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別界勇者  作者: 隠岐供契
第三章:進化
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第三十三話 君も

―――この星全てを見渡せるたった一つの場所、■■■■■■―――

 男は考えていた。本当にこのままでいいのかと。

 振り向くと座っている他九名が唯一立っているこちらを見ている。その内の一人、ご住職様のような見た目の男が言う。

「……まだ迷っておられるのですか……」

 それはそうだろうと答えたくもなったが、この問いは今までにも何回もされたのでもう答えるのは控えたが、そのただの沈黙だけで、彼らにとって答えになっていた。

「私、いやこの場にいる皆もそうだった……ですが、もう考えるのは遅いというもの……そうではないですかな?」

 するとご住職様の隣に座るスーツ姿の老いた男が答える。

「えぇ、私も命を受けた最初こそ何も感じてはいなかった……だがいざ()()()が来るとなると……はは、恥ずかしい限りです、一応冷酷で名が通っていましたから」

 それを聞いて思い出したのか皆が暗い表情を浮かべる。

 その沈黙を破ったのはご住職様だった。

「でもそれももう()()()()の話、時を経てついに、この時が来たのです」

 そして男は再度振り向き、前の十のモニターの一つに映る一人の男に目を向ける。


「……碓氷玲……俺は、ずっと自分の行いを罪としているよ……」



―――カーロス国からそう遠くないあぜ道―――

「レイ様、下がってください」

「シュシュさん……ダメです……」

「え……?」

 シュシュはその言葉が一度は理解できなかったが、振り返ることでその意味がやっとわかった。

 玲達は今、簡単に言うと白い服を着た者達に囲まれていた。

「ふむ……抵抗の意志ありと……」

 その中でも一際オーラを放った着物を着た男が前に出てくる。おそらくこの群衆のリーダーであろう。

「そりゃあんなこと言われたら抵抗しますよ。何でしたっけ?レイ様を殺し、魔剣を回収するのでしたっけ?」

「よくわかってるじゃないか、ならなぜ抵抗する?」

 この者の言ってる事はよく理解できない。

 それは誰だって殺されるのは嫌に決まっているだろう。

 男が少し溜息をついて再度こちらを向く。

「……我々の()()()()()()のにか?」

 玲は首を傾げる。

「えっと、何言ってるんですか?私達はずっとリョウマ国に……」

「あぁそうだな、貴様は知らないだろうが……うむ、連帯責任という言葉、知っているだろう?無論それで正当化しようなんざ考えてはいないが」

 連帯責任、その言葉で察した。向こう、アリアドネ国でこの者たちの誰かがアリアドネ達にやられたのだと。

 見かねたのかシュシュが前に出る。

「先ほどから言っている意味がわかりません。あなた達の家族が亡くなられたのは残念ですが、私達はただこのあぜ道を歩いているだけでございます」

「……バカなんだな」

「はぁ!?」

「ちょ、シュシュさん……落ち着いて……」

 一瞬取り乱したシュシュであったがすぐに気を取り戻す。

「コホン、とにかく私達は戦いを望んではいませんので……」

「その言葉が、今この場では戦いを望んでいるという意味に置き換わるのだよ」

 玲はとっさに振り向き、シュシュと背中合わせで立つ。

「来ますよ」

「えぇ」

 着物の男はそれと同時に顎をくいと上にあげ指示を出す。

 それを見た玲側の者達が一斉に各々の武器で襲い掛かる。

「桜魔法・桜斬!」

 玲は即座に魔剣を抜き、一気に薙ぎ払う。


―――魔法、体内の魔法腫瘍と呼ばれるいわばウイルスを刺激し、体外に放出する。言ってしまえば生まれながらにして持っている癌のようなもので、それを抑制する働きをしているのがプロテクトと呼ばれる抗体である。異世界転生者(アルディラ・ヴェルト)にはこれが無く、かつ魔法腫瘍もない。なので全国の研究者は異世界転生者を研究対象にして今日に至るまでずっと答えを求めている。研究者の中では異世界転生者が持っている魔剣が魔法腫瘍の感染源で、それに伴いプロテクトも体内に構築されるのではと推測されてはいるが未だ謎に包まれている―――


「やはり、魔法を使えるか……」

 着物を着た男が一歩前に出て、興味本位で手を前に掲げ魔法を唱える。

「龍魔法……吐息(スフル)

 男の周りに霧状の粒子が舞い、それがシュシュと玲に襲い掛かる。

「透魔法・幽玄の吸収(アンポルテ)!」

 シュシュが咄嗟に魔法を唱え、霧を()()しようとする。

「グッ……重い……」

 しようとしたがこの魔法は自分の魔法より魔力が少しでも劣っている相手に対して有効なものであって、見た目からして魔力が高い相手にするべきものではなかった。

 シュシュもそんなことはわかっていた。が、何より王であるリョウマの命により使えている玲の命を優先するのはメイドとして当然であった。

 霧はシュシュの体内に幾度となく吸い込まれていくが、あることを忘れていたことに気付く。

「霧……!チッ……!レイ様!クッ……」

 この魔法が霧状であることを吸収するのに必死で忘れていた。少量の霧が玲に向かって伸びていく。

 シュシュも助けに行こうとするが魔力の大きい魔法を吸収した弊害で体が重く、助けに行けなかった。

「シュシュと言ったか……貴様、そんなに吸い込んで大丈夫なのか?」

「レイ様!」

 男の忠告を無視し、シュシュは玲の元へ這いずってでも向かおうとした、が。

「え……?」

「何も起きない……?」

 玲もシュシュも身構えていたが、霧は玲の体に纏わりつくだけで何も起きなかった。

 玲は少し胸をなでおろしたが、シュシュはその魔力量を身をもって感じているためか警戒を解かなかった。

「レイ様、だ、大丈夫ですか?霧、払えますか……?」

 そう言われ玲は肩をや足をパンパンとはたくがその霧は見かけによらず粘っこく、なかなか取れなかった。

「取れないに決まっているだろう」

 男がこちらに向かってスタスタと歩み寄ってくる。

「その霧は霧じゃない。一つ一つの粒子がスイッチと思え」

「何を言って―――」

 すると男が拳を握り、再度魔法を唱える。

「龍魔法・起爆(デトナトゥール)

「―――ッ!透魔法・幽玄の美(カシェーレ)!」

 瞬間、玲とシュシュの目の前が真っ白に染まり、同時に何も聞こえなくなった。



―――アリアドネ国からそう遠くない小道―――

「あの二人の次はお前らかよ……ったくツイてねーのな」

 シャリオンは頭を掻く。ヴォレットはそれを見ていつもなら苦笑するが、今となっては真剣な表情である。

 なにせ目の前には白い服で統一された者達の群衆がいるのだから。無論後ろにもいる。

「おそらく、別の場所にあの人の仲間がいるのでしょうね……」

「あぁ……まぁ大体どこにいるのかは察しが付くよ」

 その群衆の中でもおそらくリーダーと思われる者が前に出る。

「ねぇ、名前、何?僕は(セン)っていうんだけど」

 何を言い出すかと思えば、何を言っているんだ……

 そう思ったが、この男は見るだけで魔力が段違いだ。ここで無暗に抵抗するのはよそう。

「……シャリオンだ。こっちはヴォレット」

 ヴォレットは小さく頷くだけで何も言わなかった。

「そう、よろしく」

 そして泉と名乗る男は少しの間考えた後、すぐにシャリオンの方を向き、口を開く。

「そうだ、シャリオン、君って王だよね?」

「……?あぁ、そうだが」

「なら話早いや」

 そういいながらシャリオンの前まで歩み寄る。

「君の仲間?であってるのかな、わかんないけど、碓氷玲のことは知ってるよね?」

 シャリオンは泉を睨みながら問う。

「……それは……なんだ、今からお前が話すのは俺への交渉か?」

「うーん、まぁそう……なるのかな?」

 するとシャリオンはヴォレットの方を見てニヤリと笑う。

「やけに最近取引だの交渉だの多いな」

「ですね……飽き飽きします」

 自分を置いて話しているのが気に食わないのか、少しムッとした表情でシャリオンの顔に触れる。

「……!シャリオン様!」

 その瞬間、微細な電流が全身を襲う。

「クッ……!カハッ……」

 たまに来る静電気は指だけがビリッと来るのでマシだが、それが全身ともなるとまた別問題である。

 頭から足の爪先まで全身に電流が走るので微細とは言え効果は絶大であった。

「クソ……」

「僕が話してたんじゃないか……これは君が悪いよね?」

「はは……はぁ、そうかもな、で?なんだっけ?あぁそうだ、碓氷玲か?よく知ってるさ」

 シャリオンは少し強がって笑みを浮かべる。

「はぁ、まぁいい。その碓氷玲を僕、いや僕達に渡してくれないかな?」

 泉は少し不服そうな表情のまま提案をする。

「ええ……と」

 シャリオンはまたヴォレットの方を見て、答えを共有する。

 ヴォレットもそれを察したのか頷き、同意する。

「……答えはノーだ」

 すると泉はその答えに興味を抱いだのか、首を傾げながら問う。

「ん……?わからないな。なんで断る?君達にはそう悪くない提案だろう?」

「そっちこそ、なにが悪くないんだ?こちとら確かに短い間ではあるが仲間なんだ。そう易々と渡すわけがないだろう」

「悪くないはずだ。君は半壊状態とはいえアリアドネ国の王だ。そう易々と死んでは再建も難しいだろう」

 あぁ、なるほど。そうシャリオンは思った。ヴォレットも同様に。

 シャリオンはヴォレットの方を見ずに問う。

「だってさ、ヴォレットどう思うよ」

「……えぇ、全くのバカ。ですかね」

 シャリオンはその答えに納得したのか泉に答えを出す。

「すまんが、そう俺は脆く作られてねーんだわ」

 泉はまだ疑問が残っているようだったが、諦めたのか溜息をついて片手をあげる。

「まぁいいさ、これでも慈悲深かった気がするんだけどね……皆ごめん、働いて」

 その指示の直後、後ろに構えていた者達が一斉にヴォレットに迫る。

 ヴォレットはすかさず銃を構え、トリガーを引く―――はずだったのが、引けない。何も故障などではない。

「…………ッく……そ!」

 ゲノを至近距離で撃った感触と、その時の表情が脳裏をよぎり、上手く引けなかった。あの時は興奮していたためか躊躇はしなかったが、今は落ち着いている。だがそれが弊害となって今、一人の男が振るう切っ先が喉を狙う。

「ヴォレット!」

 シャリオンがヴォレットの襟を引っ張り後退させ、前に出る。

「炎魔法・五つの刃(サンク・ラム)!」

 少し肩や足に剣が掠りながらも炎の刃は五名を襲う。

「闇雷魔法・電爪(プランテ)

 その隙を見逃さず、泉は魔法を唱え、拳から生えた電気の爪でヴォレットめがけて振り下ろす。

「炎魔法・番人(ガルディアン)!」

 シャリオンはわかっていたのか即座に振り向き、ヴォレットに覆い被さるようにして炎でできた盾を構え、爪を受ける。

「グッ……」

「やるね?君。ただのバカな王子かと思ってたけど、戦闘面ではそうじゃなかったみたい。でもね」

 言いながら電機の爪はどんどん盾を裂いていく。

「なんで……なんでだ……!」

 耐えられないと察したのかシャリオンは炎で纏った拳で往なしながら殴りかかる。

「君は勉学ではバカだったんだ」

 往なされた泉は何の迷いもなく、左手でその拳を受け、さらに魔法を唱える。

「闇雷魔法・放電(セタンドル)

「魔法の二重詠唱だと!?ぐあああああ!」

「シャリオン様!」

 倒れるシャリオンを見ながら泉はシャリオンの腰に差してある剣を見て、違和感に気付く。

「ねぇ、なんで君それ使わないの」

「……あぁ?……好きにさせろよ……」

「ふーん、まぁいいや。でね、君に聞きたいことがもう一つ増えたんだけど……」

 シャリオンは少し嫌な予感がして顔を上げる。



()()、碓氷玲と同じ異世界転生者(アルディラ・ヴェルト)なの?」

皆さんこんにちは!隠岐供契です!

今回の話も読んでくれてありがとうございます!

第三十三話、いかがでしたでしょうか?

執筆の励みになりますのでよければコメントやブクマお願い致します!

別界勇者は毎週金曜日の20時投稿です!乞うご期待ください!

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