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立体映像が進むと共に、周囲のレグルス王子達への視線が冷えてゆく。音が所々飛んでいるのはイザールの仕業だろう。俺が前に見た時には、音声が途切れることは無かった。それに、聖女について為政者に都合が悪い部分だけが聞こえなくなっているのだ、王家と裏取引があったに違いない。
リアがシリウスにメッタ刺しにされる場面は、何度見ても腸が煮えくり返るようだ。凄惨な映像に、気の弱いご婦人方がばたばたと倒れてゆく。
俺は爪が食い込むほど拳を握り締め、奥歯をすり潰す勢いで噛み締めて耐えていた。シリウスを逃がさないよう、常に視界に入れておく。こいつだけは、絶対に、逃がさない。
「───これでオレが王になれるかもな」
「そうなったら……の称号はボクが貰って良いよね?本物の聖女を殺したのはボクなんだし」
「リゲルはそれで良いのか?」
「ワタシは、邪魔なアルカディア家が追い落とせれば十分です。これまでワタシを馬鹿にしていた家族を見返せますからね。でも、そうですね。王位に就かれたら、アルカディア公爵家の所領をワタシに頂けますか?」
「そのくらい容易い事だ。どうせならアルカディア公爵の爵位もやろう。2人で国王であるオレの治世を支えてくれ」
「さすが次期国王陛下、太っ腹だね!」
意気揚々と階段を登る3人の笑い声が祝賀会場に響き、映像は終わった。
「へぇ、レグルスは兄上達を差し置いて、王位に就くつもりなのかい?」
底冷えする声がラサラス王子から発せられ、レグルス王子は蒼白な顔で首を振った。
「ち、違います。これは、その……オレは嵌められたのです、兄上!」
「どういう事が説明してくれるかな」
「アルカディア公爵に、神殿長に騙されたのです!聖女を殺さなければこの国は滅ぶと、そう言われて我々は仕方なく、国のためにやった事なのです!」
「ぼくには仕方なく、って風には見えなかったけどね。それに冗談でも、国王であるオレ、なんて言ったら簒奪の意思ありと思えるよね。聖女云々より、反逆罪の方が重いよね」
ミモザ嬢がラサラス王子の前に進み出る。
「恐れながらラサラス殿下、発言をお許し頂けますでしょうか」
「構わないよ」
「レグルス殿下は常日頃から、ご自分こそが王位に相応しいと仰っておりました。それに、封印の儀式が終わったら、アタシと結婚して王妃にしてくれると約束して下さいました」
「黙れミモザ!」
「黙るのはお前の方だよ、レグルス。証拠に証人まで居るんじゃ、お前が王位を狙っていたのは明白だね。残念だよ」
ラサラス王子が近衛兵に合図を送ると、瞬く間に3人が囲まれる。兄王子に掴みかかろうとするレグルス王子、呆然と立ち尽くすリゲル、シリウスは───。
飛び掛かって呪文を紡ごうとした頬を殴り、腹に蹴りを入れ、腕を捻り床に押さえ付けてから、俺はシリウスの口に布を押し込んだ。
これでお得意の魔法も魔術も使えまい。
「お見事」
ラサラス王子が拍手をくださった。
「その見事な腕前に、何か褒賞を与えよう」
「でしたらこの者達を尋問する権利を」
「良いだろう、許可しよう」
「アーク、ふざけるな!お前も同罪だろ!」
近衛兵に組み伏せられたレグルス王子に、平手が飛んだ。
「往生際が悪いですわ!いい加減ご自分の罪をお認めなさい!」
デネボラ嬢に平手打ちされ、レグルス王子が唖然としている。
「レグルス殿下。わたくしデネボラは、ここにレグルス第三王子との婚約を破棄させて頂きます」
「認めよう。この件はぼくに一任されている。責任を持って、陛下に婚約破棄のお許しを頂くよ」
「ありがとうございます、ラサラス殿下」
ラサラス王子がまた近衛兵に合図をし、レグルス王子達3人は連行された。
俺はラサラス殿下の御前に跪いた。
「ラサラス殿下。アルカディア公爵家が聖女を隠匿したのは事実です。よって神殿長、神官長共に辞任し、父は公爵位を次兄に譲って領地で隠遁します。俺……私もアルカディア公爵家から除籍となります」
「えっ、ちょっと待って?アルカディア公爵家にはお咎め無しって事になったんじゃないかい?」
「父は、自分も罪を贖うべきだと」
「いや駄目だよ!神殿長と神官長が一度に辞めたら、神殿が立ち行かなくなるから!」
「ですが父の決意は固く、従兄も父が引責辞任するのに自分だけが神殿に残れないと……私でしたら、もしかしたら、説得出来るかもしれませんが」
「……どうすれば説得が成功する?」
さすがラサラス王子、話が早い。
「私と聖女ミリアリアの婚姻を認めて頂ければ、私はどんな難題でも乗り越えられましょう。既に申請は済んでおります。あとは速やかに、国王陛下の御印を頂ければと」
「分かった。それも陛下に進言しよう」
ラサラス王子は呆れたように笑う。
「まったく君は、本当に妹が好きだね」
「殿下の仰る通りです。一刻も早く夫婦となれること、願っております」




