幼馴染の本音?
コウタとせっかく二人きりになったが、コウタの過去に嫉妬してしまい、どうしていいかわからなくなって、離れてしまうチヨ。
そして、お祭り会場で迷っている時、おにへーが急に手を繋いできた。
◯登場人物
千代
22歳 エステティシャン
奈良県橿原市に住む。祖母、母親と三人暮らし。ある日の合コンで、三つ上の幼馴染、コウタと再会する。
由香里
22歳 エステティシャン
千代の同期。美人で計算高い。
康太
25歳 家電量販店のメーカー販売員
瑛人とはバンドを組んでいた。10歳の頃、両親と大阪に引っ越したが、現在は奈良市内に喜平と共に住んでいる。
喜平(おにへー)
21歳 家電量販店のインターネットの契約説明員
コウタと奈良の家電量販店で知り合い、その後ルームシェアをすることになった。
急に、手を握られた。
「コウちゃ……おにへーくん??」
あれ、ユカリと二人でいたはずじゃ……
「チヨちゃん! よかった〜、トイレ行って迷っててん〜」
「あ、おにへーくんもトイレ行ってたんだね。私も同じなの、人混みで迷っちゃって……」
なんだか、おにへーくんの感じが違うような。
「お祭りってこんな人が多いんやね。ほんとびっくりびっくりやわ。ね? チヨちゃん」
「そ、そうだね。二人を探そうか……手が……」
おにへーくんは、私の手をずっと握ったままだ。
「あ、ごめんごめん。でも、はぐれたら迷子になっちゃうから。コウちゃんも繋いでくれるやろ?」
おにへーくんも、やっぱり、コウちゃんって呼ぶんだ。
「うん。あ、コウちゃんと二人で暮らしてておにへーくんはどう? 楽しい?」
なんとなく差し障りのない会話をすることにした。
「うんっ、楽しいで。コウちゃん優しいし、料理上手いし、洗濯もしてくれるし」
なんとなく引っかかった。料理、洗濯……ルームシェア、だよね? コウちゃんは家政夫じゃないよね。
「そう、なんだ。面倒見いい性格なのかな〜」
「チヨちゃんの話もよく出てくるで。最近やんね? 再会したの」
私の話……
「コウちゃん、私のこと。どういう風に話してる?」
もしかしたら、また傷つくことになるかもしれないけど。
「ん〜、妹みたいなんよ、って。小さい頃もそうやったけど、再会して大人になっても、やっぱ妹みたいやな〜、って」
やっぱり……そうなんだ。
「まぁ、ずっと兄妹みたいな感じでご近所さんだったからね。こっちは大人になってドキドキしたりする時もあるってのに、コウちゃんは気楽なもんだよね〜」
ふと、愚痴が出てしまった。
コウちゃんと、ユカリはまだ見つからない。
「僕、チヨちゃんのこと好きかもやわ。ベビフェで見た時から気になっててん、実は」
「え。そんないきなり……」
「コウちゃんがお祭り行くって言うから。チヨちゃんと行くって聞いたから、僕も行きたいって言ったんやで」
そんな何も知らない女の子のことを、いきなり好きになることなんてある??
「私は……コウちゃんのことが好きなの。小さい頃からもそうだったけど、今はもっと好き。おにへーくんの気持ちは嬉しいけども、そんないきなり言われても困るよ」
おにへーくんは立ち止まって、私の方を向く。
「コウちゃんは、チヨちゃんのこと。なんとも思ってないで」
何度も言わないでほしい。さっきもそれは聞いたのに。私が一番聞きたくないことも何度も言わないでほしい。
「おにへーくんに……何がわかるの」
私も。私も、コウちゃんの全てをわかってるわけじゃないけど。でも、これから知りたいと思ってる。これから長い時間をかけて、私のこと知ってほしいし。コウちゃんのこと、知りたいと思ってる。
「僕の彼女になったらいいやん。大丈夫、僕はコウちゃんと違って妹みたいに思わへんから。チヨちゃんのこと、大人の女性として見てるで」
なんだか、好意というよりも、気持ち悪い。
コウちゃん。ユカリ。
「早く二人を探そっか。行こう」
おにへーくんが、いきなり私の肩をつかんだ。そして、私の顔のほうに自分の顔を近づけようとする。
「いやっ!! コウちゃん!!」
私は必死で抵抗した。
その時。
「チヨーーーー!!」
コウちゃんとユカリが来てくれた。
「いいとこやったのにな〜……おーい、二人で迷ってたんやわ〜!」
おにへーくんは悪びれず普通にしている。
「チヨ、どうしたん? なんかあったん?」
私は何も言えなかった。
「おにへーくん、トイレって言って急にいなくなったんだよね〜。チヨもトイレ行って帰ってこないって言うし。見つかってよかったよ〜」
ユカリは心配してくれてたみたいだ。
「ご、ごめんね、心配かけて」
コウちゃんはおにへーくんの方を向いている。
「さっき、チヨは嫌がってたやろ。おにへー、なんかしたんか」
おにへーくんは、舌を出してイタズラっ子みたいにしている。私はゾッとした。
「別に〜。チヨちゃん可愛いから少し魔が差したっていうか。あれやろ? コウちゃんの彼女じゃないんやろ?」
痛いところを突く。
「そういう問題とちゃうやろ。まぁええわ、ここで話しても仕方ないし、あとで聞くわ。今日は帰るで」
なんだか。せっかく楽しいお祭りデートだったのに、無茶苦茶になってしまった。
「え、え、もう帰っちゃうの? カラオケ行かないの?」
ユカリはカラオケに行くつもりだったみたいだけど、今日は申し訳ないけど無理だ。
コウちゃんはおにへーくんを連れて帰っていった。
ユカリは私の様子がおかしいのが気になったのか心配してくれている。
「チヨ……おにへーくんと何かあったの?」
「無理矢理キスされそうになった……」
「えっ! 大丈夫だったの?」
ユカリは驚く。
「嫌だったよ……それに、コウちゃんのことも。私なんか妹みたいにしか思ってないって。なんとも思ってないって。何度も言われて嫌だったよ……」
「チヨ……」
私はユカリに言ったことで、急に緊張が溶けてしまった。ユカリに縋りついた。
「ユカリ……怖かったよ。嫌だったし、怖かったよ……」
涙が、止まらなくなってきた。
「チヨ、もう大丈夫だよ。よしよし、怖かったね。大丈夫、ごめんね一人にさせちゃって」
「私、コウちゃんのこと好きなのに! なんとも思ってないって。そんなの私が一番わかってるのに! 聞きたくないよ! 辛いよ……」
もうダメだ……夜景のドライブも。天川の星空も。コウちゃんのお仕事姿を見れたことも。
全部全部大好きなのに。
全部全部大切なのに。
「チヨ。おにへーくんの言うことなんて信じちゃダメだよ。チヨをモノにしようとワザと言ったことかもしれないから。今は辛いだろうけども、大丈夫だよ」
ユカリは、私の背中をトントンしてくれた。
「コウタくんはチヨのこと、きっと好きだよ。でなきゃおにへーくんのこと、あの時怒ったりしないでしょ?」
「そう……かな?」
今は、悲しいのと、怖かったのとで、なんだかちゃんと考えれない。
「そうだよ。だから大丈夫。コウタくんのこと信じなさいよ。少し日にちを空けてからでも、二人で会って話しなさい」
「うん……そうする」
ユカリはしっかりしてる。それに優しい。そんなユカリのことを、計算高いだとか、裏切るだとか思ってしまってごめん……私はまた、自分で自分が嫌になった。
「ごめんね。ユカリ……」
「もぉ〜、チヨが元気ないとユカリちゃんも悲しくなっちゃうよ〜。帰る前にりんご飴でも買って食べるぞ〜! 仕方ない、私がおごっちゃる」
なんだか、ユカリがお姉さんみたいに見えてきた。
私とユカリは、りんご飴を買って、ゆっくり歩きながら食べて帰った。そのうち涙は止まっていた。
ありがとう。ありがとう、ユカリ。
おにへーに急に迫られたこともだったが、面と向かって、自分のことをなんとも思ってないと言われ、ショックを受けるチヨ。
ユカリは慰めてくれたものの、コウタ本人にそれを確認するのは、少し怖い……
これから、どうなってしまうのか。




