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5.従兄弟、とのこと

従兄弟のユーリとリリアおばちゃまといえば、お父様の弟である鳳次郎おじちゃまのご子息と奥様のことですわ。

リリアおばちゃまはフランスとのハーフということもあって、ロシアの血を引いているお母様と大変仲が良く、お互いの屋敷を行き来することもしょっちゅうでして、まあそれはいいのですわ。

……問題はその息子のユーリにあるのです。


「ボンジュール、エレン。おみやげのトリュフだよ。ぼくがつくったんだ」


彼に常識の文字はありません。

ユーリがテーブルにトリュフを置いた衝撃でドンッ! と鉛を置いたような振動が伝わってきました。

ええ、表現がおかしいけれど事実です。

そしてこの簡易なラッピングで包んであるユーリの手作りだというトリュフ、一般的な泥だんごの3倍くらいの大きさがあるのですがそれは……。


「いおりにーさんとナタリーおばさまにはお母さまがつくったトリュフを」


すっ、と差し出されたのは上品なラッピングであしらった一般的な大きさのとても美味しそうなトリュフ。

……私だけこの大きな泥だんごみたいなのなんですの!?

ユーリのお母様であるリリアおばちゃまが私の反応に気づいたのかオロオロと困ったようにこちらを見つめていらっしゃいます。

お気づかい感謝いたしますが、ご心配はご無用ですわ。お世話になっているリリアおばちゃまの顔に泥を塗るわけにはいきませんもの。


お兄ちゃまと焼き上げたクッキーとココアが香るトリュフをお茶菓子に優雅なティータイム。

1人だけおにぎりをかじっているような私の姿を、ユーリがニコニコと満足げに見つめてきました。

こうやってただ笑っているだけでしたら絵画に佇むような絶世の金髪美少女ですのに……と、男であることが悔やまれる美貌を私も見つめ返しました。(同い年とは思えないほど整っていますわ!まったく!)


「エレン、おいしい?」

「味はチョコですわね」

「そうそう! かくし味に色んなしゅるいのチョコをね……あっ、もういっこ食べる?」

「もう充分ですわ!」


どこからか出てきたもう一つの鉛を押し返すと、ユーリの華奢な手の平では支えきれなかったのかトリュ……鉛はゴロゴロとボーリングの玉のように勢い良く庭に転がってどこかへ行ってしまいました。


「あっ!」

「わ、すごいころがった」


短い悲鳴をあげる私とは対照的に呑気なユーリ。ぼーっとしてる暇なんてありませんわよ!


「探してきますわ!」

「えっ!」


席を勢い良く立ち上がり、庭まで駆けていくとまもなくして後ろから何かが追いかけてくる気配がしました。あっ、転んだ。


「え、エレン待ってよ! トリュフはもういいから!」

「何をおっしゃいますの! あなたがせっかく作ったんでしょう!」

「……エレンがいらないっていったじゃないか」

「そ、それは……2個目ですし……」

「おいしくなかったんだろっ。……いおりにーさんのおかしのほうがおいしいもん」


急にいじけ出してしまったユーリ。

……何をいまさら。

それに伊織おにいちゃまのお菓子の方が美味しいだなんて当たり前ではないかしら。

伊織おにいちゃま物ごころついたときから毎日、老舗の和菓子屋に名を連ねる鳳屋の跡取りとしてお菓子作りの研究に励んでると聞いてますもの。


「お兄ちゃまのおかしがおいしいのはあたりまえですわよ! まあ……ユーリも、わるくなかったんじゃ……なくて?」

「え、そう? よかった!」


……うーん、立ち直り早すぎですわ。私が言うのもあれですけど、チョロすぎではありませんこと?

まあいいですわ! 早くも機嫌が良くなったユーリとともにトリュフを探すことといたしましょう。


「うーん……トリュフないなぁ、なんかこういうの、お母さまによんでもらったおはなしを思い出すよ」

「おはなし?」

「ふしぎのくにのアリスってやつ! さいしょウサギを追いかけるんだ」

「あぁ……」


てっきり世界名作劇場? いえ、日本昔話だったかしら? おむすびころりんかと思いましたわ。

というか状況的に当てはまるのはこちらではなくて?


「エレン!……あの茶色いの!」

「あら、みつけましたわ! あっ、でも……」


急に声を上げたユーリの指がさす方を見ると、ちょうど茂みになっているあたりに土と同化するように転がっているトリュフがありましたわ。

しかし……


「ありが運んでるね……」

「そのようですわね」


ときすでに遅し、転がった衝撃からかトリュフはラッピングから飛び出し、アリたちの獲物となってしまったようですわね。……苦くないのかしら?


「ありがたべてくれるならいいや!」

「……そう。ユーリがいいのでしたらよかったですわ」

「うん。でもね、ほんとによかったのはエレンが変わってなかったことだよ」

「え?」


少し顔を上げてユーリの目線と合わせると、思わずドキッとしてまうような優しげな瞳をしているものですから、反射的に目をそらしてしまいました。

……急にどうしたのかしら。


「エレンがいっぱい頑張ってるって、お母さまに聞いてからエレンが変わっちゃったのかなって思ってなんかイヤだったんだ。今日会ったときも痩せててエレンじゃないみたいで……」

「れ、レディーのたいけいをとやかく言うのはどうかとおもいましてよ」

「えっ、ごめん。あー……今の方がいいと思うよ。うん」

「フン。それに、わたしはいままでのワガママでめんどくさがりとはおさらばしたんですわ! どこが変わってないと言うの?」


そう言うと、ユーリはなんだか照れたように笑って、私の耳にユーリの吐息がかかるくらいに近寄って内緒話でもするのかのように小声でボソッと呟きました。


「食にいじきたないところとか」


……コイツ、絶対はっ倒してやりますわ!

よくわからない話が続きすぎてすみません。次回もよくわからないです

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