白銀の騎士
二人は王都から少し離れた遺跡に向かっていた
「遺跡に何かあるのか?」
「はい、そこには勇者の力を引き出すと言われる試練があると聞きます」
「うーん・・・・」
ノルヴェインは考え込む
あまりにも話が出来過ぎている気がする
まるでお膳立てされているかのようだ
「なあ、なんでこの剣を抜いたら勇者だと認定されるんだ?」
「はい、実は勇者というのは聖剣を使えるというのが絶対条件なんです」
「なんで?」
「魔王を倒せるのはその聖剣だけだからだと聞いています」
つまり、必要なのは聖剣の力であり、勇者そのものではないということか
フェルネリアは続ける
「勇者様はその聖剣の力を引き出すために試練を受けなくてはならないのです」
「・・・・・」
しばらく考えたあとノルヴェインは口を開いた
「なあ、これから一緒に旅をすることになるんだろ?毎回勇者様と呼ばれたらなんかむずがゆくてさ。ノルって呼んでくれないか?」
「しかし・・・・」
「俺は田舎の出身だから、かしこまったのはなんか慣れなくて苦手なんだよ」
「わかりました。ノル様」
「いや、”様”もいらないから」
「・・・・・・」
フェルネリアは少し考えたが
「わかりました。ノル」
そう答えた
そして辿り着いたのは古代遺跡のようなものだった
石造りの廃墟
ここにははっきりと魔物の気配を感じる
「ここか」
「はい。この遺跡の中心には守護者のようなものがいると聞きます。勇者としての実力を証明するには、それを倒さねばならないと聞きます」
やはりその内容にどこかひっかかるものがある
しかし、今はとにかく魔王を倒すために力を付けることを考えるしかない
「十分に周辺に注意してくれ。俺の背後からついてきてくれ」
「はい!」
そうして二人は遺跡を進んでいく
道中、あきらかに自然の動物とは思えない、異形のモンスターに遭遇する
遺跡は大きな狼のような姿をしている魔物の巣窟だった
ノルヴェインは剣を振るうが、何度も吹き飛ばされる
その度に起き上がれないほどの痛みが体を襲う
「ノル!」
すぐにフェルネリアが駆けつけ、回復魔法をかける
「ありがとう」
そして何度も立ち上がり、魔物に向かっていく
少しずつ戦いのコツがわかってきた
そんな風に思っていた時、周囲に大量の魔物の気配を感じた
「これはまずいかもしれない。一度撤退しよう」
「わかりました」
そう思ったが、振り返ると退路が塞がれていた
まずい、囲まれている・・・
「突破するぞ!」
「はい!」
二人は突破を図ろうとするが進めなかった
フェルネリアが魔物に噛まれる
しかしノルヴェインがその魔物を斬る
「大丈夫か?」
「はい。自分で治療できます。ノルも気を付けて」
どんどん魔物の包囲が狭くなっている気がする
なにか手はないか・・・・
そう考えていた時、見知らぬ男の声が聞こえた
「おいおい、お前本当に勇者かよ」
その声のほうを見ると、白銀の鎧を纏った男が立っていた
年齢は三十歳くらいに見える
白銀色の長髪を後ろで束ね、仮面のように整った美貌を持つ
瞳は淡い金色で、感情が読めない
「しゃあねえから、手を貸してやるよ」
そう言うと、その男は魔物達を次々と倒していく
明らかにレベルが違うのがわかった
その戦闘にノルヴェインも加わった
そして一通りの魔物を倒すと一息をつく
「ありがとうございました」
ノルヴェインは礼を言う
「ああ」
そう言うと男は溜息を吐いた
「しかし、お前弱いな。本当に勇者なのかよ」
「ええ、そうみたいです」
結局、勇者とは強い弱いというよりも、聖剣を使えるものを指すんだ
「あなたは?」
ノルヴェインが尋ねると
「ああ、俺はクローヴ・アステルギア。この国に勇者が誕生したって聞いてな。どんな奴なのか見に来たんだが・・・・」
クローヴはノルヴェインに目を向ける
「どうやらあまり期待できないのかもしれないな」
そう吐き捨てた
ノルヴェインは何も言えなかった
「いいえ、彼はこれからきっと強くなります」
フェルネリアが反論する
沈黙が流れる
やがてクローヴは口を開いた
「まあ、そういうことならもう少しだけ見させてもらおうか。とりあえずはこの遺跡を攻略するんだろ?俺も付いていっていいか?」
二人は頷いた
それから三人で遺跡を進んでいくことになった
クローヴは積極的に戦うというよりは、必要な時にだけ手助けをするというスタンスだった
ノルヴェインとフェルネリアは次第に連携が取れていく
「なるほどな」
クローヴは呟く
「少しは期待しても良いのかもな」
やがて、遺跡の広場みたいな場所に出た
そこにはあきらかにこれまでのモンスターとは別の存在がいた
石で出来ているかのような人影
三人を見るとその石像は石の棒のようなものを持ち立ち上がる
「あれが・・・・」
ノルヴェインが呟く
「ええ、この遺跡の守護者でしょう」
それを聞くとノルヴェインがゆっくりと石像に向かっていく
両者が対峙する
先に仕掛けたのは石像のほうだった
ノルヴェインはかろうじて攻撃を躱すものの、反撃に転じることはできない
そんなやり取りが続いていく
「おいおい、このままじゃいつかやられるぜ?」
クローヴが見物しながらフェルネリアに言う
それに対しフェルネリアは
「手を貸してもらえませんか?」
「それじゃ意味がないだろ」
そんな会話がなされていた時、ノルヴェインが吹き飛ばされる
「ノル!」
あわててフェルネリアが駆けつける
回復魔法をかけるものの、石像はすぐ目の前に迫る
そしてその武器が振り下ろされた
その一撃をクローヴが大剣で受け止めた
「何をしてる。さっさと反撃しろ」
ノルヴェインが立ち上がると、聖剣にわずかに光りが灯る
その一撃は石像の片足を切り落とした
「剣で、あの石像を斬った?」
フェルネリアが驚くと、石像はそのままバランスを崩して倒れた
しかし、石像はなおも反撃をしてきた
ノルヴェインはそれを躱すと、石像の首を切り落とした
石像はそのまま動かなくなった
「へえ。大したものだな」
クローヴがそう口にすると、ノルヴェインは息をつく
それを見るとクローヴが続ける
「でも、結局すごいのはその剣だったな」
「ええ」
ノルヴェインも同意する
やはり、聖剣にはとんでもない力が秘められている
それがよくわかった
そして、その力の一端を見た気がした
確かに、この試練には意味があった
聖剣の力をうまく使わなければこれからも戦っていけない
ノルヴェインは二人に礼を言う
それを聞くとクローヴは
「じゃあな。俺はここでサヨナラだ」
「わかりました」
頷くものの、ノルヴェインは近い将来に再び彼に会うような気がしていた
白銀の騎士はそのまま二人に背を向けて去っていった




