第二十話【キレイな花はどこか腐ってる】
『さてさてとうとうやってまいりました第二十話。
こんなくだらない作品が二十話まであるなんて正直、どうかしてると思う。
だがしかし。そんな『ボロ秀』でも、続いてます。なんとか!
”継続は力なり”
という言葉どおり、書き続けていてよかったと思います。
これも、すべて読んでくださる読者の皆様のおかげです。
読んでくれている人がいる、それが物書きにとっての原動力になるのですから。
どうかなにとぞ、これからも『ボロい筆箱を拾ったのは理系の秀才でした⁉』を宜しくお願い致します。
by表 裏淳 』
だってさ兄々。
その紙切れ、燃やしとけ。
俺達を尻目に委員長はドアの向こうにいる人を部屋に招く。
「どうぞ、入ってください」
言われて入ってきた人はキョトンとしている。まぁ、気持ちはわからんでもない。見知らぬ教室に俺と翼と委員長の三人という異例の組み合わせだしな。
「ユキちゃん急にどうしたの? こんな教室棟の端まで呼ぶなんて……それになんで二人が……?」
俺達は無言で近づいて、じっくり顔と身体を観察するが。
「襟沢だよな?」
「ああ。襟沢だな」
「あ、あのー、じろじろと見ないでほしいんだけど……」
肩身の狭い思いをしている憐れな少女を手を取って救ったのは鉄面皮の少女だった。
「待っていましたよ。あーちゃん」
なん、だと⁉ 衝撃発言に面食らう俺と翼。
「あ、あーちゃん? おいおい翼さん聞いたか、あの委員長があーちゃんだと……」
「し、信じられん……薬中に成り下がったか?」
一言多い。
これにはさすがの委員長もがっくりと肩を落として落胆した。
「酷い言われようですね……あーちゃんが私をユキちゃんと呼ぶのに、私があーちゃんと呼ぶのがそんなに変ですか?」
「「ええ。変ですとも」」
「二人共、表情まで完璧にシンクロしてる……スゴイよ」
俺達のコンビネーションを見せつけられた委員長は頭にダメージがいったようで、額に手を当てている。
「その話はまたの機会にしますから、今は横に置いておいて下さい」
溜め息と一緒に吐き出した言葉は、俺の隣人の腕を組ませた。
「……なんだ? 空気清浄機の趣味の話か?」
「違います」
即答してやるなよ委員長。翼のストレスが溜まるだろうが……発散場所考えろよ、アンタだぞ。
さらに、この流れ……。また始まるなぁ、黙っていた方が身のためか。
「筆無君、神乃さん、私、そして……あーちゃん。四人の部員と顧問そして部室が揃いました」
腕を組んで本題の出だしを切る委員長に、鼻で笑う女が一人いた。
「部活結成と言いたいのか? 笑える冗談だ。部活の部員規定人数は五人だ。愚か者」
「はいその通りです。ですが、サークル活動つまり同好会なら四人で結成できます。浅慮な方ですね」
「馬鹿め。同好会に顧問は必要ない。無駄な手間を省いて、部員を探せ。愚鈍」
「公の場に提出する以上、必要最低限ではなく余分の条件を満たしていた方が余計なことは言われませんので。それと、向上心の欠片もない人はただの役立たずですよ」
「……ふん。そうか」
なんて険悪な。俺と襟沢みたいに大人しくしててほしいもんだ。襟沢さんは俺を盾にただおどおどしてただけなんだが……。頑固者と仲良しだと苦労するな、お互い。
挙動不振の襟沢さんが何かに気付いたようでハっとなった。後ろにいた彼女は両手を胸に抱え、俺の真ん前に立った。
「ユキちゃん、ひょっとして約束のこと覚えて……」
「当たり前です」
キッパリと刃物で切るように言う委員長は下を向く。感情が読めない女子の心の中が今だけ俺は読めた。
決意、謝罪、自省がグルグルと渦巻く居心地の悪さがこれまでの己を罰している状態。
「唯一無二の親友と約束したんです。私が忘れるわけないじゃないですか」
「でも、最近……その、素っ気なかったっていうか……私のこと見えてないような感じしてたし…………」
俺の眼前にいる人は気の引けた感じでポツポツと言葉を絞り出す。
「それはっ……いえ、すみません。周りが見えていなかったようです。貴女にそのように受け止められてしまったということはそういうことなのでしょう」
「ううん、いいよ。私が言い出したことなのに……全部ユキちゃん一人に押し付けちゃって……最悪だよ、私」
「なぜ落ち込んでいるんですか? 貴女にはこれから頑張っていただくんです。前座を用意することしか出来ない私はここまでです。後は、貴女に――――いえ、私と貴女の二人で頑張りましょう」
「うん!」
わーなんかジーンとくる。何この今まで疎遠だった二人の仲直り劇。ちょっと感動しちまうじゃねぇか。
「なんかいい感じのとこ悪いけどよ、結局のところ漫研だろ。俺たちは名前を貸すだけでいいよな?」
「ええ。寧ろ、邪魔です」
「ゆ、ユキちゃん。そんなこと言っちゃダメだよ!」
この女……素で「用済みです。さっさと消えてください」とは中々いい度胸してんじゃん。男なら殴り飛ばしてるところだ。まぁ、襟沢に免じて許してやるけどな。
「そうかい。なら、教室戻るわ。変人が変質行動起こすの止めねぇとだし」
教室から立ち去ろうとする俺に翼は眉間にしわを寄せてついてくる。
「こんな無意味な時間を過ごしたのは初めてだ。秀、何か奢れ」
「なんでだよ……ったく、金欠か?」
「財布に百円と十円二枚しか入っていない」
「しょうがねぇな……返せよ?」
「奢られるのに返すわけないだろう。バカか?」
「うんそう来ると分かってました。ごめんなさいね、バカで」
あまりの理不尽っぷりにため息が出る。いつもことながら、ワガママな姫さまだよ、ったく。
「そこまで言うなら、自販機でなにか買ってやる。一二〇円までだ」
「わぁお。やったーって、今の自販機は、最安価一三〇円なんだぞ! 買う気ねぇだろ!」
「何を言っている。水なら一二〇円だろう?」
「水かよ……」
貰えるのは有難いが、いるかいらないかと言われれば、いらん。
ホコリ臭い教室を後にして、俺は財布の心配をした。
*
「どっちも子供みたいなやり取りしてるね……」
「ええ。小学生レベルです」
「でも、築谷さんが男だったら……うん! 最高のやり取りだね!」
「……あの二人が貴女の趣味を知らなくて助かりました。そうでなかったら、恐らく部員にはなってくれていないでしょう」
「え、なんで? 女の子はみんなBL大好きなんだよ?」
「私は省いておいてくださいね? ちゃんと男の子が好きなので」
「うんわかってるよ、ユキちゃん! ユキちゃんは男の娘が好きなんだよね! 大丈夫、そういうのも描けるから私」
「言葉の受け取り方がこうもすれ違うとは……頭が痛いです」
「無理しないでいいよ? あ、そうだ。ユキちゃんにこれあげる。今朝仕上がったんだー」
『女装癖のボクは幼馴染みを』
「……モデルは?」
「もちろん、築谷さんと筆無くん、略して『ツキふで』。今度は『ふでかい』にしようかなー」
「製作者諸々、これを見られると非常に大変ですね……」
「さあ! ユキちゃん、どんどん読んでどんどん赤ペンチェック入れてね。中学からの遅れを取り戻すよ!」
「あなたがやるなら、私はそれに準じるだけです(たとえ、毎日頭痛を抱えることになっても)」
作者の謝辞は稚拙過ぎて背中がかゆくなるんだよな。
兄々も人のこと言えないけどね。
バカ言うな。俺はちゃんとできる。
じゃあ『風光明媚』これなんて読む?
ふん、茜、それは簡単だな。『ふうこうみょうび』だ。
残念ハズレー。答えは『ふうこうめいび』でーす。
じゃあ、逆に訊くぜ? その四字熟語の意味は?
『自然の景色が美しいこと』でしょ?
……そうなのか?
知らなかったんだ……。




