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後方兵科が異世界転移!?  作者: お芋さん
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 物資輸送の依頼をこなすその日の朝。石田達はルブアの街を出た所で待っていた。ルブアの街を出た所で待ち合わせすることになっていたためだ。朝の街の門が開く時間に合わせて外に出て、天幕を開きいろいろと準備した。


 まず、トラックを6台ほど用意して並べた。前回のロミナの部隊を載せてルブアに帰ってきたときから1台ほど多い。これは間宮の練度が高くなり、彼女の指示できる妖精の数が増えたためだった(驚いたことに数が揃えば妖精にトラックの運転を任せられるようになるそうだ)。それぞれ軽く燃料や灯火類を確認した。

 次にパントムの準備をさせた。機種転換を行ったばかりの古井には悪いが、今回の輸送でも索敵の必要があると思われたからだ。依頼を受注するときには何の話もなかったが、以前アディとの会話で国境近くでは盗賊団が出没しているという話を聞いていた。このため、警戒の必要があると判断した。

 そして最後に武器の準備。発生しないとは思いたいが、戦闘が発生する危険はゼロではなかった。このため、武器の準備だ。今回は基本的にトラックで移動することになる。そして仮に戦闘が起こっても対人戦闘の可能性が高いので、交戦距離が長くなると思われた。このため各個人にはカービン系を装備してもらった。カービンとは、アサルトライフルの銃身を短く切り詰めた物を指す。銃身が短いので車両内などの狭い場所でも取り回しやすくなっている。もちろん狭い場所で取り回しやすいという意味ではサブマシンガンの方が優秀だ。ただサブマシンガンでは交戦距離が長くなると当てにくかったり、威力減衰が大きかったりするためカービンという選択になった。

 ただ、カービンだと前回戦闘したような大型のモンスターに対して火力が不足する。このため、今回は軽装甲機動車(LAV)を使用することになった。LAVの上部ハッチにM2重機関銃を装備し火力の不足を補うことになった。M2の機銃手には最悪の場合MBT-LAWを使用してもらわなくてはならない。工兵に適正のある人物ということで瑞山に機銃手をお願いした。大型トラックの運転ができなかったナイチンゲールだが、LAVの運転は可能だということで運転手をお願いした。


パントム:古井

LAV:ナイチンゲール、瑞山

トラック:石田、京藤、湯川、間宮


 という形での配置となった。(ファティにはタミーナたちの護衛としてルブアに残ってもらう)運転手が足りないトラック2台は間宮の妖精にこなしてもらうことになる。

 一通り準備が終わった頃、ルブアの門から馬車を引き連れたルブア軍の一団がやってきた。その一団は石田達の天幕の前までゆっくりとやってきた。驚いたことにその中からアレーシャが現れて石田の天幕まで歩いてやってきた。


「おはようございます」

「おはようございますー…ってあれ?今回の依頼はロミナさんからでしたよね?…アレーシャさんが部隊を指揮されるのですか?」

「はい。急遽私が輸送部隊を指揮することになりました。輸送先の指揮官との顔つなぎと、いくつかの用事があって同行することになりました。よろしくお願いします」

「なるほど。わかりました」

「それで、あのー…少しいいですか?」


 アレーシャから国境の駐屯地にいる兵士達に風呂を提供したいとの話だった。昨日の風呂を見て、その作りが天幕と同じであることに気づいたらしい。だから天幕と同じように撤収、移動、設営が可能なのではないのかと考えたそうだ。実際それは正しく、風呂を提供することになった。

 驚いたことに、彼女らは昨晩のうちに輸送物資に水を満載した水瓶と木材を大量に追加したそうだ。風呂を提供する際に必要になるだろうと考えたそうだ。一応、この2つの物資は駐屯地でも備蓄する資源であるため、風呂が無理でも無駄にはならないとのことだった。


(なら、風呂の水は領の物を使ってその水は駐屯地の備蓄に使ってもらった方がいいな)


 そして彼女が提示した見返りは意外な内容だった。今回の依頼の報酬に追加で支払いをするには予算が取れないので無理。そのため、かわりに風呂屋(銭湯)を開くときの用地取得を手伝ってくれるとのことだった。


「えっ!?いいんですか?!」

「えぇ。…と言っても、街の中のお好きな場所に…という訳にはいきません。領の保有する空地があります。その中から一部をお安く提供するということになります。いかがでしょうか?」

「本当ですか!喜んでお引き受けします!」

「ありがとうございます!よろしくお願いしますね」

「はい。では、今一度依頼内容の確認と、本日の動きの確認をいいですか?」

「はい」


 石田は古井を除くユニット全員を呼び天幕に入る。アレーシャは兵士の中から2人連れてきて天幕に入った。全員が集まったことを確認してアレーシャが話し始めた。


「今回の依頼内容と、本日の行動予定についてお話します。今回の依頼はルブア軍の物資輸送となっています。目的地は国境を警戒する駐屯地で、物資を運び込むだけでなく、持ち帰る物資もあります。今この天幕の前に整列している馬車に積み込まれた物資をすべて駐屯地で降ろして、駐屯地から持ち帰る荷物を積み込み、そして帰るという工程になります。また、今回は物資の輸送に伴って、駐屯部隊の交代もありますので、兵士の輸送も同時にお願いします」

「はい」

「紹介します。こちらが物資の管理をするアエレヤです」


 アレーシャが連れてきた男の1人を指しながら紹介した。面長の顔でスキンヘッド。身長は平均より少し低い程度で細マッチョなタイプだった。


「どうも。よろしくお願いします。」(アエレヤ)

「「「よろしくお願いします」」」(石田達)

「物資の積み降ろしの作業は基本的に我々が行います。皆さんは物資には触れないようお願いします 。これは高価な機材が積み込まれていたりするため、皆さんが触って壊してしまった場合の事を考えてです。決して冒険者の皆さんが信用できないという話ではありません。予防措置としてご理解ください」(アエレヤ)

「分かりました」(石田)

「そして、こちらが交代する部隊の隊長を務めるワハブです」(アレーシャ)

「ワハブだ。よろしく」(ワハブ)


 もう1人の男が頭を下げた。この男は四角い顔で坊主頭。身長はやや高めのマッチョだった。


「「「よろしくお願いします」」」(石田達)

「行きの行程だけ世話になる。帰りは交代の部隊が同行することになるが、それまでの間よろしく頼む」(ワハブ)

「はい」(石田)

「本日はまず物資を満載した馬車をイシダ殿のアイテムボックスに収めてから・・・『トラック』?とかいう馬車で移動したいと思ってます」(アレーシャ)

「はい。トラックは今天幕の後ろに並べてある乗り物の事です。アレーシャさんも盗賊の砦で動くところを見てますよね?」

「ああっ!あれですか!」

「はい」

「えと、トラックはとても早く動くと聞いてます。どの程度距離を行けるかわかりませんが、歩兵を伴った馬車での工程で3日かかるところに駐屯地はあります。ですので行けるだけ行って、本日は野営することになると考えています」


 歩兵で3日の距離とはどんなものだろうか。歩兵の行軍速度は遅い。というのも各個人がそれぞれ装備を担いで移動するため、素早くは動けないためだ。例として西洋史におけるローマ軍を見てみると、通常の行軍は一日当たり25kmで、強行軍で30~35km程度とされている。平均の速さに直してみと…1日当たり8時間歩くとして、通常行軍なら3.125km/hで強行軍なら3.75~4.375km/hほどの速さになる。

 そう。歩兵の移動速度は遅い。だからその問題を改善した機械化歩兵と呼ばれる兵科がある。機械化などと言われるとサイボーグやパワードスーツを装備した兵士を想像してしまうが違う。これは単に歩兵を歩兵戦闘車両などに乗せた兵科で…まぁ、要するに車に乗って移動する歩兵だ。この場合行軍速度は車両の性能と、道路の事情に依存するようになりぐっと行軍速度が伸びる。


(とすると…75~105km先にあるって感じ?舗装されてない道を行くから平均で40km/hだとして2~3時間って感じかなぁ・・・)


 このように機械化歩兵は歩兵と比べ物にならない移動能力を持つ。


「分かりました。今日は移動できるだけ移動するということですね」

「はい。そうなります。依頼内容と、本日の行動予定については以上です。何かありますか?」

「え~と、行先の駐屯地の所在地がわかると助かるんですが…その前にアイテムボックスに収める作業に取り掛かっておきます」

「お願いします」

「皆は先に運び込んでおいてくれる?私は地図でルートと目的地の確認をしておくから」

「了解。アエレヤさん。運び込みますのでお手伝いお願いします」(京藤)

「分かりました」(アエレヤ)


 京藤達とアエレヤが天幕を出て行った。

 石田は電子スクリーンの元まで行き電源を入れ、地図を表示させた。地図を使って確認したところ、街道に沿って移動すればいいことが分かった。街道はまず少し北上し、そこで分岐していた。分岐点で西に向かって伸びる街道に乗りそのまま街道沿いに行けば駐屯地へとつく。地図上に中継点を撃ち込みながらルートを作ってみた所、移動距離はおよそ90km程だった。

 石田はタブレットで古井に連絡を入れる。


「古井さん。地図情報を更新しました。本日の移動経路と、目的の駐屯地の所在を表示させました。確認をお願いします」

『はい。確認しました。索敵を開始しますか?』

「お願いします」

『了解しました。これより最終チェックに入ります』

「はい。お願いします。出撃の許可を出しておきます。古井さんのタイミングで行動を開始してください」

『了解』


 石田はアレーシャたちに振り返る。


「アレーシャさん。この位置ですと本日中に皆さんをお送りできると思いますよ」

「え!?本当ですか?」

「はい。では私は馬車をアイテムボックスに入れる作業を手伝ってきますので少々お待ちくださいね」


 石田も領に馬車を運び込む手伝いに向かった。


~~~~~~~~~~


 馬車は合計20台ほどだった。かなり大量の物資を運ぶらしい。そして人員は輸送員、交代要員を合わせて112名ほどだった。それぞれトラックに乗り込み、移動を開始した。古井の索敵に引っかかるような集団やモンスターは存在せず、何の問題もなく駐屯地へとたどり着いた。駐屯地にはその日の昼には到着した。

 今回は前回の反省を生かしあらかじめ酔い止めの薬を飲んでいたため、石田は車酔いに悩まされることはなかった。


 石田達が駐屯地に接近した時、駐屯地ではちょっとした騒ぎになった。突如遠くから砂煙を上げながら近づいてくる一団があれば警戒するのも当然だった。

 手すきの兵士たちがトラックの接近する方向に集まって待ち構えていた。それぞれ武装をしっかり整えてあり、何かがあればすぐ対応できる状態だった。しかしトラックの後ろの荷台には幌がかけられていないタイプだったおかげで、接近するときに乗車中のルブア軍の兵士らが立ち上がり手を振ったりしてくれていた。そのおかげで、警戒はするものの攻撃が飛んでくるようなことはなかった。

 警戒に出てきた兵士たちを刺激しないように少し離れた所に一度停止し、アレーシャたちにお願いして事情を説明してもらった。警戒が解けたところで道を作ってもらい、トラックで駐屯地内に入った。

 駐屯地は意外と整えられていた。布製の天幕などではなく、きちんとした建物が整然と並び周囲はルブアほどではないが土壁によって守られていた。


 トラックを並べて停車させ、ルブア兵らの下車を手伝っているとアレーシャが30代くらいの男を連れてやってきた。その男はちょうどルブアの領主アサドを若くしたような見た目だった。


「お前がイシダか?」

「はい」


 その男が話しかけてきた。


「俺はアルミラン・クルスームだ。ルブアの領主、クルスーム家の長男で、ここの駐屯地を任されている。このたびの輸送、感謝する」

「はい。こちらこそ、アレーシャさんやロミナさんには仕事をいただいて助かってます」

「そうか。それで、先ほどアレーシャから話を聞いた。少し君たちに頼みたいことがあるんだが、いいだろうか?」

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