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後方兵科が異世界転移!?  作者: お芋さん
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 冒険者組合にたどり着くと、昼間にもかかわらず少なくない数の冒険者たちがいた。石田達が近づくと話題の人物が来たとざわめきだす。


「お!あいつだぜ。アノーアさんに喧嘩売ったの」

「はは。逃げずにやってきたか」


 そんな言葉が聞こえてくる。石田達はそんな話に耳を貸さずにそのまま組合の中へ行く。組合の中にはすでにアノーアを含むチーム「ワイルダーネス」がそろっていた。アノーアは2人の男性と話をしていた。2人の男性のうち1人はナスルだったが、もう一人は見覚えが無かった。その男性は見た目的に60代に見え、ナスルより年を取っていそうだ。

 石田達が近づくと、3人も気づいた。見覚えのない男性が石田の元まで歩いてくる。


「君がイシダくんだな?」

「はい」


 初めて会った男性がいきなり石田の名前を言い当てた。


「私はルブア冒険者組合で組合長をさせてもらっているバクアーだ」


 そういってバクアーは右手を石田に伸ばし握手を求めた。


「ご丁寧にありがとうございます。改めまして自己紹介を。カズヒデ・イシダと申します。このあたりに来たばかりの新参者です。どうぞよろしくお願いします」


 石田も手を伸ばしバクアーと握手した。


「ところで、組合長さんが・・・どうされたんですか?」

「それはな・・・」


 どうも昨日の晩、例の件を目撃した冒険者達が酒場で喧伝しまくったそうだ。おかげで、実戦形式の訓練という名で「決闘」が行われると街中で話題に。ちょうど隊商も街に訪れていて、長旅で疲れた彼らのちょうどいいレクリエーションとして白羽の矢が立ってしまったそうだ。今朝、冒険者組合に朝一番で隊商のボスが確認に訪れ、冒険者らの腕試し大会のようなことが提案されたそうだ。なんでも隊商を護衛してきた冒険者らを集めて訓練という名目で試合を組んで、それを見世物としていろいろな人に見せるという話なのだそうだ(簡易版のコロシアム?)。そしてその公開訓練の締めに、昨晩話題になった2チームが勝負するという形にしてくれないかと依頼があったそうだ。

 組合長は当人らの問題だからと試合の順番については保留したそうだ。ただ、冒険者らの訓練を公開の形で行うということには賛成したそうだ。というのも、その準備されてきた試合表を見ると熟練冒険者チームVS新人冒険者チームという形で訓練としても考えられたもので、かつ冒険者らにも依頼という形で要請を出し、参加することで経験だけでなく所得が得られる環境も用意してくれていたからだそうだ。


(えぇーっ!?どうしよう・・・あまり銃を使う姿を見られたくないのに・・・。大勢が集まるとか・・・困ったな・・・)


「で、どうだろう。アノーア君は試合時間が遅くてもいいと言ってくれているんだけど、君たちは試合が遅くなると問題があるかな?」


(・・・遅くなる分には・・・考える時間が増えるか・・・でも・・・問題はそっちじゃないんだよなぁ・・・)


「えっと、その・・・試合をあまり見学されたくないんですけど・・・」

「ふんっ。まぁ、負けるのがわかっている試合を見られるのは嫌だわな。街中で笑い者になっちまうからな」


(いらっ☆)


 アノーアの挑発する発言に若干石田がイラつく。しかし、この発言に大きく反応したのはイシダではなかった。石田の背後でガサガサと服がこすれるような音がした。

 振り向いて確認すると、京藤と湯川が拳銃を抜くポーズのままそれぞれ古井と間宮に抑えられていた。


「ステーイ、ステーイ」


 ナイチンゲールが2人をなだめている。その姿を見て石田は逆に落ち着いた。


(・・・よかった。今の発言にイラついたのは俺だけじゃないんだ。さて、彼女らが拳銃を抜く前にこの場を収めた方がよさそうだな・・・)


「・・・いえ、分かりました。私たちもそれでかまいませんよ」

「良かった」


 そういうとバクアーは組合の出入り口に待機していた組合員に指示を出した。


「おい!OKが出たと伝えに走ってくれ!」

「了解っす!」


 指示を受けた組合員が走っていった。バクアーは後ろを振り返る。


「アノーア君。イシダ君たちもOKだそうだ。イシダ君達には少し話がある。アノーア君たちは先に郊外に作られた臨時訓練場まで行っておいてくれ」

「了解です」


 アノーアとワイルダーネスの冒険者らは組合を出て行った。


「さて、君たちには少し話がある。ちょっとついてきてくれるか?裏の解体所へ行こう」

「了解です」


(モンスターの買取もあるし、ちょうどいいな)


 バクアーについて解体所へ移動する。ギガントロックリザードの死体の前まで行き話した。


「これは君たちが倒したので間違いないかい?」

「えぇ。間違いないです」

「そうか・・・。実はな、今朝、領主様が訪れてなこの死体を確認されていったんだ」

「へっ?領主様が・・・ですか?」

「あぁ。ちょうど、バーンハード・・・隊商をまとめている方だ・・・が来られているタイミングでな。バーンハードさんも興味を持って一緒にこれを見て行ったよ。凄いことをする冒険者もいるもんだとイシダ君たちに興味を持った様子だったよ」

「・・・へー」

「これを、君たちはどうやったんだ?」


 バクアーは死体の背中、MBT-LAWが着弾したあたりを指さす。そこはには2か所、焦げ目とその中心に大きめの穴が開いている場所がある。通常の生物なら爆発の衝撃だけで粉みじんに吹き飛ばされるはずだ。しかし、穴が2か所だけということは・・・恐ろしいことにギガントロックリザードは爆発に耐えるだけの鱗を持っていたということになる。それこそ装甲車並みの防御能力だ。


「通常ロックリザードたちの背中は固い。だから冒険者たちはそこを避けて攻撃する。だが、君たちはその最も防御の固いところを正面から破っている・・・いったい、どうやったんだ?」


 石田は悩む。


(う~ん・・・これは正直に教えていいものか・・・)


 携行対戦車兵器というのは装甲を貫通し内側にいる人物や装置といったものを加害する目的で作られる。この目的を達成するのにあたり発見された現象が存在する。それがモンロー/ノイマン効果という現象だ。これはモンロー効果とノイマン効果の2つを組み合わせた呼び方だ。

 モンロー効果は爆薬にくぼみを作るとそこに爆発力(衝撃)が集中するという現象だ。ノイマン効果は爆薬のくぼみ部分に銅の内張をすることでより効率よく破壊効果を対象に伝達し、爆発による貫通力を高める現象の事だ。この2つの効果を利用して作られた爆薬の事を成形炸薬という。これは爆発物(炸薬)にくぼみを作る(成形)ことから名づけられている。そしてその爆薬を砲弾に利用したものを成形炸薬弾と呼ぶ。

 成形炸薬弾の長所は、貫通力を爆発物が生み出す事にある。その爆発物を運ぶ砲弾(或いはミサイル)の速度に関係なく一定の貫通能力を有している。このため、比較的低速で相手に迫るロケット弾やミサイルといったものでも十分な加害効果が期待できる。個人携行型の対戦車兵器、つまり人が持ち運べるという制約があり大がかりな発射装置を用意できない状況に最適な対装甲兵器といえる。


 さて、先のギガントロックリザードの2つの焦げ目の中心にそれぞれ穴が空いているという表現になったのはこのためだ。爆発の衝撃で肉体を破壊したのではなく、成形炸薬によってその爆発力を一ヶ所に集中させて固いギガントロックリザードの鱗を貫通させたのだった。


(・・・しかし、口頭で説明してわかってもらえるか?今の説明でも十分わかりにくい。じゃあ、実演する?・・・いやいやいや、それは無い。実演するのも金かかるしなぁ・・・あ~・・・どうやってこの状況を切り抜けるか・・・)


 石田は逆に質問することでけむに巻こうと考えた。


「・・・それを知ってどうしたいんですか?」

「そうだな。どうやってこれをやったのか分からないが・・・できればその方法を多くの人に教えてほしい。あと、今回の試合ではこれを使わないでほしいということだな」

「あぁ、なるほど。それなら安心してください。人間相手には使いません・・・」


(人間相手にMBT-LAWを使う?・・・そりゃないな。だって今回の訓練で稼ぎなんてないわけで・・・。武器弾薬にお金をかければかけるほど赤字が増える・・・MBT-LAWはめっちゃ高価な武器・・・って!そうだ!そうだよ!これをするにはかなりの金がかかるから、そんなに易々とできるものじゃないですって正直に話せばいいじゃないか!見せろってんなら相応のモノ貰うぞって!)


 対人目的でロケット弾を使用するのはコストパフォーマンスが悪い。人間に加害する目的なら拳銃弾でも目的を達成できる。弾の値段は大きさや目的、種類によって大きく異なるが、例えばライフル弾でも安いものなら数十円から手に入る。だが、MBT-LAWは一発325万円。安価なロケットランチャーとして有名なRPGでも、1発2千円~2万円だ。

 仮にライフル弾1発が100円としよう。そしてRPG-7用ロケット弾が2000円だとしよう。ライフル弾20発とロケット弾が同じ値段だ。RPG-7を100%の命中率で撃つのと、ライフルで20発の内1発を当てる(命中率5%)事・・・どちらが簡単かは言うまでもない。そして、ライフル弾とMBT-LAWは比較するまでもない。

 そう、だからMBT-LAWを個人に向けて発砲するなんてことは、なにか状況が差し迫ったりしない限りありえない行動だった。


「そうか。それは安心だ」


 石田のアノーアにギガントロックリザードを倒した攻撃はしないという話を聞いてバクアーは安心する。


「それで、これをどうやって倒したのかは教えてもらえないだろうか?」

「えーとですね、これするのには凄くお金がかかるんですよ」

「凄くか?・・・それはどれぐらいお金がかかる?」

「え・・・えーと、ちょっと待ってください。計算します」


 金貨はおよそ500円玉ぐらいの大きさだった。今朝、重さを測ってみると平均20g程度の重さだった。仮にこれが純金で作られているのならば、金の相場が1gあたり3500~5000円程度。最低値の3500円で考えると金貨1枚は7万円相当の価値がある。このことから325万円はおおよそ金貨46~47枚程度に相当する。


(あれ?意外と安い結果になった?)


 石田としては「金貨1000枚です!」ぐらい吹っ掛けるつもりだったが、計算してみると意外な結果に。そこでざっくりと倍額を吹っ掛けることにした。


「ざっくりと、一つの穴につき金貨100枚程度ですね・・・」

「はぁ!?金貨100枚!?」

「一つの穴につきです。だからこいつには2つ穴がありますから200枚は使いましたね・・・」

「に・・・200枚・・・。しかし、そうなると君たちは今回大損したことになるわけだ・・・」

「へ?」

「ん?・・・あぁ。まだ受け取ってないのか・・・おーい」


 バクアーが後ろを振り向き解体作業の職員を呼ぶ。


「例の試験を受けた冒険者だ。ロックリザードの買取費用を持ってきてくれ」

「うっす」


 職員が走っていき壁に据え付けられた棚の前へ。カギのかかった扉を開けて中から袋を取り出す。それをもってバクアーに手渡した。

 石田は買取費用という話になったので昨日受け取った、木札を取り出しバクアーに渡す。するとバクアーも職員から受け取った袋を石田に手渡した。


「これが今回のロックリザードの買取費用だ。合計で金貨79枚だ。ギガントが金貨60枚、ラージが10枚。通常サイズが金貨1枚なんだが・・・傷が多すぎて買取価格が下がったりしている。詳細は中に一緒に入っている紙に書いてあるから一応見といてくれ」

「はい・・・」


 実際にはロミナからもらった30枚と合わせれば十分に元が取れていることになる。しかし一応、石田はショックを受けているふりをする。


「大赤字か・・・」

「あ~・・・まぁ、その・・・なんだ?何ならそのやり方の講習会でも開くか?そしたら組合の方から金貨100枚くらいなら払えるぞ?」

「いえ、それはお断りします」

「まぁ、そうだわな。・・・大事な商売道具だからそうそう安売りはできんか」

「えぇ」

「ま、わかった。とりあえず、話は以上だ。今日はくれぐれもアノーア達を殺さないように頼むぞ?」

「了解しました」


~~~~~~~~~~


 組合での話を終えて石田達もルブアの外へやってきていた。臨時訓練場がどういった場所かを確認しに来た。

 ルブアを出るとまず開けた平らな場所にいくつかの屋台が立っていた。驚いたことに商人たちはこの見世物を商売の機会としてとらえたらしい。屋台から漂ってくるいい香りに誘われながら歩く。すると屋台の並びの向こうに訓練場所が作られていた。

 訓練場は200 × 200mの広さだった。木製の杭が地面に打ち込まれていて、その杭と杭の間には縄が張ってあった。杭と縄で区切られた訓練場の周りには人だかりができていた。

 また、ルブアからみて訓練場の向こう側、ルブアから離れた所には一段高くなるような場所が設けられてある。そこにも仕切りがされている。その仕切りの内側には机と椅子が並べられていて、どうやらお金を取ってゆっくりと観戦できるような席が作られているようだった。この観戦席もお客さんの入りはいいようでパッと見た感じ8割は埋まっているようだった。

 そして肝心の訓練場内では5人の冒険者チームと8人の冒険者チームでの戦闘が繰り広げられていた。驚いたことに、人数的に劣る5人のチームの方が有利に事を進めている。どうやら5人チームは熟練したチームなのだろう。


「へ~・・・なんだか完全にお祭り騒ぎになっているね」(京藤)

「これは・・・まずいな」(石田)

「戦闘する姿をあまり見られたくないんだよね?」(湯川)

「あぁ・・・それもあるけど・・・これじゃ、流れ弾で観客が危ない・・・」(石田)

「あーなるほど・・・確かに・・・」(湯川)


 観客と対戦者を隔てるのは棒とロープだけだ。実質隔てられていないといえる。仮に石田達が水平にショットガンを発射したとして・・・冒険者に当たらなければその弾は訓練場の外に流れていくことは間違いない。そしてその先に観客がいないという保証はなかった。

 石田達は話しながら歩く。作戦会議をあまり人に聞かれないようにするため訓練場から離れる方向へと。


「えーと・・・ここは魔法に見せかけてしまうとかどうでしょう?」(瑞山)

「どうやって?」(石田)

「たとえば、司令が適当な魔法を放つふりをしてもらって、タイミングを合わせて榴弾を撃ち込むとかどうですか?」(瑞山)


 石田はその発言に吹き出した。そしてユニットの数人も驚く。


「いやいや!榴弾とか、狙い外れたらどうするのっ!?」(石田)

「榴弾は、殺傷範囲を考えると銃の流れ弾どころの話では済まないですよ?!」(間宮)

「自走砲はどうやって隠すの?この環境じゃ5~7km程度離れなきゃ地平に隠れないよ?そこからピンポイントで撃ち込めるかい?」(京藤)

「う~ん・・・だめですか・・・」(瑞山)


(落ち着いた雰囲気の瑞山さんだけど・・・意外とぶっ飛んだことを考えるんだな・・・。いや、それ以前に砲兵として活躍する機会が欲しいってことかな?)


 う~ん。と石田は悩む。石田達は反対だったが、意外とその提案を肯定的にとらえた者もいた。


「なるほど。魔法に見せかける・・・。そういう手段があるんですね・・・。ピンポイントで攻撃できればいいのですから、ナイトホークからレーザー誘導爆弾を落とすとかどうでしょう?あれならかなり精密に落とせますよ?」(古井)

「ダ~メ!そういう問題じゃないでしょ~!」(ナイチンゲール)

「うん・・・レーザー誘導をボクがして・・・司令が魔法の呪文を・・・いける!」(京藤)

「いやいやいや!それやめて!俺恥ずかしい!」(石田)

「でも、それ真剣な話として・・・ナイトホーク操縦できるんですか?確かまだ座学だけでしたよね?」(瑞山)

「複雑な操作をしなければ多分・・・召喚されるとそこは既に上空ですし、まっすぐ進むと天幕の真上を通り過ぎるようなコースになってます。ですから、ただまっすぐ飛ばして爆弾を落として・・・と、するだけなので可能だと思います」(古井)

「あのな・・・ちょっと説明すると・・・」


 今回の訓練では所得がないこと、弾薬を使用すればするだけ赤字になることを彼女らに話した。


「あ・・・あー・・・。そういう問題もあったんですね・・・」(瑞山)


 彼女らの本分は戦うこと。与えられた装備の中でいかに効果的な戦闘を行うかを考えるのが彼女らの仕事だ。だから彼女らの立案に金銭的なことが抜け落ちていることは問題ではない。むしろ金銭的な問題から使用兵装について制限をかけていなかった石田の方に問題があった。

 とここで・・・


「あ・・・!だったらいい方法思いついたかも!」(湯川)

ん~・・・何の本だったか・・・

ベトナム戦争では敵兵を一人倒すのに5万発の弾が必要だったとか。

ということは1発が100円だったとして敵兵一人当たり500万円はかかるんですよね・・・。

ってことは例えば100万人の軍隊を抱える国がいたとして

その3割が倒されると軍隊として壊滅したと仮定するなら・・・

勝利に必要になる小銃弾の費用はしめて・・・

30万人 × 500万円 = 1.5兆円 の弾薬費が必要になるんですかね~・・・

あ、自衛隊の89式の弾は1発120円だそうです。

つまりもっとお金がかかるってことですね・・・。

「金持ち喧嘩せず」とはよく言ったものです・・・。

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