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無口なパルクーラーは眠らない街を翔ける  作者: 狐のボタン


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11/13

覚悟の上に



「いっつ……」

脇腹がジクジクと痛むせいで目が覚めた。

ここは…病院のベットか。


「うるあ、起きた?」

ベッドを覗き込んできたのは心配そうな顔をした私の大切な人。

「ナオ、ごめんね。情けない姿を見せてしまって」

「何を言ってるの? そんな身体で仲間に指示を出した上でやった奴も仕留めたのに…」

「え…あいつ死んだの?」 

「今のところ生きてる。うるあの姉が殺しそうだったけど、上の姉が止めたから」

麗華姉さんか…。


私はあくまでもやられた分やり返しただけ。乱射したのも地面にだ。当てたつもりはなかったし。

「これ、うるあのお腹に入ってたやつ…」

トレーの上でカランっと音を立てるのは護身用とかで隠し持つ銃に使われる弾頭。

「22口径くらいか。ヤツの持っていた銃と照合はとれてる?」

「勿論。うるあの共有してくれた映像で証拠もバッチリ…」

なら私が撃ったことの正当性も認められるよね。


「神威の人間は全員捕らえて車両も押収済み。何台かはチームのみんなが破壊したけど…」

「あはは…」

「うるあの仇ってみんなすごかったよ…」

「仇って…私生きてるのに」

「気持ちの問題…チームのリーダーを傷つけられて黙ってられるわけがない」

「そっか…」

「みんな心配してる。呼んでいい…?」

「うん…」

ナオが病室から出ると同時にチームのみんながなだれ込んで来た。


「うるあ大丈夫!?」

「こんなタマで私が死ぬわけ無いでしょ」

「心配したんだからね…」

「ありがとうカリン。チームの指揮もしてくれて」

「そんなの当たり前じゃん!」

「みんなもありがとう。心配かけちゃったね」

「うるあー! よかったよぅ…」

「痛くない…?」

「銃で撃たれたのよ?痛いに決まってるでしょ」

「うあーん…うちのリーダーが傷物に…」

その言い方やめてもらえないかな?違う意味に聞こえそう。


「文字通り穴が空いちゃったもんね」

「カリン、誤解招きそうな言い方やめて」

「ナオより先にあけられちゃったかー」

ほんとやめて…。こんな事なら傷物になる前に抱いてもらいたかったよ。


「え…その顔、本当にまだしてなかったの!? 同棲してたよね?」

「カリンみたいな軽い女と一緒にしないでくれる!? っ痛〜…」

大きな声出すと響く…。


「私だって未経験だよ!」

「「「えっ…?」」」

「みんなして何その反応!」

「いや、だって副リーダーめちゃくちゃ遊んでるムーブしてましたやん」

「あたしに彼氏とはこうやるんだーって教えてくれたのに…?」

「それは…その…」

この子、見栄張ってたな?


「カリン、そんなつまらない見栄を張るのやめなさい。軽く見られて自身の価値を落とすだけよ?」

「はぁーい…」

「見栄を張るなら覚悟でもって魅せろってね。麗華姉さんによく言われたよ」

「うるあは確かに覚悟で見せてくれたよね…」

ナオ?


「確かに! 撃たれたのにやった相手もちゃんと仕留めたんだもんね! さすがだよ」

「でも、僕としては無茶しないでほしいかな…」

「それだけは聞けない相談かな。私が斑鳩麗亜であるかぎりね」

「はぁ…。心配するこっちの気持ちは…?名前のが大事なんだ?」

「それは…」

大切な人に心配かけてまで名前に拘る必要があるのか?普通ならノーと答えるだろう。

でも私は…裏の世界で生きる人間だ。大切な人に心配してもらえる、なんていう普通の幸せを求めていいのだろうか。

それは弱さに他ならない。この世界で弱みというのは命取りになる。私自身は勿論、ナオにとっても…。


「もういい…。うるあなんか知らない」

ナオはそう吐き捨てて病室を出ていった。

「追わなくていいの?」

「追っていいのかな…?」

「知らないよ。それはうるあの問題。うるあはどうしたいの?」

私がどうしたいか…。そんなの!


「カリン、装備貸して」

「うるあのちゃんと持ってきてあるよ。でもまだ傷も癒えてないんだから程々にしなよ」

「ありがとね」

ベットから起き出して、パルクーラーとしての装備をつけていく。服は入院着のままだけど着替えてる時間が惜しい。


病室から飛び出すとインカムがなる。

「”病院から自宅方面に向かったって”」

「ありがとう!」

カリンから届いた情報。誰かが追って行き先を見届けてくれたんだよね。本当にもう…。チームのみんなには助けられてばかり。


傷口を押さえつつ走るけどやっぱり痛みがあって速度が出せない…。こんな程度の傷で私がっ!

でもこっち方面でナオが行きそうなところなんて一つしかない。

二人で何度も行った。思い出深い場所…。



思うように動かない身体のせいで普段の何倍もの時間をかけて到着した地下のカフェへ入る。

店主とももう顔馴染み。目線で教えてくれたからお辞儀をして店の奥へ。

いた…。

「相席いいかな…」

「……」

「座るからね」

「……」

「ナオ…直ぐに答えられなくてごめんなさい」

「僕より名前が大切ならそれだけ大事にしてれば…?」

「違うの! 私は裏社会の人間なんだよ?こういう危険とは隣り合わせなの。そんな事に大切なナオを巻き込むのはやっぱりダメかな…って…弱気になった」

「うるあと付き合うと決めた時にそういう覚悟はしたに決まってるでしょ」

「え…」

「でもうるあを失なう覚悟なんてしてない…」

「ナオ…」

「名前が大切なのはわかる。そういう覚悟をしてるのも理解しようとしてきた。だけど自分の事くらい大切にしてよ!」

普段物静かなナオの大きな声にビクッとしてしまった。

この私が…?


「ごめん…なさい…」

「最初からうるあはそう。ケジメだ〜とかいって身体を差し出そうとしたり、今回も無茶して…」

「でも私には責任が…」

「うるあの姉も心配してた…。怒ってたよ?撃たれたのに治療も受けずに相手を追いかけたって聞いて…」

「うそ…」

褒められるんじゃなく叱られるの?むしろあそこで痛いからって蹲ってたらそっちのが叱られたんじゃ…。


「難しく考えすぎ。うるあのその無駄に張り詰めた覚悟とかってなんの影響…?」

「……」

言えない。うちにあった大昔の任侠映画の影響だなんて…。

麗華姉さんと夜な夜な興奮して見ていたなんて言えないよっ。








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