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後方兵科が異世界転移!?  作者: お芋さん
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 石田達が襲撃に備え終わっても、盗賊たちは侵入してくる様子がなかった。しばらく何も起こらないまま時間が過ぎる。何かを待っているのかと思ってV/SUAVの高度を上げて周辺を探してみる。そうすると、少し離れた所で馬車がこちらに向かって移動してきているのが確認できた。

 その馬車は荷台が特徴的だった。普通の上が開けた荷台でも、幌が付いた形の荷台でもなかった。人が立って入れそうな木箱が固定されている。その木箱は結構頑丈な作りをしていて、窓などはついていない。UAVを近づけ確認してみると荷台の後方に外から掛けるタイプの錠が取り付けられている。その錠は不必要なほどに頑丈な作りをしていた。


『・・・これは・・・まさか、人攫いか?』

『どうしたのじゃ?』

『あ、ファティちょうどよかった。これを見て』

『ん?・・・馬車じゃのぅ』

『ファティは馬車の音は聞こえてる?』

『いや、聞こえておらんのぅ・・・』

『ってことは・・・?』

『んー・・・サイレンスの魔法・・・音を消す魔法を使っておるのかもしれんのぅ』


 V/SUAV操作用のタブレットで馬車をタップする。すると案の定、御者には赤いアイコンが付きミニマップには赤色表示の馬車マークが現れる。


『各員連絡。新たな敵。馬車に乗って移動している。どうやら音を消す魔法、サイレンスを使用しているらしく、馬車の移動音は聞き取れない。盗賊の仲間だと思われる。馬車は人を捕らえることのできるような荷台になっている。この盗賊は人攫いの可能性あり』

『『『『了解』』』』


 偵察映像の中で話し合いをしていた盗賊たちが馬車の接近に気づき馬車に集まる。盗賊と御者は何かハンドサインで数回会話する。そして御者が魔法を発動させた。


『ふむ。魔法の発動を感知したぞ 。この感じはどうやらサイレンスの魔法をかけておるようじゃ』

『了解。みんな聞こえたな?相手の足音は聞こえないらしい。十分に注意して当たってくれ』

『『『『了解』』』』


 盗賊たちが馬車から離れてそれぞれ配置についた。

 表のグループと裏のグループからそれぞれ1人ずつがハンドサインを出す。するとほぼ同じタイミングで正面、裏口の両方から侵入を開始した。


『良し。行動開始!』


 石田の掛け声で全員が動き出した。まず、京藤とナイチンゲールが部屋の窓を開き、そこから身を乗り出す。石田の部屋は店舗の裏側向きの窓になっている。裏口側の警戒に2人の盗賊が残っていたが、この2人に向けて発砲する。ファティの魔法のおかげで発砲音が響かない。しかし発射炎が周囲を照らした。

 弾を撃ち込まれた2人のアイコンがすぐに消える。そうするとすかさず制圧班の5人は窓から飛び降りて行った。各自地上で5点着地をすることで衝撃を相殺した。すぐさま起き上がる。裏口警戒に間宮と瑞山を残し、ほかの3人が表に向かった。



『こちら間宮。裏口確保』


 室内ではファティと古井が部屋の扉を開けて廊下へと出る。そのまま階段まで向かう。すると入ってきた盗賊と階段を登り切った位置で接触する。

 ファティが先頭の男に近づき、素早い動きで襟をつかみ、そのまま持ち上げる。そして下の階へと投げ落とした。


―バギィっ!


 男は机の上に落下し、机を破壊した。それを見た他の盗賊は警戒する。少しの間ファティと盗賊たちはにらみ合いになる。古井は攻撃を加えずにファティの後方から銃を構えているだけだった。というのもまだ店舗の表側を制圧した連絡が来ていないためだ。

 にらみ合っていた盗賊がしびれを切らして剣を抜き、ファティに切りかかる。ファティは体をひねり半身になり、そのひねりの勢いを利用して翼で剣をはじく。剣は盗賊の手を離れ、壁に突き刺さる。


―ドン!


 剣が壁に刺さる音が響いた。


『こちら京藤、正面確保。これより店内の制圧に入る』


 裏口は瑞山、表は湯川が警戒する。京藤とナイチンゲール、間宮がそれぞれ店内に侵入する。この連絡を受けて古井が発砲した。古井は先のロックリザード狩りでは航空監視を行っていた。このため、古井だけはAA-12ではなく、MP-7を装備している。連続した発砲炎が瞬く。階段に一列に並んでいた盗賊のほとんどはたまらず倒れた。しかし最後尾の2人だけは攻撃を逃れる。古井の攻撃力の高さに驚き逃げ出そうと正面入り口に向かって走り出す。しかし、入口からは京藤が入ってきた所だった。京藤とナイチンゲールの正面をふさぐように立ってしまった男たちは、それぞれその腹部に至近距離からAA-12を撃ち込まれてしまう。その結果、2人の男は元来た階段の登り口まで吹き飛ばされて壁にぶつかり崩れ落ち、事切れた。


『2階クリアー』(古井)

『1階クリアー』(京藤)

『正面クリアー』(湯川)

『裏口クリアー』(瑞山)

『オールクリア―』(京藤)


 戦闘が終了した。


「何事だ!?」


 ネムレの店主、ジュナイドが寝室から寝巻のまま飛び出してきた。


~~~~~~~~~~~


「なるほどな・・・そうだったのか」

「えぇ。なのでやむなく事後報告という形になってしまったのです・・・」


 ジュナイドが起きてきてその凄惨な店内を見て驚いた後、ロウソクをつけて1階の机に座りながら話をした。今は京藤達が盗賊の捕縛と蘇生を行ってくれている。

 AEDを使った蘇生は全く原理がわからないが・・・AEDをかけると身体の欠損が修復されたうえで蘇生されるようになった。盗賊がやってくる前に確認していた本日の戦闘結果報告で、新たなスキルを獲得していたためだ。ギガントロックリザードを倒した後ルブア軍の治療を行った事で「レスキュー隊」というスキルを手に入れた。これは石田の指揮する部隊の治療、回復効果を向上させるとあった。おそらくそれが影響してAEDで身体欠損まで治せるようになったのだろう・・・。まったくもってわけわからん。


 と、話がずれた。ジュナイドに事情を説明していると、フォックス族の人たちも起きてきた。手伝いを申し出てくれたので、今は店内に飛び散った血痕とかを掃除してもらっている。ジュナイドとの話し合いの結果、盗賊たちは城へ突き出すことになった。この街では警察に相当する組織は無いそうだ。街の中での騒ぎは軍の憲兵達が取り締まっているのだとか。このため、盗賊たちを突き出す先として軍が詰めている城に・・・という話だった。

 幸い盗賊を捕らえておく場所には困らなかった。彼らが持ってきた馬車に彼らを詰め込んでおいた。ただ御者が魔法使いということでもしかしたらカギを開けて逃げられる危険もあると想定された。このため、再びM18クレイモア地雷を扉の所に設置しておいた。加害方向はもちろん木箱に向け、ワイヤーを扉につけておいた。万が一扉があけられたとしてもワイヤーが引っ張られてクレイモアが作動、大量の金属球が彼らに向けて発射される。彼らはハチの巣となることだろう。

 さて一応木箱に詰め込む前に彼らには尋問をしておいた。まぁ、プロ意識からか、答えてもらえなかったが。拷問して口を割らせる手もあったが、それを自分でやる、又はユニットにやらせるのは気が引けた。だから、その仕事はルブア軍憲兵隊に任せることにした。

 交代で警戒しながら夜を明かした。


~~~~~~~~~


 結局クレイモアが活躍することはなく、夜が明けた。机が1つなくなった店内で朝食をいただいた。


「そんなことがあったん?」

「大変でしたね・・・」


 領の方で眠っていて事情を知らない材津と浦風が驚く。彼女らも朝食を食べにこちらへやってきたていた。2人は京藤達と一緒に食事をしている。


「そうなんだよ、大変だったんだよ」(京藤)

「まぁ、でもうちらじゃ何の役にも立てんかったじゃろうけぇ・・・まぁ、こっちにらんでむしろ良かったんかな?」(浦風)

「ですねかね・・・」(材津)

「そうだね。2人は戦闘ではなく、別方面で活躍してもらわないといけないからね」(京藤)


 食事を終えてから、軽く朝のミーティング。本日の活動を確認した。


1.石田、京藤、瑞山

 朝は盗賊を連れて城へ。城では一応ロミナに挨拶を。護衛費用を受け取れるなら受け取る。ただ無理だった場合、元々昼頃という話だったので、用事(アノーアの訓練)が出来たため、夕方に受け取りに来ると伝える。その後アノーアの訓練へ。

2.湯川、古井、間宮

 ネムレの片づけと、壊してしまった机の作り直し。

3.ナイチンゲール、ファティ

 午前中はタミーナとフォックス族の警備。

3.浦風達

 マスケット銃の分析。

4.フォックス族

 盗賊の狙いが石田達ではない可能性もあるので、今日はタミーナの販売が終わったらネムレで待機。今日は市場調査をしないでいいと伝えておいた。又、本日は1人で行動しないように注意しておいた。


「さて、こんな感じか」


 石田がミーティングを終えようとすると間宮が手を挙げて質問した。


「司令。今日の訓練はどうしましょうか?昨晩みたいな殺しといてAEDは・・・組合の方も見守るわけですからできないのでは?」(間宮)

「あー・・・確かに。というかそれ以前に、マスケット銃しかない現状で連発銃を使うのも・・・」(京藤)

「え~・・・でもそれは、今更じゃない?ルブア軍には見せちゃってるし・・・」(湯川)

「うん。ただね、軍人に見せるのと、冒険者に見せるのじゃ意味合いが違うと思うんだ」(京藤)

「そなの?」(湯川)

「うん。確か司令は武器の輸出はしないって話をしてたからね。冒険者にあれを見せて、欲しがられても困るだけだよ」(京藤)

「なるほど・・・じゃぁ、今日はどうすんの?殺しちゃダメで、銃も使っちゃダメ?・・・それって私たちに勝ち目無くない?」(湯川)


 全員の視線が石田に集まる。


「・・・ダブルバレルショットガン使おう」(石田)

「えっ?」(京藤)

「いや、多分俺たちが使える銃で最もマスケットに近い銃ってなると・・・ダブルバレルショットガンじゃない?」(石田)

「あー・・・えーと・・・」(京藤)


 なんと答えようと悩んでいる京藤。呆れたように浦風が説明する。


「まぁ、マスケット銃に最も近いという意味では正しいんよ?じゃけどね、全くの別物なんよ?・・・まず、マスケット銃では一般に黒色火薬を使うんよ。それに対して司令達が使う銃は全部、無煙火薬なんよ。黒色に比べて無煙は威力が6倍ぐらい高い。名前の通り、発砲するとき発生する煙の量も違うし、音も小さいけぇ・・・まぁ、発砲すれば別物とわかってしまうじゃろうねぇ・・・。あと、うちらが渡されたマスケット銃は先込め式じゃけど、ダブルバレルショットガンは後装式(銃身の後ろから弾を詰める方式)。先込めから後装式になるまでには随分な技術的な開きがあるんよ?具体的には中折れの可動部の強度を確保する技術、燃焼ガスを逃がさないようにする薬莢の開発、薬莢を利用するための雷管の開発などなどじゃね~・・・」


 浦風の解説に材津が驚く。


「美穂、詳しいね・・・」

「・・・あ~、まぁ、分析を頼まれたけぇね。昨日の晩は文書資料でマスケット銃についていろいろと調べてみたんよ」


 浦風の顔を見てみると目の下にわずかに隈が出来ていた。昨日の夜は遅くまで調べ物をしてくれていたのだろう。


「そっか。ありがとう。でも・・・う~ん・・・じゃあ、どうするべきか・・・」(石田)

「まぁ、マスケット銃に最も近いって意味でダブルバレルショットガンを使うのがええとは思うんよ?ただ、連発するような姿はあまり見せん方がええとおもう。じゃけぇ、難しいとは思うけど・・・一発で仕留めるように努力する、リロードをあまり行わない、とかに気を付けるとええとおもう」

「なるほど・・・了解です。じゃあ、使用する武器はダブルバレルショットガンにゴム弾でって感じでお願いします」

「「「「了解」」」」


 とここでファティが・・・


「うむ。お主らは戦う姿を見られたくないということじゃな?任せておれ!吾輩がすべて倒せば問題解決じゃ!」

「はは・・・。まぁ、そうなると最もありがたいし・・・多分そうなるだろうけどね」


 実際ファティがブレスをぶっ放せばおそらく石田達の出る幕なく終了しそうだが・・・それで納得するだろうか・・・という疑問もある。このため、一応準備しているのだった。


「よし。じゃあ、ミーティングは終了!各自準備して」


~~~~~~~~~~~~~~


 城には石田、ジュナイド、京藤、瑞山の4人で向かった。城の周りの城壁にある門をくぐる。前回謁見を行った城とは別の建物に向かう。その建物の中には兵士が詰めていた。入口を入るとすぐ左にカウンターがあり、そこに詰めていた男性の兵士が声をかける。


「あれ?ジュナイドさん。お久しぶりです」

「おう!元気してっか?」

「ぼちぼちですね。それより、今日はどうされたんです?」

「おう。それがよ・・・」


 ジュナイドが昨晩起こった出来事を説明する。


「それは、災難でしたね・・・その盗賊は今は?」

「あぁ。そいつらが使ってた、奴隷運搬用の馬車に詰めてここまで運んできたぜ」

「確認しても?」

「おう。見てくれ。こっちだ」


 そのカウンターの男性を連れて建物の外へ。そして奴隷運搬用だという馬車へ。カギを開けて中を確認すると全員さるぐつわをかまされて、手足を縛られた男たちが身動きもできないほどに、ぎゅうぎゅう詰めにされいた。


(まぁ、元々数人を運ぶための荷馬車に13人(御者の男を含めて)も詰め込めばこうなるか)


「え?・・・こんな人数が?」

「お・・・おう」


 2人もちょっと想定していたより多かったみたいで、驚いている。兵士の男は仲間を呼びに兵舎に戻り数人を連れて戻ってきた。その中には見知った顔があった。


「あれ?イシダ?」

「お!アディ」


 アディだった。どうやら早朝訓練を終えて、一休みしているところを先輩に見つかって連れてこられたらしかった。


「あれ?・・・こいつらって・・・。そうだ、思い出した。一昨日街に来た隊商の金魚のフン共を護衛している冒険者だ」

「え?金魚のフン?」


 アディの言う所の「金魚のフン」とはどうやら大規模な隊商の後をつけて移動する、中~小規模な行商人たちの事を示すらしい。大規模な隊商は自衛力を持っており、モンスターや盗賊と言った脅威への対応力を備えている。このため隊商の通った直後の街道は安全に通行ができる。このことを利用して隊商の後をつけて回るようなせこい商人たちがいるのだそうだ。


「えっと、なんでそいつら隊商に混ざらないんだ?」(石田)

「それはな・・・」


 隊商にはボスがいるらしい。そのボスの了解を得られないと隊商の中には入れてもらえないんだとか。あと、隊商の防衛戦力も無料ではない。だから参加するには協力金が必要となるらしい。「金魚のフン」たちは訳あって隊商への参加を拒まれたり、そういった協力金を払いたくない連中らしい。ちなみに訳アリとなるのはいわゆる犯罪に手を染めてたりするタイプで、よっぽどの悪いことをしなければ大体参加が認められるらしい。

 ちなみに、協力金を集めていることについて見返りもあるらしい。隊商を取りまとめる組織が各都市で食料や水を大量にまとめ買いし、かつその輸送を行ってくれるそうだ。このおかげで隊商内では市場価格より安く水や食品を購入できる上、自分たちの馬車には商品を満載して移動できるという寸法なのだそうだ。


「へ~・・・そりゃよく考えられているな・・・」


(なんか、隊商の組織は防衛戦力を有した生活協同組合って感じだな・・・)


「あぁ。だから隊商のボスは多くの商人に慕われる存在らしくてな。それこそ貴族様も無下に扱えない相手らしいぞ」

「それはすごい。なんか逸話でもあんの?」

「あぁ、ある」


 なんでも昔隊商にケンカを売った貴族がいたらしい。そうすると隊商は以降その貴族領を通らなくなった。隊商は年に2回しか通らないので納税額は大きいが全ての税収に占める割合としては小さい。だから隊商が通らなくなったところで貴族が泣かされるような事態は起こらないと思われていたんだと。しかし・・・


「あの隊商はな、結構短い区間での参加・脱退を許可してんだ。具体的には街と街の間の1区間だけ参加ってのもできる。だから隊商には個人の行商人も結構参加すんだ。馬車に商品満載で移動する場合の稼ぎと、食料と商品を混載した上で冒険者を雇った場合の稼ぎでは、前者の方が明らかに稼げるんだとさ」


 つまり隊商のボスは大規模な商会だけでなく、個人の行商人にもパイプがあるんだということだった。おかげでその貴族の危険性が広く商人の間に伝わって、大小問わず商人が寄り付かなくなってしまったらしい。結果、その領は税収が減って苦労することになったとか。


「恐ろしいな・・・」

「あぁ。結局数年後にその貴族は隊商のボスに詫びを入れる羽目になったんだとよ・・・。って話がずれたな。結局この連中はその隊商に参加できなかった連中なんだろう。こうやってここで逮捕されてる位だしな」

「なるほどなー・・・。そういえば、こいつら人攫いだろ?俺知らなかったんだけど、この領って奴隷はOKなの?」

「あぁ?まぁ、奴隷は買おうと持とうと別に犯罪じゃねぇけど・・・この街はそもそも物価が高い。おかげで奴隷の維持費用が案外高くついてしまってな。一般的じゃねぇってだけで、大きな商会では数人雇ってたりするらしいぞ」

「アディんちにもいんの?」

「はっはっは。そんなでかい商会じゃないって」

「なるほど」


(結構大きな店を構えて、客の入りも悪くなかった気がしたんだけどな・・・。まぁ、それだけこの街では維持が難しいってことだろうな・・・。となると、攫って売りさばくのは別の場所か)


「あと、アディ。ちょっと聞きたいんだが、警備ってできる?」

「ん?ルブア軍の兵士を使ってか?そりゃ難しいが・・・なんでだ?」

「ちょっとね。狙われた人物についてちょっと心当たりがあるっていうか・・・」

「ほぅ・・・聞こう」


 タミーナについて話をした。ボールペンはこの世界で使われていないものらしい。そのボールペンをタミーナだけが独占的に販売している状況だった。ボールペンを卸しているのが石田達ということに触れないようにしながらボールペンを販売するタミーナの事を話した。アディも街で話題になっている事を知っているようで、すぐに理解した。


「金魚のフン連中なら犯罪を犯しても不思議はない。そして今話題の商品を唯一独占する商人がいる・・・なるほど。確かにその線はありそうだな。ちょっと待ってろ」


 アディは先輩兵士のところまで行き今の話を伝えた。そうすると先輩兵士も納得したようで他の兵士を集めに走った。


「おう。情報サンキュー。これから街の巡回に行ってくる。ピンポイントで個人を護衛ってのは職務上できないが、変に局所的に巡回を増やすことで対応していけそうだぜ」

「お!ありがとう!」

「はは。俺らも午前のかったるい訓練が急遽巡回に変更されて大助かりだよ。じゃあ、これから俺も巡回だから、またな!」


 アディは去っていった。


(おい・・・それでいいのか?)


 若干アディの最後の言葉に脱力する。

 詰め所からジュナイドが出てきた。


「どんな感じですか?」

「この犯罪者共についてわかったらネムレまで報告に来てくれるそうだ。とりあえず今日はこれで終わりだとよ」

「了解です」

「おう。じゃあ、俺は先に帰ってるぞ」


 そういってジュナイドも帰っていった。


~~~~~~~~~~~~


 石田達は一度詰め所の中の兵士に声をかけてロミナに用事があることを伝えた。すると謁見などを行った城の方へ通される。その城の中にあるロミナの執務室へ案内された。先に兵士が中に入り面会の許可をもらってくるというので、執務室前の廊下で待つ。少しすると、案内してくれた兵士が出てきて中へと通してくれた。その兵士は、ほかの仕事があるのでと言ってそのまま執務室を去った。

 ロミナの執務室は内装がきちんと施されていた。やはり領主の一族で、部隊の隊長というだけあって立派な作りをしている。部屋の最奥に重厚な作りの執務机がありそこにロミナが座っている。入口から見て左手には書棚が並び多くの本が並ぶ。そして右手には膝までの高さの低いテーブルがあり、その両脇にはソファーが用意されている。その中でロミナは執務机に向かって書類仕事をしているところだった。机の上には書類が並べられている。ロミナは書類にサインする手を止めてペンを置いた。ペンはタミーナが販売しているボールペンでなんというか・・・立派な部屋の作りや、その肩書から言うとひどく安いものを使っている気になってくる。


(なんだろう・・・例えば市長が安いボールペンで書類を片付けるような違和感がある・・・)


「どうも。イシダ殿。座ったままで失礼。昨日は護衛していただき感謝しております」

「いえいえ。それより早めに伺ってしまって申し訳ありません」

「あぁ。大丈夫だ。準備は一応できているので。それよりどうされたのだ?」

「いえ、少し問題がありまして、昼頃に伺えなくなったのでそのことを伝えようと思って参った次第です」

「あぁ。なるほど。それはご丁寧にありがとう。しかし、準備ができていたので良かった」


 ロミナは机の引き出しを開けて中から袋を取り出す。そしてそれを机の上、石田達からとりやすい場所に置いた。


「これを受け取ってほしい。今回の護衛と治療についての費用だ」


 石田はその袋を受け取る。


「中には金貨が30枚ほど入れてある。確認してほしい」


 袋の中を確認するときちんと30枚入っていた。


「はい。確認しました。ありがとうございます」

「こちらこそ今回は助けられた。本当に感謝する。妹のアレーシャに聞いたんだが、君たちはDランクへの昇級試験中なのだとか?」

「えぇ。ロックリザードを10体ほど狩ってこいと言われてます」

「君たちなら余裕だろう。Dランクになったら組合を通して依頼を出したい。今後ともよい付き合いになると嬉しい」

「えぇ。こちらこそ」

「あぁ。話は変わるが、この後に入ったという予定というのは?」

「あ~・・・いえ、Dランク昇格をかけて訓練することになりまして・・・」

「ほう。なるほど。どんな訓練をするとかは?」

「実戦形式での訓練だそうです。対戦相手はワイルダーネスという冒険者チームです」

「なに?・・・ワイルダーネスと言えば、この街でもそれなりに知られたチームだな」


 ロミナが少し考えこんだ。


「・・・・・・それは見学することはできるだろうか?」

「・・・出来ますよ」

「そうか。では場所と開始時刻を教えて置いて貰えるか?」

「分かりました」


 ロミナに訓練の場所と時間を教えてから、部屋を出る。城を出てから、ユニット全員に連絡を入れて冒険者組合に向かった。

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