帝国の崩壊2
クロスロード大公国に加えゲートリング大公国を傘下に収めた帝国の治世は盤石に思えたが、突如スクルド王国が帝国のゲートリング大公国領に侵攻を開始する。
スクルド王国13万の侵攻に対し、帝国はゲートリング大公国6万、帝国軍本隊4万、クロスロード大公国2万、合計12万の大軍を編制し、皇帝陛下自らが出陣すると言う盤石の態勢でカールキューレ平原にて迎え撃つ。
歩兵だけで編成された13万に対し、経験豊かな3万の騎兵を有する帝国に敗北を心配する者はいなかった。
短編なので、連日投稿致します。
「ベルント将軍、そろそろ本陣を押し出しても良いのではないか」
皇帝アレクシス陛下がわざわざ馬を寄せて来てに俺に尋ねる。
「どう見る、ベルント。儂もソロソロ頃合いだと思うが」
俺の親友にして戦友、そして主君でもあるアルミンも皇帝陛下と同意見の様だ。
初陣以来二人で最強の騎兵部隊を育て上げ、戦場を駆け巡った。
武将としてもクロスロード大公国の大公としても文句の付けようが無い我が主君。
因みにその戦争の相手と言うのは目の前に立つ皇帝アレクシスである訳だが。
「両軍合わせて25万の会戦と言うのは帝国でも初めてです。
勿論クロスロード大公国にもこの規模の経験はありません。
騎兵の突撃にはタイミングが重要ですが、本陣から全体の戦局を見極める事はこの戦場では困難です。
この戦に関しては前線からの報告を信じるしかありません」
俺の迷いを含んだ消極的な意見でにも関わらず、皇帝もアルミンも頷く。
「その通りだがベルント将軍。
会戦の開始より既に3時間、スクルド王国の前衛を既に打ち破りつつあるが、歩兵の披露は極限に達し、戦線は膠着している。
今、3万騎による突撃で1万まですり減らしたスクルド王国の前衛中央軍を突き破り、中央軍4万を背面展開によって瓦解させれば勝敗は決する」
やはり皇帝アレクシス陛下は騎兵による突撃を主張する。
「陛下がおっしゃられる通り、帝国の前衛中央は既に敵の前衛半ばまで食い込みつつある。
3万の騎兵の突撃を支える事は出来まい。
敵の前衛を突破の上、背面展開して背後から敵の前衛を叩けば中央と本陣は撤退を図るであろう。
それにこの戦いは帝国の武威を示す必要がある戦いでもある。
ソロソロ決着を付けるべきだ」
アルミン公王の意見に陛下も頷く。
スクルド王国の総兵力は歩兵ばかり13万。
それに対して我が軍はゲートリング大公国が6万、帝国が3万で合計9万の歩兵に加え、1万の騎兵、そして切り札としてて我がクロスロード大公国の騎兵2万。
9万の歩兵で13万の歩兵の前進を抑え込み、3万の騎兵が一気に迂回して敵本陣に切り込めばこの戦いは終わる。
ただ、両脇を山と川に挟まれた地形により左右から騎兵が回り込む余裕が無い。
スクルド王国にしてみれば、そういう地形であるからこそ、この地を会戦場所に選んだわけであるが、
帝国の歩兵の奮闘により、敵中央を突破し背面展開を行う目が出て来た。
この皇帝陛下の御前である事に恥じない奮闘は、さすが帝国の歩兵と言える。
「わかりました陛下。
帝国歩兵が切り開いた血路、その血路を使い騎兵による総攻撃を行いましょう」
俺は皇帝の作戦に同意した。
「そうか! 将軍が同意してくれるか!」
陛下は帝国の家臣では無いにも関わらず、俺の事を公式の場でも将軍と呼ぶ。
自分の首が危うい所まで追い詰めたのが俺であるにも関わらず、敬意を込めて将軍と呼ぶ。
クロスロード大公国が帝国と講和を行ない帝国に組み込まれた当初は、それに反発する者もいたが、それは皇帝の怒りを買う行為でしか無かった。
それ以来、俺の尊称は将軍で定着しているが、肝心の帝国にもクロスロードにも、正式に将軍と言われる役職は無い。
「伝令ーー伝令!」
伝令が下馬した上で皇帝陛下の前で走り寄り膝付く。
「伝令ご苦労。報告せよ」
皇帝陛下の幕僚が伝令の前に進みでる。
「はっ、我が軍の中央部隊が敵前衛を撃滅。
左右に展開、敵前衛左翼と右翼の側面に取り付きました。
敵中央部隊まで敵はいません」
「伝令ご苦労、後方にて休息せよ」
幕僚が伝令を労い下がらせる。
「急かされましたな」
アルミンが苦笑混じりに言う。
「全くだ、皇帝のケツを蹴飛ばすとは、誰か知らんが晩餐会で締め上げてやる」
陛下は冗談で済まされるが、前線を任せる部隊長の名前が出ない事に俺は不安を感じる。
「伝令ーー伝令! ゲートリング大公国より意見具申!」
ゲートリング大公国からに伝令が下馬した上で皇帝陛下の幕僚の膝付く。
「伝令ご苦労。意見具申せよ」
皇帝陛下の幕僚が伝令の前に進みでる。
「ゲートリング大公国カール=ヨーアン・ノルドマン公王よりアレクシス皇帝に意見具申致します。
詳細はこちらに」
伝令から書簡を受け取った幕僚が一読した上で皇帝陛下に手渡す。
「カールは何と言ってきましたか?」
アルミン公王の問いに
「帝国の前衛の働きを褒めちぎった上で、今が儂の突撃によって敵の中軍を抜いて本陣を叩いて勝利を決定させるチャンスだとよ」
さっきまで突撃に決定した事に上機嫌であった皇帝が目に見えて不機嫌になる。
「陛下、発言をお許し下さい」
カール=ヨーアンの楽観的見込みに不安を感じた俺は発言を求めた。
「どうした将軍。戦場ではいちいち発言の許可を求める必要は無いぞ」
俺の発言許可に若干不機嫌が直ったらしいアレクシス皇帝
「カール=ヨーアンは歩兵しか指揮をした事がありません。
騎兵は突撃力を生かしてこその騎兵、歩兵の様に数で押し合うものではありません。
敵の中軍を抜けば、確かに敵の本陣は目の前ですが、騎兵の突進力は失われています・・・」
俺の発言を皇帝は途中で遮り
「中軍に拘らず作戦通りに背面展開を行った方が良いと言う事だな。将軍」
「ご明察恐れ入ります」
「だがな将軍、カール=ヨーアンは意見具申を装い、帝国騎兵の実力を披露しろと言っているのだ」
また皇帝の機嫌が悪くなる。
まったくカール=ヨーアン公王も余計な意見具申などしてくれたものだ。
俺はアルミン公王を見て頷いた。
「陛下、カール=ヨーアン公王の意見など無視してしまいなさい。
どうせ敵の中軍を抜けば敵の本陣は下がるしかないのです。
苛烈に突撃して、速やかに引く、それこそが皇帝陛下の突撃と言う物です。
数を頼りに殴り合うだけの歩兵とは違うのですから」
「そうだな、アルミン公王、その通りだ。
当初の作戦通りに敵の中軍を抜いた後は背面展開を行う」
皇帝陛下は敵本陣に雪崩込み敵を壊滅させると言う迷いが吹っ切れた様だ。
「将軍、二人の皇太子に帝国旗と戦旗を持たせて儂に後に続かせる」
皇帝の突撃か。
世継ぎある皇太子二人を旗持ちとして連れて行く事に不安を感じ無くも無いが、まあ問題は無かろう。
それよりも、これではアルミンの息子達も連れて行くしかあるまい。
「ではなアルミン公王、ベルント将軍。
儂の突撃の後の仕上げは任せるぞ」
皇帝陛下は馬首をめぐらし前方に既に整列している自軍にもどられる。
「皇帝陛下に栄光を!」
「帝国に勝利を!」
俺とアルミン公王はそんな皇帝を見送った。
『頑張ったのに悪女扱いは酷くないですか』の外伝です。
精強を誇ったクロスロードの騎士団が何故壊滅したのか?
たかが10万の蛮族の侵攻に何故帝国は対抗出来なかったのか。
そして、シルディが学園の生徒に軍事組織に組み替える必要があったのかが明らかになります。
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