仲間集めと自己強化
財団タウロスと財団キャンサーから縁談を持ち込まれたパルフェ。そんな無法は許さない財団統括のルナリアだったが「AFOで魔王になったら縁談の場を約束する」と言ったために色々と面倒なことになっている。
あくまでも今回限りの条件であり、次の領地争奪戦で魔王になれなければその約束はなし、そして二度と縁談の話は受け付けないことになった。
二つの財団はその影響力からAFO内の各大手クランに協力という名の命令を下し、かなり本気で魔王城の領地を手に入れようとしている。
確実に阻止をするためにはパルフェ自身が魔王城の領地を獲得して魔王になった方が良いとディーテに言われた。だが、パルフェのクラン「モンブラン」は小規模クランで領地争奪戦に勝てるほどではない。そんな事情からパルフェはこれまで縁を結んだプレイヤーたちに交渉をすることになった。
「と、言うわけで色々なところへ交渉に行くつもり」
これらの内容を拠点に集まったモンブランのメンバーに話す。
「我が友は相変わらず変なことに巻き込まれるようだな。特異点的なアレか。やはりカオスこそが世界の真理よ……!」
「なっちゃんも相変わらずだけどそんなんじゃないから。というかテキトーに言ってない?」
「テキトー言うな! これはカオス理論に基づいた発言だ!」
「あ、はい」
ルースとの話は落ち着いたようで、たまに挙動不審になるものの、いつものナツが帰ってきた。それはそれとして、ナツもある程度の事情はパルフェの説明前から知っており、パルフェに同情的な連絡をしている。
「強制的な結婚でないのはルナリアさんへの配慮――いや、畏れか」
「うん、クリスちゃんの意見もあるっぽいけど、実際は他の財団からにらまれないような配慮っぽいね。なんかやり過ぎると反感を買うとか。まあ、すでに私と縁談――お見合い的なことを相談するだけでかなり反感を買っているみたいだけど」
「縁談の相談だけでそこまでになるか……」
クリスはそう言うと、ウィルネの方へ視線を向ける。その意図に気付いたのかウィルネは頷いた。
「今回の件、ルナリア様への相談という形ではありますが、そのルナリア様が財団のトップが集まる評議会でも発表しまして、その会議では大変なことになりましたね。むしろ他の財団も参加させろと言うほどでして。平たく言うと、パルフェさんはモテモテです」
「モテモテ……これほど嬉しくない言葉は初めてだよ……」
パルフェとしては完全に巻き込まれているだけの話であり、それに乗っかろうとする財団があるだけで印象は下がり続けている。
ディーテ曰く、パルフェと縁を結ぶことは世界最高のAIとの縁を結ぶということでもあり、その価値は計り知れないとのこと。誘拐などの手段に出なかったことだけは評価できるが、それ以外は全く評価できないとも言っていた。
ディーテはパルフェ本人に価値を見出せない者など塵芥にも等しいとかなり過激なことを言っている。
「まさかとは思うけど、財団ジェミニは――」
「……縁談の話ではありませんが、魔王になったらパルフェさんをジェミニ所属にしていいのかとロニオス様がそれはそれは嬉しそうに聞いてましたね。ネイ様の睨みつけで黙りましたが」
「今度ネイさんにスイーツ奢らないと」
「ジェミニもそうですが、基本的にパルフェさんの年齢に合うような殿方がいないというのが理由でほとんどの財団は断念しました。それが二つの財団に対する恨みというか反感を買う理由にもなってますね」
財団の人達って暇なの、と言いたくなるパルフェだが、ぐっとこらえる。別に言ってもいいのだが、愚痴が止まりそうにないので敢えて止めた。
状況的には最悪なのだが、両親や知り合いたちから励ましの連絡やパルフェよりも怒りを示す知り合いが多かったというのもあり、冷静になれたというのもある。
それにAFOではラスボスとも言えるディーテが手伝ってくれると言うなら鬼に金棒と言ってもいい。相手側を完全に黙らせるためには同じルールで叩きのめす方が良いという理由からシステムへの介入まではしないと明言しているが、それでも百人力と言える。
「エクセレント!」
「ジニーちゃん? いきなり奇声をあげてどうしたの?」
「いえ、この状況、私の愛読書――いえ、聖書であるドキパンでもあるのです! 多くの悪魔から愛されるヒロイン……群がる有象無象の悪魔たちをちぎっては投げて倒すアシュレイ様……エクセレント!」
「いつもの発作かぁ」
「まあまあ、そんな呆れた声を出さずに聞いてください。さすがにアシュレイ様を用意することはできませんでしたが、話を聞いたミカン姉さまがパルフェさんの味方をすると言ってくださいましたので」
「え? ミカンさん? 悪魔王の?」
悪魔王ミカン。悪魔たちを束ねる王ではあるが、悪魔召喚ギルドの受付をしているという変わった人物でもある。しかも現実では玩具製作の大企業「ハイパートイメーカー」の取締役でもある。
現実の肩書は今回あまり関係ないが、AFO内の悪魔王という肩書は別。かなり強力な仲間を得たと言っても過言ではない。
「それならウチの親父とかレンおば――レン姉さんも毎日じゃないけど行けそうって言ってたぞ」
「え、アベル君のお父さんってアッシュさん? それにレン教官も?」
「なんかハヤトさんとエシャさんから連絡があったとか言ってたな。まあ、それが無くても行くとは言ってたけど」
「お父さんとお母さんがそんなことを頼んだんだ?」
ルナリアとディーテが両親に――主に母親のエシャに怒られている状況はとてもシュールではあったが、その後、色々なところに連絡を入れていた。両親の伝手を考えるとものすごい状況になりそうではあるが、現役世代との戦いがどうなるのかは微妙だ。とはいえ、大きな戦力になることは間違いない。
今度はリックが口を開いた。
「レリックさんのところにも連絡は来たが、さすがに高齢で難しいと断っていたな」
「レリックさんやソニアさんはさすがに引退してるからね」
「ただ、戦闘はできないが、戦闘訓練をしてくれることになった。俺はしばらくそっちにかかりきりになると思う」
「え? リック君が戦闘訓練?」
「仮想現実での戦い方というのがあるらしい。現実では無理でも仮想現実なら何とかなる戦い方だな。それにできればスキルもカンストさせておきたい――上限突破クエストもこなしておきたいところだ」
「ああ、それもあるよねぇ」
現実的な強さならパルフェはトップクラスだが、ゲーム的な強さとしてはまだまだと言える。領地争奪戦での戦闘方式はリアルではなく、ゲーム仕様のヴァーチャル。いくら現実で強くとも、ゲームで可視化されている数値を覆すのは難しい。
今回の場合はスキルをカンストさせることがスタート地点とも言えるので、仲間集め以外でも、スキル値の向上や、武具の充実を図る必要がある。
「情報の収集などは専門クランの『レイブン』に頼んでおいた。相手側のクラン情報とか送られてくるからちゃんと見ておいてくれ」
「何から何まで助かるよ」
「正直なところ、俺たちは何もしなくても勝てそうなほどのメンバーが集まりそうだが、そんな勝ち方じゃ財団側が言いがかりを付けてくる可能性がある。それを考えると、誰も魔王にさせないというだけでなく、パルフェが魔王になることで文句の付け所がない完璧な勝利をした方がいい。できれば大手クランのリーダーや財団次期当主とやらをパルフェが撃破した方がいいな」
「それは確かにそうだね」
「それと領地争奪戦で領地を得るにはその場所を一週間守り抜くという条件が必要だったはずだ。毎日同じメンバーが集まるとは限らないから皆が強くなっておくのは必須だぞ」
リックの言葉にパルフェ以外が頷く。
パルフェとしては友人たちが自分のために面倒なことをやってくれることが心から嬉しい。ゲームのことであり、実際に負けても結婚するわけではなくお見合いをする程度のこと。それでも絶対に阻止しようとしてくれる友人たちにちょっと泣きそうなパルフェだ。
「では、皆、それぞれ強くなることもそうだが、仮想でも現実でも知り合いがいるなら声をかけてこちら側に引き込んでくれ。引き込めなくても相手側に付かないだけで十分だ。それが相手の戦力を削ることになる。相手は大手クランの連合軍、やれることは何でもやっておこう」
もはや参謀とも言えるリックの言葉に、今度はパルフェも一緒に頷いた。
パルフェは最悪負けてもいいかなと思っていた部分もあったが、これは負けられないなぁと決意を新たにするのだった。




