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GWですね!
GWと書いてしまうと液体と固体の蛇が争う姿を思い出してしまう自分がいます。
はい。ただの阿呆です。
累計PVが1万をこえました!読んでくださる皆さん本当にありがとうございます!
報告会を終えた後、間宮と湯川が石田のもとにやってきた。
「司令。お菓子作りについてお話があります」
「ん?了解。ここでいい?」
「はい」
お菓子作りという単語につられて浦風が駆け寄ってくる。それを受けて他のユニットの視線も石田らに集まる。
「なになに?何のお菓子作るん?」
「いえ、何を作るのかの話ではなくてですね、調理室の機能を拡張してほしいというお話なんです」
「え?今の調理室だと足りないものが?」
「はい」
領主の館はゲーム開始当初に与えられるいわゆる初期設備だった。「館」と呼ばれるだけあり石造りで西洋風の館だ。一応コピー機やPC、照明など近代的な物もあるが基本的に古いつくりをしている。
「具体的にはオーブンと冷蔵庫が欲しいんです」
「え?・・・無いの?」
「はい・・・冷蔵庫が無いので倉庫地区の冷蔵倉庫まで食材を取りに行かないといけないんです」
「え?マジ!?」
「マジです」
石田が調理室を思い出す。
(そういえば・・・流し台とガスコンロは見たけど・・・冷蔵庫は見なかったな。そもそも段ボールに入れられた缶が調理台の上に鎮座しているだけだったしな・・・。他に料理できる場所は・・・)
「えっと、ちなみに兵舎の方は・・・?」
「同じ状況です」(間宮)
京藤が近寄ってきて間宮の発言に続いて補足した。
「ちなみに、ボク達の兵舎は通称「独房」と呼ばれているよ。その名前の通り部屋はとても狭くて個人の持ち物を運び込む余裕はなく、冷蔵庫を置くのは無理な状況だね。さらに実は調理室は無いんだ。各階に共同利用するスペースがあってそこにガスコンロと流し台、洗濯機が置かれているだけだよ」
「・・・え?」
「そう、とても料理できる環境ではないんだ」
(彼女らの住環境を何とかしないとな・・・。兵舎を建て直す・・・いや、それをすると今兵舎に囚われているユニットがどうなってしまうのか分からない。いやいや待て待て。最初に考えるべきは館の調理室だ・・・あれ?)
ここで石田はあることを思い出す。
(いや、そうだ。最近は領で生活することが無かったから忘れてたな。こっちに転移した直後は兵舎が封鎖されていたため京藤さんと古井さんは館の部屋で寝泊まりしてもらってたんだったな)
砂砂漠でフォックス族と出会って以来、荷物をこちらに取りに来ることはあってもこちらで寝泊まりすることはなかった。そのため、忘れてしまっていたのだ。
(そうか・・・別に今は領主の館に部屋を用意してそこで生活してもらってもいいんだ。領主の館を拡張してより使い勝手の良いものにすれば、一石二鳥じゃないか?・・・でも、館のアップグレードはどうするんだろう?)
「・・・ごめん。ちょっと場所を執務室に移していいかな?PCで確認したいことがある」
「はい」
執務室は会議室の隣にある。石田が会議室を出るとユニットの全員がついてきた。ぞろぞろと執務室に入る。石田は執務机につきPCを立ち上げる。古い記憶を頼りに領地を開発するモードを呼び出した。
「おぉー!なになに?施設科にお仕事?どうする?なにする?」
湯川が石田の隣にやってきてPC画面をのぞき込んだ。ふわっと女性特有のいい香りが漂って石田は一瞬ドキッとする。
「ん・・・んん。え~と、領主の館をアップグレードさせたいんだけど・・・」
「へぇ?いいじゃ~ん!腕が鳴るね~。・・・でどんなのにする?」
「う~ん。調理室が充実していて、居住性の高い館にしたいんだけど・・・アップグレードの一覧とかってどう開いたっけ・・・」
「あーそれなら、こっちの方が見やすいかも」
湯川がタブレットを取り出し机に置いた。湯川が操作する画面を隣から眺める。画面には様々な種類の普通住宅のイラストが並んでいた。画面右上ににあるフィルター①ボタンを押す。普通住宅や集合住宅、ビル、商業施設、インフラ施設などの項目が選択された状態で並んでいた。それら項目を一括解除して最後に「領主の住居」を選択し、フィルターを掛けた。画面に並ぶイラストが変わる。今使っている洋館を先頭に少しずつ色や形の変わった洋館が並んでいた。しかし洋館の中には薄暗く表示されるものもあった。
「あれ?この洋館は・・・なんか表示が違うみたいだけど・・・」
「あ~・・・ごめん。それは施設科の・・・あたしの能力が足りないから」
「あっ。なるほど。ごめん。活躍の機会を用意してこなかったから・・・」
「うぅん。ま、これから力を付ければもっと色々建てられるようになるからね~。期待してて☆」
「はは。頼もしい。期待してるよ」
再び画面に視線を戻す。画面をスクロールさせていく。多くの建物が建築不可能を示す表示になっていたが、ぽつぽつと表示があった。
「あー・・・近代的な建物でお願いしたいんだけど・・・いいものあるかな?」
「え~と、ちょっと待ってね」
湯川がフィルター②ボタンを押す。再びフィルター選択画面が出てくる。そこから洋館や城などの項目を取り除く。フィルターをOKした後、ソート機能を呼び出し建築可能なものから並べるにチェックを入れた。
画面の建物の並びが変更され建築可能な近代的な建物が並ぶ。
「へ~・・・こんなにも種類があるんだ・・・」
画面をスクロールさせながら眺めていくとあるところで止まった。それはちょうど建築可能なものと不可能なものの境目のところだった。ちょうど建築不可能な建物の一番先頭に表示された建物を見て石田が固まったのだ。その建築不可能な建物は・・・
「・・・国会議事堂って・・・住居なの?」
「・・・どうだろね?」
そう。かつての世界の日本という国の国会議事堂が表示されていた。
(いやいや・・・国会議事堂は会議する場所であって・・・住居じゃないはずだろ)
そこから下は建築不可能な建物が並ぶだけなので逆に上にページを移動させていく。表示されている建物の中からホテルのような建物を見つけ、そこで手が止まる。
「湯川さん、これとかどうかな?」
「ん~どれどれ?」
石田はホテルのような建物を指さす。
「あー・・・これ?」
「そう。これなら部屋がたくさんあるから解放されたみんなにそれぞれ部屋を割り振れるかなって思うんだけど・・・」
「なるほどー・・・う~・・・できなくはないけど・・・」
湯川がその建物のイラストをタップすると画面に新たなウィンドウが開かれた。消費する資源・資材・資金などが一覧で表示されその一番下に建設期間が表示されていた。
「・・・6ヶ月・・・」
「うん・・・。能力的に建設できなくはないんだけどねぇ~・・・。建設速度から言うと現実的じゃないんだよね。建設を手伝ってもらう妖精さんの数が圧倒的に足りないんだ。あと建設を始めるとその期間中は建設作業から離れられないから、今やってる狩りに支障が出ちゃうね・・・」
「あ~・・・。なるほど。了解。じゃあ、もっと簡単な感じなものにしておこうか・・・」
再び探す。すると3階建ての洋館を見つけた。飾りつけはなく白一色のっぺりとした壁に青色のストレート屋根だ。今の洋館が2階建てなのを考えると1階増えている。これなら全員い部屋を割り振れるのではないかと考えた。
石田がイラストをタップすると先ほどと同じウィンドウが現れた。今度は建設期間が4日と表示された。
「おー・・・司令は見た目より中身で選ぶかんじ?」
「ん?」
湯川が新たに表れたウィンドウの詳細と書かれたボタンをタップした。新たなウィンドウが開き、見取り図などが表示された。1階に事務室、応接室、客間、調理室、食堂、浴室、倉庫などが集まっている。2階に執務室、会議室、秘書室、書庫などがあった。3階はすべて領主の私室となっている。
「この建物は外装に一切の手間をかけない一方で、設備を重視した建物だよ。だから風呂の浴室はバブルジェットがついてたり、各階に給湯室が用意されてたり、調理室が充実していたりするね。多分この設備ならイスズも気に入ってくれるんじゃない?」
湯川がタブレットを持ち上げ石田の元から離れる。タブレットを操作しながら間宮のところへ向かった。
「イスズ~。これどう?」
「どれどれ?」(間宮)
「え~とね~まず広さは今の調理室の1.5倍くらいになって、大型冷蔵庫が1個と・・・」
湯川が間宮に新しい調理室の説明をしていく。2人はしばらく話し合ったのち石田の隣にやってきた。
「OKってさ」
「よし。じゃあ、これで発注をかければ湯川さんが取り組んでくれるのかな?」
「そだよ~。でも、明日の狩りがあるから発注をかけるなら狩りが終わってからのがいいよ?」
「あ、そっか。そうだな。わかった。じゃあ、まあその時発注をかけます。今日はありがとう」
2人が離れ代わりに京藤が執務机に近づいて話しかけた。
「ところで、今日の晩は領主の館の方で寝させてもらっていいのかな?」
「あぁ。いいよ。布団とかは・・・ある?」
「さすがにこの人数分は無いね。でも、寮からこっちへ運んで来ようと思うからそこは大丈夫だよ」
「わかった。じゃあ、今日はもう解散だな。ありがとう」
「お疲れさまでした」
「お疲れさまでした」
こうしてこの日の仕事を終えた。
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翌日、朝食を終えた石田と京藤はルブアの宿屋「ネムレ」の裏庭にゲートを開きやってきた。これからファティを連れてルブアを出るためだった。ファティを連れてルブアを出て領へ戻るまでの間、武官ユニットの皆にはAA-12の射撃訓練を指示しておいた。文官ユニットの2人には引き続きロックリザードの調査を指示している。
天幕を召喚しゲートを閉じる。天幕を戻し宿に入る。宿の一階、レストランにはルブアに連れてきた全員がそろって待っていた。石田が扉を開けて中に入るとそれぞれが挨拶した。
「おはようございます」
「おはようございまーす」
「おはようございます」
・・・
石田は顔を動かしてファティを探す。石田が見つけるより先に座っていたファティのほうが立ち上がり駆けてきた。
「イシダ!待っておったのじゃ!」
「お待たせ。準備はできてる?」
「うむ!すぐにでも出れるぞ!・・・というかすぐに出たいぞ!」
「分かった。でもちょっと待ってくれ」
タミーナを探すとタミーナも立ち上がり石田の元まで歩いてきていた。
「おはようございます。イシダ様」
「おはようございます。今日も露店で?」
「はい」
「頑張ってください。今日はファティを借りていきますね」
「はい」
昨晩のうちにファティを街の外へ連れていくという話は伝えてあり、了承ももらっていた。一応最後にもう一度確認ということで了承をもらった。
石田は続いてフォックス族の族長、ガパティの元へ行く。
「ガパティさん。皆さんにまとめてもらった調査書とても助かりました。また今日もお願いします」
「お役に立てたなら幸いです」
「それと、あと一件お願いしたい事があります」
「はい?なんでしょう」
「マスケット銃と呼ばれる武器があります。その銃を5丁ほど購入しておいてほしいんです」
「マスケット銃・・・ですか?」
ガパティはマスケット銃を知らないようでよくわかっていないような顔をした。すると後方からタミーナが声をかけてきた。
「よろしければ私もお手伝いしましょうか?」
「タミーナさんはマスケット銃をご存じなのですか?」(ガパティ)
「はい。見たことがあります。あの細長い筒から礫を飛ばす武器ですよね?」
「えぇ。そうです」(石田)
「でしたらわかります。多分今日も昼頃には売り切れると思います。その後お手伝いするということでよろしいでしょうか?」
「えぇ。ぜひお願いします。午前中は私たちも調査をして回って、昼過ぎた頃に露店の方へ伺いますね」(ガパティ)
「はい。ではお待ちしてますね」
石田は盗賊討伐の報酬でもらった金貨の入った袋を取り出す。そこから金貨を一枚取り出しそれをポケットにしまう。そして残った金貨を袋ごとガパティに渡した。
「昨日探したところマスケット銃は一丁あたり金貨10枚ほどするらしいです。何があるかわかりませんから一応これをもっていっておいてください」
「え・・・ですが、こんな大金は・・・」
「いえ、まぁ、昨日見たのがたまたま安いものだった可能性もありますからね。持って行ってください」
「は・・・はい」
ガパティは両手で慎重に袋を受け取った。
(よし!これで値引き交渉は任せられるな!)
そう。マスケット銃の買い付けを石田が他の人に任せたのは値切り交渉というのをしたことが無いが故だった。値切り交渉をうまく行える自信がないためガパティに仕事を投げたのだった。
「よし。あとは・・・フェーネさん。今晩ちょっと時間貰えますか?相談させてもらいたいことがあるんです」
「・・・え?はい。冒険者についてですか?」
「う~ん・・・内容はまた今晩に・・・でいいですか?」
「はい。わかりました」
「ありがとうございます。・・・では私たちはこれで」
石田は京藤とファティを連れて宿を出た。ルブアの門に着くと、アディはいなかった。そのまま門をくぐってルブアを出る。少し門から離れたところで石田はファティに向き直った。
「良し。ファティじゃあ、狩りに行っても大丈夫だぞ」
「うむ。ところで吾輩ここの人間と話せないのじゃが・・・戻ってきたらどうすればいいのじゃ?」
「あの無線連絡をしてくれるか?連絡を受けたらすぐに来るから」
「おぉ!なるほど。あれをすればいいのじゃな」
「そう。お願いね」
「承知じゃ」
「あ・・・あと、街の近くで本来の姿に戻るのはやめてくれるか?」
「うむ。大丈夫じゃ。吾輩とて、人からどのようにみられておったかは知っておる。要らぬ混乱を招くつもりはないのじゃ」
そういうとファティは人のサイズままドラゴンの姿へと変わる。
「うむ。ではの。また!」
と言ってファティは地中に泳ぐように潜っていった。
「・・・凄いな」
「ファティはやっぱり地中に潜るのに魔法を使っているのかな?」
「そう・・・じゃないかな?・・・さて、私たちも仕事に取り掛かりますかね」
タブレットを取り出し天幕を呼び出す。ゲートを呼び出し領へと帰ったのだった。




