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後方兵科が異世界転移!?  作者: お芋さん
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 訓練という名の決闘を終えて石田達は冒険者組合の一室に集まっていた。その部屋は会議室だった。大きな長方形の机が部屋の中央にあり、その周りに椅子が並べられている。そして、その椅子には机を挟んで石田達とワイルダーネスの面々が座る(彼らはなぜか室内にもかかわらず防具類を完全装備したままだった)。そして部屋の上座(?)側には組合からバクアーが同席していた。バクアーの後ろには壁一面に紙を張り付けられるようにコルクボードが打ち付けられている。そのコルクボードに今回の訓練の依頼書が張り付けられている。


「さて、今一度確認をする。まずワイルダーネスの皆に聞く。今回の訓練依頼は失敗に終わった。そのことに異論はあるか?」


―コー・・・パー・・・コー・・・パー・・・(×7)


 バクアーがワイルダーネスの方を向いて問いかける。


「・・・いや、ねぇ。俺らは負けたよ」

「あぁ。まけた」

「異論のはさむ余地は無いな・・・」

「あぁ。同じく異論はない」

「同じく」


―コー・・・パー・・・コー・・・パー・・・(×7)


 それぞれが回答する。アノーアは苦虫をかみつぶしたような顔をしているが、そのほかの男たちは苦笑いといった顔だ。

 ワイルダーネスの回答を受けてバクアーはイシダに向き直る。


「では先の君たちのロックリザード討伐と、今回の訓練で実力を示してくれたことを認め、冒険者ランクをDへと昇格することを承認する」


―コー・・・パー・・・コー・・・パー・・・(×7)


 そういってバクアーは石田達にDランクを示すタグを配る。そしてファティの冒険者登録と冒険者証の発行も同時に行った。

 こうしてファティを含め石田達はDランクに昇格したのだった。


―コー・・・パー・・・コー・・・パー・・・(×7)


(さて、用事も片付いたしさっさと帰ろう!)


 石田が急ぎ席を立ち退室しようとする。席を立ち3歩ほど扉に近づくと、それを止めるようにバクアーから声がかかった。


「イシダ君ちょっと待った!・・・その・・・彼女らの口元のそれは・・・?」

「・・・・・・・・・・・」


―コー・・・パー・・・コー・・・パー・・・(×7)


 そう、先ほどから響くこの音はガスマスクだ。それも対NBC兵器用の超微細粒子&有機物を確実に吸着し空気をろ過する超高性能フィルターが装着されている。もちろん吸引するときの抵抗を減らすために、フィルターを2個装着したタイプだ。そして当然、フィルターを2個も装着するとなれば相応にマスク全体としても大きくなり、顔の下半分を覆い隠すほどの大きさがある。

 元ゲームキャラということで非常に見た目が美しい彼女らなのだが、顔半分を覆い隠すマスク&マスクを顔に固定するゴムバンドで髪型が崩れるなどして・・・その・・・ちょっと・・・もったいない状況になっている。


 なぜ彼女らがそんなものを装着しているのかというと・・・そうニオイいだった。ワイルダーネスは訓練場という開放空間でかつ距離があるにもかかわらず、彼女らを顔面蒼白にさせるほどのニオイだった。そんな彼らと閉鎖空間でかつ訓練ほどの距離を取れない環境に置かれることは・・・耐え難い事らしかった。曰く、「彼ら自身がBC兵器(生物化学兵器)じゃん!」とのことだった。なお、親切な彼女らはファティにもそのガスマスクを提供してあげている。


―コー・・・パー・・・コー・・・パー・・・(×7)


(正直に言うとそのフィルターは使い捨てで、タダじゃなんだぞ?)


 石田としては我慢すれば何とかなる話で、実際石田だけはガスマスクをしていない。部屋に入った当初は少しそのニオイに辟易したが、意外と慣れるもので現在は気にならない程度に無視できている。(当然クサイが・・・)正直経費が掛かるので使用しないでほしかったが、嗅覚に関しては個人差が大きいと考えて何も言わなかった。


「えっと・・・ガスマスクです・・・」

「・・・ガスマスクとは?」

「え・・・え~と・・・」


 石田は困る。正直に話していいものかと・・・。


(絶対これワイルダーネス・・・というかアノーアが怒るだろうなぁ・・・)


「・・・吸い込む空気を綺麗にしてくれる道具です」


―ガタンっ


「んだとこらぁっ!?」


 案の定アノーアがキレた。


「俺と同じ空気は汚いって言いたいってのかよぉ!チクショウ!」


 ドタバタと大きな足音を立ててアノーアが石田に詰め寄った。


(ク・・・クサイ・・・)


 京藤達は石田&アノーアから距離をとった。あくまでアノーアの突然の動きに驚いたんですって感じで汚いものを見るような眼はしなかったが・・・。


(絶対この匂いが嫌で距離をとったな・・・)


 しかし、このアノーアの動きは少しおかしい。本来「そのクサイ匂いが嫌だ」と、無礼を働いているのは京藤達だ。石田はその匂いについて我慢しているし、嫌な顔をしないよう心掛け、実際顔に出すようなことはなかった。にもかかわらずアノーアが詰め寄ったのは石田だった。


「まぁまぁ、落ち着いて」

「何が落ち着いてだっ!」


 アノーアの顔は怒りに染まっている。しかしその眼もとには若干涙がたまっている。

 アノーアはイシダの襟首をつかみそのまま押し込む。石田はこちらの世界に来ていろいろ変な能力を身に着けはしたが、身体能力はかつてのそれと大きく変わっていない。冒険者一筋で体を鍛え上げたアノーアの力に及ぶべくもなく、そのまま壁に押し付けられてしまった。


―ドンッ


「グフッ」

「何がぐふっだ!こんなひ弱なで軟弱な野郎がなんでDランクなんだよ!なんで女に囲まれてんだよ!」


 アノーアは怒りの顔のまま涙をため、ついには涙がこぼれた。

 アノーアに襟首を占められて石田は呼吸が難しくなる。


(や・・・やべぇ・・・息が・・・お・・・落ち着いて貰わないと・・・。どうやって・・・ん?落ち着く?・・・フィールドだ!)


 石田は襟首を締め上げるアノーアの腕に手を添えフィールドを付与した。呼吸ができない&頭が焦っておりフィールドの付与は最も小さい出力になってしまった。

 フィールドの付与を受けて若干落ち着いたためか、アノーアの襟を締め上げる力が弱まり石田は呼吸できるようになった。


「ハッ・・・ハーハー・・・」

「なんで・・・うぅ・・・なんでなんだよぉ・・・」


 また激情にかられて締め上げられてはかなわないと思い石田は改めて強めにフィールドを付与した。若干泣き始めたアノーアの肩を叩きながら付与した。


「まぁまぁ、何があったんですか?」

「うぅ・・・チクショー!!!」


 アノーアの独白が始まった。


 なんでも、ワイルダーネスの皆さんはとある孤児院出身の仲間だったらしい。アノーア自身は、父親が戦争で死んで母親だけでは育てきれず教会に捨てられたんだとか。そんな彼らは若いころから苦労したそうだ。孤児院を卒業してすぐ冒険者として活動するようになり、本当に地道に取り組んできたらしい。彼らが活動を始めた北部の方では難易度が低いわりに報酬が多く、たくさんの冒険者が活動しているらしい。そんな環境では競争相手を減らそうと、新人いびりが盛んにおこなわれていたそうだ。なんでも彼ら自身、先輩方からいろいろと理不尽なことをされながらも頑張ったと。

 で、ある時ルブアが冒険者を募集していると聞きつけ彼らはこのルブアに活動拠点を移したらしい。拠点を移した当初は本当に苦労したらしい。戦ったことのないモンスターに、慣れない環境、依頼の難易度に対して報酬が安いなどなど。でも、冒険者が依頼に対して少ないということもあってこの地では冒険者同士のいがみ合いが無く、本当に活動しやすかったそうだ。

 あと北部では冒険者が多く、依頼を出せば取り組まれるのが当たり前だった。でもここでは、依頼を出しても冒険者不足で取り組まれないことも多かった。だから、依頼をこなすと依頼者から本当に心から感謝された。だからやりがいも感じられる環境だったそうだ。

 ただ、ルブアは物価が高い。そして当時は冒険者らの報酬は安かった。働けど働けど、一向に暮らしは楽にならず、この街を離れる冒険者も多かった。そして彼らはいつしかこの冒険者組合最古参となっていた。

 彼らは本当に一所懸命このルブアで依頼をこなしたそうだ。彼らに依頼をした商人たちが噂して、いつしか彼らは冒険者の間で広く知られるようになり、そして教えを求めて新人冒険者らが彼らのもとに集まるようになったそうだ。


 と、ここでバクアーが補足した。現在も冒険者は不足しているが、それでも昔に比べ冒険者の数は圧倒的に増えたらしい。その功績はもちろんワイルダーネスによるところが大きいそうだ。というのも多くの新人冒険者らがワイルダーネスの行う新人教育を求めて訪れたそうだ。そしてワイルダーネスの地道な活動は商人らの心も掴んだらしい。丁寧な対応、確実な仕事、そして人情に厚くアフターケアまでこなすこともあるのだとか。そのため、ありがたいことにルブアを訪れる商人の数も増えており、同時に組合に舞い込む依頼の量も増え、報酬も上昇中とのことだった。


(え・・・なに・・・マジすげぇ人達じゃん・・・!)


 アノーアの独白に戻る。

 彼らはがむしゃらに働きまくった。そして最近になってようやく生活に余裕を持てるようになってきた。そうして彼らは自分たち自身を振り返ることができるようになる。そして彼らは気づいた。40歳を目前に控えていることに。


(えっ?40手前なの?・・・もっと若いかと思ってたわ・・・)


そして、ふと思ったんだそうだ。


―家族が欲しい


 かつてルブアにやってきたころ、彼らには余裕がなかった。休日を作るとその日の食費に困ってしまう。それぞれが1人で食べるのがやっとの所得、毎日朝から晩まで体を張った仕事、宿に入ると泥のように眠った。そんな日々を暮らしながらも、どこかそういった欲求はあった。でも、自分たちの状況から考えてそんなことするだけの余裕はなかったし、将来の暮らしの目途も立たない・・・そういう環境にあって女性に声をかけるだけの自信は持てなかったそうだ。

 「いつかは、きっと・・・」そう夢見てがむしゃらに走り続けてきた。そうしてようやく余裕を持てるようになった。最近は休日を作っても暮らしていけるし、諸経費を払ったうえで貯蓄をしてなお、お酒を飲みに行けるだけの小遣いも持てるようになったんだそうだ。


 と、ここで再びバクアーが補足した。現在の冒険者への報酬は確実に上昇している。特にここ5年ほどで上昇率が高いらしい。報酬の増加量は、依頼の種類ごとにそれぞれ異なっており、一概に説明はできないが、それでもすべての依頼で2~5倍程度に増加しているのだとか。そして特筆すべきは新人たちがこなす低難易度の依頼でさえ依頼の報酬が約2倍に増えていることなのだそうだ。

 なぜそんなに増加したのか。それは冒険者らの依頼成功率が高くなったためだ。例えばモンスターからの素材を手に入れる依頼があったとしよう。10年前はモンスター討伐系依頼の成功率は20~30%程度。4~5回に1回成功すればいいぐらいの環境にあったそうだ。もちろん依頼が失敗に終われば報酬は依頼者に返還される。だが、依頼手数料は返還されない。このため目的の素材を得るためには依頼を複数回出す事が必要で、依頼手数料が依頼者たちに重くのしかかっていたそうだ。だが、ワイルダーネスの活動で新人たちの実力が上昇した。彼らの教育にはモンスターの特徴や生態などのレクチャーも含まれており、徐々に依頼の成功率が高まっていったそうだ。当初はその繰り返し出さなくてよくなった依頼手数料は依頼者たちの利益になっていたそうだ。しかしある時、そのお金を報酬に上乗せする依頼者が現れた。そうするとどうだろう。報酬のいい仕事には協力して冒険者たちが当たるようになった。その結果、報酬のいい仕事は成功率が圧倒的に高まるということが知られるようになる。こうして緊急性が高かったり、確実さを求める依頼を中心に報酬を高く設定するようになていったのだ。


(やべぇ・・・ルブア冒険者組合の立役者じゃなくて・・・むしろ原動力だ・・・)


 またアノーアの独白に戻る。

 アノーア達は最近定期的に休みの日を作るようになったんだそうだ。そしてお相手を探す活動をしているという。だが、いい返事がもらえなかったり、そもそもとても嫌そうな顔をして近づくことさえできないことが多いそうだ。


「あぁ。正直に白状するぜ。俺はなお前があんな綺麗な嬢ちゃん達を引き連れてたことに嫉妬したんだ。いちゃいちゃする姿を妬んだんだよ。冒険者ランク、推薦が・・・そういったことも少しはあったが・・・やっぱり、妬んだんだ。だってよ・・・俺たちがあんまりにもみじめじゃねぇか・・・」


―グスッ・・・


 見てみるとワイルダーネスの面々がアノーアの独白を聞きながらやはり泣いていた。

 突然、アノーアが兜を固定する顎紐に手をかけて、ほどき始める。


「お・・・おい・・・」


 ワイルダーネスの巨漢が声をかける。


「いいんだ。もう俺らが格好悪いことは知られちまってんだから・・・」


 アノーアが兜を外す。すると髪の毛越しにも頭皮が透けて見えるような・・・薄毛だった。


「笑ってくれや・・・こんな見た目じゃ、女性が相手にしてくれないことぐらい・・・わかってんだ・・・」


 アノーアに続いてワイルダーネスの全員が兜を外し始めた。そして全員、非常に広いおでこを有していたり、毛の密度が低かったりと問題を抱えていることが発覚した。


「・・・・・・・・ちょっと失礼します」


 石田はアノーアの正面から抜け出し、京藤たちの元へ。


―コー・・・パー・・・コー・・・パー・・・(×7)


「作戦ターイム・・・。個人的に今の話を聞いて彼らを何とかしてあげたいんだけど・・・どうだろう?」

「何とかって・・・結婚する相手を探すまでですか?」(古井)

「いや、そこまでは考えてない。その・・・せめて女性に逃げられないようにするところまで面倒見てあげられないかと思うんだけど・・・」(石田)

「なるほど・・・。それなら出来ると思うよ」(京藤)

「それなら、まずあ奴らのニオイをどうにかせんといかんじゃろうな。アースドラゴン除けとしては最強の装備かもしれんがのぅ」(ファティ)

「あ、アースドラゴンもあの匂いはダメなんだ?」(石田)

「あぁ。少なくとも吾輩なら逃げるのぅ」(ファティ)

「ほらぁ!やっぱりBC兵器の類じゃん!」(湯川)

「どちらかというと蚊取り線香とか虫よけスプレーのような分類では?」(瑞山)

「んん!話、脱線してますよ。・・・とりあえず、ニオイの問題と見た目の問題ですね」(間宮)


 まずニオイの問題は彼らを風呂に入れること、彼らの装備を洗浄することとなった。ただ、防具の洗浄はもしかしたらニオイの染み付きがひどくて、落ちない可能性がある。このため一応防具の専門家の材津に協力してもらって、最悪作り直しということにした。

 続いて見た目の問題。彼らはまず、汚い。風呂に入って洗うだけでなく、髭をそるなど清潔感のある見た目に変える必要がある。そして、私生活面(休日)では衣服のファッションセンスも求められる。このため、衣類を一式そろえる必要もあると結論が出た。そして・・・


「問題は髪の毛かー・・・」(湯川)

「こら。当人も気にしているんだから、ちょっと表現を考えないと!」(瑞山)

「う~ん・・・薄毛治療ですか~・・・領の病院ならできますけど~・・・簡易治療装置では無理ですね~・・・」(ナイチンゲール)

「「「「「「出来るんだ!?」」」」」」(石田、京藤、古井、瑞山、間宮、湯川)

「え・・・えぇ。できますよ~・・・ただ、領に連れていくことが不可能なので無理ですけどね~・・・」(ナイチンゲール)

「あー・・・あぁ。そうか。どうしよう・・・?」(石田)


―コンコン


 突然、ドアがノックされた。ワイルダーネスの全員が慌てて兜をかぶりなおす。それを見てからバクアーが声を上げた。


「どうぞ」

「お~う。失礼するぜ」


 扉を開けて男が入ってきた。その男はスキンヘッドだった。それを見た京藤達が叫んだ。


「「「「「「これだ!」」」」」」

「!?・・・お、おう・・・?」

HDDが壊れました。わかってます。中古買っちゃったのが悪かったんです。

くそ~。おかげで今回の話を書いたのは2回目です。

そして明らかに1回目書いたときの方が出来が良かった・・・orz

己の未熟さを痛感させられます・・・。

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