初めての報酬
村へ戻ると、子どもたちが柵の向こうからこちらをのぞいていた。
俺がクロワンを押して門をくぐると、わっと歓声が上がる。
「リョウだ! 帰ってきた!」
「魔物はどうなったの?」
好奇心と安堵が入り混じった声。思わず笑みがこぼれる。
焚き火のそばで待っていたサイラスが、ゆっくりと近づいてきた。
「どうじゃったか、森の様子は」
「もう危険はない。森猪の痕跡も片づけてきた」
俺がそう答えると、サイラスの目が大きく見開かれた。
「……片づけた?」
「ああ。牙や皮、魔石も……こうして取り出せる」
意識すると、視界に浮かんだアイコンがひとつ光り、手のひらに牙が現れた。
村人たちがざわめき、子どもが声を上げる。
「わぁ! 本当に出た!」
「魔石だ、魔石だ!」
サイラスは目を細めてそれを見つめ、やがて深くうなずいた。
「不思議な力よの……だが確かに役立つ。牙も皮も、この村では貴重な資源になる」
腰の袋から数枚の銀貨を取り出し、両手で差し出してきた。
「僅かばかりじゃが、これが礼だ。受け取ってくれるか」
銀貨は冷たく、けれど重みがあった。
異世界で初めて手にする報酬。
胸の奥に、不思議な実感が芽生える。
「……ありがとう。役に立ててよかった。これで燃料も整備も賄えるな」
俺が受け取ると、村人たちの表情が一気に明るくなる。
母親たちは子を抱きしめ、若者たちは胸を張って柵を直し始めた。
その光景に、俺の方こそ救われた気がした。




