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 馬2頭で常闇の祠までを駆ける予定だったのだが、思わぬ大所帯になってしまった。ミモザちゃん達の乗った馬車と護衛の騎馬隊だけでも仰々しいのに、荷物を載せているらしい馬車が5台も続いている。

 ミモザちゃん達を乗せた馬車は、ガラガラと音をたてながらのんびりと進む。本来は街中で使うきらびやかな馬車は、街道ではスピードが出ないらしい。なぜ長距離用の馬車を使わないのかとの疑問には、王子の護衛騎士が答えてくれた。お姫様が乗るような可愛らしい馬車で迎えに来てほしいと、ミモザちゃんがレグルス王子に強請ったのだそうだ。

 

「この調子じゃ今日中に戻って来るのは無理だな」


 アーク兄様が耳元で呟く。くすぐったい。

 私はなぜかアーク兄様と同じ馬に跨っていた。乗馬は得意なので一人で乗るつもりだったのに、私が乗った馬に兄様が同乗してきたためだ。


「そうね。兄様、野営の準備がある?」

「ああ。何かあってもいいように、常に準備している」

「さすがね、兄様」

「リアの着替えも持って来ているから安心しろ」

「……大丈夫、私も持ち歩いているから」


 私はいつも身に着けている、収納機能付きの腕輪を振ってみせた。アーク兄様は残念そうな声になった。


「そうか。せっかくリアに似合いそうな下──服を見つけたんだが」

「た・だ・の!服ね。兄様が妹の下着のサイズを把握しているような人だったら嫌いになるところだったわ」

「ああ、ただの服だ!俺はリアの下着のサイズを測ったりなんかしていない!」

「…………」

「リア、俺は大きさに拘りはない。大きければ良いというものではないからな!」

「……お兄様、少し黙っていて頂けますこと?」


 私の本気の怒りを感じ取ったのだろう、アーク兄様は口を噤んだ。


 行程は何事もなく進んでいった。天気も良く、魔物や盗賊の類も出ず、平和そのものだ。

 ミモザちゃん達は窓を開けて外を眺めているようで、賑やかな声が時折聞こえてくる。すっかり観光気分らしく、小動物やら花やらを見つけるたびにキャアキャアとはしゃぐミモザちゃんの声に、護衛騎士の皆さんが温かな視線を向けている。聖女様といっても普通の女の子なんだなと、微笑ましく思われているようだ。


 昼食のための休憩を挟んで進み続け、私達は夕刻には常闇の祠がある洞窟へと辿り着いた。予定の倍ほど時間は掛かったが、日暮れ前に到着できて良かった。

 兄様と2人で狩りに行く時は、この後テントを張ったり食事を作ったりと野営の準備に取り掛かるのだが、今回は全て護衛の皆さんがやってくださるらしい。有難くお世話して頂くことにして、私は私にしか出来ないことを済ませることにした。


 野営地から少し離れた木陰で、荷物を取り出す。父から借りた織物を地面に敷き、その上に家から持って来た刃物を置く。織物には魔術の術式が織り込まれていて、光魔法を増幅する効果がある。その力を借りて、刃物に光属性を付与するのだ。


「リア、本当にコレでいいのか?」


 当然のように付いて来た兄様に聞かれるが、これ以上に相応しい物を私は知らない。

 答える代わりに光魔法を発動させ、私は一気に光属性付与を終わらせた。


「……まあ、明日しか使わない物だしな」


 護衛騎士が食事だと呼びに来てくれたので、皆と合流する。和やかに夕食をとり、夜間の見張りも騎士が交替でやってくださるとのことで、私達は早々にテントで休むことになったのだが。

 ここで問題が発生した。


「リアは俺と一緒だ」


 ちょっと兄様何言ってんの!?


「いくら兄妹だからって、2人きりでテントを使うのはどうかと思うよ?」


 シリウスに正論を吐かれるとイラッとするが、今回ばかりは同意見だ。


「そうですよ。ワタシですら女性と夜を過ごしたことはないですからね」


 おお意外。リゲルは手が早いと思ってたのに。

 ミモザちゃんも意外そうな顔をしている。


「アークがミリアリア嬢と一緒なら、オレはミモザと一緒だ」


 レグルス王子は本気でデネボラ様に言い付けるよ?

 私がレターセットを取り出してデネボラ様へのお手紙を書きはじめると、王子は慌てて不適切な発言を取り消した。


「冗談、冗談だ!アークも冗談だよな?」

「いや、俺は本気だ。冗談でこんな事は言わない」

「冗談だってことにしようよ兄様!今なら冗談で済ませられるよ?」

「リアは俺と一緒が嫌なのか?いつも狩りの時は一緒に寝てくれるのに」


 兄様止めて!お願いだからそんな事宣伝しないで!

 周りの騎士さん達にまで聞こえてるから!


「今日は狩りじゃないんだし、騎士の皆さんが見張ってくれるから危険もないでしょ!私はミモザちゃんと寝るから!」


 アーク兄様がクゥ〜ンとか鳴きそうな目でこっちを見ていたが気にしない!

 私は手近なテントにミモザちゃんを引っ張り込んで、何重にも結界を張った。これで兄様も諦めてくれるはず、というか諦めてお願い!


「アンタ達ってまさか近親相──」

「違うから!私はミモザちゃんと兄様を応援してるから!」

「それは止めて」


 ミモザちゃんのいつになく冷静な突っ込みに、余計恥ずかしさが募る。

 取り敢えず、アーク兄様には早急にデリカシーを獲得してもらうとしよう。

 

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