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後方兵科が異世界転移!?  作者: お芋さん
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 城の入口。ヒシャムさんに案内されてやってきた。


「あー疲れたのぅ」


 ファティが両手を頭の上に伸ばし背中をそらし、伸びをした。

 ファティは人と会話ができないようだった。というのも変形はできても、元々ドラゴンとしてドラゴンの言語を利用している。この地域の人が話す言葉は理解できないし、話せなかった。だからか街に入ってからは静かにしてくれていた。先ほどの交渉もおそらく理解できていないのだろう。


「ファティ。ありがとうな」

「うん?いや、吾輩が話したところで何もできないじゃろう?」

「そうだね。むしろ厄介なことになるかもしれない。だから静かにしてくれてたんだろ?」

「まぁの」

「申し訳ないんだけど、もうちょっと我慢しててね」

「・・・まだ何かあるのか?・・・ヒトとは面倒な生き物じゃのぅ」

「はは・・・」


 うんざりした顔をしたファティから離れヒシャムの元へ。


「ヒシャムさん。どこか開けた場所ありますか?」

「?・・・あちらに広場があります」

「あー・・・」


 ヒシャムさんに近づき小さな声で話す。


「先ほどいただいたお金を配りたいので人目につかず安全で、天幕が張れる場所が望ましいのですが」

「それでしたら、こちらへ」


 ヒシャムさんは城壁の中に入り、入口の脇の場所を示した。


「こちらでしたら天幕を張っていただいても大丈夫です。ただ、一応私はそばで待機させていただきますが」

「はい。ありがとうございます。ヒシャムさんなら構いませんよ」


 タブレットを取り出し天幕を展開し、全員で中に入る。座席などを動かし全員が集まれるようにする。


「よし。今後について話をしたいと思います」

「「「はい」」」

「まず、この金貨について。敬称略で失礼します。フォックス族60枚、タミーナ、ターニャ、ラエレン、ナーダ、ザリファには4枚づつ。石田、京藤、古井、ナイチンゲール、湯川、間宮、瑞山、ファティの8名に20枚という分配にしようと思う」

「待ってください!」

「それはダメです!」

「ダメだよ!」

「お待ちください!」


 ガパティ、フェーネ、マハ、タミーナがストップをかけた。


「私たちは受け取れません!」(ガパティ)

「いや、でも盗賊の討伐の報酬ですよ?皆さんにも手伝ってもらったじゃないですか」

「ですが、食料や水を分けていただきましたし・・・そのうえ金貨は受け取れません」(フェーネ)

「盗賊の砦で手に入れた食料で十分元が取れましたし、そこは気にされなくていいですよ」

「私たちは私たちで何とかできるから。気にせずに全部もらってくれればいいんだよ」(マハ)

「いや、でも・・・」


 石田が話を続けようとしたところをタミーナが遮った。


「お待ちください!私たち母娘は金貨1枚あれば1ヶ月は生活できます」


(そうなんだ。ってことは日本の物価価値的には金貨1枚20万円くらいか?)


 タミーナの話は続く。


「私たちは行商でこの街によく訪れてました。あと少し税金を納めれば市民権が得られます。だからそこまでしていただかなくても大丈夫です」

「あー・・・そうなんですね・・・」


(う~ん・・・でも、これをそのまま私たちが受け取るのはなぁ・・・)


「そうだ。提案があります。このお金を使ってみんなで商売してみませんか?」

「商売を・・・ですか?」

「はい。あ・・・でも、その前に皆さんは今後どうするか予定あります?」

「いえ特にはありません」(タミーナ)

「私たちもです」(ガパティ)


 周りを見渡すと全員首を横に振っていた。


「了解です。まずこの街で市民権を手に入れることを目標に頑張りたいと考えています。そのために、いろいろとしていこうと思うのですがまずは仕事を手に入れなくてはならないですよね」

「えぇ。そうですね」

「なので、行商の仕事をしようと思います。タミーナさんは、行商の仕事をされてきたんですよね?」

「はい」

「商品の仕入れをお願いしていいですか?」

「・・・それは・・・かまいませんが・・・馬車などもそろえるとなると・・・」

「あぁ。そこは心配ないです。私たちのトラックを利用しましょう」

「いいのですか?」

「はい。私たちは少し情報を集めたいので2・3日はこの街で活動したいと思います。商品の仕入れは4日後程度をめどに行ってもらえればと思います」

「分かりました」

「フォックス族の皆さんには荷物の運搬や護衛などの仕事を手伝っていただければと思います」


「お待ちください!」


 天幕の入口にアレーシャがたっていた。彼女は息を切らせており、ここまで走ってきたことが分かった。彼女の呼吸が落ち着くのを待つ。


「この街を出られるのですか?」

「えぇ。そうですね」


 石田達が求めるのは領の機能を取り戻すことであった。そのためには様々な物資を領に持ち込むこと、同盟関係の構築などが必要だった。現在同盟を・・・と話をしたところで無理であることはわかっていた。そのため物資を手に入れることを第一目標と考えている。で、物資を手に入れるのに何が必要かというと・・・現地通貨だった。現地通貨、要するにお金を手に入れる必要があるのでまずは仕事をという話だった。

 冒険者・・・は勝手なイメージだがおそらくいつでもなることができる。しかしタミーナという経験者がいる現在を逃すと行商人としての仕事を得る機会を失うように思えた。このためまずは行商の仕事をしてみようという考えた。


「いずれここに帰ってくると思いますが、行商の仕事をしようと思います」

「あのっ、仕事を依頼したいのですが・・・」

「仕事ですか・・・?」

「はい。軍での仕事なのですが、お力を借りられればと思いまして」

「伺いましょう」

「その前に、できれば2人で話したいのですが・・・」


 石田は天幕を出た。天幕から少し離れたところまで行きそこで改めてアレーシャと話した。


「ここでいいですか?」


「はい。今回依頼したいのは盗賊の調査です」

「盗賊の調査・・・ですか?」

「はい。協力いただいた盗賊の砦も、冒険者の方に調査してもらったうえで私たちが攻撃しに行ったんです」

「へー・・・そうなんですね」

「えぇ。ただ、仕事を依頼するにあたってですね、一般人に対して仕事を依頼するこはできないんです」

「?」

「皆さんに冒険者として登録していただきたいんです」

「あー・・・冒険者ですか」

「冒険者のランクは新人がFランクからスタートで、E、D、C、B、A、Sとランクが上がるんです。軍からの依頼をこなせるのはDランクからなんです」

「ということは・・・そもそも無理じゃないですか?」

「えぇ。通常ですと無理です。ですが、軍の退役者で冒険者になりたいものに推薦状をしたためることがあります。軍の推薦状を持っていき、冒険者組合の出す簡単な認定試験をパスすることでDランクからスタートできるようです」

「ほんとですか?」

「えぇ。なので仕事を依頼する前に、一つ手間になりますが冒険者としての登録をお願いできますか?」

「分かりました」

「はい。お願いします。・・・あっ、軍が依頼を出すということは伏せておいてください」

「?・・・わかりました。何か不都合があるんですね」

「はい。では、私は推薦状を書いてもって来ますので、もう少しお待ちください」


 アレーシャさんは城の中へ走っていった。

 天幕へと戻ると天幕の入口を少し出た所に京藤さんが待機していた。


「何の話だったの?」

「あー、軍の方で手伝ってほしい仕事があるらしい。ただ、規定があるのか・・・一般人には仕事を依頼できないから、冒険者として登録してほしいって話だった」

「へー。で受けるの?」

「受けようと思う。というのも、アレーシャさんが推薦状を書いてくれるらしい。それを持っていくと少し高いランクからスタート出来るらしいんだ」

「なるほど。税金とかいろいろあれだしね」

「そうそう。ただ、登録に当たって推薦状だけじゃ登録できなくて、なんか冒険者組合から課題が出るらしい。それをこなさないとね」

「了解」

「あと。この情報は一応私たちの間で留めておいて。軍が冒険者に依頼を出すって事はなんか広く知られるとよくないことがあるらしい」

「分かったよ。ところで、『私たち』はどこまで?」

「え~と・・・古井さん、ナイチンゲールさん、湯川さん、間宮さん、瑞山さんあたりまでだね」

「なるほど。軍所属のものまでだね」

「そう。それでお願いします」

「ところで行商のほうはどうするの?」

「行商のほうは先に冒険者登録を済ませてからにしよう。だからあれはあれで取り組むことにしよう」

「わかった。まぁ、行商は輸送科の間宮さんを中心に数人が手伝えばOKな気がするけどね」

「そういう手もあるね。でも、手伝えるなら手伝いたいし、少しこの街に滞在する期間を延ばすってことで話をしておこうと思う」

「了解。あと、冒険者ならフェーネさんが冒険者していたらしいよ」

「なるほど。了解」


 天幕に入る。


「タミーナさん、滞在期間を延ばしたいのですが大丈夫ですか?」

「?どれくらい伸ばしますか?」

「3日ほど。滞在期間を1週間としたいんです」


 3日もあれば冒険者の登録も終わるだろうと思っただけでとくに深い意味はなかった。


「分かりました。その間にいろいろ情報を集めておきますね」

「宿代や食費といった・・・生活費に商品の仕入れを含めてどれくらいのお金が必要になりますか?」

「そうですね・・・金貨2枚ほどあれば大丈夫ですよ」

「分かりました。では5枚渡しておきます。あなたが考えている倍の量ほど買い込んでください」

「・・・えっ?でもトラックに一杯詰め込んだ状態で考えて2枚ですよ?運ぶ手段がないですよ?」

「それは大丈夫です。ちょっと特殊な方法ですけど運べます」


(ふふふ、領に一度荷物を運び込むめば万事解決!その状態で目的地へ移動し、再び領から必要なだけ商品を運び出せば輸送手段に縛られない。・・・ってか、何なら領でいろいろ加工してもいいな・・・いや、むしろそっちの方が高く売れるんじゃないか?)


 石田は取らぬ狸の皮算用をしてニマニマとした顔つきになる。しかし、タミーナは行商の道で食べてきた職業人プロだった。


「相当な量になります。どんな方法で運ぶのかがわからないことには購入できません。商人は信用が第一の仕事です。『買いました。でも運べません』では取引をしてくれた商人との関係が失われます。どんな方法で運ぶのかを説明してもらえませんか」


 思わせぶりな対応で格好をつけようとした石田の話は拒否された。タミーナさんは真剣な顔で石田と向き合っていた。


(・・・確かに彼女の話は筋が通っている。一緒に仕事をしようと持ち掛けたのはこちらだ。情報は与えない、しかし仕事しろ・・・は明らかに間違っていたな・・・)


「すいません。私が間違ってました。説明します。ルブアに近づいた後トラックをどこともなく片付けたことを覚えていますか?」

「はい」

「実は私の空間・・・というか領というか・・・う~ん。まぁ、トラック程の大きさの物をしまえる能力があるんです。だから、その空間に納めてしまえば大量の荷物でも運べます。必要でしたら今からそのトラックを天幕の外に出すことができますが・・・確認されますか?」

「なるほど!それは気づきませんでした。確認は結構です。トラックが収納できるという話ですが、重さはどれくらいまで大丈夫なんですか?」

「重さの制約はありません。とはいえ、人力か、トラックで運び込めないほどの重さの物になるとさすがにどうしようもありませんが」

「なるほど。ということは収納するには動かしてくる必要があるんですね?」

「はい。この天幕を張り、そのすぐそばであれば運び込むことが可能です。が、逆に言うとこの天幕までは荷物を運んでこなくてはならないということですね」

「わかりました。それは本当にすごい力ですね・・・。そのことをあまり話したがらなかったのは・・・あまり知られたくないから?」

「はい。そうです。行商をする方からすればインチキみたいな力ですからね」

「そうですね・・・いくらでもモノを運べるとなると・・・みんな欲しがりますね・・・。この天幕まで運んでこなくてはならないのですが、その時はトラックをお借りできますか?」

「はい。買い付けに行かれるときは声をかけてもらえればトラックを出しますよ。他にも何か必要な手伝いがあるようでしたら言ってください」

「はい。わかりました。では、お願いがあるのですが、買い付けをする日までにも安売りの物があるかもしれません。そういったものを確保しておきたいので、馬車・・・とまではいきませんが手押し車などを買ってもいいですか?」

「手押し車ですか?・・・京藤さん、領にはないっけ?」


 石田は京藤のほうを向き確認する。


「手押し車・・・リヤカーならあるよ」

「ちょっと持ってきてもらえる?」

「え~と、間宮さん貸出って可能?」

「えぇ。大丈夫です。お持ちしますね」


 間宮さんが天幕から出て行った。


「タミーナさん。私たちの持ち物に手押し車に似たものがあるのでそれを使ってください」

「え?いいんですか?」

「はい。今、間宮さんが取りに行きましたのでしばらくお待ちください」

「分かりました」


 タミーナさんから視線を外しフォックス族・・・ガパティの方を向く。


「フォックス族の皆さんお待たせしました。皆さんには行商の仕事を手伝っていただきたいのですがよろしいですか?」

「はい」

「ではタミーナさんの指示に従って適時お手伝いをお願いします。あとは、皆さんは字を書けますか?」

「はい。私のほかに5名が書けます」


 ガパティが返事した。


「良かった。では紙とペンを渡します。この1週間の間にこの街の市場の商品について情報を集めてください。店の名前、商品名、その価格がわかるようにお願いします。京藤さん、フォックス族への指示だしお願いしてもいい?」

「ちょっと待って。大体でいいからどういう感じの書類にまとめるか書いてくれるかい?」

「おっけー」


 京藤さんがタブレットを操作した。彼女がタブレットをしまい、背中から何かを取り出す動作をする。そうすると手にはバインダーと、数枚の白紙とボールペンが用意されていた。京藤はバインダーに紙を挟んでからペンと一緒にイシダへ渡した。


「えぇ!?」


 ユニット以外の人たちが驚く。

 しかしイシダはそれを無視して紙に表を書き込んでいく。紙の一番上に店舗名を書く場所を用意して、その下に3列の表を書き出した。


「こんな感じの表で、一番上に店舗名を書いてもらって、左の欄から商品名、値段、備考ってかんじだね。基本的に店舗ごとに1枚使ってもらうようにお願い」

「なるほど。わかった。それで説明しておくよ」


 と2人で話しているとタミーナが割って入ってきた。


「ちょっと待ってください!」

「「はい?」」


 京藤と石田は共に頭にはてなマークを浮かべ、タミーナに向き直った。


「そ・・・それはなんですかっ!?」


 タミーナはバインダーを指さしている。


「これですか・・・?バインダーという固い板に紙を取り付けた物ですよ?」


 イシダが回答すると、タミーナは頭を横に振った。


「いえ、それもなんですけど、それ以上にその紙に書き込んだその道具はなんですか?!」

「これですか?・・・これはペンっていいます。中にインクが充填されているので、書きたいところにペン先を当てるだけでインクが出てくる仕組みになってます」

「・・・」

「使ってみます?」


 タミーナは無言でうなずいた。バインダーから表を書き込んだ紙を取り外し白紙にしてからペンと一緒に渡した。

 タミーナはそれを受け取ると無言で紙の上にペンを走らせた。ペン先からするすると軌跡が現れる。その線が伸びるにしたがって目が見開かれていった。そして驚いたようにペンを見つめて、突然ペンを紙の上で振った。


「凄い・・・。全然インクが漏れない・・・」

「えぇ。そういう風に作られてますから」


 タミーナが石田のほうを見てズズイと近づく。石田はその距離に驚き後ろに下がる。


「これは数があるのっ?!」

「えー・・・はい。結構ありますよ?」

「でしたらこれ売りませんか!?」

「これを・・・ですか?」

「えぇ!商人ならこれを絶対に欲しがりますよ!」

「はぁ・・・そんなに欲しがるんですかね?」


 と話をしていると天幕の入口からアレーシャさんが入ってきた。


「イシダ様、推薦状が用意できまし・・・え、あ?えぇぇっ!?」


 タミーナさんがアレーシャさんに見せつけるようにバインダーを持ち、ペンで紙に意味のない線を引きまくっていた。

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