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光の薔薇は『聖なる乙女と薔薇の封印』でのキーアイテムだ。主人公が魔を封印する時に使う魔法植物で、常闇の祠にしか生息していない。採取のためには光属性を付与された聖なる武器が必要で、ゲームでは聖剣が光の薔薇を採取するのに使われていた。
光の薔薇が生えている常闇の祠も特殊な場所だった。光属性魔法以外は、魔法が全く使えないのだ。そのため常闇の祠の攻略には物理攻撃特化のアークが必須で、主人公とアークが固定メンバー、あとは聖剣を与えられた主要攻略キャラクターを加えた3人でパーティーを組むようになっていた。
ちなみにアークが聖剣を与えられると、主人公とアークの2人で常闇の祠に出発することになる。その場合、コッソリ後をつけてきたミリアリアが途中参加することになり、主人公と悪役令嬢の共闘という珍しいシーンが見られるのだ。
主人公誘拐事件の時にも感じたが、ゲームのアークは他の3人の攻略対象とは少し立ち位置が違う。それはこの世界でも同様で、アーク兄様だけは聖女を補佐する立場を、ひいては聖女という存在そのものを良く思っていない節がある。だからこそアークルートにのみ、主人公が生き残る道があるのかもしれない。
そんな事を考えながら、私は学園の東門に寄り掛かっていた。隣にはアーク兄様がいて、時折門の中に視線を向けている。常闇の祠へと出発するために、ミモザちゃんと待ち合わせしているのだ。
学園の寮で生活しているミモザちゃんに合わせ、待ち合わせは寮の朝食が終わる時間にしているのだが、なかなか来ない。常闇の祠へは馬で半日程度なので日帰りの予定だったのだが、あまりに出発が遅れると今日中に帰って来られなくなる。
そろそろミモザちゃんを寮まで迎えに行こうかと思っていたところ。きらびやかに飾りたてた馬車が東門を通り抜け、女子寮の目の前で停まった。
うわぁ、王家の馬車が来ちゃったよ。
「兄様、話したの?」
「いや。今日は俺達とミモザ嬢の3人だろう?」
「うん、私はそのつもりだったんだけど」
「見送りじゃないのか?」
それはないと思う。なぜなら東門の外、ぞろぞろとやって来た馬車が列をなしているからだ。女子寮の前のものほど派手ではないが、全ての馬車に王家の紋章が入っている。目立つことこの上ないし、悪い予感しかしない。
女子寮の前の馬車からは、レグルス王子だけでなくリゲルとシリウスまで降りてきた。
私とアーク兄様は門を潜り、3人に挨拶する。
「おはようございます、皆様。お揃いでお越しとは思いませんでしたわ」
言外に、あんた達はお呼びじゃないと言ってやる。
「おはよう。オレも、リゲルとシリウスは来なくていいと言ったんだがな」
レグルス王子、私は貴方も来なくていいと言ってるんですが。
ハッキリとそう言ってやりたいが、言ったところで付いてくるに違いない。門の外には馬車だけでなく、騎馬隊まで集まってきている。追い返すのは至難の業だ。
「酷いよ王子、ボクだってミモザちゃんと旅行したい!」
「レグルス様、ワタシもミモザ嬢の世話役なんです。ミモザ嬢が遠出するとなれば、同行しなければなりません」
「だがな、ミモザが誘ったのはオレだけだし」
「抜け駆け禁止ー!」
ワーワーと3人が揉めている隙に、私は女子寮へとダッシュした。
玄関扉を開けると、ちょうどミモザちゃんが階段を下りてくるところだった。私が駆け寄ると、ミモザちゃんはサッと身構える。今日は突き落としたりしないってば。
私はミモザちゃんを引っ張って、階段脇の外から見えない場所に移動した。
「ちょっと、殿下達までお越しなんだけど」
「当たり前じゃない、アタシが呼んだんだから」
「今日は私とアーク兄様と、3人で出掛けるはずでしょ」
「そんな約束してないわよ。アタシはレグルス様も一緒が良いの!」
なんてこった。私と兄とミモザちゃんだけなら、アークルートに片足突っ込んだも同然だと思ってたのに。兄様とミモザちゃんを同じ馬に乗せ、私は途中から別行動をとれば、イベント再現は完璧だと思ってたのに。
「とにかく、レグルス様と一緒じゃなきゃ行かないから!絶対にアークルートの再現はさせないわ!」
高らかに宣言するミモザちゃん。私の手を振りほどくと、玄関から外へと飛び出した。
「おはよーございまーす!お待たせしましたー!じゃあみんな揃って、常闇の祠へレッツゴー!!」
ミモザちゃんはレグルス王子の腕にしがみつき、元気一杯に叫んだ。か弱い美少女路線から、天真爛漫天然少女路線に進路変更したようだ。レグルス王子の腕に胸をグイグイ当てているのもわざとに違いない。
王子、デレデレすんな!デネボラ様に言い付けるぞ。
リゲル、シリウス、あんた達も羨ましそーに見てんじゃない!
王子達は鼻の下を伸ばしながら、王家の馬車へとミモザちゃんを誘う。4人が馬車に乗り込んだところで、アーク兄様がそっと私の肩に手を置いた。
「リア、俺は全く興味がないからな」
「何に?」
「……いや、何でもない……」




