第113話
side シュテン
雄叫びと共に俺の中で激しく渦巻いていた熱が落ち着いていく。
あぁ、やっと追いついた。俺は自分の身体の様子を確かめるように拳を握る。
今までとは比べ物にならないくらいの力が自分の中に宿っているのがわかる。
さっきまで言うことを聞かなかった身体は嘘のように軽くなっていた。
「ガアッ!?」
目の前で突然の変化に戸惑う小物が吠えている。
俺はそんな相手に挑発するかのように指を曲げて呼び寄せる。
「ガアッ!!」
小物であってもバカにされていることくらいは分かったのか猛然とこちらに突っ込んできて拳を繰り出してくる。
先ほどまでは荒れ狂う暴風に感じた相手の拳からの風圧も今となっては微風くらいにしか感じない。
まるでスローモーションのように見える相手の拳を交わして伸び切った腕に肘鉄を落とす。
「ボキッ!」
相手の腕の骨が折れる音が聞こえる。
「グギャッ!?」
相手は折れた腕を庇いながら退いていく。俺はそれを黙って見逃す。
そしてゆっくりと観覧席の方を振り向いてソージに向きあう。
あぁ、どうしてだろう?自然に笑みが浮かんでくる。
ソージはそんな俺を見て一度だけ頷く。
俺は相手に向き直る。これ以上、不甲斐ないところはソージには見せない。俺は不退転の決意をもって駆け出す。
右の拳で相手の土手っ腹を撃ち抜く。さっきまでの不甲斐ない俺とは違い、芯にまで攻撃が届く。
痛みで下がった相手の頭を鷲掴みにし膝蹴りを入れる。
相手の口からは折れた歯と血が飛び出てくる。
苦し紛れに斧を振り回す腕を絡みとり、相手を投げ飛ばす。
油断はしない。相手の手から離れた斧を闘技場の端に蹴り飛ばし相手に拾わせないようにする。
俺が投げ飛ばしたバーサーカゴブリンは身体から蒸気を吹き上がらせながら立ち上がる。
俺が折ったはずの腕も元通りに戻っている。
これが超回復か。回復に使うエネルギー切れを狙ってもいいがせっかくだから色々と試させてもらうとしよう。
俺はゆっくりと身体の中に眠る魔力の操作を始める。




