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無口なパルクーラーは眠らない街を翔ける  作者: 狐のボタン


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虎の尾



「病室から抜け出してきたんだよね…? また無茶して」

「ナオの為なら無茶もするよ」

「はぁ…。その考え方からまずは変えなきゃだね。じゃなかったら一緒にいられない…」

「そんな…」

「じゃあ一つ約束して。自分の事をもう少しでいいから大切にして…」

「善処します…」

「今はそれでいいよ…。送るね」

ナオは細い身体に見合わない力で私を抱き上げると、そのままカフェを出て走った。

嘘でしょ…仕事柄私が軽いとはいえ抱き上げて疾走るとか。カッコよすぎか?


ナオは私を抱いたまま病院へと連れ帰り、ベッドへと寝かしてくれた。

一部始終見ていたチームのみんなから色々と言われているけどなーんにも頭に入ってこない。

ダメだ…私、またナオに惚れた…。


「おとなしく寝てなよ…。ここにはいるから」

「ひゃい…」

情けない返事しか出なかったけど仕方ないよね!?


「ちょっとうるあ、どこから抱かれてきたの!?」

「…いつものカフェ」

「うそ…」

「しかもいつもみたいに疾走った…」

「すっげー。さすがリーダーのオトコ! かっけーっすね!」

カッコ良すぎるのよ。しかも何でもないことのようにやっちゃうんだから。


「麗亜。入るわよ」

「は、はい!」

病室に入ってきたのは麗奈姉さん。チームのみんなは気を利かせたのか、姉に一礼して病室を出ていった。


浮かれてる場合じゃないね。報告しなきゃだし。

「どうしたんですか?」

「どうしたじゃないわよ!! 貴女撃たれたのよ!?」

「はい。摘出したタマもここに…」

「見せなくていいから! あのね、何処に撃たれた身体で犯人を追いかけて仕留める人がいるの!」

ここに…。

そっと手を上げたら呆れたようにため息をつかれてしまいました。


「貴女は斑鳩の娘なのよ。私達の大切な妹でもあるの。どうしてそんな無茶をするの!」

「斑鳩の娘だからです…。やられたまま蹲っていては斑鳩の名折れです。姉さん達もあの場は私に任せてくれたから移動したのでは…?」

「違うわよ! 煙で何も見えない中で銃声がしたから避難したの!」

え…。ちょっと姉さん!? 裏の人間としての矜持は…?


「神楽の姫から土下座されたわ…。身を呈して庇って頂いたってね。神楽としてできる限り力になるとも言ってたわ。そんなものいらないのに! 私達にとって大切なのは、よその姫より貴女なのよ! 麗亜!」

「申し訳ありませんでした…」

姉さん達にまでこんな心配かけていたなんて…。


私の覚悟は何だったのだろう…?

 

「姉さん、聞いてもいいですか?」

「退院は当分先よ!」

「ではなくて。 神威のおっさんはどうして神楽の姫を撃ったんです?」

「…そんなもの決まってるじゃない。元々神威は停戦する気なんかなかったのよ。あの会議も私達が初めから予想していたとおり、うちをこの戦いに巻き込むための茶番よ」

「だとしても姫を撃つ理由になります?」

「ナイトレスシティという街の中で姫が誰かに撃たれた。その事実があればよかったのよ。何人かスナイパーも捕らえて吐かせたから間違いないわ。煙幕のせいで撃てずにいたところを捕らえたの。Uiの子達が見つけてくれたやつもいたわよ?」

「そうでしたか…」

あの煙幕は神威にとってイレギュラーだったんだろう。視界の悪い中、目の前に座っていた姫を撃つくらいたやすい。

しかも誰が撃ったかなんて普通は判断できない。犯人にとって私があの場にいたのが運の尽き。

もし私の行動が間に合わず、姫が撃たれていたら斑鳩としての面目は丸つぶれだけど、それで戦争になんの変化が?


「仮に姫が撃たれていたとして、神楽がうちと敵対するとは思いませんが…。勝てるわけもないですし」

「神威としてはうちと神楽が手を組むのをやめさせる事ができればそれで良かったのよ。相当支援してもらってると考えていたようだし」

「うちはせいぜい輸血パックとかの人道支援程度ですよね?」

「ええ。ただの勘違い。 その結果として神威の目論見は大きく外れる事になるわね」

えーっと?


「麗華がうちの子達と最新ドローンの大隊を引き連れて飛び出していったわ。明日には神威は地図から消えるでしょうね」

「止めなかったんです?」

「なんでよ? 麗亜を傷つけられたってうちの子達も完全武装で出てったのよ?止める理由があるかしら」

みんな…。


麗奈姉さんがリモコンを操作して病室のモニターを入れる。

映し出されたのはパニック状態のアナウンサーだった。

「空を覆い尽くすようなドローンです! 神威の国はどうなるのでしょうか!」

ガチじゃん…。

映像には文字通り空を真っ黒に覆い尽くすような数のドローンと、地上にはうちの最新鋭の兵器が並ぶ。

先頭に立つのはドレス姿のままの麗華姉さん。

何あれカッコいい…。まるで部隊を率いる戦乙女じゃん。



「民間人は殺すなよ! 但し神威の上層部だけは絶対に逃がすな!」

そんな麗華姉さんの声が中継に乗って聞こえてきた。


神威の国って行ったことはないけど、知識としては知っている。

うちみたいに塀で囲まれた大きな国。周囲にも点々と町や村はあるけれど、神威の本拠地はあそこだ。

王族も当然いるし、貴族階級の人間も塀に守られた中に暮らしている。



「ね?」

麗奈姉さんは”納得した?“と言わんばかりに私に同意を求めてモニターを消した。

「あのままでいいんですか?」

「私は警告したもの。ちょっかいを出せば即座に徹底的に潰す…と。大切な妹を傷物にされて黙っていてはそれこそ斑鳩の名折れです」

言ってたわ。ちょっかいどころか撃ちましたもんね、私を…。銃弾に飛び込んだのは私だけど、そんなのは過程でしかない。

斑鳩の娘が神威の人間に撃たれた、その事実だけが全て。麗奈姉さんはそう言ってるんですよね。


ま、いっか。麗華姉さんって義理人情にうるさい人ですから。神威の政治を取り仕切ってる人間だけ捕らえたら落ち着くでしょう。

民間人は殺すなと言っていたくらいですし…。


神威は虎の尾を踏んだってやつですね。可哀想に…。








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