表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
プロポーズはいらない  作者: 5’4”
38/42

38. 遠征前

「遠征があるの?」


 注文通りのコーヒーとおまけのクッキーを席まで運んでいったら、ジェッドとケイファスがそう話してくれた。


「じゃあ、遠征の前にみんなでご飯食べに行こ?」


 マスターと奥さまにも声をかけると、「若者(わかもん)だけで楽しんで()ぃや」と一度は遠慮されたがぜひにと誘った。


 人数がいると多数の料理を楽しめて、盛り上がった。全員お酒が飲める年齢だったけれど、示し合わすことなくお酒は避けた。それでもみんな笑顔で話は尽きない。




「ほんなら気ぃつけるんやで」


「遠征がんばってね」


 店を出たところでマスターと奥さまと別れる。帰りにはジェッドがウナを送って、ケイファスがアリサを送っていってくれることになった。


 家の目の前になって、アリサは室内を指差す。


「ちょっとした相談があるんだけど、いい?」


「うん、どうしたの?」


 中ではうさぎたちがいつもより元気に出迎えてくれた。忙しなくケイファスの匂いを嗅ぐ仕草をして、ズボンの裾を引っ張る。


「すごい元気だ。大切にしてくれてるんだね、ありがとう」


「ううん、生みの親に会えて嬉しいんだよ」


 じゃれてくるうさぎたちに合わせて、床に座った。ケイファスから構ってもらえて満足したようで、今度はアリサの膝に擦り寄ってくる。


「相談っていうのはね。ケイファスからもらったこの雪うさぎたちね、名前がまだないの。一緒に考えてくれる?」


「……ちなみに名前の候補はある?」


「そうだねぇ、『ケイ』と『ファス』とか?」


 意図に気づいたケイファスは眉尻を下げた。


「他の候補も訊いてもいい?」


「うーん。じゃあ、『オー』と『チー』」


「それはどこ由来?」


「おおきい と ちいさい」


 微妙な顔はよしてほしい。名付けの才能がないなんて自覚はちゃんとある。だからこそ相談しているのだ。


「……『ダー』と『シャオ』にしてみる?」


「なにそれ?」


「イーユァン国の公用語で、大きいと小さい。()(xiǎo)だよ。アリサの発想からそう変わらないけど」


 外国語に明るいなんてのも、長生きしているからかな。まだまだ知らない部分がたくさんある。


 それは置いておいて、アリサが二匹を目の前に並べる。


「ダー、シャオ? お名前気に入った?」


 揃って頭を大きく上下させている。生みの親だからか飼い主以上に懐いている気がする。ケイファスが家にくるとこれでもかと飛び跳ねるし、突進していく。小さい(ように見える)うさぎたち、たわむれる長身の男、まるごとかわいいけれども。


 ケイファスがそばにいるとほっとするし、うさぎたちには癒される。


「ケイファスが来るとすごい喜びようなんだよね。やっぱりママだから?」


 伸ばした耳を白い背中ごと撫でていると、「……そこはパパとか、親じゃ……」と肩を落としている。


「うーん、まぁケイファス優しいから動物に好かれそうだしねぇ」


「そうでもないよ。ダーとシャオの場合は僕の魔力の影響……かも」


「会って魔力を供給すると元気になるってこと? でもいままで魔力が尽きたこともないと思うし、病気に見えるとか元気がなさすぎるってところも見たことないよ」


「魔力の供給はしてないし、必要ないよ。僕が近づくとこの子たちは僕の感情に引っ張られる、んだと思う」


 アリサは小首をかしげる。


「僕が、アリサと時間を過ごせて幸せだってこと」


 言った直後にアリサの髪を一房とって毛先にキスをしてきたのは、顔を見せないように、だったと思う。きっと、赤くなってかわいいのに。


 でも、ここは誤魔化されてあげよう。


「この子たち、寿命ってあるの?」


「僕が生きてる限りは半永久的に動いてると思うよ」


「なら長生きするねぇ」


 ふんわりと笑った。


「じゃあ、遅くなったし僕は帰るね」


「うん、来てくれてありがとう。気をつけてね。おやすみなさい」


 おやすみ、と返すケイファスの首に腕を伸ばし、引き下ろして、つま先立ちをする。


 背後で二羽がはしゃいでいた。


 努力しないと埋まらないこの身長差は、ちょっぴり不便かも。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ