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アナザー・フロンティア・オンライン ~生産系スキルを極めたらチートなNPCを雇えるようになりました~  作者: ぺんぎん
第四章

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冥龍討伐

 

 広場に入って来た馬車の屋根で仁王立ちしている魔王ルナリアに大きな歓声が降り注いでいる。


 対人恐怖症の設定はどうしたと言いたいところだが、魔王っぽいところを見せたいという気持ちが勝っているようだ。


 ルナリアは周囲の人などには目もくれず、冥龍を見据える。そして腰に差している剣、アロンダイトを抜いた。そして剣先を冥龍に向ける。


「私がいないことをいいことに暴れまわるとは不届き千万。この魔剣のサビにする」


(お化けが怖くて城に閉じこもっていただけだよな?)


 そんなツッコミをするわけにはいかないので状況を見守る。


 魔王が来ることを見計らったのか、プレイヤー達もNPC達も広場に馬車が通れるほどよりも広く道を開ける。人波が割れるのは見ていて気持ちがいいものだが、それは確実にドラゴンブレスの的だろう。


 冥龍がその場所へ闇属性のドラゴンブレスを放とうとしている。


「マリス!」


 ハヤトがそう叫ぶと、マリスは「お任せください!」と巧みに馬を操った。馬車が急に左に曲がり、人垣に突っ込みそうになる。


「そこを空けてください!」


 プレイヤー達もNPC達も馬車には注目していたので、馬車に当たらないように躱した。そしてまた人波が割れていく。その直後にドラゴンブレスが放たれた。


 元々冥龍の元へ馬車を通そうとしていたので、そこにプレイヤーやNPC達はいない。だが、馬車を追っていた人物はいた。そして馬車はいきなり急転換して横に消えた。つまり、ドラゴンブレスに当たるのはその馬車を追っていた人物だ。


「嘘だろ、おい!」


 パットは冥龍のドラゴンブレスに巻き込まれた。そのまま倒れるということはなかったが、ダメージを受けて地面に転がる。


 パットはすぐに立ち上がろうとするが、ピタリと動きを止めた。すでに囲まれていたからだ。


「貴方、ロザリエ様が言っていたガンマンですわね? それにルナリア様を攻撃していた様子。万死に値しますわ」


「……確かにモテ期だねぇ。おじさん、前世で何かしたかな?」


 黒薔薇十聖のメンバーがパットを取り囲んでおり、持っている武器を突き付けていた。直後に戦いが始まる。


 ハヤトはそれを止まった馬車の窓から見ていた。


(よし、パットの方は黒薔薇さん達が何とかするだろう。ならあとは冥龍だけだ)


「ルナリアさん、あとは任せたよ。ここで負けたら格好悪いからね?」


「魔王はいついかなる時でも格好いい。だから魔王。特等席でその強さを目に焼き付けるといい――でも、ノアトちゃんの歌が終わると大変なことになるから絶対に守って」


「恰好付けるなら最後まで恰好付けて。マリス、歌の有効範囲が途切れないように広場を走りまわって。ドラゴンブレスだけには注意」


「了解です! みんな行くよ!」


 マリスが馬車を引いている馬達にそう言うと、すぐに走り出す。そしてルナリアは馬車の屋根から飛び降りて、冥龍の方へ歩き出した。


 元々人波は割れていたが、ルナリアが歩き出すと、さらに広く割れ始める。


 冥龍は明らかに怯えていた。スタンピードでボスキャラ用のステータスになっている状態でも魔王が怖いのだろう。


 すでに勝ち目がないと思っているのか、冥龍はルナリアから視線をそらして馬車の方を見た。そしてそこへ悪夢を具現化した魔力弾である死霊魔法「ナイトメア」を撃ちこむ。


 マリスの操る馬車はすぐにそれを躱した。そして人波を縫いながら移動する。


「どうやら、ルナリア様に勝つよりもノアトの歌を止めようという戦法にしているみたいですね」


 パットへの攻撃を止めたエシャがジュースを飲みながらそんなことを言った。


「まあ、間違いじゃないかな。でも、ルナリアさんってあの状態でも強いのかな? 仲間が倒れた状態のアロンダイトなら相当な強さになるだろうけど」


 ルナリアの持つ剣、アロンダイトは仲間が倒れるたびに封印が解かれ、最終的には通常の二倍近い強さを持つ。さらには刀身も黒いオーラで包まれ攻撃範囲が広くなる。そんな状態ならまず誰にも負けないのだろうが、今は普通のアロンダイトだ。確かに強いが、ドラゴンを圧倒できるほどではないとハヤトは考えた。


「ルナリア様はあの剣がなくてもイヴァンと互角だった程ですよ。どちらかと言うと純粋な剣技ならルナリア様の方が上だったんでしょうね。だからこそ、イヴァンは一緒に倒してくれって言ったほどなんですから」


 エシャ達が記憶をなくす前のクラン戦争。そこでエシャはイヴァンとルナリアをデストロイで共に葬った。騙し打ちのようなものだが、そうしなければ勝てなかったからこその作戦だった。


 そして冥龍はルナリアの強さを覚えている。アッシュ達がドラゴンソウルというクランだったころ、ルナリア達のクランとは戦ってはいないが、クラン戦争を観客として見ることはできた。その強さが記憶の片隅にあるのだろう。


「貴方の相手はこの私、魔王ルナリア。よそ見をしているとすぐに終わる」


 ルナリアはそう言って、アロンダイトで冥龍の左後ろ足を一閃。


 防御力を無視するアロンダイトは基礎攻撃力もかなり高いが、ボスキャラ用のHPになっている冥龍にはHPバーをミリ単位も減らすことはできなかった。


 それを知って安心したのか、冥龍はルナリアを見てニヤリと笑った。


「なんだ、魔王と言っても大したことないな。びびって損した」


「びびるのはこれから。この魔剣は貴方を強敵だと認識した。それは黒い白鳥が目覚める合図。貴方が倒れるまで攻撃は止まらないから気を付けた方がいい」


 ルナリアが振るうアロンダイトに黒い軌跡が残る。アロンダイト固有のスキル、ブラックスワンが発動した。


 仮想現実ではあるが、この世界にも物理法則というものが存在する。もちろん、現実と全く同じ形ではないが、人はジャンプしても十メートル飛ぶことはできないし、一秒間で十回も攻撃はできない。


 だが、ルナリアの攻撃はそのあたりの物理法則すら捻じ曲げる。ブラックスワンはそういうウェポンスキルなのだ。


 ルナリアは飛び上がると、十メートル近くある冥龍の顔近くまで接近した。


「うお!?」


 驚いた冥龍の顔に連続で攻撃を与える。その速さは完全にこの世界の物理法則を無視しており、アロンダイトの軌跡が残るせいでその周囲が黒く塗りつぶされていった。


 冥龍のHPバーもみるみる減るようになり、周囲から歓声が上がる。そしてプレイヤー達も攻撃を再開した。


「まずい! パット! 何とかしてくれ!」


「こっちもモテすぎて無理なんだよ! ノックバックかスタンで歌を止めさせろ! そうすりゃ何とかなる!」


 歌が止まればゴースト系のモンスターを呼ぶことができる。それを狙ったアドバイスだったが、それは意味がない。ハヤトはノアトにそれらが無効になる装備を渡しているのだ。


 そんなことを知らない冥龍はアドバイス通りにそれを実行するが、歌は止まらないし、ルナリアの攻撃も止まらなかった。


「だめじゃん!」


 冥龍はなんとかルナリアの攻撃を止めさせようと、ひっかきや噛みつきででルナリアを攻撃しようとするが、ルナリアは攻撃を躱しながらさらに攻撃を重ねていく。ルナリアは超高速で冥龍の体全体を攻撃しているため、冥龍の体が徐々に黒で塗りつぶされていった。


「どこかの施設を壊せ! 倒されてもかけらを奪われるな!」


 パットが黒薔薇のメンバーと戦いながら、改めてそうアドバイスすると冥龍は広場から逃げるように移動した。


 ルナリアが攻撃をしているものの、倒しきるまでにはまだ時間が掛かる。


 プレイヤー達は冥龍の目的が分かったので「施設を守れ!」と大声で鼓舞していた。


 だが、プレイヤー達やNPC達は一部しかノックバックやスタンを無効化できない。冥龍は徐々に商店と思われる施設へと移動した。


「マリス様、あの場所へ移動してください」


「え? あ、はい!」


 エシャがマリスに指示を出す。広場から少し離れた場所だ。


 そしてエシャは馬車の窓から屋根にのぼる。そしてベルゼーブを構えた。そしてスコープをのぞく。


「エシャ? なにを――」


「ダメージはありませんが、気を引けるでしょう。デストロイ」


 いつものエフェクトが発生し、レーザーのような攻撃が冥龍の顔をかすめる。


 冥龍が何事かとエシャの方を見たのが分岐点だったと言えるだろう。ルナリアの攻撃がさらに積み重なった上に、プレイヤー達の攻撃も追加され、冥龍のHPバーがその瞬間に無くなる。


「マジ、かよ……」


 冥龍はふらふらと歩きだすが、力尽きて地面に倒れた。そして光の粒子となって消えていく。


「冥龍オニキス・ロッドの討伐に成功しました。スタンピード参加者には貢献ポイントとドラゴンソウルのかけらが授与されます。繰り返します――」


 ワールドアナウンスが聞こえると、その場の全員が歓声を上げた。


 だが、すぐにその歓声は聞こえなくなる。広場に別のドラゴンが現れたのだ。


「魔都ザルドギアにてスタンピードが発生しました。鉱龍パット・ファルソンが侵攻を開始しています。撃退にあたってください。繰り返します――」


(金属でできたドラゴン……? パットってあのガンマンか! 今までドラゴンに変身しなかったところを見ると、何か制限があるのか? それにスタンピード直後にドラゴン状態っておかしいような……いや、そんなことはどうでも――)


 ハヤトが色々と考えていると、そのパットが馬車の方を見た。


「手ぶらで帰ったらボスに怒られちまう。お前だけでも連れ帰るぜ?」


 パットの尻尾が馬車を狙い破壊する。馬車に乗っていたメンバーは地面に放り出された。パットの視線はハヤトを捕えている。


 パットはドラゴンロア、そして翼による羽ばたきで周囲にスタンとノックバックをまき散らした。ハヤト自身はそれらを無効にする装備をつけていない。スタンの効果により体が硬直した。


 パットが低空飛行でハヤトに近づくと、前足でハヤトを器用に持ち上げた。そしてそのまま上空に飛び上がる。


 ハヤトは動けないが、眼球を動かして地上を見るとエシャ達がこちらを見ていた。ノアトはともかくエシャ達は動けないので何もできないのだろう。


 まずいと考えたが、これはチャンスかもしれないとハヤトは思い直す。


(もしかしたら創世龍達の拠点に連れて行ってもらえるということか? 何をされるかは分からないけど、こっちには転移の指輪もあるし、監禁されたって逃げ出せるはずだ。ならそこで情報を集めよう。もう一度ヴェルさんと話ができるかもしれないし)


 ハヤトはそう考えて特に抵抗しないようにした。そもそもスタン状態で動けないが、何もしないことにする。


「鉱龍パット・ファルソンが撤退しました。繰り返します――」


 そんなワールドアナウンスが展開されると、魔都ザルドギアでは微妙な歓声が上がった。


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