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 バカンスというご褒美のおかげで、ミモザちゃんは光属性の付与魔法が使えるようになった。と言ってもまだまだ聖剣を創れるほどの技量はないので、神殿での忙しい日々は変わらないのだが。


 私は約束どおり、父様から3日間の夏休みをもぎ取った。ミモザちゃんはレグルス王子達3人と、湖で有名な観光地へ行ったらしい。海水浴ならぬ湖水浴で水着姿を披露したと聞いたが、ビキニではなかったようなので一安心だ。


 私は夏休み中ミモザちゃんとは別行動をとった。たった3日では王族の避暑地にも、リゲルとシリウスの家の領地にも行く時間はない。現地に行かなければイベントは発生しないと踏んで、ミモザちゃんから離れた。私も溜まった疲労を解消したかったのだ。


 私はレグルス王子達3人が好きではない。はっきり言うと嫌いだ。嫌いな相手と1日中一緒にいるのは、私にかなりのストレスを与えていた。ちなみにミモザちゃんのことは嫌いではない。向こうは私を嫌っていて、私がストレスの原因になっているかもしれないが。


 ミモザちゃんが神殿で生活するようになってから、レグルス達はずっとミモザちゃんに張り付いている。必然的に私とも一緒になるわけで、神経が擦り減る。

 3日間だけでも心の平穏が欲しくて、私は休みの予定を話し合う輪に加わらなかった。こっそりミモザちゃんに、私と兄様と3人で出掛けないか誘おうとしたが、話も聞いてもらえなかったし。


 という訳で、ミモザちゃんと会うのは3日ぶりだ。


「はいこれ、お土産」


 私は旅行先で狩った獲物を腕輪から出し、ミモザちゃんに渡した。


「何これ」

「クラーケンの切り身。王族の避暑地に行ったから、ついでに退治してきた」

「はあ?たった3日で行ってこれるわけないじゃない」


 それが出来たんだよ。我が家のチート、長兄のおかげで。


「兄が飛行魔具を発明したから、テスト飛行で避暑地に行ったのよ。片道1日ですんだから、丸1日海水浴できたの」

「何それ聞いて無いんだけど!」

「誘おうとしたよ?でもミモザちゃん、私と夏休みなんて絶対嫌だって言ったでしょ」


 ミモザちゃんがいれば、レグルスルートのイベントをアーク兄様が横取り出来たのに。


 ミモザちゃんを誘えなかったので、テスト飛行には私とアーク兄様、長兄とその友人の4人で臨むことになった。王族の避暑地が行き先に決まったのは、兄の友人が王家の関係者だったからだ。チートな兄は交友関係までチートらしい。


 食べれば空を飛べるキノコ狩りには行けなかったが、思いがけず空を飛ぶことは出来た。飛行魔具からの眺めが最高だったと話して聞かせると、ミモザちゃんはものすごく羨ましげだった。でも私に頼み事をするのは嫌らしい。暫しアーとかウーとか唸っていたが、好奇心には勝てなかったようで、合掌しながら懇願してきた。


「今度乗せてください!」

「いいけど、操縦士含めて4人しか乗れないから。乗るとしたらアーク兄様と一緒にね」

「なんで?レグルス様がいい!」

「あのね、飛行魔具はまだ試作段階だから、事故が起こる可能性もあるの。実際今回、着地に失敗して墜落しかけたからね。最低でも身体強化が出来なきゃ乗せられないよ」


 レグルスは身体強化出来ないからね。リゲルとシリウスも出来ないから、飛行魔具の同乗者はアーク兄様一択だ。

 ミモザちゃん自身が身体強化出来るようになれば選択肢は広がるけれど、身体強化イコール武闘派一直線だから、イコールアークルート一直線てことだ。素晴らしいね。


「……やっぱり乗らなくていい」

「大丈夫、兄様が一緒なら墜落しても爆発しても守ってくれるから」

「爆発の可能性もあるの?そんな危険物絶対乗らない!」


 ダメか。吊り橋効果も狙えるかと思ったんだけどな。まぁいいや、折を見てまた誘ってみよう。

 私はミモザちゃんに渡したクラーケンの包みを指差した。


「それ、早めに食べてね。腕輪の中では時間が止まってるけど、出したら足が早いから」

「こんなのどうやって食べるのよ。こんな塊渡されても困るんだけど」

「ミモザちゃん、料理出来ないの?」

「アタシが作れるのはお菓子だけよ!」


 攻略対象を餌付けするためのアイテム作りですね。


「ミモザちゃんがイカ焼き食べたいって言ってたから獲ってきたのに」

「何人分あるのよ!アタシは誰かが作ったイカ焼きを食べるだけで良かったのよ!それに海水浴場で食べるから美味しいんじゃない!」


 我儘だなぁ。でも海水浴場だから美味しいというのはわかる。


「分かった。お昼休憩の時に料理してあげるから」


 私はミモザちゃんからクラーケンの切り身を取り返し、腕輪に収納した。

 さーて、何作ろうかな。


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