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アナザー・フロンティア・オンライン ~生産系スキルを極めたらチートなNPCを雇えるようになりました~  作者: ぺんぎん
第二十章

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裸の王様

 

「お久しぶりでござりまする、パルフェ氏!」


「シンシアちゃん、いらっしゃい。元気――そうだね?」


「もちろん元気でござる! 拙者、美少女に会うときは常に元気ですからな! ここでしか採れない栄養があるのでいつも助かっているでござる! ほんと、助かる……」


「美少女と言われても微妙に嬉しくないのはなんでだろう?」


 普段、影に生まれ影に生きる的な人生を送っているシンシアだが、誰がどう見ても関わりたくないと思えるレベルのテンションで拠点へとやってきた。


 見た目、誰もが振り向くような美少女ではあるのだが、常に前髪で目を隠した上に気配を消し、背景に溶け込んで歩く姿はまさに現代の忍びといえるほどで、その実態を知っている人はほぼいない。むしろ認識している人が少ない。


 そんなシンシアはジニーの親友であり、今回のパルフェの件に関しても味方すると悩むそぶりもなく言ったという。


 シンシアは学生であるが服飾ブランド「黒薔薇」で服飾関係の仕事をしているので、もし時間があったら来て欲しいとパルフェは連絡を入れていた。そして今日、テンション高めでやってきたのだ。


「しかし、パルフェ氏、なんといいますか、漫画みたいな人生を送っておりますな。拙者からすれば妄想が捗る感じですが、本人からすれば迷惑この上ないこと……お察ししますぞ」


「まったくね。私は普通にしていたいんだけど」


「それは世界が許さんのでしょう。星の導き、因果の定め、人生のフラグバグ……!」


「一番の理由はルナリアさんなんだけどね」


 そもそもルナリアがパルフェを次期財団統括の後継者だと言っていなければ起きなかったことだ。たとえ、キャンサーで後継者争いがあったとしても、パルフェには全く関係のないこと。それが継承者の箔付のためにお見合いさせてほしいという話になり、ややこしくなっている。


 今では多くの財団がパルフェに同情気味だ。例外はキャンサーのみ。財団当主の後継者争いで今や財団が分裂する可能性があり、それどころではない状態まで来ている。それでもパルフェと婚姻できれば何とかなると思っている当主の夫人とノースだ。


 ただ、キャンサーの当主に関しては全くと言うほど情報が出てこないようで、病で意識がないとか、すでに亡くなっているのでは、などの噂もあると言う。


 たとえどんな状況でも全く関係ないパルフェとしては、もう潰れたら、という過激な考えまで浮かんでいる。とはいえ、各財団のパワーバランスを考えるとそうもいかないと各財団が嫌々ながらもフォローしている形だ。


 それはそれとして、今回の件でパルフェが巻き込んでいる人が多いのは事実。なのでパルフェは一人一人頭を下げて協力を仰いでいる。


 パルフェは改めてシンシアの方を見た。


「シンシアちゃん、話はすでに伝えてあるけど――」


「パルフェ氏! みなまで言う必要はございませんぞ!」


「え?」


「当然、手を貸すに決まっているでござる! 拙者、ジニー氏やパルフェ氏、それにここで知り合った多くの方に感謝しておりますぞ! 学校の隅で机の傷を数えているのがお似合いの拙者が、多くの方と関わり、両親と同じ黒薔薇で働けるようになったのは皆さまのおかげ! その恩をここで返すことが出来なければいつ返すんだというものでござる! たとえ火の中、水の中! ブラックホールや黄泉平坂にだってご一緒いたしまするー!」


 両手を交差させながら決め顔でポーズをとるシンシア。ふざけているようにも思えるが、前髪で隠れているにもかかわらず目にはかなりの光がともっている。仮想現実の中ではあるが。


 少々呆気に取られていたパルフェだが、シンシアがふざけて言っているわけではなく、間違いなく本気で言っていると感じた。なのでシンシアの手を取って笑顔になる。


「ありがとう、シンシアちゃん」


「いやいや、お気になさらず。ただ――」


「ただ?」


 なぜかもじもじしているシンシアだが、意を決したのか、前髪の下でくわっと目が見開いた。


「良ければ現実で拙者が作った服でコスプレして欲しいでござる! あ! 大丈夫でござるよ! 合法、合法ですから!」


「……合法のコスプレって何? 違法があるの?」


「それは言わぬが花……! 世の中には知ってはならない修羅の道もあるのでござるよ……」


 なにが合法でなにが違法なコスプレなのかは不明だが、それくらいならまあいいかと思うパルフェだ。そもそもジニーの誕生日では結構な頻度で色々な服を着ている。自分一人なら嫌だが、ナツやクリスを巻き込めばやれないこともない。いざとなったらリックやアベルを巻き込むのも辞さない。


 そのような約束はまた後でということにした。そもそも忙しい合間を縫ってシンシアが来てくれたのだ。これでもかと言うほどのお菓子や飲み物を用意する。


 そもそもシンシアが来るのは久しぶりだ。黒薔薇での仕事は本格的ではないにしろ、学業を含めて色々と忙しいということでAFOへのログインも減っていた。せめて今日くらいはゆっくりして欲しいとパルフェは思っている。


「やっぱり黒薔薇の仕事って忙しいの?」


 テーブルの上にお菓子や飲み物を広げ、パルフェはクッキーを食べながら尋ねる。シンシアの方もクッキーをかじってから頷いた。


「そうでござるな。いまはまだ簡単なお手伝いと言ったレベルの仕事ですが、まったく気が抜けませぬ。黒薔薇の皆様の仕事を近くで見ることができるのですが、皆様と拙者を比べたら月とすっぽん、ユグドラシルとドワーフウィロー、ゲームクリア後の裏ボスとチュートリアルの雑魚モンスターくらいの差がありまする。その分、参考になるといいますか、日々、コツコツと経験値を貯めさせてもらっておりますぞ」


「へー、私と同い年なのにシンシアちゃんはすごいね」


「拙者などまだまだでござる。そうそう、職場で判明したのですが、拙者、陰キャじゃなかったことが分かったでござる」


「……どういうこと?」


 シンシアの場合、陰キャではあるが隠れ陽キャのような気がしないでもない。むしろテンションが高い場合は陽キャが前面にでており、陰キャが霞んで見える。陽キャというよりも危ない人とも言えるが。


「拙者、陰キャを名乗っていいレベルではなかったでござる。真の陰キャとは陰キャよりも陰であり、陽キャよりも陽。陰陽を極めし者だけが真の陰キャを名乗れると黒薔薇で教わりました……! 拙者は言うなればただの自称陰キャ、ただの未熟者ということでござる……」


「裁縫の仕事に行ってるんだよね?」


「もちろんでござる。ただ、黒薔薇の幹部の一人――そう、真の陰キャとも言うべきイザベラお姉様に拙者はまだまだ修行が足りないと言われまして。さすが普段から顔を包帯でぐるぐる巻いているお方ですな。ゴスロリファッションに包帯というあれほど奇抜なファッションを現実でやっているのに周囲に違和感を与えない絶対的な領域展開……もはやお姉さまの周囲には陰陽と言う概念すらない……! あるのは自分かそれ以外か。個人で世界が完結しているなんて、なんと恐ろしい……!」


「……楽しそうな職場だね」


「それはもう! 技術以外にも色々教わることが多くて毎日充実してますぞ。どんな奇抜な服でも、この良さが分からないお前の方が間違っている、と相手に思わせることが大事だと言われました。毎日、目からうろこが落ちて困りますな!」


「う、ううん?」


「ああ、もちろん、それは心構えでして実際にはそんなことはないのです。それくらい自信を持てるように技術を磨けということです」


「それなら分かるかも」


「目指すは裸の王様に出てくる仕立屋です。たとえ服を着ていなくてもこれが最良だと周囲に思わせた最高の仕立屋と言えるでしょうからな!」


「あれって仕立屋じゃなくて詐欺師じゃないの?」


 服を着ていないのに服の技術がどうこうとか言うのはおかしい。おかしいのだが、シンシアの妙な自信にちょっとだけ自信がなくなるパルフェだ。


 ただ、裸の王様と聞いて思いついたのが、あのノースと言う財団当主候補だ。あれほど裸の王様という言葉が似合う人物はいない。周囲にはイエスマンしかいないのか、それともすでに見限られていて本人の自由にさせているのかは不明だが、もうちょっとこう、何かあるべきだろうという気持ちになる。


 当主の問題か、当主の夫人の問題か微妙なところではあるが、今度、本人に裸の王様って知ってるか聞いてみようと思い、そこまで考えてパルフェは思考を止めた。それを考える時間すらもったいないと思ったためだ。


 改めて別の話をしようと思ったところで拠点の扉がノックされた。


 今日はキャンサーがやらかしたことが判明したので臨時の評議会がある。なのでルナリアたちの修行やネイたちとの素材集めはないと聞いていたのだが、もう終わったのだろかとパルフェは扉を開けた。


「あ、カザトキちゃん。それにリオンちゃんも」


「こんにちは――のじゃー」


「こんにちは」


 狐耳をつけた巫女の恰好をしているカザトキと魔法少女の恰好をしているリオン。突然の訪問に今日予定を思い出そうとするパルフェだが、間違いなく予定はなかった。


 別に困るようなことはなく、むしろ嬉しいし、もともと二人は領地争奪戦で味方を表明しているので直接お願いに行こうとしていた矢先だ。


「どうぞ入って。ちょうどシンシアちゃんも来てるから」


「そうなんですか? なら挨拶させてもらいます――のじゃ」


「お邪魔します」


 そういって二人を招き入れるのだが、直後に背後で何かが倒れる音がした。見えてはいないが何が倒れたのかパルフェには分かるので特に慌てない。


「シンシアちゃん、一応聞くけど大丈夫?」


 うつ伏せで倒れているシンシアの方に近づいて体をゆする。ただの発作なので特に心配はしていないが。


「大丈夫でござる! 拙者、僭越ながら、お二方の動画は毎回身体を清めてから拝聴させてもらっているでござるよ! かー、最高ですな! そのたどたどしさがお二人の魅力を上げておりますぞ! やらされている感が最で高! 拙者、動画見ながらご飯三杯食べて、ちょっと太りましたぞ! これが幸せ太りでござるなー!」


「なんで倒れたまま言うの。あと狐巫女のじゃ姫と魔法少女ってダイイングメッセージを床に書かないで」


「シンシアさん、大丈夫ですか? 立ち上がって――あの、正座したまま手を合わせて拝むのをやめてもらっていいですか。あ、いなり寿司はありがたくいただきます、のじゃ」


「シンシアさんは相変わらずですね……ええと、その手に持っている堕天使バージョンの衣装は着ませんよ。というか、なんで持ってるんです? 普段から持ち歩いているんですか?」


 なんだか賑やかになって来たなーとパルフェはすぐに二人のためにお菓子とお茶を用意するのだった。


次回投稿は8/23(日)です。お休みを頂きますが、引き続きよろしくお願いします。

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― 新着の感想 ―
こいつやりおるw
黒薔薇さん達から『学べる』領域にあるシンシアさんも常人から見れば相当なレベルにあると思われ……。
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