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光の薔薇を持ち帰ったミモザちゃんは、神殿から正式な聖女に認定された。採取の時の祝福の光が強力だったことがレグルス王子から伝えられたため、聖女としての能力も高いと見做されて、一身に期待を受けることとなった。
聖女への期待が高まると、色々な思惑から横槍やら口出しやらが増えてくる。聖女の能力を、もっと国のために使おうという声が大半だ。そのために聖女の能力向上が叫ばれ、学園に一任されていたミモザちゃんの教育を神殿でも行うことが決定された。
「本当なら今頃王族の避暑地でバカンスしてたのに〜!」
ミモザちゃんは文句タラタラだ。
学園が長期休暇に入ったので、寮生活だったミモザちゃんは生活の場を神殿に移した。強制的に移されたと言ってもいい。朝から晩まで勉強に訓練に儀式にと、ハードな日々を送っている。
そして、聖女のご学友(笑)だからとハードスケジュールに付き合わされる私。
「仕方ないじゃない。少なくとも聖剣が創れるようにならなきゃいけないんだから」
「そのうち出来るようになるから!今は夏休みを満喫したい!海水浴したい〜!」
「王族の避暑地で海水浴は無理だ。この時期はクラーケンがでるからな」
もちろん私について来ているアーク兄様。そして権力を振りかざして神殿に居座っているレグルス王子達。王子はともかく、リゲルとシリウスは領地に帰らなくて良いのか。
「クラーケンくらい退治できます〜!ですよね、レグルス様!」
レグルスルートのクラーケン討伐イベントだね。でも常闇の祠でレグルス王子の腕前はわかったよね。あれでクラーケン討伐なんて出来ると思う?
私の視線から顔を背けるレグルス王子。ご自分の実力をよく分かっていらっしゃる。
「聖剣が出来上がればクラーケンぐらい退治できるかもね。さぁ、休憩終わり!ミモザちゃん、続きやるよ」
「ヤダーッ!海水浴したい!カワイイ水着着てイカ焼き食べたいー!」
駄々をこねるミモザちゃんに困り果てる私達。
私だって少しくらい夏休みを楽しみたい。予定では領地に帰って兄様とダンジョンに挑むはずだったのだ。食べれば空を飛べるという幻のキノコを探すのを諦めて、ミモザちゃんの特訓に付き合っているのだ。
仕方ない、モチベーションを保つためにもバカンスは必要か。
「わかった。光魔法の付与が出来るようになったら、1日だけお休みをもらえるよう父様に掛け合ってあげる」
「アンタの父親って神殿長よね?せめて5日くらいなんとかならない?」
「聖剣が出来上がれば5日にしてあげる」
「無茶言うな!だったら3日、3日だけ夏休みをください!」
うーん、3日ぐらいなら許可がおりるかな。
私が頷くと、ミモザちゃんは諸手を上げて喜んだ。
「やったー!水着、水着準備しなきゃ!」
水着と聞いて男性陣がソワソワと落ち着きを無くす。リゲル、そのカタログは何処から出した。
何故か用意されていた水着カタログを囲んで、皆でミモザちゃんに似合う水着を物色しはじめる。アーク兄様までカタログを覗き込んでいる。何だかモヤモヤする。
ミモザちゃんはこの世界の水着がお気に召さなかったようで、ノートに自分が着たい水着のイラストを描き始めた。ビキニは止めようよ、この世界でそんなの着てたら痴女だよ。
「……ミモザはこれが着たいのか?」
「はい!カワイイでしょ!」
「……そう、だな……似合うんじゃないか……」
「ありがとうございます!知り合いの服屋さんに仕立ててもらいますね!」
ミモザちゃんはビキニのイラストに、あれこれと指定を書き入れてゆく。まったく男共は、止める気がないのか。
「ミモザちゃん、注文する時にレグルス王子のオススメだって言えば流行るかもよ。きっと王妃様も興味をお持ちになるわ」
息子の成長に、大変お喜びになるだろうね。
レグルス王子の顔色が真っ青だ。笑ってるけど、リゲルとシリウスのオススメも、きっちり宣伝してもらうからね。
「──リア、何を怒ってるんだ?」
一転して大人しめの水着をミモザちゃんに勧めだしたレグルス王子達から離れると、アーク兄様が追い掛けてきた。
「別に怒ってないけど?兄様もミモザちゃんに似合う水着を選んであげたら?」
「殿下達に任せれば良いだろう。それよりリアは、水着を新調しないのか?」
えっ、私?
「リアも海水浴に行くんじゃないのか?リアが欲しい水着があれば、買ってやろうと思ったんだが」
「私の水着を探してたの?」
「そうだ。カタログに男女でペアになっている水着があったから、俺とリアで着たらどうかと」
胸のモヤモヤがすっと消えてゆく。
私の機嫌が治ったのを敏感に察して、アーク兄様が笑顔になる。私は何となく照れ臭くて、わざと意地悪く聞いてみた。
「兄様のオススメは、ミモザちゃんが描いていた水着じゃないの?」
「あ、あんな破廉恥なものリアに着せられるか!人前であれは駄目だ!」
ガシッと両肩を掴まれて、ひどく真面目な顔で怒られた。珍しく兄様が怖い。
「いいか、どうしてもあれを着たいなら、俺の部屋で俺だけの前でだ!」
それもどうなんだ。




