魔物の痕跡と収納
朝、二つの月が淡く残る空の下で目を覚ました。
村はすでに動き始めており、子どもたちが水を汲み、男たちが柵を点検している。
サイラスに声をかけられ、俺はクロワンにまたがり森へ向かった。
「森猪の痕跡を見てきてほしい。あれが戻らぬとわかれば、皆も安心できる」
「わかった。任せてくれ」
森は昨夜より静かに思えた。
クロワンのエンジン音が木々にこだまし、湿った朝の空気を震わせる。
◆
倒木の先に、それはあった。
折れた枝、えぐられた土、そして昨夜の戦いの痕跡。
まだ残っていた森猪の牙と血の跡。
「……残ってるのか」
思わず息を呑む。
昨夜は疲労で試せなかった“あの機能”が脳裏に浮かんだ。
【収納可能素材検出】
・森猪の牙 ×1
・森猪の皮(損傷あり) ×1
・魔石(微弱) ×1
→収納しますか?[はい/いいえ]
「……今度こそ」
俺は小さく深呼吸し、[はい]を意識する。
瞬間、牙や皮が淡い光に包まれ、粒子となって消えた。
【収納完了】
・森猪の牙 ×1
・森猪の皮 ×1
・魔石(小) ×1
同時に、視界の片隅に四角い枠が整列して浮かび上がる。
透明なカードのようなスロットに、それぞれ素材の小さなアイコンが収まっていった。
「……消えた? いや、取り込んだのか」
呼び出しを試すと、牙の模型のような幻影がふっと浮かび、再び消える。
確かにそこに存在しているのに、重さも嵩も感じない。
さらに小さな通知が点滅した。
【燃料補充可能:魔石(小)】
→現在残量:97%
「なるほど……素材が燃料にもなるわけか。これは旅人向きだな」
俺はタンクを軽く叩き、村への帰路へとハンドルを切った。




