↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
帝国の崩壊  作者: 梶 ゆう


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

4/7

帝国の崩壊4

クロスロード大公国に加えゲートリング大公国を傘下に収めた帝国の治世は盤石に思えたが、突如スクルド王国が帝国のゲートリング大公国領に侵攻を開始する。


スクルド王国13万の侵攻に対し、帝国はゲートリング大公国6万、帝国軍本隊4万、クロスロード大公国2万、合計12万の大軍を編制し、皇帝陛下自らが出陣すると言う盤石の態勢でカールキューレ平原にて迎え撃つ。


歩兵だけで編成された13万に対し、経験豊かな3万の騎兵を有する帝国に敗北を心配する者はいなかった。



短編なので、連日投稿致します。

「ベルント将軍。

あれを見て下さい。

もうダメです」

言われるまでもなく、状況は解った。


「最悪だ」


ゲートリング大公国の兵がこちらに向けて槍を構えている。

その数約3万。


俺が友の首を抱き締め慟哭している間に3万の帝国の歩兵も壊滅させられた様だ。


だが、ゲートリング大公国の兵が半減している事から考えて、帝国の歩兵は皇帝陛下が討ち取られた後も善戦したのも確からしい。


「俺は、クロスロード大公国ベルント・フォン・ウノシルデス侯爵。

そちらの軍勢はゲートリング大公国とお見受けする。

カール=ヨーアン・ノルドマン大公と話がしたい」

今更、話しをしてどうなるものでも無いが、残り少ない俺の人生だ、好きにさせてもらう。


「ベルント将軍。

まさかとは思うが降伏の申し出か?

会見の用意をする、暫し待たれよ」

ゲートリング大公国の主だった将の顔を俺は知っているが、こいつは知らない。

だが、共の者を10人程伴っただけで、会見の席まで用意するのだからそれなりの将であるのだろう。


「貴様は?」

俺も速記が出来る者と比較的傷の浅い者2名を連れて会見の席に着く。


「ゲートリング王国第一師団長エンゲルブレクト・ノルランデル侯爵である」

耳がまだ全く聞こえないので、無事な騎士に速記させる。

速記には大公国ではなく、王国と書かれている。


「貴様如きでは話にならぬ。俺はカール=ヨーアン大公に話がある」


「ああ、売国奴のカール=ヨーアンであれば、我が陣にあるぞ。

もっとも首から下は無いので貴様と話は出来んがな」

耳は聞こえなくても、奴の口を見ていれば大体の事は判る。

しかし、大事な事なので速記が終わるまで待つ。


「味方ばかりか己(おの)が使えし主君をも裏切とは、つくずく見下げ果てた奴」


「まあ、そう言うな。

それに俺は奴に仕えた事は無いから、裏切では無い。

貴様も帝国に国を売った売国奴に仕えるのは本心では嫌であったのでは無いか?」

やはり俺はこいつを知らない。

激昂して殺気に溢れている俺を前にして動じないほどの奴であれば忘れるはずがない。


「今、我が主アルミン・フォン・クロスロードを売国奴と貴様は言ったな」

人間腹の底から怒りが込み上げて来た時は、冷静な口調になるらしい。


「おう! 言ったとも。

己(おのれ)可愛さに己(おのれ)が守るべき国も国民も帝国に差し出した売国奴であろうが」

速記を行っている騎士が怒りに奴を睨みつける。

後に立つ二人の騎士の殺気に奴の護衛が剣の柄に手を掛ける。


「売国では無い。互いの国の利害を調整し、無駄な戦を避ける為の勇者の知恵だ」


「戦(いくさ)で死ぬのが嫌になっただけであろう」

エンゲルブレクトが護衛の騎士の剣の柄から手を放せと合図を行う。


「無駄死(むだじに)を喜ぶ騎士が何処(どこ)にいる。

それに皇帝の妃はアルミン公王の妹、皇太子のお二人にはクロスロード大公国の血も流れている。

文明国同士がお互いの戦力を認め合い互いに知恵を出し合った結果だ」


「おお、その二人の血なら良く知っているぞ、売国奴に相応しい薄汚い汚れた赤黒い血であったわ。

欲しいのなら俺の話に乗れば譲ってやっても良い。

持って帰り易いように首から下は切り離しておいてやったぞ」

こいつは帝国の皇帝と皇太子を倒し自分の復讐が果たされたと満足したのか?


「また、利益の無い小競り合いが永遠に続く世の中に戻すつもりか」


「その通り、われら貴族に奴隷の平和を受け入れる事は出来ない。

このカールキューレ平原はゲートリング王国の土地だ。

帝国の好きにされては、われらゲートリングの貴族はゲートリングの民を治める事は出来ない」

(アレクシス皇帝やアルミン大公国王に比べて、こいつは地方領主の考えしかない小物だ)


「その結果ゲートリング大公国が滅んでも?」


「もうゲートリング大公国は滅んだ、今ここの土地を治めるのはゲートリング王国だ」

速記が間に合わないが、口を見ればもうこいつの言っている事は判る。


「その結果ゲートリング王国とやらが滅んでも良いのか」


「今滅びかけているのは、帝国の方だがな」

皮肉と侮蔑を込めて、エンゲルブレクトが笑う。


「もはや貴様と話す事は何も無い。

貴様の陣を破り国に帰らせてもらう」

俺の言葉に俺に付いて来た二人の騎士達が左右に広がる。


「待て、帝国が滅んだ以上、私にクロスロード大公国と遣り合うつもりは無い。

同じ元帝国の元属領同士、今後は手を組まないか、同盟と言う事でも良い。

返答や如何に?」

ここで偽りを言うのは易しい、政治的にもそれが正しいのだろう。

だが俺の騎士としての誇りがそれを許さない。

考える余地も無かった。


「断る」


「正々堂々、即答するとは、さすがベルント・フォン・ウノシルデス。

惜しい、もう一度問う。

ウノシルディス地方だけでも良い、我々と結ばないか」


「くどい。

おそらく帝国は崩壊するだろう。

将来は、クロスロード大公国やウノシルディスが貴様と手を組む事になるかもしれない。

だが、それは俺が死んだ後の者が決める事。

俺が生きている間は、貴様と手を組む事は決してない。

ウノシルディス武勇、紅旗の勇、そう言われる理由をとくと理解するが良い」


「そうか、誠に惜しいが良く分かった。

ウノシルディス武勇、拝見させて頂こう。

おい、酒と水をクロスロード大公国に渡せ。

半刻後に攻撃を開始する。

別れを惜しむが良い。

それとあの馬には攻撃はしない。

祖国に届ける物があるならば託すが良い。

無事に着く事までは保証出来ないがな」


「分かった。

二度と会う事はないだろうが、貴様の作る国が帝国よりも良い国になる事を祈る」


「そうか。

それは有難い、礼を言おう。

さらばだ」

エンゲルブレクトはそう言うと自分の陣に戻って行く。


   ◆    ◆    ◆    ◆


俺が部隊に戻ると本当に酒と水が届けられた。


それを生き残った者達に配り、酒盛りを始める。

(今更毒殺でもあるまい。それならそれで構わない)


同時に生き残った者達から戦場で何が起こったのか可能な限り聞き取り、樽の様な物が粉々に砕け散ったと言う証言を得る。


どういう事なのかは、依然不明であるが、出来る限りを書き留め、ホリゾントに縛りつける。

同時に個人の遺品となる物も集めるが、字を書けない者も多い、そう言う者は背縫いを剥ぎ取り血判を押させる。

主の無事を願って母や妻、恋人、娘達が託した背縫いが遺品になるのは皮肉だが、何も返らない2万の騎兵に比べれば、マシだろう。


俺はホリゾントの頭絡(とうらく)を外しながら語り掛ける

「おい、ホリゾント!

お前はシルディア様の所に必ず帰れ。

この戦場を駆け抜け、必ずアルミンと戦旗をそして皆の思いをシルディア様に届けよ。

さすがシルディア様の愛馬と言われるだけの働きをしてみせよ。

行け!!」

最後にハミを外し、首をポンと叩くとホリゾントは躊躇(ためらい)いもせずに一気に敵陣に向けて駆け出す。


「先頭を切って敵陣に斬り込むとは大した度胸だ!

よし! ホリゾントに続け!

力の限り駆け抜けよ」


俺は左手で剣を抜き放った。

左利きであった事を生涯の最後で俺は感謝した。


「「うぉーーー! クロスロード万ーーー歳!」」


ホリゾントが駆け抜けた敵陣の隙間を目掛けて生き残った200人が一斉に突撃を開始する。

『頑張ったのに悪女扱いは酷くないですか』の外伝です。

精強を誇ったクロスロードの騎士団が何故壊滅したのか?

たかが10万の蛮族の侵攻に何故帝国は対抗出来なかったのか。

そして、シルディが学園の生徒に軍事組織に組み替える必要があったのかが明らかになります。


この作品が面白いと思われましたら下の★をクリックしていただける作者の励みになります。


又、ご意見・感想なども頂けましたら嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。