帝国の崩壊3
クロスロード大公国に加えゲートリング大公国を傘下に収めた帝国の治世は盤石に思えたが、突如スクルド王国が帝国のゲートリング大公国領に侵攻を開始する。
スクルド王国13万の侵攻に対し、帝国はゲートリング大公国6万、帝国軍本隊4万、クロスロード大公国2万、合計12万の大軍を編制し、皇帝陛下自らが出陣すると言う盤石の態勢でカールキューレ平原にて迎え撃つ。
歩兵だけで編成された13万に対し、経験豊かな3万の騎兵を有する帝国に敗北を心配する者はいなかった。
短編なので、連日投稿致します。
「アルミン様、皇帝は皇太子二人も突撃に加えるようですが、公太子お二人はどうされますか」
だが一応アルミンの意思を俺は確認せずにはいられない。
「当然突撃させる。(陛下の突撃に置いてゆく訳には行かん)」
俺としては陛下の突撃も正直止めて欲しい。
だが、帝国の武威を示す事がこの戦の目的である以上お停めする事はかなうまい。
「エリーアス殿はともかくとしても、ブルーノ様は軍事よりも内政のお方、連れてくるべきではありませんでしたな」
今更ではあるが、つい口に出してしまった。
「言うなベルント、そんな事は良く解っている。
だが、尚武の国であるクロスロード大公国を率いる以上、武人としての功績は必要な事だ。
その箔付けが皇帝陛下の御親征の戦いであれば問題あるまい」
そう言いながら苦笑いをするアルミン公王。
「そうですな」
さすがにこれ以上は未練だ。
それに箔付けの条件としては整っているし、政治的意味も大きい。
確かに戦術上必要であるならば仕方ないが、公王や皇太子が騎兵の突撃の先頭に立つのは危険なだけで、政治的な象徴以外の意味は無い。
「私の息子のアンゼルムもどちらかと言えば内政肌だからこの戦旗を託せられるかどうか」
やっと10歳になったばかりの息子は利発である事は確かであるが、武門の長としては少々物足りない。
「貴公こそ、姉のフロレンティーナに託せば良いではないか。
昔からシルディアとつるんでいる様だが、俺の目からしても良い槍捌きを見せていたぞ」
武門の長としては、フローラの方が向いているが、それはそれで頭の痛い問題だ。
何故なら・・
「おいおい、爵位継承権は男子に限ると言う帝国法を忘れたのか」
「あの帝国法か。
俺としてはあの法の助けられた所も有るので何とも言えんが、あの法に従ってシルディアが大人しく爵位継承権を放棄してくれなかったらブルーノとエリーアスにすんなりと大公位を継がせる訳には行かなかった。
それでも色々とヤラカシてくれているのでグランドの所のブルックハルトと婚約させて落ち着かせる事にしたがな」
アルミンがシルディアの事を話すとシルディア様の愛馬のホリゾントの耳がクルリと我々の方を向く。
そうえいば出陣前にアルミンの愛馬の妊娠が発覚、その種馬がホリゾントであったのを責任に感じてシルディア様が愛馬をお貸しなされたと聞いた。
(おいホリゾント、別にお前が責任を感じる事はないんだぞ、お前程の馬ならどんな牝馬もお前の仔を欲しがるはずだ)
心の中で言うと、ホリゾントが『すまぬ』という風に俺の方に横顔を見せる。
「あのルーペルト・フォン・グランドと俺の親父のバルタザールがシルディア様に目をつけていたぞ」
ブルックハルトと婚約させて一安心と思っているらしいアルミンに「甘い」と言ってやる。
「何! あの妖怪にバルタザール殿までか! 何故直ぐに教えてくれなかった」
謀り事に関しては俺とお前が束になっても勝てないあの怪物と親父の暗躍に俺が気が付く訳がないだろう。
「今、教えた。
やはり知らなかったか?
大公国公王を出し抜くとはさすが怪物」
(そして親父)
「オカシイとは思っていたのだ」
これはアルミンの負け惜しみらしい。
「8歳位からシルディア様がブルックハルトとエルフリーデ、それに俺の娘のフロレンティーナを巻き込んで帝国のギルド相手に派手に色々やっているのは、知っているな?」
アルミンが俺の言葉に頷く。
「ブルックハルトとの婚約をシルディア様が素直に認めたとすれば、シナリオを描いたのは間違いなくあの怪物と親父だ」
俺の暴露話に改めてシルディア様の行いを振り返り始めたらしい。
「・・・・シルディアが8歳の時に大公国の当主相続権を放棄する代わりにウノシルディス地方とグランド領の間の未開拓の土地を化粧領として欲しいと言い出したのでその通りに与えたが、シルディアだけの考えではなかったわけか」
有能な大公なのだが、娘には油断したのが俺には可笑しかった。
「おいおい、いくらシルディア様が利発でもその考えが8歳の子供の知恵の訳ないだろう」
「確かに言われてみれば。
まあ、別にクロスロードに害を及ぼす事はではないから大丈夫だろう」
「ああ、あのクロスロードの妖怪と親父の二人を惹きつける魅力が8歳のシルディア様にはあったわけだ」
俺とお前は、そうでは無かったがな。
「大公国公王が8歳の娘に乗せられるとは愉快、愉快、さすが我が娘」
開き直って笑い飛ばそうとしても無駄だアルミン。
「しかし、その原野にシルディア様が作った学園と街は今や5万を越える大都市だ。
実際、たったの8年で大したものだ。
もう妖怪はいないが、代わりに現当主のランドルフ・フォン・グランドが後ろについているのもあるだろうがな」
「グラント侯爵家が知らない間に強く成り過ぎている。
貴様の所のフロレンティーナをシュナイザーの嫁にどうだ?
一応俺の次の次の大公爵家第一夫人だ」
「それも有りだが、まあこの戦が終わったら考えておこう」
だいたい、ブルックハルトとシルディア様を婚約させてグラント侯爵家に力を付けさせたのはお前だがな。
「そうしよう。
戦の前に約束をするのは厳禁だからな」
『頑張ったのに悪女扱いは酷くないですか』の外伝です。
精強を誇ったクロスロードの騎士団が何故壊滅したのか?
たかが10万の蛮族の侵攻に何故帝国は対抗出来なかったのか。
そして、シルディが学園の生徒に軍事組織に組み替える必要があったのかが明らかになります。
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