第112話
sideシュテン
動かないはずの俺の身体が、突き飛ばされる。閉じていた目をあけるとそこにはソージの背中があった。
「どさっ。」音の鳴った方に目を向けるといつも俺の頭を撫でてくれたソージの腕が力なく落ちている。
俺は咄嗟のことに言葉も出てこない。ソージが何か言っているが俺の頭には何も入ってこない。
呆然としてると、ソージがこちらに振り返る。
斬り飛ばされた腕で俺の頭を撫でようとしたのか腕のあった場所を観て苦笑を浮かべている。
いつもの優しい手の温もりは届かない。
俺は苦笑するソージに俺の想いを伝えようとするが口が動かない。
そんな俺を見てソージはもう一度微笑みゆっくりと歩き始める。
行かないで。俺と一緒に戦ってくれ!そんな弱気が俺の胸の内を占めていく。
「お前はそんな俺の1番の相棒なんだ。不甲斐ない顔ばかり浮かべるな。不敵に笑って目の前の敵を叩きのめせばいい。後は任せたぜ?シュテン!」
俺の横を抜ける瞬間ソージの言った言葉がやっと俺に届く。
あぁ、こんなボロボロにやられた今でも俺のことを信じてくれるのか。
「パンッ!」
俺は自分に喝を入れるように両手で顔を叩く。
ここで立ち上がれなきゃもう二度とソージとは向き合えない。
あぁ、ならやってやるよ。葛葉にもできたし、墜姫もできたんだ。
なにより、いつまでもスカアハに置いていかれてるわけには行かない。
俺の身体についたソージの血を舐めとる。
ソージの血を身体に入れた瞬間、全身に今まで感じたことのない熱が駆け巡る。
俺に襲いくる、熱を全て受け入れる。これくらいの痛みはどうってことない。ソージから俺に託された想いが全ての熱を飲み込んで膨れていく。
「ガアッッ!」
全ての熱を受け入れて燃え上がらせるように俺は雄叫びをあげる。
side ソージ
シュテン、気づいたか。俺の血は強制的に魔物の成長を促す。俺の血に求められる何かが足りなければ摂取した魔物は跡形もなく吹き飛ぶ。だが、お前なら問題はないだろう?俺とずっと一緒に居たんだ。お前が耐えられなきゃ誰も耐えられない。
シュテンの雄叫びとともに観覧席にまで熱波が届く。熱波によって巻き上げられた土埃がはれるとそこには俺と同じくらいにまで成長したシュテンが静かに佇んでいた。




