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朝起きてテントを出ると、出入り口のすぐそばでアーク兄様が寝ていた。見張りに立っていたらしい騎士様からモノ言いたげな視線を頂いたが、私は黙ってその場を後にする。
いたたまれない!
顔を洗っていると、起き抜けのアーク兄様が追い掛けてきた。兄様は私の背中に覆い被さると、グリグリと私に頬擦りした。
「兄様、まだ寝惚けてるのね。今すぐ目ヤニとヨダレを擦り付けるのを止めて」
「リアが冷たい。まだ怒ってるのか?」
「兄妹としての適切な対応をお願いしているの。兄様の距離が近過ぎると、私が心の距離を遠ざけてバランスをとらなきゃいけなくなるから」
背中が軽くなったので、日課にしている鍛練を兄様と行い、朝食の準備を手伝った。出来上がるころにやっとミモザちゃんとレグルス王子達が起きてきたので、皆で朝ごはん。
全員が食べ終わるころを見計らい、私は昨日光属性を付与した刃物をミモザちゃんに手渡した。
「なによコレ」
「光の薔薇を採取するための道具に決まってるでしょう」
「なんでコレ?他にもあったよね!?」
何を言ってるんだ。コレしかないだろう。
「なんで剪定バサミなんかに光属性付与したのよ!」
「薔薇を切り取ってくるんだから、当然剪定バサミでしょう」
「いや……間違ってない、間違ってないけどね、聖剣とは言わないからせめて聖なるナイフとかね」
「文句があるなら自分で付与すればいいのでは?」
ジロリと睨んでやると、ミモザちゃんは押し黙った。
実際、聖剣を創るのは聖女の役目なのだ。それを、ミモザちゃんがまだ属性付与が出来ないからと、私が代わりに今回限定の聖なる武器を作成したのだ。気に入らないなら自分で創ればいいのだ。
それに聖剣は唯一、正装した聖女を殺めることができる武器だ。それに準ずる物を、私は創りたくない。
「だいたい、私の魔力量ではこの大きさへの付与でギリギリだもの」
「そうだろうね。ミリアリアちゃんの瞳の色、薄いもんね」
訳知り顔でシリウスが口を挟む。魔力特化の彼の瞳は血のように濃い赤色だ。
一般的に、魔力量は瞳の色の濃さに表れると言われている。ミモザちゃんの瞳は黄金と呼ぶに相応しい濃い金色、私の瞳の色は白金に近い薄い金色だ。
「だから今回はこれで我慢して」
ミモザちゃんは渋々頷いた。
「しかしそうなると、常闇の祠に行くメンバーは厳選しないといけないな」
レグルス王子は言いながら、シリウスとリゲルを横目にみる。シリウスは魔法が使えないと戦力外、リゲルも武術は不得手なので、光魔法以外が封じられた常闇の祠では足手まといだ。二人とも自覚はあるようで、悔しげに俯いている。
「常闇の祠に行くのはオレとミモザ、アークの3人でいいな?準備が出来次第、出発しよう」
「お待ちください、殿下。聖剣がないのですから、リアにも同行してもらったほうが良いのでは」
「多少武術の心得があるようだが、ミリアリア嬢は留守番のほうが良いだろう」
私としては正直、レグルス王子にこそ留守番をお願いしたい。私はまだ兄様とミモザちゃんと私の3人パーティーを諦めていない。
私は外していた剣を手に取ると、ヒュンッと一閃、振り抜いてみせた。レグルス王子とミモザちゃんが腰掛けていた岩、二人の間に亀裂が入る。
「私の腕では不足でしょうか?」
アーク兄様以外の全員が、ブルブルと首を振る。
「では殿下に代わって私が常闇の祠に行くということで、よろしいですわね」
「よろしくない!レグルス様、ね、ついて来てくれますよね?」
さすがミモザちゃん、強靭な精神力ですぐ立ち直り、レグルス王子を揺さぶっている。王子達はまだ青い顔で震えているのに。
結局ミモザちゃんも私も頑として譲らず、常闇の祠へは4人で行くことになった。ミモザちゃん、レグルス王子、アーク兄様、私というゲームではなかった編成だ。ミモザちゃんをアーク兄様ルートに引きずり込むことは出来なかったが、レグルス王子ルートとも違うので痛み分けと言っていいだろう。
「レグルス様、アタシを守ってくださいね!」
ミモザちゃんはレグルス王子の腕にぶら下がりつつ、視線は私に固定している。何から守って欲しいのかな?
ミモザちゃん恐くないよ〜、だからアーク兄様ルートにおいで〜。
「レグルス様、お願いですから離れないで!」
「ああ!」
なんでそんなに必死なのかなぁミモザちゃん。
レグルス王子も私に剪定バサミを向けて構えるのは止めてくれないかなぁ。
緊張感漂う中で、アーク兄様だけがのんびりと朝ご飯を食べ続けていた。




