幼馴染とトモダチ
飲み会の翌日、
ユカリからの衝撃のメールに驚くチヨ。
◯登場人物
千代
22歳 エステティシャン
奈良県橿原市に住む。祖母、母親と三人暮らし。ごくまれに幼馴染のお兄ちゃんの夢を見るらしい。
由香里
22歳 エステティシャン
千代の同期。美人で計算高い。
知佳
22歳 エステティシャン
千代達の専門学生の友達。大阪に引っ越している。
瑛人と幼馴染。
康太
25歳 家電量販店のメーカー販売員
瑛人とはバンドを組んでいた。ギターボーカル
『チヨ昨日はおつかれさま〜。昨日あのあと、コウタくんとキスしちゃったよ〜ん♪』
えっ! えっ! え〜〜〜っ!!
どういう成り行きでそうなるの? 休み気分で頭がぼーっとしていた私は、一気に目が覚めた。すぐにユカリにメールを返す。
「えっ、いきなりキス? あの帰りに? あのあとどこか行ったの?」
私は聞かなくてもいいことまで聞いてしまう。
『ふっふっふ……コウタくんすっごく情熱的だったよ〜。早く二人きりになりたかったのかな〜?』
ユカリはコウ兄ちゃんのこと気に入ってるのかなと思ってたけど、まさかコウ兄ちゃんまで?
でも……いくら気に入ったからって、お互いに気が合ったからって、初めて会った当日になんて……
なんだか私は、悲しくなってしまった。
「ユカリ、コウ兄ちゃんと付き合ったり……しないよね?」
自分でも何を聞いてるかわからなくなってるけど、聞かずにはいられなかった。
『え〜、どうしよっかなぁ〜! コウタくんイケメンだし、一緒に歩いたりすると見栄えするよね〜。あ、今度休み合わせて山の方にドライブに連れてってもらおうよ〜』
もう、私はユカリからのメールを見るのをやめた。
昨日お風呂に入ってなかったから、お風呂だけ入って、それからまた自分の部屋で、ベッドに転んだ。
「ばか……」
私は思わず呟いた。
「チヨ〜! 朝ごはん食べへんの〜?」
下の階から母親の声がする。
「今はいらない〜!」
大きい声を出すのも辛いくらいだったけど、それだけ返事をした。
久しぶりの再会は決して感動的なものではなかったかもしれない。
ずっと連絡もなかったのに、友達経由の合コンでの再会。
でも、それでも。私はめちゃくちゃ嬉しかった。また、コウ兄ちゃんとやり取りしたり、会うことができるんだと思った。
いきなり恋人に……なんて、そんな大それたことは考えてなかった。少しずつ少しずつ仲良くなって。小さい時の思い出話なんてしちゃったりして。
そしてそのうち「兄ちゃんなんて呼ぶのやめろよ」なんて言われたりして。え、え、じゃあなんて呼ぶの……?
「アホらし……」
考えてて自分で嫌になってしまった。
もぉ……なんでユカリなのよ〜!! せめて私の知らないところで恋愛してよ……
やだよ……
◇ ◇ ◇
私はいつの間にか寝てしまっていた。
携帯を見るのも嫌だったけど、昨日のお礼だけチカに送っておこう。
『昨日はみなさんおつかれさまでした。この度出会えたご縁を大切に、みんなへのメッセージはこのメールグループで。個別での連絡は各々で交渉願います。楽しかったね♪ ありがとぉ〜!』
チカのメールのあとには、ユカリとヒナの絵文字のスタンプが付いていた。男性達は仕事なのか何もなかった。
「昨日はありがとうございました、楽しかったです。またいつか」
どんなビジネスメールだ。でも、今の心境ではこの文章を送るのが精一杯だ。
あーあ……なんかこのまま、ユカリとコウ兄ちゃんが付き合うことになったりしたら、私、ユカリともなんか気まずくなっちゃうよ……。あ、でもそれは私の勝手なことなのか。
もし、二人がお互い好き合って付き合うなら、私がどうこう言うことじゃないのか。
なんだか何もする気が起きなくて。ベッドで寝転びながら、携帯の動画で音楽を流していた。
なんだか、ランダムで流れる音楽でさえも、失恋ソングが流れているような気がした。私、携帯にまで慰められてる。
どのくらい聞いていたかわからないくらいに下から母親の声が聞こえた。
「婆ちゃん病院に連れてってくるからね〜。オムライス作って置いてるから、お腹空いたら食べるんやで〜」
婆ちゃんは心臓の持病があって、定期的に通院をしている。今は割と安定しているみたいなんだけどね。
私は携帯のチカが作ってくれたメールグループを開いて、グループの参加者一覧を表示した。そして、コウ兄ちゃんにだけメールを送る。
「コウ兄ちゃん、昨日は久しぶりに会えて嬉しかったよ。昔もカッコよかったけど、更にイケメンになっててびっくりしたし、歌も超上手かったね。また……会いたいな」
自分でも未練がましいなぁと思う。
でも、伝えずにはいられなかったんだ。
意外とすぐに返事が返ってきた。
『うんうん、チヨも大きくなってたな。またご飯行こな〜』
大きくなってた、って何よ。可愛くとか言えっての。子供じゃないっての。
「コウ兄ちゃんは、ユカリみたいな女の子がタイプなの?」
なんだかムカついてきたので、単刀直入に聞いてみる。
『え、なんの話? まぁ……綺麗な子やなぁとは思うけど』
もぉ、なんなのよ〜! て、私が聞くからダメなのか。
「またみんなで山の方にドライブ行こうねって言ってたよ〜」
これはユカリが言ってたことだけど。自分でも情けないんだけど、もしかしたら、まだチャンスがあるのかも、って。
勝手に自分を励ましていたんだ。
ユカリとコウタがいい感じになっているのか、
考えなくてもいい想像をしてしまうチヨ。
結局、コウタに直接メールを送るチヨだった。




