冒険者たちの視線
翌朝、俺はクロワンを馬小屋から出し、ギルドへ向かった。
石畳の道を通るたび、人々の視線が集まる。
馬でも荷車でもない、鉄の塊にまたがる旅人。
好奇の目もあれば、不安げな目もある。
「……やっぱり目立つな」
タンクを軽く叩く。
【走行アシスト:安定化ON】
インジケータが一瞬点滅し、「ブルル」と低い唸りが返る。
まるで「気にするな」と言われたようで、少し肩の力が抜けた。
◆
ギルド前にクロワンを停め、俺だけが扉を開ける。
中に入った瞬間、昨日以上の視線が一斉に集まった。
ざわめきが走る。
「おい、あれが昨日登録した新人だろ」
「鉄の馬に乗ってたって噂の」
「収納持ちらしいぜ。村の推薦状で通ったとか」
ひそひそ声が耳に入る。
彼らの視線は、俺だけでなく外に停めてあるクロワンにも注がれていた。
窓の外を覗き込む者までいる。
革鎧に剣を背負った若い冒険者が、興味津々といった顔で近づいてきた。
「なあ、外のあれ……本当に動くのか? 魔導具だろ?」
「……まあ、似たようなもんだ」
どう説明すればいいかわからない。
曖昧に返すと、別の声が飛んできた。
「魔導具に乗っかって依頼をこなす? 楽なもんだな」
嘲るような笑いに、周囲がざわつく。
胸の奥がざらついたが、言い返す気にはなれなかった。
まだこの街では新参者なのだ。
◆
そんな空気を和らげたのは、受付のエリナだった。
「はいはい、皆さん。新人さんをからかうのはそこまでです」
「昨日、きちんと依頼をこなして報告してくれました。冒険者としての資格は十分ですよ」
彼女の明るい声に、広間の空気が少し落ち着く。
冒険者たちは視線を逸らし、それぞれの卓へと戻っていった。
「……助かった」
小声で礼を言うと、エリナはにっこりと笑った。
「気にしないでください。最初は誰でも注目されますから。
特に遼様の場合は……相棒さんのおかげですね。
それと――門番からも照会が来てましたよ。魔導機具の簡易登録、あとで済ませましょう」
「制度があるのか。助かる」
相棒。そう呼ばれて、俺は思わず笑みをこぼした。
扉の外にいるクロワンの姿を思い浮かべながら、タンクを撫でるように右手を握る。
その瞬間、低い「ブルン」というエンジン音が風に乗って届いた気がした。
それだけで、不思議と胸の奥が落ち着いていく。




