第二章完結記念:幕間 Fragments of fact(前編)
こちらは第二章完結記念の幕間の前編になります。
多少二章の内容も含みますが、二章を読んでいない方でも楽しめる話となっていますので、ぜひ最後まで読んでいただけると幸いです!
「おいゲノ、次の作戦が下された。明日決行なんだそうだ」
ロコ・ボッカ。死の放浪者の第二幹部である。いつも所々穴が開いているクロップトップスを着ており、下はハーフパンツを履いている。
そして何よりロコの顔には口は目下から顎にかけて複数の縫い後がある。誰によるものなのかは定かではないが、さほど痛みは無い。
いつもゲノにバカにされるのだが、頭と手に手作りなのだろうか、熊のぬいぐるみとパペットぬいぐるみを持っており、名を順番にグマズ、ティルムと言う。
いつも作戦が下されるとロコに通達され、そこから枝分かれで構成員皆に伝達される。自分でもなぜかはわからないが毎度優先して伝える相手がこのゲノ・スケローイだ。
「は~い。今日もころすの~?」
ゲノ・スケローイ。死の放浪者の第四幹部である。いつも笑っており、周りの人も笑顔にさせるが、殺しを何の迷いもなく行うので愛着がある反面そのような冷酷かつ不気味な一面もある。第四と四人で構成されている幹部の中では一番階級の低い位置に滞在する。その理由としてまず作戦を間違えることがほとんどで、構成員まで巻き込んでの被害が大きいためである。彼はいつも袖の長いエクストラロングスリーブの服を愛用して、帽子を被り、ズボンはロコと同じハーフパンツを着用している。
しかし、本人もよくわかっていないようだが、なぜかロコから伝達される作戦だけは間違えずに遂行できる。
ゲノの相変わらずの反応を見て呆れながらも頷く。
「あぁそうだ、今度の国は……ふむ、なぜこんなところが……」
ロコが疑問を抱いていると、ゲノが身を寄せ、興味津々な表情で聞いてくる。
「なになに?どんな国?」
「あまり公言はされていないのだがな、うむ、かなり平和と聞く国だ……なぜ壊す……?」
ゲノが痺れを切らしロコの頭をポカッと殴る。
「ッ―――!あぁすまん、その国の名前はアリアドネ国という国だ。普通は象徴と呼ばれるものが前につくのだが……この国はわからないものでな、それがないのだ」
「へ~不思議だね?それがないと何か困るの?」
ロコはゲノが関心を持ったことに少し喜びと驚きを感じながらも真剣に応える。
「あぁ、あまり俺も詳しくはないが、そうだな、連国会議に参加できなくなるというのがまず一つとしてある」
象徴、またの名を証。これは約二十の国がそれぞれに与えられた使命でもある。防御が著しい国には守の象徴、食べ物の生産率が高い国には食の象徴のようにそれぞれの役割を担う。この連国会議は各使命を今年はどれだけ果たしたかという報告会である。殆どの国は王や王女自ら出向く名誉ある会議なのだが、一部の国は王が自ら出向かず、代人を用意させる国もあるという。
「へ~そうなんだ~で?もう二つ目は?」
「二つ目は他国との信頼関係の欠如だ。先も言ったが会議に出られない。それ即ち半分国として認められていないということになる。言わば自称国となるのだ。だいたいの国は他国と協力し、秩序や生活を守っているが、国として認められていない自称国をどう信頼しろと言う?」
ロコが淡々と口を動かしているとゲノが難しそうな顔でこちらを見つめる。
「……すまん、難しかったな。まぁとにかく部外者として扱われ、いつか滅びに行く……のだが……」
「うん、今もあるんでしょ?しかも健在だしぃ……」
ゲノがめずらしく核心を突く。
「あぁ……そうだな……考えられるのは―――」
―――王、又は王女が自国の象徴を公表していないか……だな―――
―――翌日、作戦決行五時間前―――
「はぁ!?今更寄りたいところあるだと?」
ロコが朝方に叫ぶ。なぜ叫んでいるのか。簡単な話だ。作戦を遂行するべく出発の準備を始める良い頃合いと思い、ロコは準備に取り掛かっていた。のだが、突然ゲノが飛びついて来て「話があるんだけど~」と言われ、今に至る。
「うん!」
「悪びれずに言うな!」
「だって行きたいんだも~ん」
ロコがその軽く物事を判断するゲノに苛立ちを覚えながらも大人の心で自分を落ち着かせる。
「いいか?今何時間前か知ってるか?五時間前だぞ?ここからアリアドネ国まで行くのにどれだけ時間がかかると思っている?」
ゲノは少し考えると、閃いたように顔をより明るくする。
「二時間程で着くから~……まぁいけるんじゃない?」
「三時間だ!今から魔法のリハビリも加えてするとピッタリなんだぞ!」
死の放浪者の体は元より魔法を出せる体ではない、つまり魔法腫瘍が存在していないということ。だがそれと同時にプロテクトと呼ばれる抗体も存在しない。しかしある者の手が加えられたことにより一時的に体内にプロテクトを必要としないごく少量の魔法腫瘍が存在し、それを刺激することで魔法を撃つ。が、もちろん無理やり刺激しているので起きたての頃や、疲労が溜まっている状態では上手く刺激することができないため、こうしてリハビリをする必要があるのだ。
ゲノは少し落ち込んだ様子を見せながらも、だってと続ける。
「……行きたいんだもん……ううん、行かなくちゃ、そんな気がするんだもん……」
ゲノは半ば泣きながら言う。
いつものゲノならロコがこれほど言うとすぐに引き下がり言うことを聞くのだが……今までにこんなに粘られたことはない。となると本当に何か行かなければいけない理由でもあるのか……?
「……そうか、うむ……そうだな、なんという場所だ?」
「ん~とね、アーブル・リブヌイっていう村!」
「……なに?」
なんだ……どこかで聞いたことがある村だ……
「まさか……」
ロコは何かを思い出したかのようにゲノを見る。
ゲノは静かに首を縦に振った。
「うん、そこはね、今はもう無いんだ~……調べてみたら昔は栄えていたらしいんだけど……」
そうだ……思い出した。確かそこは全国の村の中でも当時は一番栄えており、尚且つ平和な村だと聞く……
それに―――
これは運命なのだろうか……ゲノがそれを狙って発した言葉でもあるまい……今から壊さんとする国とまるで同じじゃないか……
考え込んでいるロコを心配してゲノが顔を覗いてくる。
「ロ、ロコ?だいじょうぶ?も、もし本当に無理なら……」
我に返ったロコは心配そうにしているゲノを見て無理やり微笑み、意を決したように話す。
「あ、あぁ、すまない……そうだな、行こう」
……道中で魔法を少しずつ使えばリハビリにもなるだろう。
―――アーブル・リブヌイへ向かう道中―――
「よし……魔法は問題なく出せるな……ゲノはどうだ?……っておい……」
ロコは村へ行く道中にリハビリをして問題なく魔法が出せることを確認した後、後方に位置するゲノの方を見やると、ロコについてきているだけで全くリハビリをせず、ただ優雅に飛んでいるだけだった。
いつもこの時間帯にはゲノもリハビリをしているはずなのだが……異例なことをしているからだろうか?忘れているようだ。
ロコは呆れながらもゲノに近づくと、バチッと何かに引っかかれた感触があった。
「あ~!ロコ~今近づいちゃダメ~傷つくよ?」
「いや……あぁ、すまん……」
腕の傷を気にしながらもゲノの周りをよく見るとかなり小さい粒子状になった氷の粒が舞っていた。おそらくゲノの魔法によって生成された防御魔法なのだろう。が、ロコ自身も気づかない程の魔力量でこの威力……いつの間にこんな力を……
とにもかくにもちゃんとリハビリをしていた。それだけで安心したロコであった。
「それよりもゲノ、あとどのくらいで着く?知ってる通り廃村なのだ、私の目じゃ到底見つけることはできないぞ?」
そう言うとゲノはどこか遠くの方を見るように目を細める。
「あ!あった!三十キロ先だ!」
すごく簡単に言ったが三十キロというのは今も使っている飛行魔法を以てしてでも最短三十分はかかる。
「だいぶ遠いじゃないか!大丈夫なのか……」
「あはは大丈夫大丈夫~……あれ?」
ゲノは何か異変に気付きまた遠くの方を見るように目を細めた。
「ん?ゲノ、どうかしたのか?」
「あぁ……いや、なんだろう、下の方ですごい量の人間がこっちに話しかけてきてる気がして……」
話しかけてくる……?そんなことあるだろうか……
「な……おい……ここってもしかしてだが……やっぱり……」
やはりと言うべきか、その人間達は我々に話しかけているのではなく、どちらかというと「怒っている」に等しかった。
「おいゲノ……逃げるぞ……!」
そう言ったものの、遅かった。
その者達はゲノに向かってすでに矢を放っており、ゲノは防御姿勢に入っていた。
「ねぇロコ!あれなに!?僕たち何かした~?」
「いや……していない……だがあいつらからすればしているんだ……なにせここは……っと危ない……」
説明している最中、ロコにまで矢が放たれ、間一髪で避ける。
「なにせここはな、ロワポール……つまりあいつらが勝手に独占してるとこで空陸問わず侵入者を追い出しているんだ……独占したいなら近くの国に申請を出せばいいものを……!」
まぁだが、一向に出さないということは彼らもわかっているのだ。出しても今の状態では申請は絶対に通らないと。まずこうして部外者に武力行使をしている時点で国、否村とも認定してはくれないだろう。
矢を何本か避けた後、リーダーと思われる人が話しかけてくる。
「おい貴様ら!もう逃げようたって包囲したからな!」
「なっ……チッ、無駄に足だけは速い……」
後ろを見るとかなりの人数が二人を空陸問わず囲っていた。
「ねぇロコ……やる?あ、殺すって意味ね……」
「……あぁ致し方ないだろう」
殺意をむき出しにしている二人を見てリーダーが半ば恐怖を感じ、一斉に攻撃命令を出す。
「おい!二人をやれ!やっちまえ!」
『おおおおおおお!』
命令を出した瞬間、包囲していた全員が矢を放ち、剣を突き立てる。
「そのようにして……今まで部外者を排除していたのだな……でも……」
「その歴史ももう今日でおわり~♪」
「あぁ……来るぞ!」
二人は一斉に飛び掛かってくる者たちを一旦避けるため、飛行魔法を解除し急速に落ち、ある程度落ちたところで一番人が集まっている空めがけて魔法を放つ。
「闇炎魔法……炎上する空」
「闇氷魔法・見えない恐怖!」
ロコが撃った炎はたちまち空にいた人達を燃やし、そしてゲノが撃った氷はいつの間にか体が燃え退散せんとする者達を貫く。
絶命した者が地へ落ちる中、ロコはゆっくりとリーダーに目を向ける。
「ヒッ……なんだ……こいつら……!」
リーダーが怯える中、ロコがゲノに「平和維持」合図を送る。
「おっけ~」
ゲノはその合図を見た瞬間、ロコの前から、リーダーの前から姿を消す。
「ど、どこだ!どこ……」
リーダーがゲノを探し、目を泳がせていると、後ろからの空気を感じ、また恐怖する。
「ここだよ~」
「貴様!いつの間に……!」
リーダーがゲノに気付くや否や剣を後ろへ薙ぎ払う……が、その剣は地に向かって落ちた。
理由は簡単だ。腕を振りかぶった瞬間に近づいたロコが切り落としたのだ。
「うがあああああああ!手ぇ!腕がぁ!」
「私の存在も忘れずに」
ロコが周りの者たちを見る。
各々恐怖しているのか、剣を弓を構えるのを忘れており、ただ見守っていた。
「なぁゲノ。これも『平和を作る』と言う目的で言えば、適当な判断と言えるよな?」
「うんうん、そうだと思うよ~あ、譲ろうか?」
ロコはゆっくりと首を横に振り、リーダーの前から離れ背中を向ける。
「私は残りをやる」
「おっけ~!」
返事を聞き、歩く。
後ろからの叫び声には耳を貸さず、ただ目の前だけを見ていた。
「闇炎魔法・弛緩対象」
ロコが地面に手のひらを当てると、ちょうどロコを囲うようにして燃え盛る。
言わずもがな、その後ロワポールという名が世間に広まることは無くなり、それを聞きつけた他の無申請団体も解体を始めているという噂である。
「ふぅ、久々に大きな魔法を撃ったせいか少し疲れたな……」
同意を求めるようにゲノ方を見ると、どこかを見てぼーっとしていることに気付いた。
「おいどうした?流石に俺も連戦は……」
「違う……よ」
ゲノがいつもと少し雰囲気が違うことに気付いた。
見るとその「何か」を見て目を見開いていることがわかった。それはまるで何かを突然思い出したような、そんな驚きの表情であった。
「何を見たんだ……って……これは……」
目の前には看板が立っており、そこには一部掠れてはいるものの、「よう■そ!ア■ブル・■ブヌイ■!」と書いていた。
「帰ってきたんだ……ロコ、やっと帰ってこれたんだね」
「何を言っている?っておい!」
ロコの静止を聞かずゲノは看板の向こうへ走っていた。
それを追いかけるようにしてロコも走るが、看板を横切った瞬間、頭の中を探られるような、そんな感覚を覚えた。不思議とそれは気持ち悪いものでは無く、むしろ暖かかった。
「あぁ……そう……か」
ロコは立ち止まる。
いるはずもないのに、周りには複数の子供達が遊び楽しんでいるように思えた。
目の前の建物であった場所を見つめ、一筋の涙を流す。
「俺は……いや、俺達は……」
目の前の建物は―――
「生まれた時から……孤児だったんだ」
―――孤児院であった。
先走るゲノをふと見ると、子供の姿になっていた。否、その時のゲノを思い出した……という方が正しいのかもしれない。
ロコは所々壊れたビデオテープの様にモザイクがかかっているものの、周りの風景とともに当時の自分を思い出す。
皆さんこんにちは!隠岐供契です!
今回の話も読んでくれてありがとうございます!
第二章完結記念:幕間 Fragments of fact(前編)、いかがでしたでしょうか?
今回も前回の幕間同様長くなってしまいました……!
それでも最後まで読んでくださった方、本当にありがとうございます!
次回は第二章完結記念:幕間 Fragments of fact(後編)です!ロコは何を思い出したのか!ぜひ予想しながら読んでみてください!
執筆の励みになりますのでよければコメントやブクマお願い致します!
別界勇者は毎週金曜日の20時投稿です!乞うご期待ください!




