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別界勇者  作者: 隠岐供契
第二章:それぞれの国
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第三十話 死の放浪者(前編)

 死の放浪者(クロール)。それは亡き者とされ、国を追放された一国の大騎士団カズィオンその者達のことを指す。


 その国とは世界で唯一の守護王国であり、世界最大の要塞を持つ、守の象徴(アンヴ・シンボル)ナファハ国である。この国は約()()()()にとある団体に壊滅させられた。それもある条約を交わした後で。

 場所は、崩れ朽ちた要塞の頂上に位置する言わば最終関門の門前。

 大騎士団カズィオンは主に五つの編隊に分かれて要塞を守護している。のだが、この時はちょうど十年に一度開かれる二時間程の騎士団会議があり、これには必ず各隊のリーダーが全員参加しなければならない。いつもはこの日のみ対人魔法結界を国全体に張り巡らせ、他五十万の兵を厳重に配置した後出発することになっている。無論この日もこれを行い、会議に出向いた。が、それがいとも簡単に破られ、今に至る。

 言い換えればこれこそ、ナファハ国唯一の弱点、隙といえる。

 国を守り死んでいった兵を周りに置いて、その団体のリーダーと思われる男が一人の生き残りに語り掛ける。

「な、なんなのだ貴様ら!……この、ナファハ要塞を、どうやって……」

 ナファハ国王、レビン・ナファハが叫ぶ。

「おっと、そんなにかっかしないで……それとも、首を刎ねられたいと?」

 男がナファハ国王の首筋をなぞるようにしてレイピアを動かす。

「ッ―――何がしたい……こんなことして許されるとでもっ―――」

「おっと、手が滑ったようだな」

 これだけレイピアを突き立ててなお叫び続ける王に少し疑問を抱いた男は、半ば興味本位でレイピアをその場で加速させ、右腕を突き刺し、そのまま上へ勢いよく振り上げると、いとも簡単に腕が吹き飛んだ。

「ぐああああああああああああ!あああああああああああ!」

 その悶絶する姿を見て、より一層疑問の表情をする。

「ん~、わからないな、お前、痛みに強いと思っていたのだが……そうでもなかったな……ならどうしてあんなに叫んでいたんだ?なぁ、教えてくれ」

 顔を青ざめさせ、息もか細くなりながらも王は男を睨んだ。

「なにが……ほしい……はぁ……くそ、何が……目的……なんだ!」

 それを聞いて男はニヤリと笑い、見下すようにレイピアを鞘に納める。

「やはり、貴様クズだな?ろくに愛されもしなかったんだろ」

「なにぃ……?愛され、てたわい……妻も、いる……」

 男は呆れたような顔をし、懐から何やら小さい球体を取り出す。

「もう、貴様には時間がないだろう、最期にこれを見ろ」

 有無を言わせずに球体の横にあるスイッチを押すと目の前に少しモザイクがかかった映像が映し出される。

 そこには過去十人の王の妻の姿が映し出されていた。

「何を……」

 その妻達は自分の指にはめていた結婚指輪を外し、海に投げ捨てていった。

「―――!?おい、なんの冗談……だ!」

 短い映像が終わると、男は一息つき、その場に膝を折る。

「こんな迷信があるの、知らない?」

 また何か別の話に持っていかれそうなので返事を聞かずに続ける。

「恋別たれし罪人は、徐に広大な大地へと約束の証を投げ入れ事なきを得る……まぁ、これは一種の都市伝説なんだけどね、本当の意味は女性に振られた男性がその女性のことを忘れるために海に思い出のプレゼントとかを投げ捨てて心機一転する、でもそれはできなくて一生後悔し、自分自身の罪として抱え続けるって意味なんだけどぉ、女性がこれを勘違いして嫌な交際相手と別れるには婚約指輪を投げ捨てるといいって。笑えるよね、そんなことするなら質屋にでも売ればいいのに……」

「やめろ……」

「でもそんな常識もわからないバカな女性は、お前と別れたいとかいう叶うことのない願望のために、いちいち遠い海まで行って……」

「やめて……く、れ……!」

「そこでお前からもらった婚約指輪を全員海へ投げ捨てた。あんな都市伝説に縋りつくほどに追い詰めたのって……」

「やァめろ!」

「紛れもなく、お前。だよね?レビン・ナファハ国王……」

「……めろってぇ!言ってる、だろ!」

 残った左手で懐から銃を取り出し、男の顔めがけて撃つ。

「当たらない、というか、()()は決まってるんだよ」

 易々と弾丸を避け、王の持つ銃を下から掴み、奪う。

「ぜぇ、はぁ……なんだ、なんなのだ……何が目的……」

「それはね?」

 気付くと男は王の背後に立っており、顔を耳元まで近づける。

「大騎士団カズィオンの各隊隊長である―――」


―――ゲノ・スケローイ、ロコ・ボッカ、イナミ・セン、イナミ・ゲン、イナミ・タツの計五名とその各隊員五百の亡骸を引き渡していただきたい―――


「こちらロコ、現状を」

『こちらゲノ~、ぜんぽー敵なしです』

「了解」

 耳裏にある小さなインカムで状況を海の上を海面ギリギリで飛行しながら整理する。

(何かがおかしい、何かが……会議中にあの不穏なノイズ……あれはおそらく兵の通信だろう……)

「おいロコ、本当に何もないのでは?だとすれば我々は……」

「そんなこと言って、いつも俺の予想は的中してるだろ」

(まぁ、途中で抜け出したんだ。多少の処分では済まないだろうな……)

 イナミ・タツ。第三部隊隊長兼大騎士団カズィオン団長……あらゆる武術を身に着け、なおかつ学問にも精通しているが、作戦を途中で変え強行突破したり、団体行動の際に単独で行動し作戦を続行させるなど少し脳筋な部分もあるが、周りからの支持は厚く、愛されている。

「やはりここは私がいち早く……」

『それ、前やって管理長に怒られたばかりじゃーん』

「ん、まぁそうだな……」

 ゲノが誰よりも早くインカム内で突っ込むと、素直に速度を落とし、並列して行動した。

「とにかく、さっきのノイズ、あれは確実に兵が我々の会議中だということを承知の上で発した通信の片鱗だ。何かあったのだろ……急ぐぞ」

 現在カズィオンの各部隊隊長は会議をロコの独断で皆を連れ、抜け出し、時速五百キロメートルでナファハ国へ直行している。

「おい、お前が速度を上げてどうする……先のゲノが言った言葉を忘れたか?」

 イナミ・ゲン。第二部隊隊長である。周りよりも学問の分野で飛びぬけており、誰よりも正確な陣営を取り、今までの死者はゼロ。今のこの陣営を咄嗟に考案したのもゲンである。

「忘れてないさ、ただ、そうだな、不穏な空気になってきた……急いで損することなんてないだろ?」

 ゲンは少し不服そうな表情を残したままそうだなと一言零し前を見る。

『ゲンさん危ない!』

 咄嗟にインカム越しに叫んだのはイナミ・センであった。

 イナミ・セン。本来であれば熟練の魔法技術を以てしても取得は困難とされる魔法技術試験一級を十五の若さで取得。魔法のスペシャリストと言って差し支えないだろう。その技術を見込まれ本来十八から入団が許されるカズィオンの主に魔法を駆使し護衛する第五部隊に十六で配属、一年後隊長に任命される。

 センが放った砲術魔法で前方二名に迫りくる巨大な瓦礫を撃ち、粉々に砕く。

「すまん、少し油断していた……」

『いいんだよ……でもさ、これ……』

『わぁ、これって、(ウチ)のやつじゃない?』

「どうした?言ってくれ」

 ロコが後ろでインカムを付けたまま喋っていることに気付き、声をかける。

『あぁ、ごめん、そっちに行ってもいい?』

 ロコが無言で手信号を送り、こっちへと指示する。

「ありがとう、でね、さっき僕が破壊した瓦礫の破片なんだけど……これって……」

「……あぁ、急ごう。ありがとう、戻れ」

 センから見せられた掌にすっぽり入るぐらいの小さな瓦礫は、まさしく我が国ナファハ国の要塞に使われている合金であった。

 それがこちらに振ってきたということはつまり―――

「要塞が……堕ちた……?」

 タツが髪の毛を掻き上げながら舌打ちをする。

「ねぇねぇ、僕はもどっていーの?」

「ゲノ!お前まだいたのか!早く戻れと言っただろう!」

「え~でもそれセンに言ったんじゃーん」

「まず俺はお前を呼んでない!」

 ゲノがブツブツと愚痴を零しながらセンと並び配置に戻った。

 ゲノ・スケローイ。第四部隊隊長で、タツほどとは言えないが射撃制度で言えばダントツでゲノが一番である。魔力が少ない分長期戦には向いていないが、砲術魔法は全て必中と言えるほどに正確なのでそのハンデも本人には関係がないのである。が、学問に乏しく、指示を勘違いしたり、作戦内容を忘れたりすることが多く死傷者数は悲しいかな、一番多い。入りたいと希望する兵も少なく、他の隊に比べ一番隊員が少ない部隊である。

「ロコ、もう少し優しく接してやれ、あいつ前にお前が怖いと言っていたぞ」

 ゲンが後ろからそう話しかけてくる。

 ロコ・ボッカ。第一部隊隊長兼大騎士団カズィオン副団長。いつも真顔で何を考えているかわからずよく周りから怖がられている。が、武術がトップレベルで毎度魔法武術大会では優勝をしている。隊員数はその怖いという噂があるからかゲノより少し多いぐらいである。つまりベベツーというわけだ。

「俺はあいつの親でも兄弟でもねーんだぞ!そういうならゲンがあいつの面倒みろよ!」

「私こそあいつの親ではない。だが、お前はよくあいつと一緒に行動してるじゃないか」

(はぁ、ゲノはいつも俺について回ってるだけなんだがな……ゲンはそれをわかっていない)

 返事をするのもめんどくさくなってきたところで、ロコが目の前の光景に肝を冷やす。

「こりゃ……ひでーな、てか、ちゃんと結界張ったのか?」

「ちゃんとやったよ……誰にも壊せないぐらい強固な結界なはずなんだけど……」

 結界の崩れ落ちた破片がそこら中にばらまかれており、遠くからでも異常な黒煙が国を覆っていることに気付く。

 センがおどおどしているとゲンが後ろから肩を掴み、落ち着かせる。

「お前だけの落ち度ではない。我々も結界を何重にも重ねたのだ、それが壊されたのなら、それは我々の失態だ」

「とにかくまずいことになっているのは確かだ……行くぞ―――」

「我が国をぉおおお!」

 ロコが皆に指示を仰ごうと手を挙げた瞬間、タツが真っ先にその黒煙の中へと特攻してしまった。

「おい待て!くそ、これだから脳筋は!追いかける!ついてこい!」

『了解』


 タツはロコの静止を無視し、全速力で倒壊した家の脇をスレスレで駆けていく。

「どこだ、どこに……!」

 道に散らばっている隊員の亡き姿を見る度に胸が締め付けられそうになりながらも、国王の姿を一目見ようと飛び続けた。

『おいタツ!止まれ!隊列を崩ッ―――』

 先ほどから叫んでくるロコにしびれを切らしたのかインカムを剥がし、親指で潰す。

「王様……国王!どこに……どこ―――」

 一瞬だが、兵の亡骸が増えてきたあたりで、王の姿が見えた気がして立ち止まる。

 亡骸の山を乗り越え、やっとの思いで王の姿を遠目ではあるが目視で確認できた。

「レビン王!」

 駆け寄ろうとすると、もう一人の男の存在も確認できた。

「あいつ!王に何を!」

 駆けた足をより一層速くし、距離を詰める。

 が、その足は、二人の話している内容を耳に挟んだところで止まることになる。


「で?どうする?国の王様……?」

 男は変わらず顎を王の肩に乗せ、冷たい息を吐きながら問う。

「はぁ、ぜぇ……私がそれに応じなければ……」

 後ろでレイピアを鞘から少し抜き、その反射光をチラつかせる。

「……わかった。言えば、助かるのだな……はは……」

 男はニヤリと笑って見せる。



「大騎士団カズィオンの……各隊隊長五名と、その隊員五百の亡骸……貴様に……ゼェ……譲る……ッ!」



「……レビン王……?何を言って……」

皆さんこんにちは!隠岐供契です!

今回の話も読んでくれてありがとうございます!

第三十話、いかがでしたでしょうか?

執筆の励みになりますのでよければコメントやブクマお願い致します!

別界勇者は毎週金曜日の20時投稿です!乞うご期待ください!

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