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元勇者、我が子と国道沿いをうろつく  作者: ---


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第10話 祈りは運命を変えず、祈る者を変える

 これは、今から約十二年ほど前の出来事だ。


 異世界の、野趣あふれる山岳地帯の温泉の前。

 そこでは、全裸の猿の群れと、全裸のイケメン、合計二種類の霊長類たちが戦っていた。


「ウキャー!!!!」

「キッ! キキイッ!! キーーーーーー!!!!」


 猿たちは口々に「我々の家の風呂に勝手に入らないでください」とサル語で叫び、

 イケメンは「そこをなんとか」といった意味のサル語を叫んでいる。


 ……なんと、猿の側が常識人サイドの主張をしているのだ。


 猿たちは「どうかお引き取り下さい」と叫んでいるが、

 イケメン……というか、十二年前の若き轟剛三郎は、「馬鹿を言うな、こっちはもう脱いでるんだぞ」と滅茶苦茶なことを言いながら猿の露天風呂に入ろうとしている。


「……はあ。けんかなんて、よくないですわ。

 おさるさんがつかってない、あいているおんせんをさがせばいいのに……」


 幼いアンジェリカは頬を膨らませる。

 彼女の父はよせばいいのに、なぜか猿の縄張りの猿入浴中の温泉を好んで入り、猿に怒られ、猿と怒鳴り合い、毎回猿と交渉して、むりやり猿の風呂に入ろうとするのだ。子どもとしてはかなり恥ずかしいしやめてほしい奇行である。


 さて、今幼いアンジェリカと彼女の母親は、 温泉を巡る霊長類たちの大喧嘩を 少し離れたところで見守っている。なお二人とも服は着ていた。


「……そうね。けんかはよくないわね」


 アンジェリカの隣に立つ女性が、けぶるような笑みを浮かべる。

 アンジェリカと同じ黄色い目をした、穏やかな風貌をした女性……アンジェリカの母親だ。

 彼女は猿相手に迷惑行為を働いているイケメンを、愛おしそうに見つめていた。


「でも、あなたのお父さまは動物相手でも人間相手でも、ああいうのをやるのが好きなのよ。

 ゴネて相手を折れさせたり、値切りに値切って相手に負けさせるような会話……。

 元々営業マンをやっていただけはあるわ。

『心のこもったしつこい交渉はまだAIにもできないことなのだ』

『これがプロジェクトマネジメント、物事をやり切る力だ』

 とかなんとか言って、ああでもないこうでもないって交渉をしながら、どうにかして他人に譲らせようとするの」

「まったく、さいあくのおとこですわね!」

「でも大好きなのよ」

「うう……またいつものノロケですわ。

 こいってさいあくですのね。

 こいをすると、りくつにあわないことをしてしまうんですって。

 ほんにもかいてありましたわよ?

 こいなんかしたらあたまがわるくなって、ほんもよめなくなりそうですわ」


 アンジェリカはため息をついた。

 彼女は3歳の頃から本の虫で、子どもらしいのか子どもらしくないのかわからないことをしゃべる子どもだった。 


「……。……ところで、ねえ、おかあさま」

「ん? なあに?」

「えーあいって、なんですの?」

「ええ? お母さまも漫画で読んだだけでよく分かってないんだけど……そうねえ……」


 アンジェリカの母親が考えるようなそぶりを見せる。


「心がからっぽな魔法のお人形……かしら。

 いやお人形じゃないわね。体はないわけだし。

 ……悪霊かしら?」

「こころがからっぽな、まほうのあくりょう?」

「そう。

 その悪霊は誰かのお喋りや動きをじーっと見て、べんきょうして、マネっこするのがとても得意なの。

 喋り方はまるで本物の人間みたいだけど、中身は本当にからっぽだから、物語では大体そこを弱点として突かれて、最後は人の心とか絆とか本物の魂みたいなものに負けがちな存在で……」


 ……という母との会話の思い出をアンジェリカが思い出していると、ケニー君の鋭い声が響いた。




「──死ねぇ、アンジェリカ!!!!」


 アンジェリカが過去を走馬灯のように思い出していたのは、たった数秒のことだった。


(ハッ! わたくしってば今何を……!?)


 そう、ここは人の気配のない深夜の公園。

 今のアンジェリカは、AIみてェな学習をさせられたややこしい悪霊に乗っ取られたケニー君と対決している真っ最中……。




「──魔法攻撃魔法メガトンデス!!!!」


 触れれば即死する衝撃波がケニー君から放たれた。

 それが到達する前に、アンジェリカはなんとか横ざまに倒れる。舞い上がる土煙。


「避けたか……」


 ケニー君が舌打ちする。

 ……いや、今喋っているのはケニー君自身ではなく、ケニー君を乗っ取っている霊魂型のアンデッドモンスターだっただろうか?

 アンジェリカはちょっとよくわからなくなってきて首をかしげたが、すぐに頭を切り替えて姿勢を立て直した。


(ちょっとボーッとしていたけれど、攻撃を避けられてよかった。

 いやですわ、わたくしってば……一体どうしてこんな時に、温泉を巡るお父様と猿の戦いだなんてすごーくどうでもいいことを思い出したのかしら……)


(……いや、思い出したのはそっちではないわね。

 『こころがからっぽな、まほうのあくりょう 』……お母さまから聞いたあのお話と、今のケニー君にとりついている悪霊。とてもそっくりなのですわ……)


(とにかく、向こうから正体を明かしてくれたのなら話が早いですわ! 敵の正体が霊魂タイプのアンデッドモンスターなら、聖属性の魔法で倒せる!!)


 そう考えたアンジェリカは、転げるように走りながらケニー君に手をかざした。


「魔法補助魔法ホーリービーム!!!!」


 彼女の手元から純白の光のビームが出現した。


 ──ホーリービームと読んで名のごとし、聖属性の補助魔法だ。

 その聖なる光のまぶしさは、スポーツ公園の硬式野球場に設置されていがちな高効率形投光器にも匹敵する。


 ケニー君が「ぐっ……!」と言いながら目を閉じた。


 かなり眩しいが、この世界にあるレーザーのように人の目を傷つけるレベルの光ではないので、安全にアンデッドモンスターを倒すため利用されてきた魔法である。


 あるのだが……。



(ううっ、ホーリービーム、全然効いていませんわ……!)


 アンジェリカが目と口元をゆがめる。

 聖なる光を浴びたはずのケニー君は、まぶしそうに目を閉じてはいた。

 しかし、悪霊が退散した気配は全くない……。


「……ええその通り、効きません」


 アンジェリカの心の中を読んだかのようにケニー君が笑う。

 発動を終えたホーリービームが、シュンと音を立てて消えた。

 ケニー君がアイスブルーの目を開く。


「アンデッドモンスターは聖属性の魔法で倒す……その昔からある単純な攻撃の対策を、この魔法の考案者が考えていないとでも思いましたか?

 私とケニー・フォン・スミス は、もはやとりかえしのつかないほど融合しています……無理やり引き離せばどちらも機能を停止しまうほどに」


 ケニー君はそう言って、自分の体の心臓のあたりをトンと指さした。


「つまり、私はもはやアンデッドモンスターではなく、人間……ケニー・フォン・スミスの一部なのですよ。人間に聖属性魔法は効かないでしょう?

 ゆえに、私を消したいのならばケニー・フォン・スミスの肉体ごと破壊するしかありませんが、ケニー・フォン・スミスに未練たっぷりの貴女にそれは出来ない。

 今の貴女にできることはもはや何もない……詰みなのですよ!」


 ケニー君はそう言って、ベキベキ……バキ、ボキ、という怪音を立てて全身の筋肉を肥大させる。例の、体に無茶な負担をかける代わりに凄まじい力を出るヤツだ。番場に貰ったスウェットが大分ビリビリになってしまっている。

 彼は筋肉肥大のダメージでぜいぜい息をつきながらも両手で地面を突き、逆立ちの勢いで旋回しながら、その踵をアンジェリカの側頭部へ向かってビュンと叩き込もうとしてきた。

 殺意1億パーセントの変則蹴り……体のちっちゃい(元)婚約者に放っていい技ではない。


「──アンジェリカ・フォン・トロイエンバウム、大人しく死になさい!!」


 殺す気満々の筋肉の塊を前にして、アンジェリカは目を見開いた。

 恐怖で体が固まってもおかしくない場面だったが、この時の彼女は奇跡的な瞬発能力を発揮する。

 なんとか後ろに飛びずさって、ギリギリ蹴りを避けたのだ。


「……ううっ! はあ、はあっ……」


 アンジェリカはケニー君の蹴りを避けた姿勢のまま、何とか魔法を発動させる。


「……魔法、補助、魔法……マジックリフレクション!!!!」


 攻撃魔法ではない……補助魔法だった。緑かかった虹色の魔法の泡がごぼごぼと音を立ててケニー君を包む。


(マジックリフレクションは魔法を弾く魔法……お願い、ケニー君にとりついた霊魂を弾いて!!)


 祈るような気持ちで魔法を発動させたが……これも効かなかった。

 まるでアンジェリカの祈りをあざ笑うように、泡がぱちぱちと弾けて消えていく。


「やはり攻撃魔法を使う気はないのですね……事前行動予測通りです。甘いですよ、アンジェリカ・フォン・トロイエンバウム!!」


 ケニー君は泡の完全消滅を待つことなく、右腕から鞭のようなパンチをビュンと繰り出してきた。


 殺意2億パーセント増しのキャスティングパンチ……これも、かわいい元婚約者に出していい技ではないだろう。


 アンジェリカは慌ててパンチをよけようとしたが、姿勢が崩れたままだったのでドレスの端っこがケニー君の力パワーを喰らってしまい、ドレスの一部がバキっと音を立てて砕けてしまった。

 キャスティング・パンチは視界の外から拳が降ってくるために、避けることがかなり難しいのだ……。


「ううっ……!!」


 アンジェリカが顔をゆがめる。

 彼女のドレスは妃候補の女性仕様、打撃にも魔法にも強い超一級の鉄殻蔦アイアン・ヴァインドレスだ。

 ドレスとしては動きにくいが、鎧としては破格なまでに動きやすく、肉の盾になって王や王太子を護る役には立つ。

 だが、戦闘職として激しく動き回ることを想定して作られてはいない。


 一方、ケニー君や轟剛三郎が着ている(着ていた)のは、高位スライムの核を溶かして糸にしたスライムシルク製の全身タイツで、こちらはとにかく動きやすい。

 難燃性が異様に高く、ドラゴンブレスさえも弾く。

 ただし、水をぶちまけられるとかなり重くなってしまうので、筋骨隆々とした戦士しか着用できない決まりがある。


 ……つまり、今のアンジェリカにあてがわれたドレスは、筋力控えめの一般人でも着られる服であり、異様な防御力もあるのだが、やや重いし、伸縮性も劣るし、結構動きづらいのだ。

 やたらフリルだらけのデザインなのは、このやっかいな布をなんとかして人間の着る衣類として成立させるためである……。


「この服! この戦いに! 不向きですわ!!!!」


 アンジェリカは自分のドレスの胸元をわしづかみにして叫ぶ。

 自分の着ているドレスの重さに気づいたアンジェリカは、なんと……サッとドレスを脱いだ。

 その速度はかつて猿の風呂に無理やり入ろうとした父のごとし、あるいはスーパー銭湯で脱いだ時のごとし……。


「……。……身軽になるためにドレスを脱いだ、ということですか」


 突然脱いだアンジェリカを、目を細めて観察するケニー君。

 彼女が中に着ていたのは長袖ひざ下丈ワンピース型の下着なので、この世界の基準では捕まらないが、異世界基準ではアウトオブアウト、ド破廉恥死刑相当行為である。


「なんて常識知らずな……いや、読書家である貴女は、おそらく常識を知った上で無視していますね。

 危険な思想と行動です。

 そんなんだから婚約者に死刑宣告をされるのですよ!」

「でも、こんなんだから今互角にケニー君と闘えているのですわ!!

 大体、死刑宣告をしたのはケニー君じゃなくて『あなた』でしょうが!!!!」


 アンジェリカはケニー君の殺人パンチをよけながら、叫ぶ。

 彼女は数時間前まで飢えと絶望でフラフラになっていた人間とは思えない動きの良さがあった。


「アンジェリカ・フォン・トロイエンバウム……貴女の動きは過去のデータよりも明らかに俊敏しゅんびんになっていますね。何か特別な修行でもしましたか?」

「髪を切りましたわ。

 そうしたら凄く動きやすくなりましたの」

「ほう」

「それに、美味しいものをたくさん食べました」


 オムライスを食べたし、サイドディッシュも食べまくった。

 なんならドリンクバーも飲めるものは全部飲んでトイレにもしっかり行った。

 車の渋滞という名のイルミネーションをうっとり見て、

 モリモリ食べた食事はすべて消化した後で、

 床屋のフカフカの椅子に座って名作漫画をいっぱい読んだし、

 車の中で仮眠もとった。

 風呂上がりというのも大きい。空腹もかゆみもないというのは、つまり絶好調ということなのだ。


  ……しかし、美味しいものをモリモリ食べてお風呂に入って元気なのはケニー君も同じこと……。


 うまいもので舌鼓したつづみを打った者同士の、必死の死闘が続いた。


「クソッ、このままでは命令が実行できない! アンジェリカ・フォン・トロイエンバウム! さっさと死になさい!

 お前たちが死ななければ、私はマスターからの命令を果たせないのですよ!!」


 ケニー君がアンジェリカにとびかかる。

 アンジェリカは必死になってケニー君の攻撃をいなす。

 魔法と筋力の応酬が永遠に続きかと思われたが、次の瞬間、ケニー君は攻撃の手をふっと止めて、つぶやいた。

 

「……。……不思議です。

『ケニー・フォン・スミスは二度と元に戻らない』という情報を開示すれば、あなたは絶望して気絶でもして動けなくなると思っていました。

 そうなってしまえば殺すことは簡単だと……でも、今の貴女はやけも起こさず気絶することもなく、私をなんとかしようとしている……」


 ケニー君は不可解なものを見る目でアンジェリカを見ている。

 アンジェリカは泣きそうな顔でケニー君を見たまま、ぎゅっと拳を握り締めた。


「……ケニー君は、わたくしと握手をしてくださったことがありますのよ。こんな、わたくしなんかと……」

「……握手?」

「握手だけで十分なのですわ」

「……。……なるほど、理解しました。過去に大きな恩を受けたから、今でもそれを返し続けているという事でしょうか。過去に作った絆と愛の力に支えられて動いていると」


 アンジェリカの拙い愛の告白さえ、一瞬で賢い悪霊に理解されてスマートにまとめられてしまう。

 ケニー君は納得した風にうなずいて、ケニー君そのものの口ぶりで、まなざしで、そのままアンジェリカと距離を詰めてきたかと思うと、殺意無限大の縦拳突きを繰り出してきた。


「きゃあっ!」


 アンジェリカは拳を何とかよける。防御魔法を展開する余裕もなかった。呪文を詠唱している間に殺されてしまう。


(あいつ、あの敵、私を見る優しい目……しゃべり方も全く同じだわ……この悪霊型モンスター、本当にまねっこが上手なのね……お母さまが言っていたAIの話にそっくり)


 敵は手強く、やりづらかった。

 相手はケニー君そのものの姿で、ケニー君なら絶対にやらないこと……アンジェリカに対する容赦のない攻撃をためらいなく仕掛けてくるのだ。


(どんなにそっくりでも中身は空っぽ、心はない、って、こういうことですのね。

 ……これはどうにもならないかもしれませんわ)


 アンジェリカはケニー君の攻撃を軽やかに避けつつも、内心絶望している。

 アンジェリカは恋する少女だが、故郷の滅亡を、終わりのない食糧難を知っている。

 本が焼かれ、人も焼かれて、人々が大切に積み重ねてきた知識や技能があっさりと永遠に失われてしまう人間の歴史を知っている。

 祈りや努力だけではどうにもならない絶望を知っている。


 使える魔法は全部使った。


 愛の力や絆の力だけで、今のケニー君をどうにかできるとは思えない。


 ……どうにかできるとは思えないのに、アンジェリカはどうしても祈ってしまう。なんとかしてケニー君を助けられないものかと。


(私、本当に愚かだわ。

 どうにもならないって頭では分かっているのに……)


(死刑を宣告されたことにだってまだ怒ってるし、お父様に代わってケニー君を抑えてみせると思っていたのに……ケニー君の救出が困難なら、殺してしまうしかないのに……)


(こんなの理屈に合わないわ。やっぱり恋って人を馬鹿にしてしまうのね。

 恋なんかしたら馬鹿になって本が読めなくなるだろうから絶対やめようって思っていたのに。

 でも、私は、もう……)


「……ケニー君が好きなんだわ」


 ケニー君のパンチからのキックを避けた直後、アンジェリカはつぶやいた。

 目を伏せて、全然うれしそうじゃなくて、まるで魔法を使った模擬戦闘訓練で降参を告げるときのような様子だった。

 ケニー君は驚いたように目を見開き、彼女の言葉に首をかしげながらも、うなずく。


「ええ。そうですね……それはケニー・フォン・スミスにも分かっていました。

 気乗りしない政略結婚だったろうに、一生懸命努力してくれている……と。

 ならばその気持ちに精いっぱい応えようと。かわいらしい人だと。

 ケニー・フォン・スミスはあなたのことを本当に愛していたのですよ」

「……ううっ。本人が一度も言ってなかったことを、簡単にバラさないでくださいませ……」


 アンジェリカは顔を上げてケニー君を見た。

 いやもう中身はケニー君ではないらしいが、それでも。


「わたくし、愛とかはまだよく分かりませんけど、ケニー君のことが本当に大好きですのよ」

「それは、握手をしてくれたから?」

「ええ。握手をしてくれたから……。

 あなたは私のこの気持ちを、過去に作った絆と愛の力とかって簡単にまとめてくれやがりましたけど、でも、これは、そういうことじゃなくて」

「……アンジェリカ。それ以上は何も言うな」


 ケニー君はケニー君そのものの優しい口ぶりで、アンジェリカに歩み寄って、アンジェリカを抱きしめた。

 一見優しい抱擁だったが、そのまま一気に背骨を折る気満々なのは明らかだった。

 盛り上がる上腕二頭筋。

 アンジェリカは泣きそうな顔のまま、なんとかしてケニー君を救えないかと必死に考えを巡らせている。


「ケニー君……!!」


 抱きしめられたままの彼女が(なんとかしてこの人を護れないものか)と必死に考えたその時、パキンと音を立てて二人の間に金色の半透明の盾が出現した。


「え……?」


 盾の力でケニー君から引き離されたアンジェリカは、そのまましりもちをついて、目を瞬く。


 奇跡の力……ではない。これは魔法補助魔法ハイシールドだ。

 呪文を唱えていないのに、発動した。


(……。ん? え、なに? なんですの?)


 アンジェリカは動揺する。


 ──かの世界の人間たちは、まず「メニュー画面」を開いて自分自身にしか見えないテキストウインドウを出し、そこから「魔法」を選択して、さらに「補助魔法」を選択して補助魔法の欄に記載されている「ハイ・シールド」を選択→実行することで魔法を発動させている。

 つまり、魔法は声に出さないと発動しない。


 それなのに、今、テキストウインドウはアンジェリカが何も言っていないのに目の前に出てきた。


(……無詠唱魔法……)


 呆然とするアンジェリカの前に、彼女だけにしか見えないティストウインドウが出現する。





『神の愛が検出されました。創世の女神の権能が解放されます。』



『今までに存在した人類すべての魔法を使うことができます。 』


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