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最初の依頼とシート快適化

 森を抜けると、小川沿いにわずかな灯りが見えた。

 近づけば、木造の柵で囲まれた小さな集落。

 夜でも焚き火の炎が絶えず、子どもを抱えた母親や、武器を持った男たちが落ち着かない様子で動いている。


「……村か。助かったな」


 クロワンを押して入ると、すぐに数人の視線が集まった。

 子どもが「鉄の馬だ!」と叫び、母親が慌てて口を塞ぐ。

 警戒と驚きの入り混じった視線が突き刺さる。


「待て! 何者だ!」


 粗末な槍を持った男が声を上げる。

 俺はヘルメットを少し上げ、顔を見せた。


「旅人だ。泊まれる場所を探してる。怪しいもんじゃない」


 沈黙ののち、老人らしき人物が前に出てきた。

 白髪混じりの髭をたくわえ、杖をついている。


「……あの森猪を退けたのは、おぬしか?」


 心臓がひとつ、大きく鳴った。

 戦いの音や衝撃が、ここまで届いていたのだろう。


「……そうだ。仕方なく、な」


 俺が答えると、老人は深々と頭を下げた。


「助かった。我らはずっとあの魔物に怯えていたのだ。どうか、今夜は村に泊まっていってくれ」


「ありがたい」


 そう言ってから、老人は少し遠慮がちに尋ねてきた。


「差し支えなければ、お名前を」


「ああ……黒瀬遼だ。遼と呼んでくれればいい」


「リョウ殿か。わしはこの村をまとめておるサイラスという。どうぞ今夜は安心して休んでくだされ」


 焚き火の周りで温かいスープをもらい、状況を聞く。

 この村は街道から外れており、魔物に襲われやすい。

 だが兵を雇う余裕もなく、困り果てていたという。


 木椀を持つ手が、少し震える。

 さっきまで走って、戦って……頭も体も限界に近い。

 画面に見慣れない文字が浮かんだことも思い出すが、今は考える余裕がなかった。


(……後でいい。まずは落ち着こう)


 とにかく温かいスープを飲んで、体を休めることが先決だ。


「よければ、明日の朝、魔物の痕跡を調べてくれんか。報酬は少ないが……」


 依頼。

 ゲームみたいな響きだが、今の俺にとってはちょうどいい現実確認になる。


「……わかった。できる範囲でやってみる」


 そう答えた瞬間、視界にウィンドウが浮かんだ。


【初依頼受諾】

・新機能:シート快適化(Lv.1) 解放

・効果:乗り心地+20%

    長距離走行時の疲労軽減


「……はぁ!?」


 思わず声が出た。

 魔物討伐とかじゃなくて、依頼受けただけで解放?

 しかも“シート快適化”?


「なんだこれは……いや、でも……」


 思わず跨がる。

 腰を落とした瞬間、背中から腰回りを優しく支えるような感触が広がった。

 クッション性が増し、背筋の緊張がほどけていく。


「……悪くない。戦闘力アップよりよっぽど大事かもしれんな」


 二つの月が村を照らす夜空を見上げる。

 不安はまだ大きい。

 けれど、それ以上に胸の奥で――エンジン音のように高揚感が鳴っていた。

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