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マッチングアプリで最強パーティを作った結果!!!  作者: MMM
帝都クライペダ編

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花束の祈り、白と薄紫の願い-1

 レオンは、その光景を少し離れたところから見ていた。

 城門前には声が満ちている。笑いも、別れの挨拶も、馬のいななきも、風に揺れる旗の音さえ、この朝だけの“旅立ちの合奏”のように響いていた。

 その中で、自分だけが少し静かな場所に立っている気がした。まるで、喧騒の波が自分の足元だけ避けて流れていくような、そんな不思議な感覚。仲間たちの声は確かに聞こえるのに、どこか遠い。胸の奥に、薄い膜が一枚張られたような静けさがあった。

 だからだろうか。

 その時、不意に――

「レオン様」

 声がした。その一音は、喧騒の中に落ちた小石のように、レオンの意識に静かに波紋を広げた。


 振り返ると、若いメイドが立っていた。

 見覚えのある顔だ。この城に滞在していた間、廊下や食堂で何度か見かけたことがある。

 小柄で、栗色の髪をきちんとまとめ、少し緊張したような面持ちで、両手に何かを抱えている。

 朝の薄明が彼女の横顔を照らし、その光は、喧騒の中でレオンのもとへ辿り着いた“ひとつの想い”を静かに浮かび上がらせていた。その姿は、賑やかな別れの朝の中で、ひときわ小さく、けれど確かに温かい灯火のように見えた。


「……はい」

 レオンが応じると、彼女は一瞬だけ躊躇ためらった。胸の奥で何かを整えるように、ほんのわずかに呼吸を置く。それから、決意したように一歩だけ近づく。

「あの……これを」

 差し出されたのは、小さな花束だった。

 本当に、小さい。豪華でもない。城の庭で摘んだのか、それとも城下で急いで用意したのか、春の手前の冷たい季節にも咲く控えめな花が、白と薄紫を中心に束ねられている。

 野に咲く花の匂い。強くない。けれど、柔らかい。朝の風に乗って、かすかに揺れる香りは、喧騒の中でひときわ静かに、レオンの胸へと届いた。

「皆さまのご無事を……お祈りしております」

 そう言って、彼女は頭を下げた。その仕草は、誰に教わったわけでもない祈りの形のようで、花束の小ささとは裏腹に、そこに込められた想いは驚くほど大きかった。

 レオンの周囲を満たしていた喧騒が、その瞬間だけ、ほんの少し遠ざかったように感じられた。

 白と薄紫の花弁が、朝の薄明を受けて淡く光る。その光は、戦場へ向かう者の背にそっと触れる“無事を願う手”のようだった。


 メイドの指先はわずかに震えていた。それは恐れではなく、言葉にしきれない想いをどうにか形にして渡そうとした証だった。

 レオンはその震えを見て、胸の奥で静かに何かが揺れるのを感じた。

 喧騒の朝の中で、この小さな花束だけが、ひとつの祈りとして確かな重みを持っていた。


 レオンは、少しだけ言葉を失った。戦場の前では、剣を受け取ることはあっても、花束を受け取ることは滅多にない。まして、それが自分宛となると、なおさらだ。

「俺に……ですか」

 思わずそう言うと、彼女は少しだけ慌てたように目を上げた。

「は、はい……あの、もちろん皆さまご一緒に、なんですけれど……でも、レオン様にも……」

 最後のほうは声が小さくなった。緊張しているのだろう。けれど、その緊張の奥にあるものは、ただ純粋な願いだった。

 生きて帰ってきてほしい。それだけの、飾りのない願い。その願いは、白と薄紫の花弁よりもずっと静かで、ずっと強かった。


 レオンの胸の奥で、何かがそっと触れた。それは剣ではない。戦場の熱でもない。もっと柔らかく、もっと人間らしいもの。

 ――自分たちの戦いは、誰かの祈りの上に立っている。

 そんな当たり前のことが、この小さな花束ひとつで胸に沁みてくる。

 朝の風が吹く。冷たく澄んだ風。だが、その風は、花束に込められた願いをそっと運ぶように優しかった。


 メイドの指先はまだわずかに震えている。その震えは、恐れではなく、“どうか無事で”という想いが形になった証だった。レオンはその震えを見つめながら、静かに息を吸った。喧騒の中で、この小さな花束だけが、ひとつの祈りとして確かな重みを持っていた。


 レオンは花束を受け取った。

 花は軽い。驚くほど軽い。指先に重さをほとんど感じないほどに。だが、その軽さが逆に胸へ沈んだ。まるで、重さではなく“想い”だけが静かに沈殿していくようだった。

「……ありがとうございます」

 それしか言えなかった。けれど、今はそれでよかった気がした。

 言葉を飾れば嘘になる。長く語れば薄まってしまう。この一言だけが、今の自分の胸にあるものを最も正確に伝えられる気がした。

 花束の白が、朝の光を受けてやわらかく揺れる。その白は、戦場の白ではない。結界の光でも、刃のきらめきでもない。もっと静かで、もっと人間らしくて、もっと優しい色だった。誰かが誰かの無事を願う時にだけ生まれる、そんな穏やかな白。


 風が吹く。冷たく澄んだ風。だが、その風は花束の白をそっと揺らし、レオンの胸に落ちた“祈りの重み”をさらに深く染み込ませていく。

 その瞬間、レオンは気づいた。

 ――自分たちは、ただ戦うためにここにいるのではない。誰かの願いに応えるために、前へ進むのだ。

 その願いは、この小さな花束の中に、確かに息づいていた。

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