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冒険者組合を出た後、タミーナたちを探した。タミーナのところへ着くと、数人の商人には売れたがまだまだ在庫はたくさんあるようだった。
「冒険者組合でボールペンを使ったところ、すごく食いついてきましたよ。多分組合の人がこれから来ますよ」
「あっ!ありがとうございます!そうですね・・・冒険者組合も文書を沢山作りますからね・・・盲点でした」
どうやらタミーナさんには冒険者組合のことはあまり頭になかったようだ。
(うん。たくさん売れるといいな・・・)
その後少し話をするとタミーナさんは既に宿を確保しているようだった。ありがたいことにフォックス族や石田達の分も確保してくれているらしい。宿の名前と場所を聞き、フェーネさんを預けてからユニットの皆を引き連れて街を出た。
街を出るとき、門で警備をしている兵士に声をかけられた。
「あれ?もう出ていくんだ?」
「はい?」
その兵士は手に槍を持っている。防具は軍の統一品らしく、ほかの兵士と同じ装備だ。身長は高く190cmはある。30歳手前という見た目。肌は日によく焼けている。四角い顔をしている。しかし、ごつく厳つい感じではなく、さわやかな好青年という感じの顔であった。
全く知らない相手に突然声をかけられたので全員少し軽々する。
「あぁ。すまん。入ってくるときアレーシャ様が出迎えていたのを見てたんだ。だから記憶に残っててな。俺は門番をしているアディヴァンっていうんだ」
「あぁ。イシダという。冒険者だ」
「おう。イシダだな。俺のことはアディって呼んでくれや」
とても気さくな兵士だったので警戒を解きこちらも砕けた形で話す。
「あぁ。アディよろしく」
「おう。それでアレーシャ様が出迎えてたけどお前らどうしたんだ?」
「あー、盗賊の討伐を手伝ったんだよ」
「あーあー!あの!盗賊の規模の割に損害を出さずに帰ってきたから兵士の間でも話題になってたんだよ。あれを手伝ったのがイシダ達だったのか」
「あぁ」
「しかし、あれを手伝ったのがイシダ達だったらあまり出てってほしくないな・・・」
「うん?何故?」
「いやな、まずこの領って特産品が無い。そして物資のほとんどを他領からの輸入に頼っているおかげで、物価が割高だ。おかげでな、冒険者らから人気が無いんだ」
「あー・・・」
「でも、この街は南方か南西方向にある他国と貿易をしようとする商人たちが水の補給に寄るオアシスがあるから、人だけは集まるんだ。人が集まればそれを狙う悪い奴らも集まる・・・」
「なるほど。だから軍が盗賊討伐を行うんだ」
「あぁ。だが、問題もあってな。その軍がな、領民が少ないおかげで人材不足なんだわ。農業ができないおかげで・・・ここの街で活動する人間は軍人か商人か冒険者だ。まぁ、そのため新兵が集まらない」
「うわ~・・・それ辛い」
「そうなんだよ。で、軍の仕事はそれだけじゃない。この街、戦争時は最前線になるもんだから他国の警戒も軍の仕事なんだわ・・・おかげでもー・・・オーバーワークもいいところさ。しかも最近は妙に統制の取れた盗賊団が国境沿いで出ているらしいしな・・・」
(ふ~ん。国境沿いの統制の取れた盗賊団・・・記憶にとどめておこう)
「え・・・って、それ一般人に漏らしていい情報なのか?」
「あ?いや、商人ならみんな知ってるよ。だから隠すようなもんじゃない」
「そっか。あぁそれから、俺たちは街の外で訓練してこようと思っているだけで、夕方になれば帰ってくるよ」
「お?そうか。できればこの街を拠点にした冒険者として活躍してくれると助かるぜ!」
「はは、まぁ、前向きに考えるよ」
「おう。しかし・・・訓練か。冒険者も魔獣と戦ったりするんだよな。そうだよな、軍人みたいに訓練が必要だよな・・・。悪いなイシダ。今の法律では街に入るときには必ず税を徴収することになっている。だから入ってくるときにはまた税を徴収することになるがいいか?」
「あぁ。まぁ、そこらへんは大丈夫だ。これ冒険者証だけど、税はいくらになる?」
「冒険者で・・・Fランクか・・・。そうだな一人、銀貨1枚だから・・・全部で銀貨7枚になるな」
「おっけーそれぐらいなら大丈夫」
「おう。すまんな。俺もちょっとこの件を上に相談してみるわ。これじゃ冒険者が活動しにくいってな」
「おう。助かる。・・・ってか街の発展を真剣に考えているアディはすげぇな!」
「ははっ。よせやい!褒めたって税金はまけてやれねーよ!」
「おうっ。税金安くしたら、むしろその兵士は腐ってやがるからな!それが正解だろ」
「はっはっは。おう。まぁ、気を付けて行って来いよ!」
アディに見送られながら石田たちは門を出た。
(アディと顔がつなげたし、多少無茶してもいいかね?)
門を出た所で天幕を召喚しトラックを引っ張り出す。トラックを引っ張り出したところでアディが数人の兵士を連れて走ってきた。
「お~い!イシダ!なんだこれは!?」
「あーアディか。移動するための・・・馬車みたいなもんだ」
「これが?」
「これが」
「そ・・・そうか」
「帰ってくるときもこれで帰ってくるからよろしく!」
「・・・お、おぅ。俺は今日は18時で交代だから、それまでには帰って来いよ。じゃなきゃこれ知っている奴が一人もいないかもしれんからな!」
「分かった。助かる」
トラックに乗り込み遠くへと走る。町から遠く、見えない位置までやってきた。そこで天幕を張り各ユニットに実地演習を要請した。
古井さんには国境(ルブアより南西方向)の地形情報を集めてもらえるように。ナイチンゲール、湯川には実弾での射撃訓練。瑞山は実弾での砲撃訓練、間宮にはそれぞれの補給活動をお願いした。その間石田は領に帰り、京藤から領政について指導を受けた。
夕方には演習を終えた。日が傾きあたりがオレンジ色に染まっている頃、トラックでルブアに戻った。
「おう。帰ったか。ってかマジであれどこにしまったんだ?」
「まぁ、企業秘密ってところだ」
アディが門のところで疑問をぶつけてきた。
(異空間があってその中に領があるとか・・・信じてくれんのかね?)
信じてもらえないように思えたので、そこははぐらかした。そして即座に話題を変えた。
「今日はネムレという宿にお世話になるんだけど、ここから行くならどう行くのが早い?」
「ネムレか。確かここから行くなら・・・この大通りを歩いて2つ目の交差点を左に曲がって・・・何個目だ?・・・え~と・・・1・2・3・4・・・あ~・・・わからん。案内してやるから先税金を納めてくれるか?」
「おっけ」
金貨を一枚取り出しアディに渡す。
「はっ!?金貨で払うのかよ・・・ちょっと待ってろ」
アディは詰め所に走っていった。しばらく話し込んでから帰ってきた。
「ほい。大銀貨9枚と銀貨3枚な。ってか金貨あるんならあんな安宿じゃなくていいんじゃないのか?」
「うん?」
「いや、ネムレってな、街のはずれのほうにあるぼろい宿なんだよ。料理が美味いから時々行くんだが、立地が悪すぎんだよな」
「へー・・・料理が美味いんだ?」
「あぁ。あそこはな。元軍人のオヤジが家族で切り盛りしてんだよ。そのオヤジはこれからが稼ぎ時って頃に膝に矢を受けてな。歩けるようにはなったんだが、街道巡回なんかの長距離行軍が多いここの軍では行軍についていけないってことで辞めちまったんだ」
「あー・・・それは辛かっただろうな」
「いや、まぁそれほどではなかったらしいがな。あのオヤジは元々軍の輜重隊で料理を専門としていたからその腕を使って料理屋を始めたんだ。辞めるときはそれで食ってける自信があったんだとよ。でも料理だけじゃ稼ぎが悪いってんで今は安宿も経営してるって感じだ」
「あ、そうなんだ」
「あぁ。料理はうまいが宿としてのサービスは期待しちゃダメな感じの宿だ。あーってか、話してたらあの料理食いたくなってきた。今日仕事を終えたら食いに行くわ。今晩ちょっと一杯どうだ?」
(お・・・おう。こいつ結構ぐいぐい来る奴だな・・・)
「あ・・・あー、わかった。付き合おう」
「おっし!じゃあ、張り切って案内するぜ!」
アディが一人で盛り上がり、石田たちを置いて歩き出してしまった。取り残された石田の周りにユニットたちが集まる。
「アディって人物、なんかすごくグイグイ来るよね、大丈夫かな?」(京藤)
「あぁ・・・」(石田)
「何でしょう・・・まさかスパイ?」(古井)
「いえ、でもそれでしたら国境沿いの盗賊の話をするでしょうか?」(瑞山)
「いや~、案外通商破壊が目的で商人に国境越えをためらわせるための情報か~もよ?」(ナイチンゲール)
「いや、あたしの予想的には、全部違うね」(湯川)
全員の視線が湯川に集まる。
「あれは・・・恋だねっ!」
「んん?」
唐突な話の展開に湯川を除く全員の目が点になる。
「まず、頑なに司令にしか話をしないじゃん?あれは多分、女性との会話に慣れていないからだと思うんだよね~。そしてあたしたちが街を出るときの話なんだけどね?彼は司令を見つけた後、あたしたちの中から誰かを探していた。で、多分見つけられなかったんだろ~ね~。残念そうな顔をしてた」
「え・・・えー!あ!じゃあ、タミーナさん?・・・いえ、フェーネさんの可能性もありますね!?」(間宮)
「ふふふ、意外とラエレンちゃんとか~?」(ナイチンゲール)
「いや、年齢差的にダメじゃないかな?」(京藤)
「地域によっては女性側は9歳で結婚可ということもありますよ?」(古井)
キャーキャーと、ユニット達がそれぞれ勝手な予想を立てて盛り上がる。
(う~ん。やっぱりゲームのユニットだったとはいえ、この人たちも普通の人間なんだね~・・・というか女性なんだね~・・・。こういう話題好きだなぁ~(呆))
ふと石田がアディのほうを向くと、石田達がついてきていないことに気づいたアディが石田たちのほうへ走ってきているところだった。
「お~い。イシダ?どうした?」
「あぁ。ごめん。彼女たち・・・ちょっと話が盛り上がっちゃって」
「ふ~ん?まぁいい。行くぞ?」
「了解」
石田達はアディの案内に従って街を歩く。事前情報の通りその宿は街の中心から遠いところにあるようだ。案内するアディは目的の宿に近づいてくると、しきりにあたりを見回す・髪型や衣服などをいじるなどと若干挙動不審なところを見せるようになった。
(うん?・・・いま明後日の方向を向きながら髪の毛を触ったな。今度は・・・建物の影を確認している?紙をいじるのは何かの符号かで・・・やっぱりこいつスパイか?・・・とすると今夜は警戒を厳にしないといけないか・・・?)
目的の宿が見えた。どこか寂びた感じの見た目をした石造り2階建ての建物だった。
建物が確認できるとアディが周囲を見渡した後、「ふー」と息を吐いた。ちなみに石田の後ろを歩いているユニットたちは全員笑顔だった。
「アディ?どうしたんだ?」
「・・・?え?あ・・・あぁ。・・・この店のオヤジに軍でお世話になったことがあってな。頭が上がらねんだ。だから、オヤジがいないか確認していたんだよ」
(・・・今晩酒に誘ったのに、その店の店主に会いたくないってか?・・・ちときつくないかその言い訳・・・)
「あぁ。まぁ店も見えたし俺はここで失礼するよ」
アディは少し急いだ様子でそう宣言する。
「あー・・・おう。ありがとう」
「おう。今晩ここに飲みに来るからよ、さっさと寝るなよ?」
「・・・おう」
「じゃな!」
アディは今来た道をそのまま折り返していった。
石田達は店に入る。店の一階部分は食事場になっているようだった。入口から奥にかけていくつかの円形のテーブルが配置されている。奥にはカウンターで区切られた先に厨房がある。料理する光景が直接見れるような形になっている。入口から見て左側の壁際に、壁に沿って二階へ上がる階段があった。
円形のテーブルの一つにタミーナとターニャ、ラエレン、ナーダ、ザリファ、ファティが座っている。机には水の入ったコップが並べられている。どうやら会話を楽しんでいたようだった。
タミーナが入ってきた石田に気づき席を立つ。
「イシダ様!おかえりなさいませ!すごいですよ!あの後大勢が買いに来てすぐに売り切れてしまいました!」




