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冒険者たちの視線

 翌朝、俺はクロワンを馬小屋から出し、ギルドへ向かった。

 石畳の道を通るたび、人々の視線が集まる。

 馬でも荷車でもない、鉄の塊にまたがる旅人。

 好奇の目もあれば、不安げな目もある。


「……やっぱり目立つな」


 タンクを軽く叩く。


【走行アシスト:安定化ON】


 インジケータが一瞬点滅し、「ブルル」と低い唸りが返る。

 まるで「気にするな」と言われたようで、少し肩の力が抜けた。



 ギルド前にクロワンを停め、俺だけが扉を開ける。

 中に入った瞬間、昨日以上の視線が一斉に集まった。

 ざわめきが走る。


「おい、あれが昨日登録した新人だろ」

「鉄の馬に乗ってたって噂の」

「収納持ちらしいぜ。村の推薦状で通ったとか」


 ひそひそ声が耳に入る。

 彼らの視線は、俺だけでなく外に停めてあるクロワンにも注がれていた。

 窓の外を覗き込む者までいる。


 革鎧に剣を背負った若い冒険者が、興味津々といった顔で近づいてきた。


「なあ、外のあれ……本当に動くのか? 魔導具だろ?」


「……まあ、似たようなもんだ」


 どう説明すればいいかわからない。

 曖昧に返すと、別の声が飛んできた。


「魔導具に乗っかって依頼をこなす? 楽なもんだな」


 嘲るような笑いに、周囲がざわつく。

 胸の奥がざらついたが、言い返す気にはなれなかった。

 まだこの街では新参者なのだ。



 そんな空気を和らげたのは、受付のエリナだった。


「はいはい、皆さん。新人さんをからかうのはそこまでです」

「昨日、きちんと依頼をこなして報告してくれました。冒険者としての資格は十分ですよ」


 彼女の明るい声に、広間の空気が少し落ち着く。

 冒険者たちは視線を逸らし、それぞれの卓へと戻っていった。


「……助かった」


 小声で礼を言うと、エリナはにっこりと笑った。


「気にしないでください。最初は誰でも注目されますから。

 特に遼様の場合は……相棒さんのおかげですね。

 それと――門番からも照会が来てましたよ。魔導機具の簡易登録、あとで済ませましょう」


「制度があるのか。助かる」


 相棒。そう呼ばれて、俺は思わず笑みをこぼした。

 扉の外にいるクロワンの姿を思い浮かべながら、タンクを撫でるように右手を握る。

 その瞬間、低い「ブルン」というエンジン音が風に乗って届いた気がした。

 それだけで、不思議と胸の奥が落ち着いていく。

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