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それが殻を破るように

「……どうやって来たと言ってもな」

「あんな撒き餌みたいなことしておいて」

「危険を感知するためのセンサーでもなかったのか、あれ」



「バかナ……我々デは人類を欺ク技術の模倣は行えナイと言うことナノカ」



『模倣、か』



 目の前の異形は技術を模倣しているといった。


 その言葉からわかることは、異形たちは初めから人類と同等の知能を持っていたわけではなく、別の場所で技術を見てから、それを真似して今の知性を獲得したということ。



『知性の無い異形が原型なのか……?』

『そこからの突然変異のようなもので知性のある異形が生まれた?』



 断片的な情報からパズルのように仮説を組み上げていく。


 しかし真実へのピースが圧倒的に足りておらず、考えつくのはどこまでも仮説である。


 かといって真実に到達するためだけにここでだらだらと会話を続けるわけにもいかない。先ほど異形は「我々の存在を引き上げる」と言っていたことから、種族全体に何かしらの変化を起こすつもりなのだろう。



 そして現状、異形によって良いことは、人類にとっては都合の悪いこととイコールだ。

 虚が早く管理局に戻るために、都合の悪そうなことは踏み潰していかねばなるまい。


 戦争とは、戦いとはそういうものだ。


 己がわがままを相手に押し付けるための手段。それが虚の考える戦争だ。

 戦いで敗れた側は勝者に自身の生殺与奪の権を奪われたも同然であり、戦う、という行為において勝者は絶対だ。



 それが虚が前世で培ってきた価値観である。

 戦乱の最中に身を置き続けるとはそういうことなのだ。



「一応聞いておくが、その、存在を引き上げる、と言うのはどういったことになるんだ?」

「そんな儀式一つで叶うものなのか?」

「あとその腕、私のものだろう」



 敵であるはずの相手に一度にいくつもの疑問を飛ばされた異形は、少々困惑しつつも自信ありげに答える。



「アァ、答えテやろウゾ。この瞬間モ我々が儀式を進メテいるのだカラナ! 少々会話に興ジタところデ何の問題モアるまいて!」

「コノ供物。そうだ、お前ノ腕ダ。こノ腕の中ニある生命力ヲ一度取り出シ、我ラガ種族全体へ行きわたラセル式に通すコトデ、この式ト繋がっテいる我々全テヘト、その生命力ガ共有されるノダ! それにヨッテ、我々ハ更ナル知性を獲得シ、〈世界の代行者〉とシテ生まれ変ワルことが出来るノダ!!」



「へぇ、そういう仕組みなのか」



 思いのほかあっさりと儀式の情報を話したことを妙に思いながらも、今聞いた話を脳内で嚙み砕く。



『要するに私の腕の中のエネルギーを抽出して、種族全体に行き渡らせるということだろう』

『それで知性を獲得できるのかと言われれば疑問だがな』

『私の身体が異常なエネルギーを秘めていることは分かっていたが』



「まさか種族一つを進化させられるほどとはな」

「クリスが私の身体を欲しがるのも理解できんこともないか」



 虚の腕一本で〈世界の代行者〉とやらになれるのなら、心臓や脳を分け与えた矢岸やクリスは何だというのか。

 仮に本当だとして、そんなことが可能な程にエネルギーが詰め込まれているこの体は何なのかという疑問が新たに湧いて出る。


 しかし、何れにせよ



「ここで考えることではないな」



 考えを中断し、目の前の異形たちへ目を向ける。


 目の前の個体以外にも、奥でなにやら祈っているような体勢の個体が複数体いた。

 そして、この異形の口ぶりからして、この儀式を行っているのはここだけではないのだろう。


 だとすれば、ここでこの異形たちを全滅させても意味がない、訳ではないだろう。


 供物として置かれた虚の腕の周囲には、シンプルな円が何重にも重ねられた陣が敷かれており、目を凝らせば、その陣の中心へ向かうように異形達から細い線が繋がっているのが見えた。



『あの中にあるものを壊せばもしや』

『地上にいる異形も消えたりするのか?』

『そういえば知性の無い異形との本当の関係性を聞いていなかったな』



「まぁ、いいか」

「どうせ殺すんだ、関係なかろう」



 普段の虚とは異なり、目の前の知性のある異形達は既に殺すことに決めていた。


 いつもであれば、殺すことに少々の葛藤はあっただろう。自身の身体が、異形たちの種族全体を進化させることに心が躍っただろう。



 だが、そこに虚の意志が介在していない。


 虚が一度でも「異形を進化させる」などと言っただろうか。腕を渡したのが悪いと言われればそれまでだが、それにしても普段の虚であれば渡す際に何かしらの制限を付けたはずだ。監視したはずだ。ならばその時の虚は正常ではなかった。


 相手からすれば理不尽に映るだろう、約束を違えたように感じるだろう。



 厄災とは、得てしてそういうものだ。


 虚は無自覚のうちに厄災へと孵化する準備を整えている。

 自分勝手で、他人のことを考えず、自分の為だけに行動する。


 それが人知を超える存在であることがどれ程恐ろしいだろう。



「私以外が私を使うな」

「殺すぞバケモノ共」



 厄災の殻が、割れる音がした。

      この先、星があるぞ     

     あぁ、星  おそらく星   


ブックマーク、評価の程よろしくお願いいたします。


カクヨムにて、コンテスト用の作品として新作を出しています。

もしお暇があれば読んで、評価やブクマをして頂けると大変うれしいです。

興味があれば読んでください。よろしくお願いします

「空想を演じる底辺役者〜キャラ設定でデスゲームを生き残る〜」

https://kakuyomu.jp/works/16818622173258416421

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