投下できるレーザー誘導兵器で最も安いのがGBU-12(500ポンド爆弾)で約230万。

 ③は装甲貫徹を目的としたAPFSDS弾を使うとして…105mm砲でおよそ30万で、120mm砲で約100万。装甲でおおわれていて安全、しかもそれなりに安い!って話なんだけど…戦車乗りがいないので断念。

 ④は砲弾の種類にもよるが比較的安価で効果も期待できる。155mm榴弾(HE)で約6万(榴弾が$440、装薬が$60)だった。


 そういうことで榴弾を利用することになった。


『自走砲。砲撃位置に到着しました。これより砲撃準備に入ります』


 マップ上で自走砲が停車した。トラックと高機動車はそれぞれ自走砲から少し離れた位置まで移動し停車する。


「了解。砲撃まで警戒監視を強めてください」

『こちら京藤。周囲に問題なし』

『湯川。同じく異常なし』

『ナイチンゲール。南西方向、遠くにラントードーが見える。しかし、接近する気配なし』


 ラントードー。大きな個体でも2.5mほど。トード―鳥を大きくしたような外見だ。地上を高速で走り回る。警戒心が強く、逃げ足も速いためあまり戦闘になることは無い。巣を襲わない限り安全な相手だ。

 この3ヶ月の間に受けた、アノーア達のレクチャーで知った。街道沿いに巣作りをすることがまれにありその駆除依頼が年に数件発生するのだとか。


『ファティじゃ。こちらも問題なし』


 今回の依頼にはファティにも参加してもらっていた。航空機を操縦して『空を飛びたい』というのが彼女の夢だ。そのため、石田とともに活動したいと申し出てくれた。現在は彼女を領へ連れて行く手立てがないため航空機パイロットとしての訓練を行えていないが、今後の活動に慣れてもらうために一緒に行動してもらっている。


『間宮です。同じく異常ありません』

「了解です。そのまま警戒を続けてください」(八木)

『『『了解』』』


 各員の間の連絡は八木が行ってくれる。そして、現在は計画された作戦通りの展開を見せている。


『こちら自走砲。偵察情報への接続を求めます』

「要請を確認。許可します」

『接続確認。感謝します。………。照準データ入力完了。砲撃開始します』


 瑞山の無線から少し時間がたって、かすかに遠くで爆発するような音が聞こえた。おそらく、発射する音だろう。

 電子スクリーンの映像で、パントムからの偵察映像を眺める。画面中央付近に見えるギガントロックリザードの近くで爆発が起こる。爆発はロックリザードの側面の少し離れた位置で起こり、赤い爆炎が一瞬見えてその後そこには黒い煙が残った。そしてその爆発を受けてギガントロックリザードは横に吹き飛ばされる。ゴロゴロと横に転がり止まると、ピクリとも動かなくなった。電子スクリーンの赤いマーカーが消える。


 空中爆発。今回ギガントロックリザードを仕留めるにあたり瑞山が提案したことだった。依頼主の要望はギガントロックリザードの素材を買い取ること。であれば榴弾を直撃or至近で爆発させて粉々にしてしまっては価値を下げてしまう。そこで工夫することにしたそうだ。

 榴弾の場合、空中爆発は衝撃波を効率よく広い範囲に発生させることができる半面、ターゲットが装甲されている場合加害が困難になる。しかし前回M2の銃撃で肩甲骨が破壊できたことから、爆発の衝撃でもって骨を砕くことができるだろうと検討をつけたそうだ。


『目標沈黙。念のため、生体スキャンを要請します』(瑞山)

「司令。どうされますか?」(八木)

「要請受諾。可能なら実行してください」(石田)

「了解。パントムへ。生体スキャンは可能ですか?」(八木)

『問題ありません』(古井)

「では生体スキャンで目標を確認してください」(八木)

『コピー』(古井)


 パントムがスキャンのために高度を下げる。地図に変化は見られなかった。


『目標の死亡を確認』(古井)

『了解。スキャン感謝します。砲撃態勢を解除したのち、目標に接近します』(瑞山)

『お疲れ~。ナイス砲撃!』(湯川)

『コラ、タツコ。まだ作戦は終了してないよ。警戒を怠らないでね。とはいえミノリ、ナイスショット』(京藤)

『ありがとうございます。やっと砲兵として皆さんのお役に立てました』(瑞山)


 この後は何も問題なく目標を回収。そして依頼を達成した。

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